[2011年開催(2010年映画作品対象)]第83回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜

3月 10, 2026Academy Awards,Movie,Products

アカデミー賞(Academy Awards)とは、映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences、略称: AMPAS)が主催する、世界で最も権威ある映画賞の一つです。アメリカ合衆国における映画芸術・科学の発展と品質向上を目的に、毎年キャスト・スタッフなどの映画関係者を部門別に表彰しています。受賞者に授与される金色のオスカー像にちなみ、「オスカー賞(The Oscars)」の通称でも広く知られています。

1929年に第1回授賞式が開催されて以来、アカデミー賞は世界三大映画祭(カンヌ国際映画祭・ベルリン国際映画祭・ヴェネツィア国際映画祭)よりも長い歴史を持ち、映画産業において最も影響力のある賞として確固たる地位を築いてきました。ノミネート・受賞の結果は世界中のメディアで大きく報道され、対象作品の各国における興行収入やストリーミング配信の視聴数に多大な影響を与えます。

アカデミー賞の選考は、映画界で活躍するプロデューサー、監督、脚本家、俳優、技術者、批評家など、約10,000人の会員で構成されるAMPASの投票によって行われます。その厳正な審査プロセスを通じて選ばれた作品・人物は、映画史に残る高い評価を受けており、一度は鑑賞すべき名作揃いと言えるでしょう。

第83回アカデミー賞(2011年)の概要

第83回アカデミー賞授賞式は、2011年2月27日(現地時間)にカリフォルニア州ロサンゼルスのコダック・シアター(現ドルビー・シアター)で開催されました。司会はジェームズ・フランコとアン・ハサウェイが務め、アカデミー賞史上最年少の司会コンビとして話題を集めました。

この年のアカデミー賞は、トム・フーパー監督の『英国王のスピーチ(The King's Speech)』が作品賞・監督賞・主演男優賞・脚本賞の主要4部門を含む計4冠を達成し、授賞式の主役となりました。イギリス国王ジョージ6世が吃音を克服する実話を基にした本作は、コリン・ファースの圧巻の演技とともに世界中の観客を感動させました。

一方、デヴィッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク(The Social Network)』は、脚色賞・作曲賞・編集賞の3部門を受賞。Facebook創設の物語を描いた本作は、前哨戦では作品賞の最有力候補とされていたため、『英国王のスピーチ』との「頂上対決」は大きな注目を集めました。

また、クリストファー・ノーラン監督の『インセプション(Inception)』が撮影賞・視覚効果賞・音響編集賞・録音賞の技術系4部門を独占。革新的な映像表現が高く評価されました。さらに、ナタリー・ポートマンが『ブラック・スワン(Black Swan)』でバレリーナの狂気と執念を体現し、主演女優賞を受賞したことも大きな話題となりました。

以下に、第83回アカデミー賞(2011年開催・2010年映画作品対象)の全部門におけるノミネート作品・受賞作品を一覧にまとめています。各受賞作品の情報とあわせてご覧ください。

[2011年開催(2010年映画作品対象)]第83回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜

作品賞 / Best Picture(作品賞)

アカデミー賞の中で最高の栄誉とされる部門です。その年に公開されたアメリカ映画の中から、映画芸術科学アカデミー(AMPAS)の全会員による投票で選出されます。第83回では10作品がノミネートされる激戦となりました。前哨戦の最有力候補とされていたデヴィッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』を抑え、トム・フーパー監督の『英国王のスピーチ』が受賞。英国王ジョージ6世が言語療法士ライオネル・ローグと二人三脚で吃音を克服していく実話ドラマは、人間の尊厳と友情の普遍的テーマで世界中の観客を感動させました。作品賞受賞はその映画の映画史における永続的な評価を決定づける最高の栄冠です。

受賞
Winner
英国王のスピーチ[The King’s Speech]

ノミネート
Nominees

127時間[127 Hours]
ブラック・スワン[Black Swan]
ザ・ファイター
インセプション[Inception]
キッズ・オールライト[The Kids Are All Right]
ソーシャル・ネットワーク[The Social Network]
トイ・ストーリー3[Toy Story 3]
トゥルー・グリット[True Grit]
ウィンターズ・ボーン[Winter’s Bone]

監督賞 / Best Director(監督賞)

映画全体の芸術的ビジョンを統括し、キャスト・スタッフを束ねて優れた作品を完成させた監督に贈られる賞です。第83回ではトム・フーパー監督(英国王のスピーチ)が受賞。歴史的背景とキャラクターの内面描写を巧みに融合させた繊細な演出が高く評価されました。ノミネートには、ダーレン・アロノフスキー(ブラック・スワン)、デヴィッド・O・ラッセル(ザ・ファイター)、デヴィッド・フィンチャー(ソーシャル・ネットワーク)、コーエン兄弟(トゥルー・グリット)という錚々たる顔ぶれが揃い、映画ファンの間でも最激戦部門の一つと語られています。

