[2000年開催(1999年映画作品対象)]第72回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜
アカデミー賞(Academy Awards)とは、映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences、略称AMPAS)が主催する、アメリカ合衆国における映画の健全な発展と芸術・科学の品質向上を目的とした世界的に権威ある映画賞です。キャスト・スタッフなどの映画関係者が毎年部門別に表彰され、その功績と成果が讃えられます。
受賞作品・受賞者には賞金は出ませんが、金色のオスカー像(正式名称:Academy Award of Merit)が授与されるため、「オスカー賞(The Oscars)」とも広く呼ばれています。
アカデミー賞の歴史は、世界三大映画祭(カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭)よりも古く、第1回の授賞式は1929年5月16日にハリウッドのルーズヴェルト・ホテルで開催されました。以来、アカデミー賞は世界中が注目する映画界最大のイベントとして成長を続けています。
アカデミー賞へのノミネート及び受賞結果は世界中で大きく報道され、各国における対象映画の興行成績や配信ランキングに多大な影響力を持っています。受賞後に劇場の再上映やストリーミング配信数が急増するケースも珍しくありません。
アカデミー賞のノミネート作品・受賞作品は、映画界で著名なプロデューサー、監督、脚本家、俳優、技術者、批評家など約10,000人以上の投票権を持つアカデミー会員によって選出されます。その高い評価基準から世間でも大きな話題を呼び、映画ファンなら一度は見ておくべき作品として語り継がれています。
本記事では、2000年3月26日にロサンゼルスのシュライン・オーディトリアムで開催された第72回アカデミー賞(オスカー賞)のノミネート映画作品・受賞映画作品を部門別に一覧で紹介します。対象作品は1999年にアメリカで公開された映画です。第72回の授賞式は、コメディアン・俳優のビリー・クリスタルが司会を務めました。
この年のアカデミー賞は、サム・メンデス監督の長編映画デビュー作『アメリカン・ビューティー』が作品賞・監督賞・主演男優賞・脚本賞・撮影賞の最多5部門を受賞し、授賞式の主役となりました。また、ウォシャウスキー姉妹(当時は兄弟)による革新的SF映画『マトリックス』が視覚効果賞・編集賞・音響編集賞・録音賞の技術系4部門を独占。映画表現の新時代を切り開いた作品として映画史に残る受賞となりました。
[2000年開催(1999年映画作品対象)]第72回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜
以下、第72回アカデミー賞の各部門の受賞作品とノミネート作品を紹介します。各作品名のリンクから動画配信サービスで視聴可能かどうかを確認できます。
作品賞 / Sakuhin Shou[Best Picture]
作品賞(Best Picture)は、アカデミー賞の中で最も注目される部門です。その年に公開された映画作品の中から最も優れた作品に贈られます。第72回では、郊外に暮らすアメリカの中流家庭の崩壊をブラックユーモアで描いた『アメリカン・ビューティー』が受賞しました。
| 受賞 Winner |
アメリカン・ビューティー[American Beauty] |
| ノミネート Nominees |
サイダーハウス・ルール[The Cider House Rules] |
監督賞 / Kantoku Shou[Best Director]
監督賞(Best Director)は、最も優れた映画演出を行った監督に贈られる部門です。サム・メンデスはイギリス出身の舞台演出家で、長編映画デビュー作である『アメリカン・ビューティー』でいきなりオスカーを獲得する快挙を成し遂げました。
| 受賞 Winner |
アメリカン・ビューティー[American Beauty] |
| ノミネート Nominees |
マルコヴィッチの穴[Being John Malkovich] |
主演男優賞 / Shuen Danyuh Shou[Best Actor]
主演男優賞(Best Actor)は、映画作品で最も優れた演技を見せた主演男優に贈られます。ケヴィン・スペイシーは『アメリカン・ビューティー』で中年の危機に直面する男性を見事に演じ、1996年の『ユージュアル・サスペクツ』助演男優賞に続く2度目のオスカーを手にしました。
| 受賞 Winner |
