中国地方の日本ジオパーク・ユネスコ世界ジオパーク まとめ・一覧 / Japanese Geoparks and UNESCO Global Geoparks in Chugoku 〜離島の大地・日本海の記憶・3億年のカルスト台地〜

3月 13, 2026Geoparks,Japan,Travel

この記事は、日本全国のジオパーク まとめ・一覧 / Japanese Geoparks and UNESCO Global Geoparks in Japan の中国地方編です。

中国地方の日本ジオパーク・ユネスコ世界ジオパーク まとめ・一覧 / Japanese Geoparks and UNESCO Global Geoparks in Chugoku 〜離島の大地・日本海の記憶・3億年のカルスト台地〜

中国地方の地質学的背景 ― 大陸分離の記憶と古生代の海が残る大地

中国地方(鳥取・島根・岡山・広島・山口の5県)は、日本海側(山陰)と瀬戸内海側(山陽)で大きく異なる地質学的な顔を持つ地域です。中央を東西に走る中国山地を境として、北側の山陰地域には日本海の形成と密接に関わる地質遺産が、南側の山陽地域には花崗岩や古生代の堆積岩に由来する地質遺産が分布しています。

山陰地域の地質を語る上で最も重要なキーワードが「日本海の形成」です。約2,500万年前、ユーラシア大陸の東縁が裂けて日本列島が大陸から分離し始め、その間に日本海が広がっていきました。この大陸分離のプロセスでは激しい火山活動が繰り広げられ、その痕跡が山陰海岸の火山岩類やリアス海岸として今日まで残されています。さらに特筆すべきは、日本海上の離島である隠岐諸島の存在です。隠岐諸島には約2億5,000万年前の変成岩(隠岐片麻岩)が分布しており、これは日本列島がまだアジア大陸の一部であった時代の地質記録です。大陸分離・日本海形成・火山活動・海面変動という一連の地球の営みを、隠岐ユネスコ世界ジオパークでは体系的に学ぶことができます。

島根県本土側では、島根半島・宍道湖中海ジオパークが日本海の形成に伴う火山活動で誕生した島根半島と、海水と淡水が混じり合う汽水湖の成り立ちを紹介しています。出雲神話の「国引き神話」と実際の地質形成が驚くほど重なるという、神話と地質学の交差点も見どころです。

一方、山口県には約3億5,000万年前の古生代石炭紀に熱帯の海でサンゴ礁として誕生した石灰岩が、プレートの移動と長い年月の溶食を経て形成された秋吉台(日本最大級のカルスト台地)があります。Mine秋吉台ジオパークでは、3億年以上の地球の歴史を一つの地域で体感できます。このように中国地方は、2つのユネスコ世界ジオパークを含む4つのジオパークを有し、日本海の形成史から古生代の海洋生態系まで、幅広い時代の地質遺産を網羅した地域です。

中国地方のジオパーク 比較一覧表

ジオパーク名 都道府県 認定区分 認定年 主な地質テーマ
山陰海岸ジオパーク 鳥取県・京都府・兵庫県 日本+ユネスコ世界 日本2008年・世界2010年 日本海形成・リアス海岸・砂丘・柱状節理
隠岐ジオパーク 島根県 日本+ユネスコ世界 日本2009年・世界2013年 大陸分離・海食崖・独自生態系・黒曜石
島根半島・宍道湖中海ジオパーク 島根県 日本 2017年 日本海形成・汽水湖・出雲神話
Mine秋吉台ジオパーク 山口県 日本 2015年 カルスト台地・鍾乳洞・古生代石灰岩

鳥取県のジオパーク(1か所)

鳥取県は日本海に面した中国地方北東部に位置し、約2,500万年前の日本海形成期にさかのぼる地質学的歴史を有しています。日本海の荒波と風が長い年月をかけて削り上げたリアス海岸や、日本最大級の鳥取砂丘など、地球のダイナミックな営みを体感できる地質遺産が豊富です。

山陰海岸ジオパーク・鳥取県エリア(ユネスコ世界ジオパーク)/ San'in Kaigan UNESCO Global Geopark - Tottori Area

山陰海岸ジオパークは、京都府・兵庫県・鳥取県の3府県にまたがる東西約120kmの日本海沿岸を対象としたユネスコ世界ジオパークです(2008年日本認定、2010年世界認定)。鳥取県エリアは鳥取市と岩美町で構成され、ジオパークの西端部にあたります。山陰海岸ジオパーク全体の紹介は近畿・関西地方のジオパークまとめを参照してください。

