[2020年開催(2019年映画作品対象)]第92回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜

3月 10, 2026Academy Awards,Movie,Products

アカデミー賞(Academy Awards)とは、映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences、略称AMPAS)が主催する、アメリカ合衆国を代表する映画賞です。アメリカの映画産業における健全な発展と、映画芸術・科学技術の品質向上を目的として、毎年キャスト・スタッフなどの映画関係者を部門別に表彰し、その功績を讃えています。

受賞者には賞金は授与されませんが、公式名称「Academy Award of Merit」として知られる金色のオスカー像(Oscar statuette)が贈られることから、世界的に「オスカー賞(The Oscars)」の愛称で親しまれています。

アカデミー賞の歴史は、世界三大映画祭として知られるカンヌ国際映画祭(1946年〜)、ベルリン国際映画祭(1951年〜)、ヴェネツィア国際映画祭(1932年〜)よりも古く、第1回の授賞式は1929年5月16日にハリウッドのルーズベルトホテルで開催されました。以来、世界中の映画ファンや業界関係者が注目する、映画界最大の祭典として位置づけられています。

アカデミー賞のノミネートおよび受賞結果は世界各国で大きく報道され、対象映画の興行成績や配信視聴数に多大な影響を与えます。ノミネートだけでも作品の認知度は飛躍的に高まり、受賞作品はその年を代表する映画として長く記憶されることになります。

選考は、映画界で活躍するプロデューサー、監督、脚本家、俳優、撮影監督、編集者、音響技術者など、各専門分野のプロフェッショナルで構成されるアカデミー会員の投票によって行われます。会員数は約10,000人を超え、その厳正な審査プロセスにより選ばれた作品は、映画史における重要な作品として高い評価を受けています。

第92回アカデミー賞(2020年開催)の概要

本記事では、2020年2月9日(現地時間)にアメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアター(Dolby Theatre)で開催された第92回アカデミー賞授賞式の全部門ノミネート作品および受賞結果を一覧で紹介します。対象となるのは2019年1月1日から2019年12月31日までの間に公開された映画作品で、アカデミー会員約10,000名による厳正な投票の結果が反映されています。

第92回アカデミー賞は、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が作品賞・監督賞・脚本賞・国際長編映画賞の4冠を達成し、非英語映画として史上初めて作品賞を受賞したことで映画史に刻まれる授賞式となりました。アカデミー賞が1929年に始まって以来91年間、英語映画が独占してきた最高賞の壁を初めて破った歴史的な瞬間であり、映画芸術の多様性と国際化を象徴する出来事として世界中に衝撃を与えました。

ポン・ジュノ監督の社会格差をテーマにした鮮烈な作品は、韓国映画界の国際的実力を決定的に示すとともに、非英語圏の優れた映画がアカデミー賞の頂点に立てることを証明しました。演技部門では、ホアキン・フェニックスが『ジョーカー』での圧倒的な演技で主演男優賞を受賞、レネー・ゼルウィガーは伝説の女優ジュディ・ガーランドを演じた『ジュディ 虹の彼方に』で主演女優賞を受賞し、ブラッド・ピットは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で念願の助演男優賞を獲得しました。

第92回授賞式の基本情報

  • 開催日時:2020年2月9日(日)現地時間17時30分開始(日本時間2月10日(月)午前10時30分〜)
  • 開催会場:ドルビー・シアター(Dolby Theatre)/アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス・ハリウッド
  • 司会:2020年はホスト(司会者)なしの形式で開催(2019年の第91回に続き2年連続)
  • 対象期間:2019年1月1日〜2019年12月31日に公開された映画作品
  • 最多受賞:パラサイト 半地下の家族(4部門受賞)、1917 命をかけた伝令(3部門受賞)
  • 最多ノミネート:ジョーカー(11部門)、ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(10部門)、アイリッシュマン(10部門)、1917(10部門)

[2020年開催(2019年映画作品対象)]第92回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜

作品賞 / Sakuhin Shou[Best Picture]

アカデミー賞の最高栄誉である作品賞は、その年最も優れた映画作品に贈られます。プロデューサーが受賞対象となり、映画全体の完成度・芸術性・社会的影響力などが総合的に評価されます。第92回では最大10作品のノミネートが可能で、9作品がノミネートされました。韓国映画『パラサイト 半地下の家族』の受賞は、英語以外の言語で制作された作品として91年の歴史で初めての快挙であり、映画史に永遠に刻まれる記録となりました。

