[2008年開催(2007年映画作品対象)]第80回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜

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アカデミー賞(Academy Awards)とは、映画芸術科学アカデミー(AMPAS: Academy of Motion Picture Arts and Sciences)が主催し、アメリカ合衆国における映画の健全な発展と芸術・科学の品質向上などを目的に、キャストやスタッフなどの関係者を毎年部門別に表彰し、その成果を讃える映画賞です。受賞作品・受賞者には賞金は出ませんが、金色のオスカー像(Oscar statuette)が授与されるため、オスカー賞(The Oscars)とも呼ばれています。

その歴史は世界三大映画祭(カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭)よりも古く、第1回のアカデミー賞は1929年に開催されました。以来、世界中が注目する映画界最大の祭典として毎年開催されています。アカデミー賞へのノミネート及び受賞結果は世界中に大きく報道されるため、各国における対象映画の興行成績に対する大きな影響力を持っています。

ノミネート作品および受賞作品は、映画界で著名なプロデューサー、監督、脚本家、俳優、批評家などにより構成される約6,000人以上のアカデミー会員による投票で選ばれ、その高い評価から世間でも話題の中心となるため、一度は見ておくべき映画と言えるでしょう。

第80回アカデミー賞(2008年開催)の概要と見どころ

第80回アカデミー賞授賞式は、2008年2月24日にロサンゼルスのコダック・シアター(現ドルビー・シアター)で開催されました。司会はコメディアンのジョン・スチュワート(Jon Stewart)が務め、2006年の第78回以来2度目の大役を果たしました。

この年のアカデミー賞は、コーエン兄弟(Joel Coen、Ethan Coen)監督の『ノーカントリー(No Country for Old Men)』が作品賞・監督賞・助演男優賞・脚色賞の主要4部門を制覇し、授賞式の主役となりました。コーマック・マッカーシーの同名小説を原作とするこのクライムスリラーは、テキサスの荒野を舞台に、人間の暴力性と運命を冷徹な視点で描き出し、批評家と観客の両方から高い評価を受けました。

また、ダニエル・デイ=ルイス(Daniel Day-Lewis)が『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(There Will Be Blood)』で主演男優賞を受賞し、20世紀初頭の石油王を圧倒的な演技力で体現しました。これはデイ=ルイスにとって2度目のオスカー受賞で、彼の卓越した演技力が改めて認められた瞬間でした。主演女優賞では、フランスの歌手エディット・ピアフの生涯を演じたマリオン・コティヤール(Marion Cotillard)が『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜(La Vie en Rose)』で受賞し、フランス人女優として初の主演女優賞獲得という歴史的快挙を成し遂げました。

さらに、この年は脚本賞でディアブロ・コーディ(Diablo Cody)が『JUNO/ジュノ(Juno)』で受賞し、元ブロガーからオスカー脚本家への異色のキャリアが大きな話題を呼びました。10代の妊娠という社会的テーマをユーモアと温かさで描いたこの作品は、インディペンデント映画の力を証明しました。

なお、第80回アカデミー賞は当初、全米脚本家組合(WGA)のストライキの影響で開催が危ぶまれましたが、2008年2月にストライキが終結し、予定通り授賞式が執り行われました。

以下に、歴史的にも一見の価値がある第80回アカデミー賞(オスカー賞)の全部門におけるノミネート映画作品・受賞映画作品の一覧を紹介します。

[2008年開催(2007年映画作品対象)]第80回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜

作品賞 / Sakuhin Shou[Best Picture]

第80回アカデミー賞の作品賞は、コーエン兄弟監督の『ノーカントリー』が受賞しました。コーマック・マッカーシーの2005年の小説を映画化した本作は、メキシコ国境付近で麻薬取引の大金を発見した男と、それを追う冷酷な殺し屋の追跡劇を描いています。暴力と運命をテーマにした緊迫感溢れるストーリーテリングが高く評価され、全米批評家協会賞や英国アカデミー賞(BAFTA)作品賞も同時受賞しました。ノミネート作品には、イアン・マキューアンの小説を映画化した『つぐない』、社会現象となったインディペンデント映画『JUNO/ジュノ』、ジョージ・クルーニー主演の法廷スリラー『フィクサー』、ポール・トーマス・アンダーソン監督の壮大な石油王の物語『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』が名を連ねています。

受賞
Winner
ノーカントリー[No Country for Old Men] ⇒ Scott Rudin、Ethan Coen、Joel Coen

ノミネート
Nominees

つぐない[Atonement] ⇒ Tim Bevan、Eric Fellner、Paul Webster
JUNO/ジュノ[Juno] ⇒ Lianne Halfon、Mason Novick、Russell Smith
フィクサー[Michael Clayton] ⇒ Jennifer Fox、Kerry Orent、Sydney Pollack
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド[There Will Be Blood] ⇒ Paul Thomas Anderson、Daniel Lupi、JoAnne Sellar