鳥取県エリアの最大の見どころは浦富海岸(うらどめかいがん)です。約15kmにわたるリアス海岸で、国の名勝及び天然記念物に指定されています。約1,500万年前〜約2,000万年前の火山岩類(流紋岩・安山岩)が日本海の荒波によって削られ、海食洞・海食崖・奇岩・離れ岩が連なる「山陰の松島」と称される景勝地です。遊覧船やシーカヤックから間近に観察できます。

鳥取砂丘は東西約16km・南北約2.4kmにわたる日本最大級の海岸砂丘で、中国山地の花崗岩が風化・浸食されて千代川に運ばれた砂が、海岸流と季節風によって約10万年の歳月をかけて堆積して形成されました。最大高低差約90mの「馬の背」、降雨後に出現する「オアシス」、冬季の美しい「風紋」など、砂と風が織りなす地形変化を観察できます。

加盟組織
Geoparks Network
日本ジオパーク、ユネスコ世界ジオパーク
加盟年
Year Included
日本:2008年12月、世界:2010年10月
住所
Address
京都府:京丹後市
兵庫県:豊岡市、香美町、新温泉町
鳥取県:鳥取市、岩美町
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR東浜駅より自動車(約10分)
JR鳥取駅よりバス(約20分)で鳥取砂丘
URL
URL
https://sanin-geo.jp/

島根県のジオパーク(2か所)

島根県は日本海に面した山陰地域の中核をなす県であり、県内に2つのジオパーク(うち1つはユネスコ世界ジオパーク)を有しています。いずれも「日本海の形成」という共通のテーマを持ちながら、それぞれ異なる視点から大地の物語を紡いでいます。日本海上の離島・隠岐諸島では大陸分離と独自の生態系の進化を、本土側の島根半島では日本海形成期の火山活動と汽水湖の成り立ちを学ぶことができます。

隠岐ジオパーク(ユネスコ世界ジオパーク)/ Oki Islands UNESCO Global Geopark

隠岐ジオパークは、島根半島の北方約50kmに位置する隠岐諸島全域(約346km²)を対象としたジオパークです。2009年10月に日本ジオパーク、2013年9月にユネスコ世界ジオパークに認定されました。島後(隠岐の島町)と島前(西ノ島町・海士町・知夫村)の4つの有人島を中心に約180の島々で構成されており、大陸からの分離と日本海の形成という地球規模のダイナミックな地質史を体感できる場所です。

隠岐諸島の地質で最も重要なのは、約2億5,000万年前(古生代ペルム紀)の隠岐片麻岩の存在です。これは日本列島がまだアジア大陸の一部であった時代の変成岩であり、日本海の形成に伴って大陸から分離した隠岐の起源を物語る貴重な地質遺産です。また、約600万年前の火山活動によって隠岐諸島の現在の地形が形成されました。国賀海岸(西ノ島町)は高さ約257mの摩天崖(まてんがい)をはじめとする壮大な海食崖が連なる景勝地であり、ローソク島(隠岐の島町)は夕日が先端に灯ると巨大なローソクに見える高さ約20mの奇岩です。赤壁(知夫村)では酸化鉄によって赤く染まった高さ約50〜200mの断崖が約1km続きます。

隠岐の特筆すべき点は、その独自の生態系にもあります。北方系植物(オオイワカガミなど)と南方系植物(ナゴラン・オキシャクナゲなど)が同じ場所に共存するという世界的にも珍しい植生が見られ、これは大陸との地続き時代の名残と、氷期・間氷期の海面変動による生物地理学的な隔離の歴史を反映しています。また、黒曜石の産地としても知られ、古代から石器の原材料として利用されてきた考古学的にも重要な場所です。

加盟組織
Geoparks Network
日本ジオパーク、ユネスコ世界ジオパーク
加盟年
Year Included
日本:2009年10月、世界:2013年9月
住所
Address
島根県:隠岐の島町、西ノ島町、海士町、知夫村
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
出雲縁結び空港より航空機(約30分)で隠岐世界ジオパーク空港
境港・七類港よりフェリー(約2時間30分)で西郷港
URL
URL
https://www.oki-geopark.jp/

島根半島・宍道湖中海ジオパーク / Shimane Peninsula and Shinjiko Nakaumi Geopark

島根半島・宍道湖中海ジオパークは、島根半島と宍道湖・中海を含む松江市・出雲市にまたがるジオパークで、2017年12月に日本ジオパークに認定されました。このジオパークの最大の特徴は、日本海の形成と島根半島の誕生という壮大な地質ストーリーを体験できることです。約2,000万年前にアジア大陸から日本列島が分離する際の火山活動によって形成された島根半島と、海水と淡水が混じり合う汽水湖である宍道湖・中海の成り立ちを、実際の地形や地層から学べます。