受賞
Winner
パラサイト 半地下の家族[Parasite]

ノミネート
Nominees
フォードvsフェラーリ[Ford v Ferrari]
アイリッシュマン[The Irishman]
ジョジョ・ラビット[Jojo Rabbit]
ジョーカー[Joker]
ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語[Little Women]
マリッジ・ストーリー[Marriage Story]
1917 命をかけた伝令[1917]
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド[Once Upon a Time in Hollywood]

主演男優賞 / Shuen Danyuh Shou[Best Actor]

主演男優賞は、映画において主演として最も優れた演技を見せた男優に贈られます。第92回では、ホアキン・フェニックスが『ジョーカー』でDCコミックスの悪役アーサー・フレック/ジョーカーを圧倒的な没入感で演じ、下馬評通りの受賞を果たしました。孤独と狂気を繊細かつ凄まじいエネルギーで体現した演技は「キャリア最高傑作」と絶賛され、初のアカデミー賞主演男優賞獲得となりました。ライバルとして名を連ねたアントニオ・バンデラス、レオナルド・ディカプリオ、アダム・ドライヴァーら実力派俳優のノミネートも例年以上に豪華なラインアップでした。

受賞
Winner
ジョーカー[Joker] ⇒ ホアキン・フェニックス[Joaquin Phoenix]

ノミネート
Nominees
ペイン・アンド・グローリー[Pain and Glory] ⇒ アントニオ・バンデラス[Antonio Banderas]
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド[Once Upon a Time in Hollywood] ⇒ レオナルド・ディカプリオ[Leonardo DiCaprio]
マリッジ・ストーリー[Marriage Story] ⇒ アダム・ドライヴァー[Adam Driver]
2人のローマ教皇[The Two Popes] ⇒ ジョナサン・プライス[Jonathan Pryce]

主演女優賞 / Shuen Joyuh Shou[Best Actress]

主演女優賞は、映画において主演として最も優れた演技を見せた女優に贈られます。第92回では、レネー・ゼルウィガーが『ジュディ 虹の彼方に』でハリウッド黄金期の伝説的女優ジュディ・ガーランドを完璧に体現し受賞しました。衰えた才能の中に輝く意志と悲哀を表現した演技は高い評価を受け、2003年の助演女優賞(コールド マウンテン)に続く2度目のオスカー受賞となりました。ノミネートされたシンシア・エリヴォ(ハリエット)も自らの歌唱を活かした演技で強い印象を残し、『スキャンダル』のシャーリーズ・セロンのトランスフォームぶりも高く評価されました。

受賞
Winner
ジュディ 虹の彼方に[Judy] ⇒ レネー・ゼルウィガー[Renée Zellweger]

ノミネート
Nominees
ハリエット[Harriet] ⇒ シンシア・エリヴォ[Cynthia Erivo]
マリッジ・ストーリー[Marriage Story] ⇒ スカーレット・ヨハンソン[Scarlett Johansson]
ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語[Little Women] ⇒ シアーシャ・ローナン[Saoirse Ronan]
スキャンダル[Bombshell] ⇒ シャーリーズ・セロン[Charlize Theron]

助演男優賞 / Joen Danyuh Shou[Best Supporting Actor]

助演男優賞は、映画において助演として傑出した演技を見せた男優に授与されます。第92回では、ブラッド・ピットが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で実在のスタントマン、クリフ・ブースを飄々とした魅力で演じ、初のアカデミー賞主演・助演部門での受賞を果たしました。クエンティン・タランティーノ監督が描く1969年のハリウッドで、タランティーノ作品らしい洗練されたキャラクターを体現したピットの受賞は広く支持されました。トム・ハンクス、アル・パチーノ、アンソニー・ホプキンス、ジョー・ペシという錚々たる顔ぶれのノミネートも話題を呼びました。

受賞
Winner
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド[Once Upon a Time in Hollywood] ⇒ ブラッド・ピット[Brad Pitt]

ノミネート
Nominees
幸せへのまわり道[A Beautiful Day in the Neighborhood] ⇒ トム・ハンクス[Tom Hanks]
アイリッシュマン[The Irishman] ⇒ アル・パチーノ[Al Pacino]
2人のローマ教皇[The Two Popes] ⇒ アンソニー・ホプキンス[Anthony Hopkins]
アイリッシュマン[The Irishman] ⇒ ジョー・ペシ[Joe Pesci]

助演女優賞 / Joen Joyuh Shou[Best Supporting Actress]