監督賞 / Kantoku Shou[Best Director]

監督賞は、『ノーカントリー』のジョエル・コーエンとイーサン・コーエンの兄弟が受賞しました。コーエン兄弟は1991年の『バートン・フィンク』でカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞して以来、ハリウッドを代表する映画作家として活躍しており、本作でついに念願のオスカー監督賞を手にしました。ノミネートには、『潜水服は蝶の夢を見る』のジュリアン・シュナーベル、『JUNO/ジュノ』のジェイソン・ライトマン、『フィクサー』のトニー・ギルロイ、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のポール・トーマス・アンダーソンが選ばれました。

受賞
Winner
ノーカントリー[No Country for Old Men] ⇒ ジョエル・コーエン[Joel Coen]、イーサン・コーエン[Ethan Coen]

ノミネート
Nominees

潜水服は蝶の夢を見る[The Diving Bell and the Butterfly] ⇒ ジュリアン・シュナーベル[Julian Schnabel]
JUNO/ジュノ[Juno] ⇒ ジェイソン・ライトマン[Jason Reitman]
フィクサー[Michael Clayton] ⇒ トニー・ギルロイ[Tony Gilroy]
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド[There Will Be Blood] ⇒ ポール・トーマス・アンダーソン[Paul Thomas Anderson]

主演男優賞 / Shuen Danyuh Shou[Best Actor]

主演男優賞は、ダニエル・デイ=ルイスが『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』での石油採掘者ダニエル・プレインビュー役で受賞しました。1989年の『マイ・レフトフット』に続く2度目のオスカー受賞となり、メソッド演技の最高峰として世界的な称賛を受けました。ポール・トーマス・アンダーソン監督による本作は、20世紀初頭のカリフォルニアを舞台に、石油採掘に取り憑かれた男の野望と孤独を壮大なスケールで描いた作品です。他のノミネートには、ジョージ・クルーニー、ジョニー・デップ、トミー・リー・ジョーンズ、ヴィゴ・モーテンセンが名を連ね、実力派俳優が揃う激戦の年でした。

受賞
Winner
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド[There Will Be Blood] ⇒ Daniel Day-Lewis

ノミネート
Nominees

フィクサー[Michael Clayton] ⇒ George Clooney
スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師[Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street] ⇒ Johnny Depp
告発のとき[In the Valley of Elah] ⇒ Tommy Lee Jones
イースタン・プロミス[Eastern Promises] ⇒ Viggo Mortensen

主演女優賞 / Shuen Joyuh Shou[Best Actress]

主演女優賞は、マリオン・コティヤールが『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜(La Vie en Rose)』で受賞しました。フランスの伝説的シャンソン歌手エディット・ピアフの波乱に満ちた生涯を演じたコティヤールは、特殊メイクと圧倒的な演技力でピアフの10代から晩年までを見事に体現しました。フランス語映画での演技によるオスカー主演女優賞受賞は、1960年の『鍵』でシモーヌ・シニョレが受賞して以来の快挙でした。ノミネートにはケイト・ブランシェット、ジュリー・クリスティ、ローラ・リニー、エレン・ペイジが選出されました。

受賞
Winner
エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜[La Vie en Rose] ⇒ Marion Cotillard

ノミネート
Nominees

エリザベス:ゴールデン・エイジ[Elizabeth: The Golden Age] ⇒ Cate Blanchett
アウェイ・フロム・ハー君を想う[Away from Her] ⇒ Julie Christie
マイ・ライフ、マイ・ファミリー[The Savages] ⇒ Laura Linney
JUNO/ジュノ[Juno] ⇒ Ellen Page

助演男優賞 / Joen Danyuh Shou[Best Supporting Actor]

助演男優賞は、ハビエル・バルデムが『ノーカントリー』でのアントン・シガー役で受賞しました。おかっぱ頭のヘアスタイルとボルトガン(家畜屠殺用の圧縮空気銃)を持つシガーは、映画史上最も恐ろしい悪役の一人として語り継がれています。バルデムはスペイン人男優として初のオスカー受賞者となり、この歴史的受賞は母国スペインでも大きく報じられました。ノミネートには、ケイシー・アフレック、フィリップ・シーモア・ホフマン、ハル・ホルブルック、トム・ウィルキンソンが選出されました。

受賞
Winner
ノーカントリー[No Country for Old Men] ⇒ ハビエル・バルデム[Javier Bardem]

ノミネート
Nominees

ジェシー・ジェームズの暗殺[The Assassination of Jesse James by the Coward Robert Ford] ⇒ ケイシー・アフレック[Casey Affleck]
チャーリー・ウィルソンズ・ウォー[Charlie Wilson’s War] ⇒ フィリップ・シーモア・ホフマン[Philip Seymour Hoffman]
イントゥ・ザ・ワイルド[Into the Wild] ⇒ ハル・ホルブルック[Hal Holbrook]
フィクサー[Michael Clayton] ⇒ トム・ウィルキンソン[Tom Wilkinson]

