[1974年開催(1973年映画作品対象)]第46回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜

3月 10, 2026Academy Awards,Movie,Products

アカデミー賞(Academy Awards)とは、映画芸術科学アカデミー(AMPAS: Academy of Motion Picture Arts and Sciences)が主催し、アメリカ合衆国における映画の健全な発展と芸術・科学の品質向上などを目的に、キャストやスタッフなどの関係者を毎年部門別に表彰し、その成果を讃える映画賞です。受賞作品・受賞者には賞金は出ませんが、金色のオスカー像(Oscar statuette)が授与されるため、オスカー賞(The Oscars)とも呼ばれます。

アカデミー賞の歴史は世界三大映画祭(カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭)よりも古く、第1回の授賞式は1929年5月16日にハリウッドのルーズベルト・ホテルで開催されました。以来、毎年アメリカ映画界最大の祭典として世界中の注目を集めています。

特にアカデミー賞へのノミネート及び受賞結果は世界中に大きく報道されるため、各国における対象映画の興行成績に対する大きな影響力を持っています。アカデミー賞ノミネート作品および受賞作品は、映画界で著名なプロデューサー、監督、脚本家、俳優、批評家などにより構成されるAMPAS会員の投票によって選ばれ、その高い評価から世間でも話題の中心となるため、一度は見ておくべき映画と言えるでしょう。

第46回アカデミー賞授賞式(1974年)の概要と見どころ

第46回アカデミー賞授賞式は1974年4月2日、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスのドロシー・チャンドラー・パビリオン(Dorothy Chandler Pavilion)で開催されました。司会はジョン・ヒューストン(John Huston)、ダイアナ・ロス(Diana Ross)、バート・レイノルズ(Burt Reynolds)、デヴィッド・ニーヴン(David Niven)の4名が務め、NBCによってテレビ中継されました。

この年の最大の話題は、ジョージ・ロイ・ヒル(George Roy Hill)監督の痛快コン・ゲーム映画「スティング(The Sting)」が作品賞・監督賞をはじめ7部門で受賞したことです。ポール・ニューマン(Paul Newman)とロバート・レッドフォード(Robert Redford)が共演し、1930年代シカゴを舞台に大がかりな詐欺計画を描いた本作は、スコット・ジョプリン(Scott Joplin)のラグタイム音楽を効果的に用いた演出でも高い評価を受けました。編曲・歌曲賞を受賞したマーヴィン・ハムリッシュ(Marvin Hamlisch)は、同時に作曲賞(追憶)でも受賞し、1夜で2つの音楽賞を獲得する快挙を成し遂げました。

ジョージ・ルーカス(George Lucas)監督の「アメリカン・グラフィティ(American Graffiti)」は作品賞を含む5部門でノミネートされ、ルーカスの才能が広く知られるきっかけとなりました。低予算ながら全米で大ヒットを記録した本作は、1962年のカリフォルニアの一夜を描いた青春群像劇であり、後にルーカスが「スター・ウォーズ」シリーズで映画史を塗り替える出発点となった重要な作品です。

ウィリアム・フリードキン(William Friedkin)監督の「エクソシスト(The Exorcist)」は最多10部門にノミネートされ、脚色賞と録音賞の2部門で受賞しました。ホラー映画として史上初めてアカデミー賞作品賞にノミネートされたことは、映画史上の画期的な出来事として記録されています。

助演女優賞では、テイタム・オニール(Tatum O'Neal)が「ペーパー・ムーン(Paper Moon)」での演技により、当時10歳でアカデミー賞競争部門の史上最年少受賞者となりました。この記録は現在も破られていません。父ライアン・オニール(Ryan O'Neal)との親子共演も大きな話題を呼びました。

外国語映画賞はフランソワ・トリュフォー(Francois Truffaut)監督の「映画に愛をこめて アメリカの夜(Day for Night)」がフランス代表として受賞しました。映画制作の舞台裏を描いた本作は、トリュフォー自身が映画監督役を演じ、映画への深い愛情が溢れるヌーヴェルヴァーグの名作として世界中で高く評価されています。

以下に、第46回アカデミー賞(オスカー賞)の各部門における受賞作品およびノミネート作品の一覧(1974年開催・1973年映画作品対象)を紹介します。

[1974年開催(1973年映画作品対象)]第46回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜

作品賞 / Sakuhin Shou[Best Picture]