アメリカン・ビューティー[American Beauty] |
| ノミネート Nominees |
インサイダー[The Insider] |
主演女優賞 / Shuen Joyuh Shou[Best Actress]
主演女優賞(Best Actress)は、映画作品で最も優れた演技を見せた主演女優に贈られます。ヒラリー・スワンクは実在の事件を基にした『ボーイズ・ドント・クライ』で性自認に悩む主人公ブランドン・ティーナを圧倒的なリアリティで演じ、初のオスカーを受賞しました。
| 受賞 Winner |
ボーイズ・ドント・クライ[Boys Don’t Cry] |
| ノミネート Nominees |
アメリカン・ビューティー[American Beauty] |
助演男優賞 / Joen Danyuh Shou[Best Supporting Actor]
助演男優賞(Best Supporting Actor)は、脇役として最も優れた演技を見せた男優に贈られます。マイケル・ケインは『サイダーハウス・ルール』で孤児院の院長ウィルバー・ラーチ医師を温かく演じ、1987年の『ハンナとその姉妹』以来13年ぶり2度目のオスカーを受賞しました。
| 受賞 Winner |
サイダーハウス・ルール[The Cider House Rules] |
| ノミネート Nominees |
マグノリア[Magnolia] |
助演女優賞 / Joen Joyuh Shou[Best Supporting Actress]
助演女優賞(Best Supporting Actress)は、脇役として最も優れた演技を見せた女優に贈られます。アンジェリーナ・ジョリーは『17歳のカルテ』で精神科病棟に入院する反社会性パーソナリティ障害の患者リサ・ロウを強烈な存在感で演じ、初のオスカーを獲得しました。
| 受賞 Winner |
17歳のカルテ[Girl, Interrupted] |
| ノミネート Nominees |
シックス・センス[The Sixth Sense] |
脚本賞 / Kyakuhon Shou[Best Original Screenplay]
脚本賞(Best Original Screenplay)は、原作に依らないオリジナル脚本の中で最も優れた作品に贈られます。アラン・ボールは『アメリカン・ビューティー』でテレビ脚本家から映画脚本家へ転身し、初の映画脚本でオスカーを受賞しました。
| 受賞 Winner |
アメリカン・ビューティー[American Beauty] |
| ノミネート Nominees |
マルコヴィッチの穴[Being John Malkovich] |
脚色賞 / Kyakushoku Shou[Best Adapted Screenplay]
脚色賞(Best Adapted Screenplay)は、小説・戯曲・実話などの原作を基にした脚本で最も優れた作品に贈られます。『サイダーハウス・ルール』では、原作者ジョン・アーヴィング自身が脚色を手がけ、自作の長編小説を見事に映画脚本へ昇華させました。
| 受賞 Winner |
サイダーハウス・ルール[The Cider House Rules] |
| ノミネート Nominees |
ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ![Election] |
長編アニメ映画賞 / Chouhen Anime Eiga Shou[Best Animated Feature Film]
長編アニメ映画賞(Best Animated Feature Film)は、その年に公開された長編アニメーション映画の中から最も優れた作品に贈られる部門です。ただし、この部門は第74回(2002年開催)から新設されたため、第72回(2000年開催)の時点ではまだ存在していませんでした。
| 受賞 Winner |
該当なし(この部門は第74回アカデミー賞より新設) |
| ノミネート Nominees |
該当なし(この部門は第74回アカデミー賞より新設) |
外国語映画賞 / Gaikokugo Eiga Shou[Best Foreign Language Film]
外国語映画賞(Best Foreign Language Film、現在は国際長編映画賞に改称)は、英語以外の言語で制作された映画の中で最も優れた作品に贈られます。スペインのペドロ・アルモドヴァル監督による『オール・アバウト・マイ・マザー』が受賞し、母と息子の絆を描いた感動作が世界的に高く評価されました。
| 受賞 Winner |
オール・アバウト・マイ・マザー[All About My Mother] |