受賞
Winner
英国王のスピーチ[The King’s Speech] ⇒ Tom Hooper

ノミネート
Nominees

ブラック・スワン[Black Swan] ⇒ Darren Aronofsky
ザ・ファイター ⇒ David O. Russell
ソーシャル・ネットワーク[The Social Network] ⇒ David Fincher
トゥルー・グリット[True Grit] ⇒ Joel Coen and Ethan Coen

主演男優賞 / Best Actor(主演男優賞)

映画の主役を演じた男優に贈られる賞です。第83回では、前年のノミネートに続きコリン・ファースが『英国王のスピーチ』でジョージ6世を演じ、悲願のオスカーを手にしました。吃音という繊細な障害を抱えた国王の苦悩と克服を、大仰になりすぎず静謐かつ力強く表現した演技は、映画評論家から満場一致に近い絶賛を受けました。ノミネート陣も、ハビエル・バルデム(BIUTIFUL ビューティフル)、ジェフ・ブリッジス(トゥルー・グリット)、ジェシー・アイゼンバーグ(ソーシャル・ネットワーク)、ジェームズ・フランコ(127時間)と、多彩なキャラクターを体現した実力派俳優が揃いました。

受賞
Winner
英国王のスピーチ[The King’s Speech] ⇒ コリン・ファース[Colin Firth]

ノミネート
Nominees

BIUTIFUL ビューティフル[Biutiful] ⇒ Javier Bardem[ハビエル・バルデム]
トゥルー・グリット[True Grit] ⇒ Jeff Bridges[ジェフ・ブリッジス]
ソーシャル・ネットワーク[The Social Network] ⇒ Jesse Eisenberg[ジェシー・アイゼンバーグ]
127時間[127 Hours] ⇒ James Franco[ジェームズ・フランコ]

主演女優賞 / Best Actress(主演女優賞)

映画の主役を演じた女優に贈られる賞です。第83回ではナタリー・ポートマンが『ブラック・スワン』でバレエダンサーのニナを演じ、受賞しました。約1年間にわたる猛特訓でバレエの基礎を習得し、完璧主義が引き起こす狂気と美しさを体現したパフォーマンスは映画史に残る名演として語り継がれています。受賞時に妊娠中であったことも話題となりました。ノミネートのアネット・ベニング、ニコール・キッドマン、当時20歳のジェニファー・ローレンス(後の活躍を予感させるノミネート)、ミシェル・ウィリアムズも高い評価を受けた実力派揃いでした。

受賞
Winner
ブラック・スワン[Black Swan] ⇒ ナタリー・ポートマン[Natalie Portman]

ノミネート
Nominees

キッズ・オールライト[The Kids Are All Right] ⇒ アネット・ベニング[Annette Bening]
ラビット・ホール[Rabbit Hole] ⇒ ニコール・キッドマン[Nicole Kidman]
ウィンターズ・ボーン[Winter’s Bone] ⇒ ジェニファー・ローレンス[Jennifer Lawrence]
ブルーバレンタイン[Blue Valentine] ⇒ ミシェル・ウィリアムズ[Michelle Williams]

助演男優賞 / Best Supporting Actor(助演男優賞)

主役を支える助演男優に贈られる賞です。第83回ではクリスチャン・ベールが『ザ・ファイター』で受賞しました。実在のボクサー、ミッキー・ウォードの兄でトレーナーのディッキー・エクランドを演じるため、約9kgの減量と独特の歩き方まで徹底的に習得した役作りが絶賛されました。ドラッグ中毒から立ち直ろうとする複雑な人物を生々しく演じ、コメディとシリアスの両面を見事に表現。ノミネートのジョン・ホークス、ジェレミー・レナー、マーク・ラファロ、ジェフリー・ラッシュもそれぞれ強烈な存在感を放っていました。

受賞
Winner
ザ・ファイター ⇒ クリスチャン・ベール[Christian Bale]

ノミネート
Nominees

ウィンターズ・ボーン[Winter’s Bone] ⇒ ジョン・ホークス[John Hawkes]
ザ・タウン[The Town] ⇒ ジェレミー・レナー[Jeremy Renner]
キッズ・オールライト[The Kids Are All Right] ⇒ マーク・ラファロ[Mark Ruffalo]
英国王のスピーチ[The King’s Speech] ⇒ ジェフリー・ラッシュ[Geoffrey Rush]

助演女優賞 / Best Supporting Actress(助演女優賞)

主役を支える助演女優に贈られる賞です。第83回ではメリッサ・レオが『ザ・ファイター』で受賞しました。主人公の母親役として、息子をボクシングで成功させようとする複雑な愛情と欲望を体現した演技が高く評価されました。受賞スピーチ中に感極まってF-wordを生放送で発してしまったことが世界的な話題になったことでも記憶されています。同作からはエイミー・アダムスもノミネートされ、1作品からのダブルノミネートという稀有な状況も注目を集めました。ヘレナ・ボナム=カーター(英国王のスピーチ)やヘイリー・スタインフェルド(トゥルー・グリット)も印象的な演技を見せました。

受賞
Winner
ザ・ファイター ⇒ メリッサ・レオ[Melissa Leo]