作品賞(Best Picture)は、アカデミー賞の中で最も権威ある部門であり、その年に公開された映画作品の中から最も優れた作品に贈られる賞です。作品の総合的な完成度が評価され、プロデューサーが受賞者となります。第46回では、ジョージ・ロイ・ヒル監督の「スティング」が、巧みなストーリーテリングと1930年代のシカゴを見事に再現した美術・衣裳デザインが高く評価され、作品賞を受賞しました。「エクソシスト」はホラー映画として初めて作品賞にノミネートされるという歴史的快挙を成し遂げ、「アメリカン・グラフィティ」はジョージ・ルーカスの名を世界に知らしめた青春映画として注目を集めました。

受賞
Winner
スティング[The Sting] ⇒ トニー・ビル[Tony Bill]、ジュリア・フィリップス[Julia Phillips]、マイケル・フィリップス[Michael Phillips]

ノミネート
Nominees

アメリカン・グラフィティ[American Graffiti] ⇒ フランシス・フォード・コッポラ[Francis Ford Coppola]、ゲイリー・カーツ[Gary Kurtz]
叫びとささやき[Cries and Whispers] ⇒ Lars-Owe Carlberg
エクソシスト[The Exorcist] ⇒ ウィリアム・ピーター・ブラッティ[William Peter Blatty]
ウィークエンド・ラブ[A Touch of Class] ⇒ メルヴィン・フランク[Melvin Frank]

監督賞 / Kantoku Shou[Best Director]

監督賞(Best Director)は、映画の演出・方向性を決定づける監督の卓越した手腕を称える部門です。映画全体のビジョンを構築し、キャストの演技指導から撮影・編集に至るまでの総合的な監督力が評価されます。第46回では、ジョージ・ロイ・ヒルが「スティング」でポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの絶妙なコンビネーションを引き出し、テンポの良い演出で監督賞を獲得しました。ノミネートにはイングマール・ベルイマン(叫びとささやき)、ベルナルド・ベルトルッチ(ラストタンゴ・イン・パリ)など、ヨーロッパの巨匠も名を連ねた激戦の年でした。

受賞
Winner
スティング[The Sting] ⇒ ジョージ・ロイ・ヒル[George Roy Hill]

ノミネート
Nominees

アメリカン・グラフィティ[American Graffiti] ⇒ ジョージ・ルーカス[George Lucas]
叫びとささやき[Cries and Whispers] ⇒ イングマール・ベルイマン[Ingmar Bergman]
エクソシスト[The Exorcist] ⇒ ウィリアム・フリードキン[William Friedkin]
ラストタンゴ・イン・パリ[Last Tango in Paris] ⇒ ベルナルド・ベルトルッチ[Bernardo Bertolucci]

主演男優賞 / Shuen Danyuh Shou[Best Actor]

主演男優賞(Best Actor)は、映画作品において主演を務めた男性俳優の中から、最も優れた演技を披露した俳優に贈られる部門です。演技の深み、キャラクターへの没入度、観客への訴求力などが総合的に評価されます。第46回では、ジャック・レモンが「セイブ・ザ・タイガー」で倒産寸前のアパレル経営者の苦悩を繊細かつ力強く演じ、見事受賞しました。ノミネートにはマーロン・ブランド(ラストタンゴ・イン・パリ)、ジャック・ニコルソン(さらば冬のかもめ)、アル・パチーノ(セルピコ)、ロバート・レッドフォード(スティング)という錚々たる顔ぶれが並び、1970年代を代表する名優たちの競演となりました。

受賞
Winner
セイブ・ザ・タイガー[Save the Tiger] ⇒ ジャック・レモン[Jack Lemmon]

ノミネート
Nominees

ラストタンゴ・イン・パリ[Last Tango in Paris] ⇒ マーロン・ブランド[Marlon Brando]
さらば冬のかもめ[The Last Detail] ⇒ ジャック・ニコルソン[Jack Nicholson]
セルピコ[Serpico] ⇒ アル・パチーノ[Al Pacino]
スティング[The Sting] ⇒ ロバート・レッドフォード[Robert Redford]

主演女優賞 / Shuen Danyuh Shou[Best Actress]

主演女優賞(Best Actress)は、映画作品において主演を務めた女性俳優の中から、最も傑出した演技を見せた俳優に贈られる部門です。感情表現の豊かさ、キャラクターの説得力、作品全体への貢献度が審査基準となります。第46回では、グレンダ・ジャクソンが「ウィークエンド・ラブ」でのコメディ演技により2度目のオスカーを受賞しました(1度目は1970年の「恋する女たち」)。バーブラ・ストライサンド(追憶)やエレン・バースティン(エクソシスト)など、多彩なジャンルから実力派女優がノミネートされた年でした。

受賞
Winner
ウィークエンド・ラブ[A Touch of Class] ⇒ グレンダ・ジャクソン[Glenda Jackson]