| ノミネート Nominees |
イースト/ウェスト 遥かなる祖国[East/West] |
長編ドキュメンタリー映画賞 / Chouhen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Feature]
長編ドキュメンタリー映画賞(Best Documentary Feature)は、最も優れた長編ドキュメンタリー映画に贈られます。1972年ミュンヘンオリンピック事件を題材にした『ブラック・セプテンバー』が受賞しました。
| 受賞 Winner |
[ブラック・セプテンバー]ミュンヘン・テロ事件の真実[One Day in September] |
| ノミネート Nominees |
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ[Buena Vista Social Club] |
短編ドキュメンタリー映画賞 / Tanpen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Short Subject]
短編ドキュメンタリー映画賞(Best Documentary Short Subject)は、最も優れた短編ドキュメンタリー映画に贈られる部門です。受賞作「King Gimp」は、脳性麻痺を抱えながらも、頭部に取り付けた特殊なスティックを使いキャンバスに絵を描き、芸術の世界へと歩み続けたアーティスト、ダン・ケプリンガーの生涯を追った感動的な作品です。障がいを乗り越えた人間の強い意志と芸術への情熱が、わずかな尺の中で圧倒的なリアリティをもって描かれています。
| 受賞 Winner |
King Gimp |
| ノミネート Nominees |
Eyewitness |
短編映画賞 / Tanpen Eiga Shou[Best Live Action Short Film]
短編映画賞(Best Live Action Short Film)は、実写で制作された短編映画の中で最も優れた作品に贈られる部門です。受賞作「My Mother Dreams the Satan's Disciples in New York」は、ニューヨークを舞台に、信仰心の篤い母と、彼女の価値観とはかけ離れたバンドで演奏する息子との関係を独特のユーモアと温かいヒューマニズムで描いた作品です。短い尺の中に家族の絆と世代間ギャップが凝縮されており、普遍的なテーマが観客の共感を呼びました。
| 受賞 Winner |
My Mother Dreams the Satan’s Disciples in New York |
| ノミネート Nominees |
Bror, Min Bror |
短編アニメ賞 / Tanpen Anime Shou[Best Animated Short Film]
短編アニメ映画賞(Best Animated Short Film)は、最も優れた短編アニメーション映画に贈られる部門です。受賞作「老人と海[The Old Man and the Sea]」は、ロシアのアニメーター、アレクサンダー・ペトロフがアーネスト・ヘミングウェイの名作小説を原作として制作した20分間の傑作です。ガラス板の上に指で直接油絵を描き、コマ撮りで撮影するという独自の「ガラス絵アニメーション技法」を用いて、約2年半をかけて制作されました。絵画が生きているかのような幻想的で力強い映像表現は、世界のアニメーション界に強烈な印象を残しました。
| 受賞 Winner |
老人と海[The Old Man and the Sea] |
| ノミネート Nominees |
3 Misses |
作曲賞 / Sakkyoku Shou[Best Original Score]
作曲賞(Best Original Score)は、映画のために書き下ろされたオリジナル楽曲の中で最も優れた作品に贈られます。ジョン・コリリアーノは『レッド・バイオリン』で、数世紀にわたるバイオリンの運命を壮大な音楽で表現しました。
| 受賞 Winner |
レッド・バイオリン[The Red Violin] |
| ノミネート Nominees |
アメリカン・ビューティー[American Beauty] |
歌曲賞 / Kashou Shou[Best Original Song]
歌曲賞(Best Original Song)は、映画のために制作されたオリジナル楽曲の中で最も優れた歌曲に贈られます。フィル・コリンズがディズニー映画『ターザン』のために書き下ろした「You'll Be in My Heart」が受賞し、世界的なヒット曲となりました。