ノミネート
Nominees

ザ・ファイター ⇒ エイミー・アダムス[Amy Adams]
英国王のスピーチ[The King’s Speech] ⇒ ヘレナ・ボナム=カーター[Helena Bonham Carter]
トゥルー・グリット[True Grit] ⇒ ヘイリー・スタインフェルド[Hailee Steinfeld]
アニマル・キングダム[Animal Kingdom] ⇒ ジャッキー・ウィーヴァー[Jacki Weaver]

脚本賞 / Best Original Screenplay(脚本賞)

完全にオリジナルで書かれた脚本に贈られる賞です。第83回ではデヴィッド・サイドラー(David Seidler)が『英国王のスピーチ』で受賞しました。サイドラー自身も幼少期に吃音を経験しており、ジョージ6世のエピソードに深く共鳴して数十年にわたり執筆を温め続けた作品です。73歳での受賞は、アカデミー賞脚本賞の最高齢受賞記録となりました。「Never too late(遅すぎることはない)」というメッセージを体現した受賞スピーチも感動的でした。ノミネートのクリストファー・ノーランによる『インセプション』の複雑多層な構造を持つ脚本も高く評価されています。

受賞
Winner
英国王のスピーチ[The King’s Speech] ⇒ デヴィッド・サイドラー[David Seidler]

ノミネート
Nominees

家族の庭[Another Year] ⇒ マイク・リー[Mike Leigh]
ザ・ファイター ⇒ スコット・シルヴァー[Scott Silver]、ポール・タマシー[Paul Tamasy]、エリック・ジョンソン[Eric Johnson]、Keith Dorrington
インセプション[Inception] ⇒ クリストファー・ノーラン[Christopher Nolan]
キッズ・オールライト[The Kids Are All Right] ⇒ リサ・チョロデンコ[Lisa Cholodenko]、スチュアート・ブルムバーグ[Stuart Blumberg]

脚色賞 / Best Adapted Screenplay(脚色賞)

小説・ノンフィクション・戯曲・旧作映画などを原作として映画用に脚色した脚本に贈られる賞です。第83回ではアーロン・ソーキン(Aaron Sorkin)が『ソーシャル・ネットワーク』で受賞しました。ベン・メズリックのノンフィクション書籍を原作に、Facebookの創業をめぐる法廷闘争を軸にしながら、テンポの速い対話劇として映画的に昇華させた脚本の完成度は際立っていました。ソーキン独自の「ウォークアンドトーク」スタイルの台詞回しは映画脚本の新たな地平を開いたと評されています。

受賞
Winner
ソーシャル・ネットワーク[The Social Network] ⇒ アーロン・ソーキン[Aaron Sorkin]

ノミネート
Nominees

127時間[127 Hours] ⇒ ダニー・ボイル[Danny Boyle]、サイモン・ボーファイ[Simon Beaufoy]
トイ・ストーリー3[Toy Story 3] ⇒ マイケル・アーント[Michael Arndt]、ジョン・ラセター[John Lasseter]、アンドリュー・スタントン[Andrew Stanton]、リー・アンクリッチ[Lee Unkrich]
トゥルー・グリット[True Grit] ⇒ ジョエル・コーエン[Joel Coen]、イーサン・コーエン[Ethan Coen]
ウィンターズ・ボーン[Winter’s Bone] ⇒ デブラ・グラニック[Debra Granik]、アン・ロッセリーニ[Anne Rosellini]

長編アニメ映画賞 / Best Animated Feature Film(長編アニメ映画賞)

2001年に新設された部門で、長編アニメーション映画の中で最も優れた作品に贈られます。第83回ではピクサーの『トイ・ストーリー3』がリー・アンクリッチ監督のもと受賞しました。1995年の第1作から続くシリーズ完結編として、子ども時代の終わりと変化への受け入れというテーマを深く掘り下げた本作は、大人も涙する傑作として世界的に絶賛されました。また本作は同年の作品賞にもノミネートされるという快挙を達成しており、アニメーション映画の芸術的水準の高さを証明しました。ノミネートの『ヒックとドラゴン』もスケールの大きな冒険と感動的なドラゴンとの絆が高評価を得ました。

受賞
Winner
トイ・ストーリー3[Toy Story 3] ⇒ リー・アンクリッチ[Lee Unkrich]

ノミネート
Nominees

ヒックとドラゴン[How to Train Your Dragon] ⇒ クリス・サンダース[Chris Sanders]、ディーン・デュボア[Dean DeBlois]
イリュージョニスト[The Illusionist] ⇒ シルヴァン・ショメ[Sylvain Chomet]

外国語映画賞 / Best Foreign Language Film(外国語映画賞)