ノミネート
Nominees

エクソシスト[The Exorcist] ⇒ エレン・バースティン[Ellen Burstyn]
シンデレラ・リバティー/かぎりなき愛[Cinderella Liberty] ⇒ マーシャ・メイソン[Marsha Mason]
追憶[The Way We Were] ⇒ バーブラ・ストライサンド[Barbra Streisand]
Summer Wishes, Winter Dreams ⇒ ジョアン・ウッドワード[Joanne Woodward]

助演男優賞 / Joen Danyuh Shou[Best Supporting Actor]

助演男優賞(Best Supporting Actor)は、映画作品において脇役として出演し、作品に欠かせない存在感を示した男性俳優に贈られる部門です。限られた出演時間の中で強烈な印象を残す演技力が求められます。第46回では、ジョン・ハウスマンが「ペーパー・チェイス」でハーバード大学ロースクールの厳格な教授キングスフィールドを演じ、71歳にしてアカデミー賞初受賞を果たしました。元々は映画プロデューサーとして知られていたハウスマンの俳優としての才能が広く認知されるきっかけとなった受賞です。

受賞
Winner
ペーパー・チェイス[The Paper Chase] ⇒ ジョン・ハウスマン[John Houseman]

ノミネート
Nominees

バング・ザ・ドラム[Bang the Drum Slowly] ⇒ ヴィンセント・ガーディニア[Vincent Gardenia]
セイブ・ザ・タイガー[Save the Tiger] ⇒ ジャック・ギルフォード[Jack Gilford]
エクソシスト[The Exorcist] ⇒ ジェイソン・ミラー[Jason Miller]
さらば冬のかもめ[The Last Detail] ⇒ ランディ・クエイド[Randy Quaid]

助演女優賞 / Joen Joyuh Shou[Best Supporting Actress]

助演女優賞(Best Supporting Actress)は、映画作品において脇役として出演し、物語に深みと彩りを加えた女性俳優に贈られる部門です。第46回では、テイタム・オニールが「ペーパー・ムーン」で当時10歳という史上最年少でアカデミー賞競争部門の受賞者となり、映画史に残る記録を打ち立てました。この記録は現在も破られていません。父ライアン・オニールとの親子共演で、大恐慌時代のアメリカを舞台に聖書のペテン師と旅をするおませな少女アディを見事に演じ切りました。同作品からはマデリーン・カーンもノミネートされています。

受賞
Winner
ペーパー・ムーン[Paper Moon] ⇒ テイタム・オニール[Tatum O’Neal]

ノミネート
Nominees

エクソシスト[The Exorcist] ⇒ リンダ・ブレア[Linda Blair]
アメリカン・グラフィティ[American Graffiti] ⇒ キャンディ・クラーク[Candy Clark]
ペーパー・ムーン[Paper Moon] ⇒ マデリーン・カーン[Madeline Kahn]
Summer Wishes, Winter Dreams ⇒ シルヴィア・シドニー[Sylvia Sidney]

脚本賞 / Kyakuhon Shou[Best Screenplay Written Directly for the Screen]

脚本賞(Best Original Screenplay)は、映画のために書き下ろされたオリジナル脚本の中から、最も優れた作品に贈られる部門です。物語の構成力、ダイアログの質、テーマの独創性が評価されます。第46回では、デヴィッド・S・ウォードが「スティング」で受賞しました。1930年代のシカゴを舞台に、ギャングのボスへの復讐を緻密な詐欺計画として描いた脚本は、観客を最後まで欺き続ける巧妙なプロット構成が高く評価されました。イングマール・ベルイマンの「叫びとささやき」やジョージ・ルーカスの「アメリカン・グラフィティ」もノミネートされ、多様なスタイルの脚本が競い合いました。

受賞
Winner
スティング[The Sting] ⇒ デヴィッド・S・ウォード[David S. Ward]

ノミネート
Nominees

アメリカン・グラフィティ[American Graffiti] ⇒ ジョージ・ルーカス[George Lucas]、グロリア・カッツ[Gloria Katz]、ウィラード・ハイク[Willard Huyck]
叫びとささやき[Cries and Whispers] ⇒ イングマール・ベルイマン[Ingmar Bergman]
セイブ・ザ・タイガー[Save the Tiger] ⇒ スティーヴ・シェイガン[Steve Shagan]
ウィークエンド・ラブ[A Touch of Class] ⇒ メルヴィン・フランク[Melvin Frank]、ジャック・ローズ[Jack Rose]

脚色賞 / Kyakushoku Shou[Best Screenplay Based on Material Previously Produced or Published]