| 受賞 Winner |
“You’ll Be in My Heart" from ターザン[Tarzan] |
| ノミネート Nominees |
“Blame Canada" – サウスパーク/無修正映画版[South Park: Bigger, Longer & Uncut] |
音響編集賞 / Onkyou Henshuh Shou[Best Sound Editing]
音響編集賞(Best Sound Editing)は、効果音の制作・編集において最も優れた技術を発揮した作品に贈られます。『マトリックス』は、銃撃音やスローモーション効果音など、革新的な音響デザインが高く評価されました。
| 受賞 Winner |
マトリックス[The Matrix] |
| ノミネート Nominees |
ファイト・クラブ[Fight Club] |
録音賞 / Rokuon Shou[Best Sound Mixing]
録音賞(Best Sound Mixing)は、映画における音声の録音・ミキシング技術で最も優れた成果を上げた作品に贈られる部門です。『マトリックス』は、現実世界と仮想空間(マトリックス)を行き来するという独特の世界観を音響的に表現するため、環境音・銃撃音・格闘音・電子音を緻密に組み合わせた革新的なサウンドデザインを採用しました。劇場の大音響システムをフル活用した没入感あふれる音響体験が、観客に強烈なインパクトを与えました。
| 受賞 Winner |
マトリックス[The Matrix] |
| ノミネート Nominees |
グリーンマイル[The Green Mile] |
美術賞 / Bijutsu Shou[Best Production Design]
美術賞(Best Production Design)は、映画のセットデザイン・美術装飾において最も優れた成果を上げた作品に贈られる部門です。ティム・バートン監督の『スリーピー・ホロウ』は、ワシントン・アーヴィングの古典短編小説を原作とし、18世紀末のアメリカ東部の小村を再現するにあたって徹底したゴシックホラーの世界観が貫かれました。深い霧に包まれた森、古い石造りの建物、不気味な橋など、暗くも耽美な映像空間を作り上げたリック・ハインリクスとピーター・ヤングの芸術的なセットデザインが高く評価されました。
| 受賞 Winner |
スリーピー・ホロウ[Sleepy Hollow] |
| ノミネート Nominees |
アンナと王様[Anna and the King] |
撮影賞 / Satsuei Shou[Best Cinematography]
撮影賞(Best Cinematography)は、映画の映像美・撮影技術において最も優れた成果を上げた作品に贈られる部門です。『アメリカン・ビューティー』でオスカーを受賞したコンラッド・L・ホールは、真っ赤なバラの花びら、透明な袋が風に舞う場面、郊外の平凡な家庭に潜む鮮烈な色彩対比など、日常の中に宿る美しさと歪みを詩的な映像で切り取りました。サム・メンデスの演出意図と完全に同期した映像設計は、物語のテーマをビジュアルで語り尽くす傑出した撮影術として高く評価されました。
| 受賞 Winner |
アメリカン・ビューティー[American Beauty] |
| ノミネート Nominees |
ことの終わり[The End of the Affair] |
メイクアップ&ヘアスタイリング賞 / Makeup、Hairstyling Shou[Best Makeup and Hairstyling]
メイクアップ&ヘアスタイリング賞(Best Makeup and Hairstyling)は、映画における化粧・ヘアスタイルの技術で最も優れた成果を上げた作品に贈られる部門です。マイク・リー監督の『トプシー・ターヴィー』は、19世紀ヴィクトリア朝時代のロンドン演劇界を舞台に、W・S・ギルバートとアーサー・サリヴァンの創作活動を描いた作品です。時代考証に基づく精緻なひげ・鬘(かつら)・舞台用の誇張されたメイクアップが施されており、俳優たちをヴィクトリア朝の人物として完璧に変身させたクリスティン・ブランデルらの技術が高く評価されました。
| 受賞 Winner |
トプシー・ターヴィー[Topsy-Turvy] |
| ノミネート Nominees |
オースティン・パワーズ:デラックス[Austin Powers: The Spy Who Shagged Me] |
衣裳デザイン賞 / Ishou Design Shou[Best Costume Design]