英語以外の言語で製作された外国映画のうち最も優れた作品に贈られる賞です。各国から1作品ずつが推薦され、審査員による選考を経て5作品がノミネートされます。第83回ではスサンネ・ビア監督(Susanne Bier)のデンマーク映画『未来を生きる君たちへ』(In a Better World)が受賞しました。デンマーク郊外の日常とアフリカの難民キャンプを舞台に、暴力と復讐心の連鎖に立ち向かう二つの家族の物語を描いた本作は、普遍的な人間性への問いかけが深い感動を生みました。ノミネートにはのちの巨匠ドゥニ・ヴィルヌーヴ(灼熱の魂)やヨルゴス・ランティモス(籠の中の乙女)も名を連ねており、今見ても注目の顔ぶれです。

受賞
Winner
未来を生きる君たちへ[In a Better World] (デンマーク[Denmark]) – デンマーク語[Danish] ⇒ スサンネ・ビア[Susanne Bier]

ノミネート
Nominees

BIUTIFUL ビューティフル[Biutiful] (メキシコ[Mexico]) – スペイン語[Spanish] ⇒ アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ[Alejandro González Iñárritu]
籠の中の乙女[Dogtooth] (ギリシャ[Greece]) – ギリシャ語[Greek] ⇒ ヨルゴス・ランティモス[Yorgos Lanthimos]
灼熱の魂[Incendies] (カナダ[Canada]) – フランス語[French] ⇒ ドゥニ・ヴィルヌーヴ[Denis Villeneuve]
Outside the Law (アルジェリア[Algeria]) in アラビア語[Arabic] ⇒ ラシッド・ブシャール[Rachid Bouchareb]

長編ドキュメンタリー映画賞 / Best Documentary Feature(長編ドキュメンタリー映画賞)

優れた長編ドキュメンタリー映画に贈られる賞です。第83回ではチャールズ・ファーガソン監督の『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実』(Inside Job)が受賞しました。2008年のリーマン・ショックを引き起こした金融業界・規制当局・政治家・学者が形成した腐敗の構造を、圧倒的な取材力と明快な構成で解明した本作は、金融危機の本質を理解したいすべての人に必見の作品です。授賞式では「金融危機後も誰一人として刑事訴追されていない」というスピーチが大きな反響を呼び、映画賞受賞を超えた社会的インパクトをもたらしました。バンクシー監督の『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』のノミネートも大きな話題を呼びました。

受賞
Winner
インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実[Inside Job] ⇒ チャールズ・ファーガソン[Charles H. Ferguson]、オードリー・マーズ[Audrey Marrs]

ノミネート
Nominees

イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ[Exit Through the Gift Shop] ⇒ バンクシー[Banksy]、Jaimie D’Cruz
ガスランド[Gasland] ⇒ ジョシュ・フォックス[Josh Fox]、トリッシュ・アドレシック[Trish Adlesic]
レストレポ 〜アフガニスタンで戦う兵士たちの記録〜[Restrepo] ⇒ ティム・ヘザリントン[Tim Hetherington]、セバスチャン・ユンガー[Sebastian Junger]
ヴィック・ムニーズ/ごみアートの奇跡[Waste Land] ⇒ ルーシー・ウォーカー[Lucy Walker]、アンガス・エインズリー[Angus Aynsley]

短編ドキュメンタリー映画賞 / Best Documentary Short Subject(短編ドキュメンタリー映画賞)

優れた短編ドキュメンタリー映画に贈られる賞です。第83回ではKaren GoodmanとKirk Simonが監督した『Strangers No More』が受賞しました。世界50以上の国から逃れてきた難民の子どもたちが共に学ぶイスラエル・テルアビブの学校を舞台に、言語・文化・宗教の壁を超えた子どもたちの友情と再出発の物語を記録した感動的な作品です。多文化共生の理想を体現するこの作品は、ドキュメンタリーとしての質の高さとともに普遍的なメッセージが審査員の心を動かしました。

受賞
Winner
Strangers No More ⇒ Karen Goodman and Kirk Simon

ノミネート
Nominees

Killing in the Name ⇒ Jed Rothstein
Poster Girl ⇒ Sara Nesson
Sun Come Up ⇒ Jennifer Redfearn and Tim Metzger
The Warriors of Qiugang ⇒ Ruby Yang and Thomas Lennon

短編映画賞 / Best Live Action Short Film(短編実写映画賞)

優れた短編実写映画に贈られる賞です。第83回ではルーク・マセニー(Luke Matheny)が監督・脚本・主演を一人でこなした自主制作作品『God of Love』が受賞しました。ダーツのチャンピオンの若者が人を恋に落とすダーツを手に入れるというラブコメディ風のユニークな設定に、ブラック・ユーモアを絡めた独創的な物語が高く評価されました。ニューヨーク大学のMFA映画プログラムの修了制作として作られた低予算作品ながら、映画的なセンスと完成度の高さが際立っていました。

受賞
Winner
God of Love ⇒ Luke Matheny

ノミネート
Nominees

The Confession ⇒ Tanel Toom
The Crush ⇒ Michael Creagh
Na Wewe ⇒ Ivan Goldschmidt
Wish 143 ⇒ Ian Barnes

短編アニメ賞 / Best Animated Short Film(短編アニメーション映画賞)