脚色賞(Best Adapted Screenplay)は、小説・戯曲・ノンフィクションなど既存の原作を基に映画用に脚色された脚本の中から、最も優れた作品に贈られる部門です。原作の魅力を活かしつつ映画という媒体に適した形へ再構築する技術が評価されます。第46回では、ウィリアム・ピーター・ブラッティが自身の同名ベストセラー小説を映画化した「エクソシスト」で受賞しました。悪魔憑きという衝撃的な題材を、宗教と科学の対立という知的なテーマとして昇華させた脚色の力量が認められました。ロバート・タウンによる「さらば冬のかもめ」の脚色もノミネートされています。

受賞
Winner
エクソシスト[The Exorcist] ⇒ ウィリアム・ピーター・ブラッティ[William Peter Blatty]

ノミネート
Nominees

さらば冬のかもめ[The Last Detail] ⇒ ロバート・タウン[Robert Towne]
ペーパー・チェイス[The Paper Chase] ⇒ ジェームズ・ブリッジス[James Bridges]
ペーパー・ムーン[Paper Moon] ⇒ アルヴィン・サージェント[Alvin Sargent]
セルピコ[Serpico] ⇒ ウォルド・ソルト[Waldo Salt]、ノーマン・ウェクスラー[Norman Wexler]

外国語映画賞 / Gaikokugo Eiga Shou[Best Foreign Language Film]

外国語映画賞(Best Foreign Language Film)は、アメリカ合衆国以外の国で製作され、主に英語以外の言語で制作された映画の中から最も優れた作品に贈られる部門です。各国が1作品を代表として出品し、アカデミー会員の投票で受賞作が決まります。第46回では、フランソワ・トリュフォー監督の「映画に愛をこめて アメリカの夜」がフランス代表として受賞しました。映画制作の舞台裏をユーモアと愛情たっぷりに描いた本作は、トリュフォー自身が映画監督フェラン役を演じ、ヌーヴェルヴァーグを代表する傑作として映画ファンに愛され続けています。イスラエル、スイス、西ドイツ、オランダからもノミネートがあり、世界各国の映画文化の多様性を反映した年でした。

受賞
Winner
映画に愛をこめて アメリカの夜[Day for Night] – フランス[France]

ノミネート
Nominees

The House on Chelouche Street – イスラエル[Israel]
L’Invitation – スイス[Switzerland]
The Pedestrian – 西ドイツ[Germany (West)]
ルトガー・ハウアー/危険な愛[Turkish Delight] – オランダ[Netherlands]

長編ドキュメンタリー映画賞 / Chouhen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Feature]

長編ドキュメンタリー映画賞(Best Documentary Feature)は、事実に基づいた長編ドキュメンタリー映画の中から、最も優れた作品に贈られる部門です。題材の選定、取材の深度、編集の巧みさ、社会的意義などが総合的に評価されます。第46回では、「The Great American Cowboy」がKieth Merrillの制作・監督により受賞しました。プロのロデオカウボーイの世界を迫力ある映像で捉えた本作は、アメリカの伝統文化を生き生きと記録した作品として高く評価されました。

受賞
Winner
The Great American Cowboy ⇒ Kieth Merrill

ノミネート
Nominees

Always a New Beginning ⇒ John D. Goodell
Battle of Berlin (Schlacht um Berlin) ⇒ Franz Baake and Jost von Morr
Journey to the Outer Limits ⇒ Alexander Grasshoff
Walls of Fire ⇒ Herbert Kline and Edmund Penney

短編ドキュメンタリー映画賞 / Tanpen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Short Subject]

短編ドキュメンタリー映画賞(Best Documentary Short Subject)は、短編のドキュメンタリー映画を対象とした部門で、限られた上映時間の中で社会的テーマや人間の営みを的確に捉えた作品が表彰されます。第46回では、ジュリアン・クレイニンとデウィット・セイジによる「Princeton: A Search for Answers」が受賞しました。ノミネート作品には環境アートで知られるクリストの大規模インスタレーションを記録した「Christo's Valley Curtain」も含まれており、芸術と記録映画の境界を超えた多様な作品が競い合いました。

受賞
Winner
Princeton: A Search for Answers ⇒ ジュリアン・クレイニン[Julian Krainin]、デウィット・セイジ[DeWitt L. Sage Jr.]