助演女優賞 / Joen Joyuh Shou[Best Supporting Actress]

助演女優賞は、ティルダ・スウィントンが『フィクサー』での企業弁護士カレン・クロウダー役で受賞しました。巨大化学メーカーの法務責任者として不正を隠蔽しようとする冷徹な女性を演じたスウィントンは、表面的な自信と内面の不安を繊細に表現し、キャリアを代表する演技を見せました。ノミネートには、『アイム・ノット・ゼア』でボブ・ディランを演じたケイト・ブランシェット(主演女優賞にもノミネート)、ルビー・ディー、シアーシャ・ローナン、エイミー・ライアンが選出されました。

受賞
Winner
フィクサー[Michael Clayton] ⇒ ティルダ・スウィントン[Tilda Swinton]

ノミネート
Nominees

アイム・ノット・ゼア[I’m Not There] ⇒ ケイト・ブランシェット[Cate Blanchett]
アメリカン・ギャングスター[American Gangster] ⇒ ルビー・ディー[Ruby Dee]
つぐない[Atonement] ⇒ シアーシャ・ローナン[Saoirse Ronan]
ゴーン・ベイビー・ゴーン[Gone Baby Gone] ⇒ エイミー・ライアン[Amy Ryan]

脚本賞 / Kyakuhon Shou[Best Original Screenplay]

脚本賞(オリジナル脚本賞)は、ディアブロ・コーディが『JUNO/ジュノ』で受賞しました。本名ブルック・ブッシーのコーディは、ブロガーからストリッパーを経て脚本家に転身した異色の経歴の持ち主で、そのシンデレラストーリーは大きな話題となりました。16歳の少女の予期せぬ妊娠を、ウィットに富んだ会話と温かみのある視点で描いた本作は、わずか650万ドルの制作費で全世界2億3,000万ドル以上の興行収入を記録し、インディペンデント映画の大ヒット作となりました。

受賞
Winner
JUNO/ジュノ[Juno] ⇒ ディアブロ・コーディ[Diablo Cody]

ノミネート
Nominees

ラースと、その彼女[Lars and the Real Girl] ⇒ ナンシー・オリバー[Nancy Oliver]
フィクサー[Michael Clayton] ⇒ トニー・ギルロイ[Tony Gilroy]
レミーのおいしいレストラン[Ratatouille] ⇒ ブラッド・バード[Brad Bird]、ヤン・ピンカヴァ[Jan Pinkava]、ジム・カポビアンコ[Jim Capobianco]
マイ・ライフ、マイ・ファミリー[The Savages] ⇒ タマラ・ジェンキンス[Tamara Jenkins]

脚色賞 / Kyakushoku Shou[Best Adapted Screenplay]

脚色賞は、コーエン兄弟が『ノーカントリー』で受賞しました。コーマック・マッカーシーの原作小説の緊迫感と暗い美学を忠実に映画に落とし込んだ脚色が評価されました。コーエン兄弟はこの脚色賞と監督賞を合わせ、1回の授賞式で監督賞・脚色賞の同時受賞という快挙を成し遂げました。

受賞
Winner
ノーカントリー[No Country for Old Men] ⇒ ジョエル・コーエン[Joel Coen]、イーサン・コーエン[Ethan Coen]

ノミネート
Nominees

つぐない[Atonement] ⇒ クリストファー・ハンプトン[Christopher Hampton]
アウェイ・フロム・ハー君を想う[Away from Her] ⇒ サラ・ポーリー[Sarah Polley]
潜水服は蝶の夢を見る[The Diving Bell and the Butterfly] ⇒ ロナルド・ハーウッド[Ronald Harwood]
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド[There Will Be Blood] ⇒ ポール・トーマス・アンダーソン[Paul Thomas Anderson]

長編アニメ映画賞 / Chouhen Anime Eiga Shou[Best Animated Feature Film]

長編アニメ映画賞は、ピクサー・アニメーション・スタジオ制作の『レミーのおいしいレストラン(Ratatouille)』が受賞しました。パリを舞台に、料理の才能を持つネズミのレミーが一流シェフを目指す物語で、ブラッド・バード監督の緻密なアニメーション演出とパリの美しい風景描写が高く評価されました。全世界で6億2,000万ドル以上の興行収入を記録し、「誰でも料理はできる(Anyone can cook)」というメッセージが幅広い観客の心を捉えました。

受賞
Winner
レミーのおいしいレストラン[Ratatouille] ⇒ ブラッド・バード[Brad Bird]

ノミネート
Nominees

ペルセポリス[Persepolis] ⇒ マルジャン・サトラピ[Marjane Satrapi]、ヴァンサン・パロノー[Vincent Paronnaud]
サーフズ・アップ[Surf’s Up] ⇒ アッシュ・ブラノン[Ash Brannon]、クリス・バック[Chris Buck]

外国語映画賞 / Gaikokugo Eiga Shou[Best Foreign Language Film]