衣裳デザイン賞(Best Costume Design)は、映画の衣裳デザインで最も優れた成果を上げた作品に贈られる部門です。『トプシー・ターヴィー』では、19世紀後半のロンドン演劇界を舞台に、劇場関係者の日常着から舞台上の華やかな演劇衣裳まで、あらゆる衣装が精密な時代考証のもとデザインされました。衣裳担当のリンディ・ヘミングスは膨大な資料と絵画・写真を参照し、ヴィクトリア朝の衣装文化を映像に蘇らせた功績が高く評価されました。
| 受賞 Winner |
トプシー・ターヴィー[Topsy-Turvy] |
| ノミネート Nominees |
アンナと王様[Anna and the King] |
編集賞 / Henshuh Shou[Best Film Editing]
編集賞(Best Film Editing)は、映画の映像編集において最も優れた技術を発揮した作品に贈られる部門です。『マトリックス』の編集を担当したザック・スタンバーグは、「バレットタイム」をはじめとする前例のない視覚効果と、息をもつかせぬアクションシーンの数々を絶妙なテンポでつなぎ合わせ、観客が没頭せずにはいられない緊張感と興奮をスクリーン全体で生み出しました。コンマ単位の精緻な編集判断が映画全体のリズムを支えており、そのカット技術は以後のアクション映画・SF映画の編集スタイルに多大な影響を与え続けています。
| 受賞 Winner |
マトリックス[The Matrix] |
| ノミネート Nominees |
アメリカン・ビューティー[American Beauty] |
視覚効果賞 / Shikaku Kouka Shou[Best Visual Effects]
視覚効果賞(Best Visual Effects)は、映画における視覚効果(VFX)技術で最も革新的かつ優れた成果を上げた作品に贈られます。『マトリックス』は「バレットタイム」と呼ばれる、被写体の周囲を超スローモーションで回転するような革命的な撮影技法を開発し、映画のVFX表現に新たな時代を切り開きました。
| 受賞 Winner |
マトリックス[The Matrix] |
| ノミネート Nominees |
スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス[Star Wars: Episode I – The Phantom Menace] |
第72回アカデミー賞(2000年開催)の総括・まとめ
2000年3月26日、ロサンゼルスのシュライン・オーディトリアムで開催された第72回アカデミー賞は、映画史に残る名作が競い合った1999年のアメリカ映画界を総括する晴れの舞台となりました。コメディアン・俳優のビリー・クリスタルが軽妙な司会進行を務め、世界中に生中継された授賞式は大きな注目を集めました。以下に全部門の主要な受賞結果をまとめます。
| 部門 | 受賞作品 | 受賞者・受賞者 |
| 作品賞 | アメリカン・ビューティー | Bruce Cohen、Dan Jinks(プロデューサー) |
| 監督賞 | アメリカン・ビューティー | サム・メンデス[Sam Mendes] |
| 主演男優賞 | アメリカン・ビューティー | ケヴィン・スペイシー[Kevin Spacey] |
| 主演女優賞 | ボーイズ・ドント・クライ | ヒラリー・スワンク[Hilary Swank] |
| 助演男優賞 | サイダーハウス・ルール | マイケル・ケイン[Michael Caine] |
| 助演女優賞 | 17歳のカルテ | アンジェリーナ・ジョリー[Angelina Jolie] |
| 脚本賞 | アメリカン・ビューティー | アラン・ボール[Alan Ball] |
| 脚色賞 | サイダーハウス・ルール | ジョン・アーヴィング[John Irving] |
| 外国語映画賞 | オール・アバウト・マイ・マザー(スペイン) | ペドロ・アルモドヴァル[Pedro Almodóvar] |
| 長編ドキュメンタリー映画賞 | ブラック・セプテンバー ミュンヘン・テロ事件の真実 | アーサー・コーン、ケヴィン・マクドナルド |
| 作曲賞 | レッド・バイオリン | ジョン・コリリアーノ[John Corigliano] |
| 歌曲賞 | ターザン("You'll Be in My Heart") | フィル・コリンズ[Phil Collins] |
| 撮影賞 | アメリカン・ビューティー | コンラッド・L・ホール[Conrad Hall] |
| 美術賞 | スリーピー・ホロウ | リック・ハインリクス、ピーター・ヤング |
| 衣裳デザイン賞 | トプシー・ターヴィー | リンディ・ヘミングス[Lindy Hemming] |