ノミネート
Nominees

Background
Christo’s Valley Curtain
Four Stones for Kanemitsu
Paisti ag obair

短編映画賞 / Tanpen Eiga Shou[Best Live Action Short Film]

短編映画賞(Best Live Action Short Film)は、実写の短編映画を対象とした部門で、限られた上映時間で完成度の高い物語や映像表現を実現した作品が表彰されます。短編映画は映画制作者にとって実験的な表現や新しい手法を試みる場としても重要な役割を果たしています。第46回では、アラン・ミラーとWilliam Fertikによる「The Bolero」が受賞しました。ロサンゼルス・フィルハーモニックのオーケストラのリハーサルを追った音楽ドキュメンタリー的短編で、クラシック音楽と映像の融合が高く評価されました。

受賞
Winner
The Bolero ⇒ アラン・ミラー[Allan Miller]、William Fertik

ノミネート
Nominees

Clockmaker ⇒ Richard Gayer
Life Times Nine ⇒ ペン・デンシャム[Pen Densham]、ジョン・ワトソン[John Watson]

短編アニメ賞 / Tanpen Anime Shou[Best Animated Short Film]

短編アニメ賞(Best Animated Short Film)は、アニメーション技法を用いた短編映画の中から最も優れた作品に贈られる部門です。伝統的な手描きアニメーションからストップモーション、実験的なコラージュ技法まで、多様なアニメーション表現が評価対象となります。第46回では、フランク・モーリスによる「Frank Film」が受賞しました。雑誌の切り抜きや写真をコラージュしたユニークなアニメーション手法で自伝的な物語を綴った本作は、実験映画としても高く評価され、アニメーション表現の可能性を広げた革新的な作品です。

受賞
Winner
Frank Film ⇒ フランク・モーリス[Frank Mouris]

ノミネート
Nominees

The Legend of John Henry ⇒ Nick Bosustow、デヴィッド・アダムズ[David Adams]
Pulcinella ⇒ エマヌエーレ・ルッツァーティ[Emanuele Luzzati]、ジュリオ・ジァニーニ[Guilo Gianini]

作曲賞 / Sakkyoku Shou[Best Original Score]

作曲賞(Best Original Score)は、映画のために作曲されたオリジナルの劇伴音楽(スコア)の中から最も優れた作品に贈られる部門です。映画の雰囲気や感情を音楽で巧みに表現する能力が評価されます。第46回では、マーヴィン・ハムリッシュが「追憶」で受賞しました。ハムリッシュは同時に編曲・歌曲賞(スティング)と歌曲賞(追憶の主題歌「The Way We Were」)でも受賞し、一夜で3つのオスカーを獲得するという快挙を成し遂げました。ノミネートにはジョン・ウィリアムズ(シンデレラ・リバティー)やジェリー・ゴールドスミス(パピヨン)など、後に映画音楽の巨匠と称される作曲家たちが名を連ねています。

受賞
Winner
追憶[The Way We Were] ⇒ マーヴィン・ハムリッシュ[Marvin Hamlisch]

ノミネート
Nominees

シンデレラ・リバティー/かぎりなき愛[Cinderella Liberty] ⇒ ジョン・ウィリアムズ[John Williams]
イルカの日[The Day of the Dolphin] ⇒ ジョルジュ・ドルリュー[Georges Delerue]
パピヨン[Papillon] ⇒ ジェリー・ゴールドスミス[Jerry Goldsmith]
ウィークエンド・ラブ[A Touch of Class] ⇒ ジョン・キャメロン[John Cameron]

編曲・歌曲賞 / Henkyoku Kakyoku Shou[Best Original Song Score or Adaptation Score]

編曲・歌曲賞(Best Original Song Score or Adaptation Score)は、映画における歌曲の編曲や既存楽曲の映画用アダプテーションに優れた功績を残した作品に贈られる部門です。楽曲の選定、アレンジメントの技術、映画全体との調和が評価されます。第46回では、マーヴィン・ハムリッシュが「スティング」で受賞しました。スコット・ジョプリンのラグタイム曲「The Entertainer」をはじめとするクラシック・ラグタイム音楽を映画に効果的に取り入れた編曲は、作品の1930年代の雰囲気を見事に演出し、ラグタイム音楽のリバイバルブームを巻き起こしました。

受賞
Winner
スティング[The Sting] ⇒ マーヴィン・ハムリッシュ[Marvin Hamlisch]

ノミネート
Nominees

ジーザス・クライスト・スーパースター[Jesus Christ Superstar] ⇒ アンドレ・プレヴィン[André Previn]、ハーバート・スペンサー[Herbert W. Spencer]、アンドルー・ロイド・ウェバー[Andrew Lloyd Webber]
トム・ソーヤの冒険[Tom Sawyer] ⇒ リチャード・シャーマン[Richard M. Sherman]、ロバート・シャーマン[Robert B. Sherman]、ジョン・ウィリアムズ[John Williams]

歌曲賞 / Kashou Shou[Best Original Song]