外国語映画賞は、オーストリアのシュテファン・ルツォヴィツキー監督による『ヒトラーの贋札(The Counterfeiters)』が受賞しました。第二次世界大戦中、ナチス・ドイツが連合国経済を崩壊させるために行った紙幣偽造作戦「ベルンハルト作戦」を題材にした実話に基づく作品です。強制収容所で贋札作りを強いられたユダヤ人たちの葛藤を描き、戦争映画でありながら人間の道徳的ジレンマを深く掘り下げた点が高く評価されました。

受賞
Winner
ヒトラーの贋札[The Counterfeiters] (オーストリア[Austria]) – ドイツ語[German] ⇒ シュテファン・ルツォヴィツキー[Stefan Ruzowitzky]

ノミネート
Nominees

12人の怒れる男[12] (ロシア[Russia]) – ロシア語[Russian] ⇒ Nikita Mikhalkov
ボーフォート[Beaufort] (イスラエル[Israel]) – ヘブライ語[Hebrew] ⇒ Joseph Cedar
カティンの森 (ポーランド[Poland]) – ポーランド語[Polish] ⇒ Andrzej Wajda
モンゴル[Mongol] (カザフスタン[Kazakhstan]) – ロシア語[Russian] ⇒ Sergei Bodrov

長編ドキュメンタリー映画賞 / Chouhen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Feature]

長編ドキュメンタリー映画賞は、アレックス・ギブニー監督の『「闇」へ(Taxi to the Dark Side)』が受賞しました。本作は、2002年にアフガニスタンのバグラム空軍基地で拘束中に死亡したタクシー運転手ディラワールの事件を起点に、アメリカ軍によるテロ容疑者への拷問・尋問手法の実態を告発するドキュメンタリーです。イラク戦争やアブグレイブ刑務所事件とも関連づけながら、民主主義国家における人権侵害の問題を鋭く追及しました。ノミネートにはイラク戦争の意思決定過程を検証した『No End in Sight』、従軍経験者の手記を取り上げた『Operation Homecoming』、マイケル・ムーア監督がアメリカの医療制度を批判した『シッコ』、ウガンダ内戦下の子どもたちの音楽を描いた『ウォー・ダンス』が選ばれました。

受賞
Winner
「闇」へ[Taxi to the Dark Side] ⇒ アレックス・ギブニー[Alex Gibney]、Eva Orner

ノミネート
Nominees

No End in Sight ⇒ Charles H. Ferguson、Audrey Marrs
Operation Homecoming: Writing the Wartime Experience ⇒ Richard E. Robbins
シッコ[Sicko] ⇒ マイケル・ムーア[Michael Moore]、メガン・オハラ[Meghan O’Hara]
ウォー・ダンス[War/Dance] ⇒ アンドレア・ニックス・ファイン[Andrea Nix Fine]、ショーン・ファイン[Sean Fine]

短編ドキュメンタリー映画賞 / Tanpen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Short Subject]

短編ドキュメンタリー映画賞は、シンシア・ウェイド監督の『フリーヘルド(Freeheld)』が受賞しました。ニュージャージー州の警察副署長ローレル・ヘスターが末期がんと診断された後、同性パートナーのステイシー・アンドレーに年金受給権を移譲しようとする実話を描いた作品です。当時のLGBTQ+の権利をめぐる社会的議論に大きな影響を与え、後に2015年にジュリアン・ムーアとエレン・ペイジ主演で劇映画化されました。

受賞
Winner
フリーヘルド[Freeheld] ⇒ シンシア・ウェイド[Cynthia Wade]、ヴァネッサ・ロス[Vanessa Roth]

ノミネート
Nominees

La Corona ⇒ Amanda Micheli and Isabel Vega
Salim Baba ⇒ Tim Sternberg and Francisco Bello
Sari’s Mother ⇒ ジェームズ・ロングリー[James Longley]

短編映画賞 / Tanpen Eiga Shou[Best Live Action Short Film]

短編映画賞(実写)は、フランスのフィリップ・ポレ=ヴィラール監督の『ピックポケット(The Mozart of Pickpockets)』が受賞しました。パリを舞台に、スリの天才と呼ばれる少年と彼を取り巻く人々のユーモラスで温かい物語を描いた短編作品です。わずか30分弱の作品ながら、巧みなストーリーテリングと人間味あふれるキャラクター描写で審査員の心を掴みました。ノミネートにはデンマークの『At Night』、イタリアの『代理教師』、ベルギーの『タンゴ・アルゼンチン』、イギリスの『The Tonto Woman』が選ばれ、ヨーロッパ各国の短編映画の質の高さが際立った年でした。

受賞
Winner
ピックポケット[The Mozart of Pickpockets] ⇒ フィリップ・ポレ=ヴィラール[Philippe Pollet-Villard]