優れた短編アニメーション映画に贈られる賞です。第83回ではAndrew RuhemannとShaun Tanが制作した『The Lost Thing』(オーストラリア)が受賞しました。ショーン・タンの絵本を原作に、誰も振り向かない不思議な生き物を拾った少年の優しさと想像力を詩的なアニメーションで描いた本作は、現代社会が「普通でないもの」を排除してしまうことへの寓話的批評を込めています。視覚的に豊かで哲学的なテーマを持ち、世界各地の映画祭でも高評価を獲得しました。

受賞
Winner
The Lost Thing ⇒ Andrew Ruhemann and Shaun Tan

ノミネート
Nominees

デイ&ナイト[Day & Night] ⇒ テディ・ニュートン[Teddy Newton]
The Gruffalo ⇒ Max Lang and Jakob Schuh
Let’s Pollute ⇒ Geefwee Boedoe
Madagascar、a Journey Diary ⇒ Bastien Dubois

作曲賞 / Best Original Score(作曲賞)

映画のためにオリジナルで作曲されたスコア(楽曲全体)に贈られる賞です。第83回ではトレント・レズナー(Trent Reznor)とアッティカス・ロス(Atticus Ross)のコンビが『ソーシャル・ネットワーク』で受賞しました。ナイン・インチ・ネイルズのフロントマンとして知られるレズナーが映画音楽に本格参入したこの作品では、電子音楽の緊迫感と冷たさがFacebook創業という野心的な物語の雰囲気を完璧に体現しました。ロック畑出身の作曲家によるアカデミー賞受賞は映画音楽の世界に新しい扉を開きました。ノミネートにはハンス・ジマー(インセプション)やA.R.ラフマーン(127時間)も名を連ねた豪華な部門でした。

受賞
Winner
ソーシャル・ネットワーク[The Social Network] ⇒ トレント・レズナー[Trent Reznor]、アッティカス・ロス[Atticus Ross]

ノミネート
Nominees

127時間[127 Hours] ⇒ A.R.ラフマーン[A. R. Rahman]
ヒックとドラゴン[How to Train Your Dragon] ⇒ ジョン・パウエル[John Powell]
インセプション[Inception] ⇒ ハンス・ジマー[Hans Zimmer]
英国王のスピーチ[The King’s Speech] ⇒ アレクサンドル・デプラ[Alexandre Desplat]

歌曲賞 / Best Original Song(歌曲賞)

映画のためにオリジナルで制作された楽曲に贈られる賞です。第83回ではランディ・ニューマン(Randy Newman)作詞・作曲の「We Belong Together」(トイ・ストーリー3より)が受賞しました。ウッディとジェシーの友情と別れを歌ったこの楽曲は、映画のラストシーンと相まって世界中の観客の涙を誘いました。ランディ・ニューマンはトイ・ストーリー・シリーズを通じて歌曲賞を複数回受賞しており、ピクサー映画と不可分の存在として映画音楽の歴史に刻まれています。ノミネートにはA.R.ラフマーン(127時間)やアラン・メンケン(塔の上のラプンツェル)も名を連ねました。

受賞
Winner
“We Belong Together" – トイ・ストーリー3[Toy Story 3] ⇒ 作詞・作曲:ランディ・ニューマン[Randy Newman]

ノミネート
Nominees

“Coming Home" – カントリー・ストロング[Country Strong] ⇒ 作詞・作曲:トム・ダグラス[Tom Douglas]、ヒラリー・リンジー[Hillary Lindsey]、Troy Verges
“If I Rise" – 127時間[127 Hours] ⇒ 作曲:A.R.ラフマーン[A. R. Rahman]、作詞:ロロ・アームストロング[Rollo Armstrong]、ダイド[Dido]
“I See the Light" – 塔の上のラプンツェル[Tangled] ⇒ 作曲:アラン・メンケン[Alan Menken]、作詞:グレン・スレーター[Glenn Slater]

音響編集賞 / Best Sound Editing(音響編集賞)

映画に使用される効果音・環境音の収録・編集技術に贈られる賞です。第83回ではリチャード・キング(Richard King)が『インセプション』で受賞しました。夢と現実が交錯する複数の時間軸・空間を音響の視点から構築した本作の音響設計は、現実では体験不可能な感覚を観客にもたらしました。時間が引き伸ばされる夢の世界での歪んだ音、無重力状態での格闘音など、映像的革新を音響面でも完璧にサポートした技術は圧巻です。インセプションはこの音響編集賞と録音賞のダブル受賞を達成しました。

受賞
Winner
インセプション[Inception] ⇒ リチャード・キング[Richard King]

ノミネート
Nominees

トイ・ストーリー3[Toy Story 3] ⇒ トム・メイヤーズ[Tom Myers]、マイケル・シルヴァース[Michael Silvers]
トロン: レガシー[Tron: Legacy] ⇒ グウェンドリン・イェーツ・ホイットル[Gwendolyn Yates Whittle]、アディソン・ティーグ[Addison Teague]
トゥルー・グリット[True Grit] ⇒ スキップ・リーヴセイ[Skip Lievsay]、クレイグ・バーキー[Craig Berkey]
アンストッパブル[Unstoppable] ⇒ マーク・P・ストッキンジャー[Mark Stoeckinger]