歌曲賞(Best Original Song)は、映画のために書き下ろされたオリジナル楽曲の中から最も優れた歌曲に贈られる部門です。楽曲のメロディ、歌詞、映画における効果的な使われ方が総合的に評価されます。第46回では、マーヴィン・ハムリッシュ作曲、アラン・バーグマンとマリリン・バーグマン作詞による「The Way We Were」(映画「追憶」より)が受賞しました。バーブラ・ストライサンドが歌い上げたこの楽曲は、全米シングルチャート1位を記録し、映画音楽史に残る名曲となりました。ノミネートにはポール・マッカートニー作曲の「Live and Let Die」(007 死ぬのは奴らだ)も含まれています。

受賞
Winner
“The Way We Were" — 追憶[The Way We Were] ⇒ 作曲:マーヴィン・ハムリッシュ[Marvin Hamlisch]、作詞:アラン・バーグマン[Alan Bergman]、マリリン・バーグマン[Marilyn Bergman]

ノミネート
Nominees

“All That Love Went to Waste" — ウィークエンド・ラブ[A Touch of Class] ⇒ 作曲:ジョージ・バリー[George Barrie] ⇒ 作詞:サミー・カーン[Sammy Cahn]
“Live and Let Die" — 007 死ぬのは奴らだ[Live and Let Die] ⇒ 作曲:ポール・マッカートニー[Paul McCartney]、作詞:ポール・マッカートニー[Paul McCartney]、リンダ・マッカートニー[Linda McCartney]
“Love" — ロビン・フッド[Robin Hood] ⇒ 作曲:ジョージ・ブランズ[George Bruns]、作詞:フロイド・ハドルストン[Floyd Huddleston]
“(You’re So) Nice to Be Around" — シンデレラ・リバティー/かぎりなき愛[Cinderella Liberty] ⇒ 作曲:ジョン・ウィリアムズ[John Williams]、作詞:ポール・ウィリアムズ[Paul Williams]

音響編集賞 / Onkyou Henshuh Shou[Best Sound Effects Editing]

音響編集賞(Best Sound Effects Editing)は、映画における効果音の編集技術に優れた功績を残した作品に贈られる部門です。環境音、効果音、擬音などの音響素材を映像に合わせて巧みに編集・構成する技術が評価されます。第46回ではこの部門の受賞・ノミネートは該当なしでした。なお、この部門は毎年設置されるわけではなく、特に顕著な音響編集の功績があった年に授与される特別な部門として位置づけられていた時期もあります。

受賞
Winner
ノミネート
Nominees

録音賞 / Rokuon Shou[Best Sound]

録音賞(Best Sound)は、映画における録音技術全般の優秀さを表彰する部門です。ダイアログの明瞭度、音楽と効果音のバランス、音場の設計など、映画の音響体験全体が評価対象となります。第46回では、「エクソシスト」がロバート・ニュードソンとクリス・ニューマンの手により受賞しました。悪魔憑きの少女の恐怖を音響面から見事に表現し、観客を震撼させた本作の録音技術は、ホラー映画の音響設計に大きな影響を与えました。不気味な音響効果と静寂の巧みな使い分けが、作品の恐怖感を格段に高めています。

受賞
Winner
エクソシスト[The Exorcist] ⇒ ロバート・ニュードソン[Robert Knudson]、クリス・ニューマン[Chris Newman]

ノミネート
Nominees

イルカの日[The Day of the Dolphin] ⇒ リチャード・ポートマン[Richard Portman]、ラリー・ヨースト[Larry Jost]
ペーパー・チェイス[The Paper Chase] ⇒ ドナルド・O・ミッチェル[Donald O. Mitchell]、ラリー・ヨースト[Larry Jost]
ペーパー・ムーン[Paper Moon] ⇒ リチャード・ポートマン[Richard Portman]、レス・フレッショルツ[Les Fresholtz]
スティング[The Sting] ⇒ ロナルド・K・ピアース[Ronald Pierce]、ロバート・バートランド[Robert R. Bertrand]

美術賞 / Bijutsu Shou[Best Art Direction]

美術賞(Best Art Direction)は、映画のプロダクションデザインとセットデコレーションの優秀さを表彰する部門です。映画の世界観を視覚的に構築するセットデザイン、装飾、空間演出の技術が評価されます。第46回では、「スティング」がヘンリー・バムステッドとジェームズ・ペインの手により受賞しました。1930年代のシカゴの街並み、違法賭博場、列車内のセットなど、大恐慌時代のアメリカを精緻に再現した美術は、映画に没入感と時代の空気感を与え、物語の説得力を大きく高めています。

受賞
Winner
スティング[The Sting] ⇒ ヘンリー・バムステッド[Henry Bumstead]、ジェームズ・ペイン[James W. Payne]