ノミネート
Nominees

At Night ⇒ Christian E. Christiansen and Louise Vesth
代理教師[The Substitute] ⇒ アンドレア・ユブリン[Andrea Jublin]
タンゴ・アルゼンチン[Tanghi Argentini] ⇒ Guido Thys and Anja Daelemans
The Tonto Woman ⇒ Daniel Barber and Matthew Brown

短編アニメ賞 / Tanpen Anime Shou[Best Animated Short Film]

短編アニメ賞は、スージー・テンプルトン監督の『ピーターと狼(Peter and the Wolf)』が受賞しました。セルゲイ・プロコフィエフの有名な交響的物語を、ストップモーション・アニメーションで映像化した作品です。台詞を一切使わず、プロコフィエフの音楽と精緻な人形アニメーションのみで物語を展開させる大胆な手法が高く評価されました。イギリスとポーランドの共同制作で、フィルハーモニア管弦楽団の演奏が作品に荘厳さを与えています。ノミネートにはフランスの3DCGアニメ『Even Pigeons Go to Heaven』、ジョン・レノンへの少年時代のインタビューを基にした『セイウチと出会う』、カナダ国立映画庁制作の実験的ストップモーション作品『マダム・トゥトリ・プトリ』、ロシアのアレクサンドル・ペトロフによる絵画的アニメーション『春のめざめ』が選ばれました。

受賞
Winner
ピーターと狼[Peter and the Wolf] ⇒ スージー・テンプルトン[Suzie Templeton]、ヒュー・ウェルクマン[Hugh Welchman]

ノミネート
Nominees

Even Pigeons Go to Heaven (Même les pigeons vont au paradis) ⇒ Samuel Tourneux and Simon Vanesse
セイウチと出会う[I Met the Walrus] ⇒ ジョシュ・ラスキン[Josh Raskin]
マダム・トゥトリ・プトリ[Madame Tutli-Putli] ⇒ Chris Lavis and Maciek Szczerbowski
春のめざめ(Moya Lyubov)[My Love] ⇒ アレクサンドル・ペトロフ[Alexander Petrov]

作曲賞 / Sakkyoku Shou[Best Original Score]

作曲賞(オリジナル音楽賞)は、ダリオ・マリアネッリが『つぐない(Atonement)』で受賞しました。マリアネッリのスコアの最大の特徴は、タイプライターの打鍵音をリズム楽器として楽曲に組み込んだ斬新なアプローチです。物語の中核にある「書く」という行為を音楽的に表現したこの手法は、映画音楽における画期的な試みとして高く評価されました。クラシック音楽の格調高さとモダンなリズム感を融合させたスコアは、第二次世界大戦期のイギリスを舞台にした本作の感情的な深みを一層引き立てています。

受賞
Winner
つぐない[Atonement] ⇒ ダリオ・マリアネッリ[Dario Marianelli]

ノミネート
Nominees

3時10分、決断のとき[3:10 to Yuma] ⇒ マルコ・ベルトラミ[Marco Beltrami]
The Kite Runner ⇒ アルベルト・イグレシアス[Alberto Iglesias]
フィクサー[Michael Clayton] ⇒ ジェームズ・ニュートン・ハワード[James Newton Howard]
レミーのおいしいレストラン[Ratatouille] ⇒ マイケル・ジアッチーノ[Michael Giacchino]

歌曲賞 / Kashou Shou[Best Original Song]

歌曲賞(オリジナル歌曲賞)は、「Falling Slowly」が受賞しました。アイルランド・ダブリンを舞台にした音楽映画『ダブリンの街角で(Once)』の挿入歌で、アイルランドのミュージシャンであるグレン・ハンサードとチェコ出身のマルケタ・イルグロヴァが作詞・作曲を手がけました。わずか15万ドルの超低予算で制作された本作は、ストリートミュージシャンと花売りの女性の儚い恋を実際の音楽パフォーマンスで紡ぎ出し、全世界で2,300万ドル以上の興行収入を記録する大ヒットとなりました。授賞式でのイルグロヴァのスピーチは感動的で、会場から大きな拍手を受けました。ノミネート5曲のうち3曲がディズニー映画『魔法にかけられて』からの楽曲で、アラン・メンケン作曲の楽曲群の質の高さが改めて証明されました。

受賞
Winner
“Falling Slowly" – ONCE ダブリンの街角で[Once] ⇒ 作詞・作曲:グレン・ハンサード[Glen Hansard]、マルケタ・イルグロヴァ[Markéta Irglová]

ノミネート
Nominees

“Happy Working Song" – 魔法にかけられて[Enchanted] ⇒ アラン・メンケン[Alan Menken]、スティーヴン・シュワルツ[Stephen Schwartz]
“Raise It Up" – 奇跡のシンフォニー[August Rush] ⇒ 作詞・作曲:Jamal Joseph、Charles Mack、Tevin Thomas
“So Close" – 魔法にかけられて[Enchanted] ⇒ 作曲:アラン・メンケン[Alan Menken]、作詞:Stephen Schwartz
“That’s How You Know" – 魔法にかけられて[Enchanted] ⇒ 作曲:アラン・メンケン[Alan Menken]、作詞:Stephen Schwartz