主なジオサイトとして、日御碕(ひのみさき)では島根半島西端の柱状節理や海食洞を間近で観察でき、稲佐の浜は出雲大社の西方に広がる神在月に神々が上陸するとされる神話の舞台です。宍道湖は日本で7番目の面積を誇る汽水湖で、「宍道湖七珍」と呼ばれる固有の水産物と夕日の名所として全国的に有名です。加賀の潜戸は遊覧船で洞窟内を巡ることができる島根半島の海食洞です。出雲神話の「国引き神話」に描かれた島根半島の形成は、実際の地質学的な知見と驚くほど重なる部分があり、古代の人々が大地の変動を神話として伝承してきた歴史を感じることができます。

加盟組織
Geoparks Network
日本ジオパーク
加盟年
Year Included
日本:2017年12月、世界:−
住所
Address
島根県:松江市、出雲市
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR松江駅より路線バスまたは自動車で各ジオサイトへ
出雲縁結び空港より自動車(約30分)で松江市街・宍道湖方面
URL
URL
https://www.kunibiki-geopark.jp/

岡山県(ジオパーク認定なし)

岡山県には現在ジオパークとして認定されている地域はありませんが、地質学的に注目すべきスポットが複数存在します。吉備高原は中国山地の南麓に広がる標高300〜500mの準平原で、約8,000万年前の白亜紀後期の花崗岩を基盤としています。この花崗岩が風化して生じた良質な土壌が、備前焼の原材料である陶土の供給源となっており、大地と文化が結びついた好例です。

新見市の石灰岩地帯には、井倉洞(いくらどう、総延長約1,200m)・満奇洞(まきどう、総延長約450m)などの鍾乳洞が発達しており、古生代の石灰岩が溶食によって形成した地下景観を観察できます。成羽(なりわ)地域では三畳紀の植物化石が多数産出し、成羽美術館に併設された化石展示で約2億年前の植生を学べます。瀬戸内海に浮かぶ犬島直島周辺は、花崗岩の風化地形と近代産業遺産(銅製錬所跡など)が共存するエリアで、現在はアートの島としても知られています。

広島県(ジオパーク認定なし)

広島県には現在ジオパークとして認定されている地域はありませんが、瀬戸内海沿いの地質と島嶼群に特色があります。広島県の基盤岩は主に白亜紀後期の花崗岩であり、これは日本海側の火成活動とは異なる時代・成因の火成活動(白亜紀環太平洋火成活動帯)によるものです。この花崗岩の風化によって生じた「まさ土」は、保水力が低く急斜面で崩壊しやすい特性があり、2014年8月の広島土砂災害(死者77名)や2018年の西日本豪雨(広島県内死者109名)など、花崗岩風化土に起因する土砂災害が繰り返し発生しています。地質と防災の関係を学ぶ上で重要な教訓を持つ地域です。

宮島(厳島)は花崗岩と花崗閃緑岩からなる島で、ユネスコ世界文化遺産「厳島神社」で知られています。大鳥居が立つ遠浅の干潟は、花崗岩の風化砂が堆積して形成された地形です。帝釈峡(たいしゃくきょう)は県北部の石灰岩地帯に形成された渓谷で、高さ約40mの天然橋「雄橋(おんばし)」は石灰岩の溶食と河川浸食によって形成された国の天然記念物です。しまなみ海道沿いの島々は花崗岩の多島美が特徴で、大久野島(毒ガス島の歴史を持つ)や因島(村上水軍の拠点)など、地質と歴史が交差するスポットも点在します。

山口県のジオパーク(1か所)

山口県は日本列島の地質学的形成過程を読み解く上で重要な地域です。約3億5,000万年前の古生代石炭紀に熱帯の海でサンゴ礁として生まれた石灰岩が、プレートの移動によって現在の位置まで運ばれ、長い年月の隆起・溶食を経て日本最大級のカルスト台地が形成されました。