ノミネート
Nominees

ブラザー・サン シスター・ムーン[Brother Sun, Sister Moon] ⇒ ロレンツォ・モンジャルディーノ[Lorenzo Mongiardino]、ジャンニ・クァランタ[Gianni Quaranta]、カルメロ・パトロノ[Carmelo Patrono]
エクソシスト[The Exorcist] ⇒ Bill Malley、ジェリー・ワンダーリック[Jerry Wunderlich]
トム・ソーヤの冒険[Tom Sawyer] ⇒ フィリップ・フェフリーズ[Philip Jefferies]、ロバート・デヴェステル[Robert de Vestel]
追憶[The Way We Were] ⇒ スティーブン・グリムズ[Stephen B. Grimes]、ウィリアム・キアナン[William Kiernan]

撮影賞 / Satsuei Shou[Best Cinematography]

撮影賞(Best Cinematography)は、映画における撮影技術の卓越性を表彰する部門です。カメラワーク、照明設計、構図、色彩表現など、映像美の全体的な質が評価されます。第46回では、スヴェン・ニクヴィストが「叫びとささやき」で受賞しました。イングマール・ベルイマン監督との長年のパートナーシップで知られるニクヴィストは、赤と白を基調とした象徴的な色彩設計と、登場人物の顔のクローズアップを巧みに用いた撮影で、人間の内面の苦悩と愛を視覚的に表現しました。その映像美は映画撮影史における金字塔のひとつとして広く認められています。

受賞
Winner
叫びとささやき[Cries and Whispers] ⇒ スヴェン・ニクヴィスト[Sven Nykvist]

ノミネート
Nominees

エクソシスト[The Exorcist] ⇒ オーウェン・ロイズマン[Owen Roizman]
かもめのジョナサン[Jonathan Livingston Seagull] ⇒ ジャック・コーファー[Jack Couffer]
スティング[The Sting] ⇒ ロバート・サーティース[Robert Surtees]
追憶[The Way We Were] ⇒ ハリー・ストラドリング・Jr[Harry Stradling Jr.]

衣裳デザイン賞 / Ishou Design Shou[Best Costume Design]

衣裳デザイン賞(Best Costume Design)は、映画における衣裳デザインの優秀さを表彰する部門です。時代考証に基づいた正確性、キャラクターの性格や社会的地位の表現、映画全体のビジュアルスタイルとの調和が評価されます。第46回では、ハリウッドの伝説的衣裳デザイナーであるイーディス・ヘッドが「スティング」で受賞しました。1930年代のファッションを忠実に再現しつつ、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの洗練されたスーツスタイルが印象的で、映画公開後にレトロファッションのトレンドを生み出すほどの影響力を持ちました。ヘッドにとっては通算8度目のオスカー受賞となりました。

受賞
Winner
スティング[The Sting] ⇒ イーディス・ヘッド[Edith Head]

ノミネート
Nominees

叫びとささやき[Cries and Whispers] ⇒ マリク・ヴォス[Marik Vos]
ルートヴィヒ[Ludwig] ⇒ ピエロ・トージ[Piero Tosi]
トム・ソーヤの冒険[Tom Sawyer] ⇒ ドンフェルド[Donfeld]
追憶[The Way We Were] ⇒ ドロシー・ジーキンズ[Dorothy Jeakins]、モス・メイブリー[Moss Mabry]

編集賞 / Henshuh Shou[Best Film Editing]

編集賞(Best Film Editing)は、映画の編集技術の優秀さを表彰する部門です。ストーリーの流れを構築するカットのつなぎ方、テンポとリズムの制御、観客の感情を導く編集の巧みさが評価されます。第46回では、ウィリアム・H・レイノルズが「スティング」で受賞しました。複雑な詐欺計画の展開を観客に分かりやすく、かつサスペンスフルに見せる編集テクニックは見事で、章立て構成(タイトルカード)の効果的な使用と相まって、映画のテンポ感を決定づけました。ノミネートには「アメリカン・グラフィティ」の編集を手がけたヴェルマ・フィールズとマーシア・ルーカスも名を連ねています。

受賞
Winner
スティング[The Sting] ⇒ ウィリアム・H・レイノルズ[William H. Reynolds]

ノミネート
Nominees

アメリカン・グラフィティ[American Graffiti] ⇒ ヴェルマ・フィールズ[Verna Fields]、マーシア・ルーカス[Marcia Lucas]
ジャッカルの日[The Day of the Jackal] ⇒ ラルフ・ケンプレン[Ralph Kemplen]
エクソシスト[The Exorcist] ⇒ ジョーダン・レオンドポウロス[Jordan Leondopoulos]、バド・スミス[Bud S. Smith]、エヴァン・ロットマン[Evan Lottman]、ノーマン・ゲイ[Norman Gay]
かもめのジョナサン[Jonathan Livingston Seagull] ⇒ フランク・P・ケラー[Frank P. Keller]、ジェームズ・ギャロウェイ[James Galloway]