音響編集賞 / Onkyou Henshuh Shou[Best Sound Editing]

音響編集賞は、『ボーン・アルティメイタム(The Bourne Ultimatum)』が受賞しました。マット・デイモン主演のスパイアクション「ジェイソン・ボーン」シリーズ三部作の完結編で、ポール・グリーングラス監督の手持ちカメラによるリアルな映像表現を、カレン・ベイカー・ランダースとペール・ハルベリによる臨場感溢れる音響効果が見事に補完しています。モロッコのタンジェでの追跡シーンやニューヨークのカーチェイスなど、全編にわたる緊迫したアクションシーンの音響設計は、観客を物語の中に引き込む没入感を生み出しました。

受賞
Winner
ボーン・アルティメイタム[The Bourne Ultimatum] ⇒ Karen Baker Landers and Per Hallberg

ノミネート
Nominees

ノーカントリー[No Country For Old Men] ⇒ Skip Lievsay
レミーのおいしいレストラン[Ratatouille] ⇒ Randy Thom and Michael Silvers
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド[There Will Be Blood] ⇒ Christopher Scarabosio、マシュー・ウッド[Matthew Wood]
トランスフォーマー[Transformers] ⇒ Ethan Van der Ryn、マイク・ホプキンス[Mike Hopkins]

録音賞 / Rokuon Shou[Best Sound Mixing]

録音賞(サウンドミキシング賞)も、音響編集賞に続いて『ボーン・アルティメイタム』が受賞しました。スコット・ミラン、デヴィッド・パーカー、カーク・フランシスの3名のサウンドミキサーが担当し、ハンドヘルドカメラの映像に合わせた複雑な音響バランスの調整を見事に実現しました。セリフ、環境音、効果音、音楽を絶妙なバランスで融合させることで、ドキュメンタリー的なリアリズムとエンターテインメント性を両立させた点が評価されました。音響編集賞との同時受賞は、本作の音響面での総合的な卓越性を証明しています。

受賞
Winner
ボーン・アルティメイタム[The Bourne Ultimatum] ⇒ Scott Millan、David Parker and Kirk Francis

ノミネート
Nominees

ノーカントリー[No Country For Old Men] ⇒ Skip Lievsay、Craig Berkey、Greg Orloff、Peter Kurland
レミーのおいしいレストラン[Ratatouille] ⇒ Randy Thom、Michael Semanick、Doc Kane
3時10分、決断のとき[3:10 to Yuma] ⇒ Paul Massey、David Giammarco、Jim Stuebe
トランスフォーマー[Transformers] ⇒ ケヴィン・オコネル[Kevin O’Connell]、グレッグ・P・ラッセル[Greg P. Russell]、Peter J. Devlin

美術賞 / Bijutsu Shou[Best Production Design]

美術賞(プロダクションデザイン賞)は、ティム・バートン監督の『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師(Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street)』が受賞しました。美術監督のダンテ・フェレッティとセットデコレーターのフランシスカ・ロ・スキアボは、19世紀ロンドンの暗く退廃的な雰囲気を、ゴシック様式の建築や陰鬱な色調の街並みで見事に再現しました。スティーブン・ソンドハイムのミュージカルを映画化した本作は、バートン監督特有のダークファンタジーの世界観を最大限に活かした美術設計で、フェレッティにとって3度目のオスカー受賞となりました。

受賞
Winner
スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師[Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street] ⇒ ダンテ・フェレッティ[Dante Ferretti]、フランシスカ・ロ・スキアボ[Francesca Lo Schiavo]

ノミネート
Nominees

アメリカン・ギャングスター[American Gangster] ⇒ アーサー・マックス[Arthur Max]、ベス・A・ルビノ[Beth Rubino]
つぐない[Atonement] ⇒ サラ・グリーンウッド[Sarah Greenwood]、ケイティ・スペンサー[Katie Spencer]
ライラの冒険 黄金の羅針盤[The Golden Compass] ⇒ デニス・ガスナー[Dennis Gassner]、アナ・ピノック[Anna Pinnock]
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド[There Will Be Blood] ⇒ ジャック・フィスク[Jack Fisk]、ジム・エリクソン[Jim Erickson]

撮影賞 / Satsuei Shou[Best Cinematography]

撮影賞は、ロバート・エルスウィットが『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(There Will Be Blood)』で受賞しました。エルスウィットは、20世紀初頭のカリフォルニアの荒涼とした油田地帯を、自然光を巧みに活用した壮大なランドスケープ撮影で捉えました。広大な大地に点在する油井やぐらのシルエット、夜間の油田火災の炎が照らし出す人物の表情など、光と影の対比を駆使した映像美は、主人公ダニエル・プレインビューの内面の暗さと野心を視覚的に表現しています。エルスウィットはポール・トーマス・アンダーソン監督との長年のコラボレーションで知られ、本作で初のオスカー受賞を果たしました。