録音賞 / Best Sound Mixing(録音賞)

映画の音楽・セリフ・効果音を最終的にバランスよくミックスする技術に贈られる賞です。第83回ではローラ・ハーシュバーグ、ゲイリー・リッツオ、エド・ノヴィックのチームが『インセプション』で受賞しました。夢の階層ごとに異なる音響空間を設計し、複数のタイムラインが同時進行する複雑な構成を音響の面でも完璧に整理した仕事は、映画音響の新たな基準を打ち立てました。音響編集賞とのダブル受賞により、インセプションの技術的達成の総合的な高さが改めて証明されました。

受賞
Winner
インセプション[Inception] ⇒ ローラ・ハーシュバーグ[Lora Hirschberg]、ゲイリー・リッツオ[Gary Rizzo]、エド・ノヴィック[Ed Novick]

ノミネート
Nominees

英国王のスピーチ[The King’s Speech] ⇒ ポール・ハンブリン[Paul Hamblin]、マーティン・ジェンセン[Martin Jensen]、ジョン・ミッドグレイ[John Midgley]
ソルト[Salt] ⇒ ジェフリー・J・ハボウシュ[Jeffrey J. Haboush]、グレッグ・P・ラッセル[Greg P. Russell]、スコット・ミラン[Scott Millan]、ウィリアム・サロキン[William Sarokin]
ソーシャル・ネットワーク[The Social Network] ⇒ レン・クライス[Ren Klyce]、デヴィッド・パーカー[David Parker]、マイケル・セマニック[Michael Semanick]、マーク・ウェインガーテン[Mark Weingarten]
トゥルー・グリット[True Grit] ⇒ スキップ・リーヴセイ[Skip Lievsay]、クレイグ・バーキー[Craig Berkey]、グレッグ・オルロフ[Greg Orloff]、ピーター・カーランド[Peter Kurland]

美術賞 / Best Production Design(プロダクションデザイン賞)

映画のセット・美術デザイン・装飾など、視覚的な世界観の構築に贈られる賞です。第83回ではロバート・ストロンバーグ(Robert Stromberg)とカレン・オハラ(Karen O'Hara)がティム・バートン監督の『アリス・イン・ワンダーランド』で受賞しました。ルイス・キャロルの原作世界をCGと実写セットを高度に融合させた奇妙かつ壮麗な美術で体現し、不思議の国の独特の世界観を視覚的に完璧に表現しました。ストロンバーグは前年の『アバター』でも同賞を受賞しており、2年連続の快挙となりました。ノミネートにはインセプション、英国王のスピーチ、ハリー・ポッターシリーズも名を連ねた豪華な部門でした。

受賞
Winner
アリス・イン・ワンダーランド[Alice in Wonderland] ⇒ ロバート・ストロンバーグ[Robert Stromberg]、カレン・オハラ[Karen O’Hara]

ノミネート
Nominees

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1[Harry Potter and the Deathly Hallows – Part 1] ⇒ スチュアート・クレイグ[Stuart Craig]、ステファニー・マクミラン[Stephenie McMillan]
インセプション[Inception] ⇒ ガイ・ヘンドリックス・ディアス[Guy Hendrix Dyas]、ラリー・ディアス[Larry Dias]、ダグ・モワット[Doug Mowat]
英国王のスピーチ[The King’s Speech] ⇒ イヴ・スチュワート[Eve Stewart]、ジュディ・ファー[Judy Farr]
トゥルー・グリット[True Grit] ⇒ ジェス・ゴンコール[Jess Gonchor]、ナンシー・ヘイグ[Nancy Haigh]

撮影賞 / Best Cinematography(撮影賞)

映画のカメラワーク・構図・照明など映像表現全般の質に贈られる賞です。第83回ではウォーリー・フィスター(Wally Pfister)が『インセプション』で受賞しました。クリストファー・ノーラン監督のこだわりにより、本作ではCGに可能な限り頼らず、実際に回転するセットを組んだ無重力廊下のシーンや爆発・崩壊するパリの街頭シーンなどを実写で撮影する前代未聞の挑戦を実現しました。現実と夢の違いを照明と構図の微妙な差異で表現した映像は、映画的な説得力と視覚的な美しさを兼ね備えた名撮影として映画史に刻まれています。ノミネートにはロジャー・ディーキンス(トゥルー・グリット)も名を連ねました。

受賞
Winner
インセプション[Inception] ⇒ ウォーリー・フィスター[Wally Pfister]

ノミネート
Nominees

ブラック・スワン[Black Swan] ⇒ マシュー・リバティーク[Matthew Libatique]
英国王のスピーチ[The King’s Speech] ⇒ ダニー・コーエン[Danny Cohen]
ソーシャル・ネットワーク[The Social Network] ⇒ ジェフ・クローネンウェス[Jeff Cronenweth]
トゥルー・グリット[True Grit] ⇒ ロジャー・ディーキンス[Roger Deakins]