視覚効果賞 / Shikaku Kouka Shou[Best Visual Effects]

視覚効果賞(Best Visual Effects)は、映画における視覚効果(VFX)の技術的革新と芸術的表現を表彰する部門です。特殊撮影、光学合成、ミニチュア、マット・ペインティングなど、映画の視覚的表現を支える技術が評価されます。第46回ではこの部門の受賞・ノミネートは該当なしでした。1970年代前半はまだデジタル技術以前の時代でしたが、「エクソシスト」の首回転シーンなど、特殊メイクや機械仕掛けによる視覚的恐怖表現は、従来の視覚効果の概念を超えた革新として話題を呼びました。

受賞
Winner
ノミネート
Nominees

第46回アカデミー賞(1974年)のまとめ

第46回アカデミー賞(1974年開催・1973年映画作品対象)は、アメリカ映画の多様性と芸術性が際立った年として映画史に刻まれています。以下に、この年の授賞式の主要なポイントをまとめます。

「スティング」の圧倒的勝利

ジョージ・ロイ・ヒル監督の「スティング」は、作品賞・監督賞・脚本賞・編曲歌曲賞・美術賞・衣裳デザイン賞・編集賞の計7部門で受賞し、この年のアカデミー賞を席巻しました。ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの名コンビによる痛快なコン・ゲーム映画は、スコット・ジョプリンのラグタイム音楽とともに世界中で大ヒットし、1930年代のアメリカを見事に再現した美術・衣裳デザインも含め、総合的な映画制作の粋を集めた作品として高く評価されました。

マーヴィン・ハムリッシュの3冠達成

作曲家マーヴィン・ハムリッシュは、作曲賞(追憶)、編曲・歌曲賞(スティング)、歌曲賞(追憶の主題歌「The Way We Were」)の3部門で同時受賞するという、映画音楽史上稀に見る快挙を成し遂げました。特に「The Way We Were」はバーブラ・ストライサンドの歌唱により全米1位を記録し、映画音楽の名曲として永く愛され続けています。

テイタム・オニールの史上最年少受賞

助演女優賞を受賞したテイタム・オニールは当時10歳で、アカデミー賞の競争部門における史上最年少受賞記録を打ち立てました。この記録は現在も破られておらず、父ライアン・オニールとの親子共演による「ペーパー・ムーン」での自然体の演技は、映画史に残る名演技として語り継がれています。

「エクソシスト」のホラー映画史的意義

ウィリアム・フリードキン監督の「エクソシスト」は最多10部門にノミネートされ、脚色賞と録音賞の2部門で受賞しました。ホラー映画として史上初めてアカデミー賞作品賞にノミネートされたことは、ホラーというジャンルが芸術的にも認められた歴史的瞬間でした。社会現象を巻き起こした本作は、映画における恐怖表現の可能性を大きく広げました。

ジョージ・ルーカスの出発点

「アメリカン・グラフィティ」は作品賞を含む5部門でノミネートされ、低予算ながら全米で大ヒットを記録しました。この成功により、ジョージ・ルーカスは次作「スター・ウォーズ」の製作資金と制作の自由を獲得し、後に映画史を塗り替えることになります。本作は1960年代アメリカの青春を描いた傑作として、現在もアメリカ文化を象徴する映画のひとつに数えられています。

ヨーロッパ映画の存在感

この年は、イングマール・ベルイマン(叫びとささやき)、ベルナルド・ベルトルッチ(ラストタンゴ・イン・パリ)、フランソワ・トリュフォー(映画に愛をこめて アメリカの夜)といったヨーロッパの巨匠たちの作品がノミネート・受賞を果たし、アメリカ映画とヨーロッパ映画の芸術的交流が一層深まった年でもありました。「叫びとささやき」のスヴェン・ニクヴィストによる撮影賞受賞は、北欧映画の映像美学が世界的に認められた象徴的な出来事です。

1970年代アメリカ映画の転換期

第46回アカデミー賞は、ニュー・ハリウッドと呼ばれる映画運動の最盛期に位置し、従来のスタジオ・システムから脱却した若い映画人たちが次々と革新的な作品を生み出していた時代を反映しています。ジョージ・ルーカス、フランシス・フォード・コッポラ、ウィリアム・フリードキンといった監督たちの活躍は、アメリカ映画が大きく変革していく過渡期を象徴するものであり、この年のアカデミー賞は、エンターテインメントと芸術性を高い次元で両立させた1973年の映画界の豊かさを余すことなく記録しています。