受賞
Winner
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド[There Will Be Blood] ⇒ ロバート・エルスウィット[Robert Elswit]

ノミネート
Nominees

ジェシー・ジェームズの暗殺[The Assassination of Jesse James by the Coward Robert Ford] ⇒ ロジャー・ディーキンス[Roger Deakins]
つぐない[Atonement] ⇒ シェイマス・マクガーヴェイ[Seamus McGarvey]
潜水服は蝶の夢を見る[The Diving Bell and the Butterfly] ⇒ ヤヌス・カミンスキー[Janusz Kamiński]
ノーカントリー[No Country for Old Men] ⇒ ロジャー・ディーキンス[Roger Deakins]

メイクアップ&ヘアスタイリング賞 / Makeup、Hairstyling Shou[Best Makeup and Hairstyling]

メイクアップ&ヘアスタイリング賞は、『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜(La Vie en Rose)』が受賞しました。メイクアップアーティストのディディエ・ラヴェルニュとジャン・アーチボルドは、主演のマリオン・コティヤールを10代の少女から47歳で亡くなるまでのピアフに変身させる驚異的なメイクアップを施しました。特に晩年のピアフの老いと病に蝕まれた姿は、特殊メイクの技術とコティヤールの演技が一体となった圧巻の仕上がりで、コティヤールの主演女優賞受賞にも大きく貢献した要素と言えるでしょう。ノミネートには日本人アーティスト辻一弘が携わった『マッド・ファット・ワイフ』も選ばれています。

受賞
Winner
エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜[La Vie en Rose] ⇒ Didier Lavergne and Jan Archibald

ノミネート
Nominees

マッド・ファット・ワイフ[Norbit] ⇒ リック・ベイカー[Rick Baker]、辻一弘[Kazuhiro Tsuji]
パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド[Pirates of the Caribbean: At World’s End] ⇒ Ve Neill、Martin Samuel

衣裳デザイン賞 / Ishou Design Shou[Best Costume Design]

衣裳デザイン賞は、アレクサンドラ・バーンが『エリザベス:ゴールデン・エイジ(Elizabeth: The Golden Age)』で受賞しました。ケイト・ブランシェット演じるエリザベス1世の豪華絢爛な衣裳は、16世紀テューダー朝の宮廷ファッションを緻密に再現しつつ、女王の権威と内面の葛藤を視覚的に表現しています。金糸の刺繍、精緻なレースワーク、宝石をちりばめた装飾など、一着一着が芸術作品と呼べる完成度で、バーンの卓越した歴史的衣裳デザインの技量が遺憾なく発揮されました。

受賞
Winner
エリザベス:ゴールデン・エイジ[Elizabeth: The Golden Age] ⇒ アレクサンドラ・バーン[Alexandra Byrne]

ノミネート
Nominees

アクロス・ザ・ユニバース[Across the Universe] ⇒ アレクサンドラ・バーン[Albert Wolsky]
つぐない[Atonement] ⇒ ジャクリーヌ・デュラン[Jacqueline Durran]
エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜[La Vie en Rose] ⇒ マリット・アレン[Marit Allen]
スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師[Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street] ⇒ コリーン・アトウッド[Colleen Atwood]

編集賞 / Henshuh Shou[Best Film Editing]

編集賞は、クリストファー・ラウズが『ボーン・アルティメイタム(The Bourne Ultimatum)』で受賞しました。本作の編集は、ポール・グリーングラス監督の手持ちカメラによるドキュメンタリースタイルの撮影素材を、スピード感と緊張感に満ちたアクション映画へと組み上げる高度な技術が求められました。ラウズは短いカットを素早く切り替える手法で、追跡シーンや格闘シーンにほとんど息つく暇のない臨場感を生み出しています。音響編集賞・録音賞と合わせて技術3部門を制覇した本作は、第80回アカデミー賞における技術面での最多受賞作品となりました。

受賞
Winner
ボーン・アルティメイタム[The Bourne Ultimatum] ⇒ クリストファー・ラウズ[Christopher Rouse]

ノミネート
Nominees

潜水服は蝶の夢を見る[The Diving Bell and the Butterfly] ⇒ ジュリエット・ウェルフリング[Juliette Welfling]
イントゥ・ザ・ワイルド[Into the Wild] ⇒ ジェイ・キャシディ[Jay Cassidy]
ノーカントリー[No Country for Old Men] ⇒ ロデリック・ジェインズ[Roderick Jaynes]
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド[There Will Be Blood] ⇒ ディラン・ティチェナー[Dylan Tichenor]

視覚効果賞 / Shikaku Kouka Shou[Best Visual Effects]