メイクアップ&ヘアスタイリング賞 / Best Makeup and Hairstyling(メイクアップ&ヘアスタイリング賞)

映画のメイクアップとヘアスタイリングの技術的・芸術的卓越性に贈られる賞です。第83回ではリック・ベイカー(Rick Baker)とデイヴ・エルシー(Dave Elsey)がユニバーサル映画の『ウルフマン』で受賞しました。1941年のオリジナル版から続く「狼男」の伝説的特殊メイクを、最新技術を駆使しながらも古典的な手作業メイクの魅力を残した仕事が評価されました。リック・ベイカーにとってこれが通算7回目のアカデミー賞メイクアップ賞受賞となり、同賞の最多受賞者記録を更新しています。

受賞
Winner
ウルフマン[The Wolfman] ⇒ リック・ベイカー[Rick Baker]、デイヴ・エルシー[Dave Elsey]

ノミネート
Nominees

バーニーズ・バージョン ローマと共に[Barney’s Version] ⇒ Adrien Morot
ウェイバック -脱出6500km-[The Way Back] ⇒ エドワード・ヘンリクス3世[Edouard F. Henriques]、Gregory Funk ヨランダ・トゥシエング[Yolanda Toussieng]

衣裳デザイン賞 / Best Costume Design(衣裳デザイン賞)

映画の衣裳デザインの芸術的・技術的水準に贈られる賞です。第83回ではコリーン・アトウッド(Colleen Atwood)がティム・バートン監督の『アリス・イン・ワンダーランド』で受賞しました。ティム・バートン作品の常連デザイナーであるアトウッドは、ルイス・キャロルの原作世界から着想を得ながら映画独自のビジュアルスタイルを確立。ハートの女王の鮮烈な赤を基調にした衣裳からアリスの成長を象徴する衣装まで、登場人物の個性と物語の展開を衣裳で語るデザインが高く評価されました。この受賞はアトウッドにとって3度目のアカデミー賞衣裳デザイン賞受賞となりました。

受賞
Winner
アリス・イン・ワンダーランド[Alice in Wonderland] ⇒ コリーン・アトウッド[Colleen Atwood]

ノミネート
Nominees

ミラノ、愛に生きる[I Am Love] ⇒ アントネッラ・カナロッツィ[Antonella Cannarozzi]
英国王のスピーチ[The King’s Speech] ⇒ ジェニー・ビーヴァン[Jenny Beavan]
テンペスト[The Tempest] ⇒ サンディ・パウエル[Sandy Powell]
トゥルー・グリット[True Grit] ⇒ メアリー・ゾフレス[Mary Zophres]

編集賞 / Best Film Editing(編集賞)

映画の編集技術・構成力に贈られる賞です。第83回ではアンガス・ウォール(Angus Wall)とカーク・バクスター(Kirk Baxter)がデヴィッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』で受賞しました。法廷の尋問シーン・回想シーン・現在進行形の出来事という三つの時間軸を巧みに交差させながら、観客が混乱することなくストーリーに没入できるテンポと流れを実現したカッティングが絶賛されました。このコンビはフィンチャー監督との相性を発揮し、翌年の『ドラゴン・タトゥーの女』でも同賞を受賞しています。

受賞
Winner
ソーシャル・ネットワーク[The Social Network] ⇒ アンガス・ウォール[Angus Wall]、カーク・バクスター[Kirk Baxter]

ノミネート
Nominees

127時間[127 Hours] ⇒ ジョン・ハリス[Jon Harris]
ブラック・スワン[Black Swan] ⇒ アンドリュー・ワイスブラム[Andrew Weisblum]
ザ・ファイター ⇒ パメラ・マーティン[Pamela Martin]
英国王のスピーチ[The King’s Speech] ⇒ タリク・アンウォー[Tariq Anwar]

視覚効果賞 / Best Visual Effects(視覚効果賞)

CGや特殊撮影などの視覚的効果技術に贈られる賞です。第83回ではポール・フランクリン(Paul Franklin)ら4名のチームが『インセプション』で受賞しました。夢の中の「折り畳まれたパリ」のシーン、重力を無視した廊下での格闘など、革新的な映像表現の数々が審査員を圧倒しました。クリストファー・ノーラン監督のこだわりにより、可能な限りCGではなく実際のセットや撮影技術で映像を作り上げた本作は、デジタルVFXと実写技術の理想的な融合として今もVFXの教科書的事例として参照されています。

受賞
Winner
インセプション[Inception] ⇒ ポール・フランクリン[Paul Franklin]、クリス・コーボールド[Chris Corbould、アンドリュー・ロックリー[Andrew Lockley]、ピーター・ベッブ[Peter Bebb]