Mine秋吉台ジオパーク / Mine-Akiyoshidai Geopark

Mine秋吉台ジオパークは、山口県美祢市全域をエリアとする日本ジオパークで、2015年8月に認定されました。このジオパークの最大の特徴は、約3億5,000万年にわたる地球の歴史を一つの地域で体感できることにあります。秋吉台(あきよしだい)は面積約130km²におよぶ日本最大級のカルスト台地です。古生代石炭紀に南方の暖かい海でサンゴ礁として誕生した石灰岩が、海洋プレートの移動に乗って数千万年をかけて北上し、大陸に付加された後に隆起。さらに長い年月にわたる雨水や地下水の溶食作用を受けて、現在の壮大なカルスト地形が形成されました。

地表には石灰岩柱(ピナクル)やドリーネ(すり鉢状の窪地)、ウバーレ、ポリエなどのカルスト地形が数多く見られ、国の特別天然記念物および国定公園に指定されています。地下には総延長約11.2kmを超える秋芳洞(あきよしどう)が広がっており、約1kmの観光洞が一般公開されています。洞内最大の広さを誇る「千畳敷」、石灰華段丘の美しい棚田状地形「百枚皿」、高さ約15mの巨大石筍「黄金柱(こがねばしら)」など、自然が数十万年以上かけて創り上げた造形美を間近で見ることができます。秋芳洞は国の特別天然記念物に指定されています。

その他のジオサイトとして、大正洞・景清洞は秋芳洞とは異なる特色を持つ鍾乳洞群で、景清洞では探検コースも体験できます。長登銅山跡は奈良時代に東大寺の大仏鋳造に銅を供給したとされる歴史的な鉱山遺跡であり、大地の資源と人類の営みの関わりを学べる貴重な産業遺産です。Mine秋吉台ジオパークセンター(Karstar)はジオパークの地質や歴史を学べるビジターセンターで、訪問の出発点として最適です。化石採集体験プログラムでは、約3億5,000万年前のサンゴやフズリナ(紡錘虫)の化石を実際に採集できます。

加盟組織
Geoparks Network
日本ジオパーク
加盟年
Year Included
日本:2015年8月、世界:−
住所
Address
山口県美祢市(全域)
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR美祢駅より自動車(約30分)
JR新山口駅よりバス(約45分、防長交通「秋芳洞」行き)
URL
URL
https://mine-geo.com/

中国地方のジオパークを訪れる際のアクセスガイド

中国地方の4つのジオパークは山陰側(日本海側)と山口県に分布しており、それぞれへのアクセスルートが異なります。

山陰海岸ジオパーク(鳥取県エリア)へのアクセス

  • 鳥取砂丘:JR鳥取駅からバスで約20分。鳥取空港(鳥取砂丘コナン空港)から自動車で約15分。
  • 浦富海岸:JR鳥取駅からJR山陰本線で岩美駅まで約15分、岩美駅から自動車で約10分。
  • 東京からは鳥取空港(1日5便程度)、大阪からはJR特急「スーパーはくと」で鳥取駅まで約2時間30分。

隠岐ジオパーク(島根県)へのアクセス

  • 航空機:出雲縁結び空港から隠岐世界ジオパーク空港まで約30分(1日1〜2便)。
  • フェリー:七類港(松江市)または境港から隠岐汽船フェリー(約2時間30分)または高速船レインボージェット(約1時間)で島後・西郷港へ。島前へはさらに内航船を乗り継ぎ。
  • 島内移動はレンタカーが便利。島後と島前の間は内航フェリーで約20分。

島根半島・宍道湖中海ジオパーク(島根県)へのアクセス

  • 出雲縁結び空港(東京・大阪から各1日数便)から松江市街まで自動車で約30分。
  • JR松江駅を起点に、出雲大社方面は一畑電車で約1時間、日御碕方面はバスまたは自動車。

Mine秋吉台ジオパーク(山口県)へのアクセス

  • JR新山口駅からバスで約45分(防長交通「秋芳洞」行き)。自動車の場合は中国自動車道・美祢ICから約15分。
  • 山口宇部空港から自動車で約50分。

訪問の注意点

  • 隠岐ジオパークは離島のため、船便・航空便の欠航リスクに注意(特に冬季)。余裕を持った日程を推奨。島内全域を巡るには最低2泊3日が必要。
  • 山陰海岸エリアは冬季に日本海側特有の荒天が多いが、松葉ガニのシーズンでもあり、食と地質を楽しむ冬の旅もおすすめ。
  • 秋芳洞は洞内気温が年間約17℃のため、夏は涼しく冬は暖かい快適な見学環境。秋吉台の草原は春〜秋が見頃。冬の山焼きも壮観。
  • 各ジオパークの認定ジオガイドを活用すると、地質の成り立ちをより深く理解できる。事前予約制が多いため、公式サイトで確認を。

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