視覚効果賞は、『ライラの冒険 黄金の羅針盤(The Golden Compass)』が受賞しました。フィリップ・プルマンのファンタジー小説「ライラの冒険」シリーズ第1作を映画化した本作は、守護精霊(ダイモン)と呼ばれる動物たちのCGI表現が特に高く評価されました。北極熊の王イオレク・バーニソンの質感あるファー表現や、金属の鎧を纏った姿のリアリティは当時の最先端技術の結晶であり、ファンタジー映画におけるCGキャラクター表現の新たな基準を打ち立てました。リズム&ヒューズ・スタジオが手がけた本作のVFXは、1,000以上のエフェクトショットを含む大規模なものでした。

受賞
Winner
ライラの冒険 黄金の羅針盤[The Golden Compass] ⇒ Michael Fink、ビル・ウェステンホファー[Bill Westenhofer]、Ben Morris and Trevor Wood

ノミネート
Nominees

パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド[Pirates of the Caribbean: At World’s End] ⇒ ジョン・ノール[John Knoll]、ハル・ヒッケル[Hal Hickel]、チャールズ・ギブソン[Charles Gibson]、John Frazier
トランスフォーマー[Transformers] ⇒ Scott Farrar、Scott Benza、Russell Earl and John Frazier

第80回アカデミー賞(2008年開催)まとめ

第80回アカデミー賞は、コーエン兄弟の『ノーカントリー』が作品賞・監督賞・助演男優賞・脚色賞の4冠を達成し、最多受賞作品となりました。全体では、『ノーカントリー』と『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』がそれぞれ4部門と2部門を受賞し、この年のアカデミー賞を象徴する2作品となりました。

特筆すべき点として、主演男優賞のダニエル・デイ=ルイス、主演女優賞のマリオン・コティヤール、助演男優賞のハビエル・バルデムと、演技部門で国際色豊かな受賞者が揃ったことが挙げられます。アイルランド系イギリス人のデイ=ルイス、フランス人のコティヤール、スペイン人のバルデムという顔ぶれは、ハリウッド映画界の国際化を象徴するものでした。

また、脚本賞を受賞したディアブロ・コーディの『JUNO/ジュノ』は、低予算のインディペンデント映画がメジャースタジオの大作と肩を並べてオスカーを競い合えることを証明し、その後のインディペンデント映画界に大きな影響を与えました。技術部門では、『ボーン・アルティメイタム』が音響編集賞・録音賞・編集賞の3部門を受賞し、アクション映画における卓越した技術力が認められました。

第80回アカデミー賞は、WGA(全米脚本家組合)ストライキという困難を乗り越えて開催され、質の高い作品群と多様な受賞者によって映画史に残る授賞式となりました。

第80回アカデミー賞 作品別受賞数一覧

以下は、第80回アカデミー賞における作品別の受賞数とノミネート数をまとめた一覧です。『ノーカントリー』が最多4部門を受賞し、『ボーン・アルティメイタム』が技術3部門で続きました。

作品名受賞数ノミネート数
ノーカントリー[No Country for Old Men]48
ボーン・アルティメイタム[The Bourne Ultimatum]33
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド[There Will Be Blood]28
エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜[La Vie en Rose]22
JUNO/ジュノ[Juno]14
つぐない[Atonement]17
フィクサー[Michael Clayton]17
レミーのおいしいレストラン[Ratatouille]15
ダブリンの街角で[Once]11
スウィーニー・トッド[Sweeney Todd]13
エリザベス:ゴールデン・エイジ[Elizabeth: The Golden Age]12
ライラの冒険 黄金の羅針盤[The Golden Compass]12
ヒトラーの贋札[The Counterfeiters]11
「闇」へ[Taxi to the Dark Side]11
フリーヘルド[Freeheld]11
ピックポケット[The Mozart of Pickpockets]11
ピーターと狼[Peter and the Wolf]11

第80回アカデミー賞の歴史的意義

第80回アカデミー賞は、映画史において複数の重要な記録と意義を残しました。コーエン兄弟は史上初めて兄弟で監督賞を共同受賞した映画監督となり、同時に作品賞・脚色賞も獲得するという偉業を達成しました。ダニエル・デイ=ルイスは、1989年の『マイ・レフトフット』に続く2度目の主演男優賞受賞で、後に2012年の『リンカーン』で史上初の同部門3度受賞という前人未到の記録を樹立する道筋を作りました。

マリオン・コティヤールはフランス語映画での演技で主演女優賞を受賞した初のフランス人女優となり、ハビエル・バルデムはスペイン人男優として初のオスカー受賞者となりました。この国際的な受賞者の多様性は、21世紀のアカデミー賞がよりグローバルな視点を持つようになった転換点として位置づけられています。

また、全米脚本家組合(WGA)のストライキにより授賞式の開催が危ぶまれたことも、第80回アカデミー賞の歴史的な出来事として記憶されています。2007年11月に始まったストライキは2008年2月に終結し、授賞式は予定通り開催されましたが、この出来事はハリウッドの労働環境問題を世界に知らしめるきっかけとなりました。