ノミネート
Nominees

アリス・イン・ワンダーランド[Alice in Wonderland] ⇒ ケン・ローストン[Ken Ralston]、デヴィッド・ショーブ[David Schaub]、キャリー・ヴィレガス[Carey Villegas]、ショーン・フィリップス[Sean Phillips]
ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1[Harry Potter and the Deathly Hallows – Part 1] ⇒ ティム・バーク[Tim Burke]、ジョン・リチャードソン[John Richardson]、クリスチャン・マンツ[Christian Manz]、ニコラス・アイターディー[Nicolas Aithadi]
ヒア アフター[Hereafter] ⇒ マイケル・オーウェン[Michael Owens]、ブライアン・グリル[Bryan Grill]、スティーヴン・トロヤンスキ[Stephan Trojanski]、ジョー・ファレル[Joe Farrell]
アイアンマン2[Iron Man 2] ⇒ ジャネク・サーズ[Janek Sirrs]、ベン・スノウ[Ben Snow]、ゲド・ライト[Ged Wright]、ダン・サディック[Dan Sudick]

第83回アカデミー賞(2011年開催)の総括と主要受賞作ハイライト

2011年2月27日に開催された第83回アカデミー賞は、前哨戦から続く「英国王のスピーチ vs ソーシャル・ネットワーク」という2強対決が最大の注目を集めた授賞式でした。英国王室の実話を格調高く描いた前者と、Facebookの創業者マーク・ザッカーバーグの野望と友情の崩壊をスタイリッシュに描いた後者。最終的に『英国王のスピーチ』が作品賞・監督賞・主演男優賞・脚本賞の主要4冠を制し、『ソーシャル・ネットワーク』は脚色賞・作曲賞・編集賞の3部門を受賞しました。どちらも映画史に輝く傑作として、現在もなお色褪せない評価を受けています。

第83回アカデミー賞・部門別受賞作品サマリー

第83回アカデミー賞における各部門の受賞結果を振り返ると、以下の傾向が浮かび上がります。

  • 英国王のスピーチ(トム・フーパー監督):作品賞・監督賞・主演男優賞(コリン・ファース)・脚本賞 = 計4部門受賞
  • インセプション(クリストファー・ノーラン監督):撮影賞・視覚効果賞・音響編集賞・録音賞 = 計4部門受賞(技術部門独占)
  • ソーシャル・ネットワーク(デヴィッド・フィンチャー監督):脚色賞・作曲賞・編集賞 = 計3部門受賞
  • ザ・ファイター(デヴィッド・O・ラッセル監督):助演男優賞(クリスチャン・ベール)・助演女優賞(メリッサ・レオ)= 計2部門受賞
  • トイ・ストーリー3(リー・アンクリッチ監督):長編アニメ映画賞・歌曲賞 = 計2部門受賞
  • アリス・イン・ワンダーランド(ティム・バートン監督):美術賞・衣裳デザイン賞 = 計2部門受賞

演技部門の注目受賞者

演技4部門では、各受賞者が徹底した役作りと圧倒的なパフォーマンスを見せました。コリン・ファース(主演男優賞)は、吃音に苦しみながら国民の前で演説しなければならないジョージ6世の内的葛藤を静謐かつ力強く表現し、前年に続く2度目のノミネートで悲願の受賞を果たしました。ナタリー・ポートマン(主演女優賞)は1年間にわたるバレエ特訓の末、完璧主義が生み出す狂気を体現した主演で圧倒的な評価を得ました。クリスチャン・ベール(助演男優賞)は約9kgの減量を含む徹底した役作りでドラッグ依存の元ボクサーを生々しく演じ、メリッサ・レオ(助演女優賞)は息子への複雑な愛情と欲望を体現したベテランの演技が高く評価されました。

技術部門を席巻した「インセプション」の革新

技術系4部門(撮影・視覚効果・音響編集・録音)を独占した『インセプション』は、CGへの依存を最小化する方針のもと、実際に回転するセット、手作業によるミニチュア爆破、カメラワークの工夫によって現実では不可能な映像を撮影した革新的な作品です。デジタル技術が全盛の時代に「撮影で解決できることはカメラで撮る」という映画作りの原点への回帰が世界の映画人に強い影響を与えました。

第83回アカデミー賞が残した遺産

この年のノミネート・受賞作品群は、多様なジャンルと文化的背景を持つ作品が高水準で競い合った、映画の豊かさを象徴するラインナップでした。歴史ドラマ(英国王のスピーチ)、テクノロジー起業家の物語(ソーシャル・ネットワーク)、スポーツドラマ(ザ・ファイター)、SFアクション(インセプション)、ホラー(ブラック・スワン)、アニメーション(トイ・ストーリー3)、ドキュメンタリー(インサイド・ジョブ)と、あらゆるジャンルで秀作が揃いました。脚色賞でのアーロン・ソーキン受賞は現代の脚本スタイルに多大な影響を与え、ドキュメンタリー部門での社会派作品の台頭は映画が社会変革の道具にもなることを示しました。

第83回アカデミー賞にノミネート・受賞した作品は、いずれも2010年代の映画文化を語る上で欠かせない重要作品ばかりです。各賞の受賞理由や作品の背景を知った上で鑑賞すると、映画の新たな魅力が発見できるでしょう。まだ未見の作品がある方は、ぜひこの機会にご覧ください。