| メイクアップ&ヘアスタイリング賞 | トプシー・ターヴィー | クリスティン・ブランデル、Trefor Proud |
| 編集賞 | マトリックス | ザック・スタンバーグ[Zach Staenberg] |
| 視覚効果賞 | マトリックス | ジョン・ガータ 他 |
| 音響編集賞 | マトリックス | デーン・A・デイヴィス[Dane Davis] |
| 録音賞 | マトリックス | ジョン・T・リッツ 他 |
| 短編アニメ賞 | 老人と海 | Alexander Petrov |
| 短編映画賞 | My Mother Dreams the Satan's Disciples in New York | Barbara Schock、Tammy Tiehel |
| 短編ドキュメンタリー映画賞 | King Gimp | Susan Hannah Hadary、William A. Whiteford |
第72回アカデミー賞を振り返って〜1999年映画界の傑作たち〜
【アメリカン・ビューティーの圧倒的な強さ】
『アメリカン・ビューティー』は作品賞を含む最多5部門(作品賞・監督賞・主演男優賞・脚本賞・撮影賞)を受賞し、第72回アカデミー賞の主役となりました。イギリスの演劇界で活躍したサム・メンデス監督は、自身初の長編映画でいきなりオスカーの監督賞を手にするという前代未聞の快挙を達成。郊外の中流家庭に潜む欲望・幻想・閉塞感をブラックユーモアで描いたこの作品は、アメリカ社会への鋭い問いかけとして批評家・一般観客の双方から圧倒的な支持を得ました。
【マトリックスが切り開いた映像技術の新時代】
技術部門ではウォシャウスキー姉妹(当時は兄弟)による『マトリックス』が4部門(視覚効果賞・編集賞・音響編集賞・録音賞)を制覇しました。とりわけ「バレットタイム(Bullet Time)」と呼ばれる超スローモーション撮影技法は映画表現の常識を覆し、1999年を映画史における視覚革命の分水嶺と位置づける決定的な要因となりました。この技術革新はその後のハリウッド映画・ゲーム・広告など幅広い分野に波及し、現代のVFX表現の礎を築きました。
【女優たちの輝き〜インディペンデント映画の底力〜】
演技部門では若い女優たちの活躍が際立ちました。ヒラリー・スワンクは低予算のインディペンデント映画『ボーイズ・ドント・クライ』で実在のトランスジェンダー男性の悲劇を演じ、主演女優賞を獲得。アンジェリーナ・ジョリーも『17歳のカルテ』での強烈な演技で助演女優賞に輝きました。大作に頼らず実力で栄冠をつかんだ両者の受賞は、アカデミー賞が映画の規模よりも演技の真実性を重んじる賞であることを改めて示しました。
【ヴェテランたちの充実〜マイケル・ケイン・ペドロ・アルモドヴァル〜】
助演男優賞のマイケル・ケインは『サイダーハウス・ルール』での温かみある演技で、1987年以来13年ぶり2度目のオスカーを受賞。長いキャリアを通じて磨かれた演技の奥深さを示しました。外国語映画賞を受賞したペドロ・アルモドヴァル監督の『オール・アバウト・マイ・マザー』は、母と息子の絆・女性の連帯・喪失と再生をテーマに、スペイン映画の国際的評価を大きく高めた作品です。
【1999年の映画界を彩った名作ノミネート作品たち】
第72回では受賞こそ逃したものの、後世に語り継がれる傑作がノミネートされました。M・ナイト・シャマラン監督の『シックス・センス』は作品賞・監督賞・脚本賞・助演男優賞(ハーレイ・ジョエル・オスメント)・助演女優賞・編集賞の6部門でノミネートされながらも無冠に終わりましたが、巧みなサスペンス演出と衝撃の結末で社会現象を巻き起こしたことは映画史の事実として刻まれています。また、スパイク・ジョーンズ監督の奇想天外なコメディ『マルコヴィッチの穴』やポール・トーマス・アンダーソン監督の群像劇『マグノリア』、マイケル・マン監督の骨太な社会派作品『インサイダー』なども高い評価を受け、1999年のアメリカ映画の多様性と質の高さを象徴するノミネート群となりました。
【第72回アカデミー賞の歴史的意義】
第72回アカデミー賞は、エンターテインメントとしての娯楽性(マトリックス)、文学的・哲学的な深みを持つドラマ(アメリカン・ビューティー)、社会問題に正面から向き合う作品(ボーイズ・ドント・クライ)、国際映画(オール・アバウト・マイ・マザー)と、幅広いジャンルの作品が受賞・ノミネートされた豊かな回として映画史に刻まれています。2000年代という新たな時代の幕開けと同時に開催されたこの授賞式は、映画というメディアが持つ表現の可能性と社会的影響力の大きさを世界に示した、記念碑的なセレモニーとなりました。