助演女優賞は、助演として最も印象的な演技を残した女優に贈られます。第92回では、ローラ・ダーンが『マリッジ・ストーリー』で辣腕の離婚弁護士ノラ・ファンショーを演じ受賞しました。限られた出演シーンながら圧倒的な存在感を放ち、ノア・バームバック監督の繊細なドラマに強烈な印象を与えた演技は高い評価を集めました。マーゴット・ロビー(スキャンダル)やフローレンス・ピュー(ストーリー・オブ・マイライフ)など、その後の映画界をリードする新世代の女優たちもノミネートされ、世代交代を感じさせる候補者リストとなりました。

受賞
Winner
マリッジ・ストーリー[Marriage Story] ⇒ ローラ・ダーン[Laura Dern]

ノミネート
Nominees
リチャード・ジュエル[Richard Jewell] ⇒ キャシー・ベイツ[Kathy Bates]
ジョジョ・ラビット[Jojo Rabbit] ⇒ スカーレット・ヨハンソン[Scarlett Johansson]
ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語[Little Women] ⇒ フローレンス・ピュー[Florence Pugh]
スキャンダル[Bombshell] ⇒ マーゴット・ロビー[Margot Robbie]

監督賞 / Kantoku Shou[Best Director]

監督賞は、映画全体の演出・ビジョンにおいて最も優れた功績を残した監督に贈られます。第92回では、ポン・ジュノ監督が『パラサイト 半地下の家族』で受賞しました。韓国人監督として史上初めてのアカデミー賞監督賞受賞であり、授賞式では「最も個人的な映画こそ最もクリエイティブな映画だ」という言葉を引用したスピーチが感動を呼びました。マーティン・スコセッシ、トッド・フィリップス、サム・メンデス、クエンティン・タランティーノという映画史に名を刻む監督たちとの競合の中での受賞は、その実績の重みをいっそう際立たせました。

受賞
Winner
パラサイト 半地下の家族[Parasite] ⇒ ポン・ジュノ[Bong Joon-ho]

ノミネート
Nominees
アイリッシュマン[The Irishman] ⇒ マーティン・スコセッシ[Martin Scorsese]
ジョーカー[Joker] ⇒ トッド・フィリップス[Todd Phillips]
1917 命をかけた伝令[1917] ⇒ サム・メンデス[Sam Mendes]
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド[Once Upon a Time in Hollywood] ⇒ クエンティン・タランティーノ[Quentin Tarantino]

脚本賞 / Kyakuhon Shou[Best Original Screenplay]

脚本賞(オリジナル脚本賞)は、映画のために書き下ろされたオリジナルの脚本に対して贈られます。既存の原作に頼らず、新たな物語・世界観・キャラクターを創造した脚本が対象です。第92回では、ポン・ジュノ監督とハン・チンウォンによる『パラサイト 半地下の家族』の脚本が受賞しました。富裕層と貧困層の対比を絶妙なサスペンスと皮肉を交えて描いた脚本は、物語構造の完成度という観点でも高く評価されました。ライアン・ジョンソン(ナイブズ・アウト)やノア・バームバック(マリッジ・ストーリー)、クエンティン・タランティーノ(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド)など強豪が揃ったノミネートリストでした。

受賞
Winner
パラサイト 半地下の家族[Parasite] ⇒ ポン・ジュノ[Bong Joon-ho]、ハン・チンウォン[Han Jin-won]

ノミネート
Nominees
ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密[Knives Out] ⇒ ライアン・ジョンソン[Rian Johnson]
マリッジ・ストーリー[Marriage Story] ⇒ ノア・バームバック[Noah Baumbach]
1917 命をかけた伝令[1917] ⇒ サム・メンデス[Sam Mendes]、クリスティ・ウィルソン=ケアンズ[Krysty Wilson-Cairns]
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド[Once Upon a Time in Hollywood] ⇒ クエンティン・タランティーノ[Quentin Tarantino]

脚色賞 / Kyakushoku Shou[Best Adapted Screenplay]

脚色賞は、小説・ノンフィクション・舞台劇・過去の映画・その他の既存作品を基に書かれた脚本に対して贈られます。原作の魅力を映画という表現媒体に最適化する翻案能力が問われる部門です。第92回では、タイカ・ワイティティがクリスティン・ルーネンスの小説「Caging Skies」を原作とした反戦コメディ『ジョジョ・ラビット』の脚色で受賞しました。ナチス政権下のドイツを舞台に少年の視点から戦争と偏見を描いた独自の解釈が高く評価されました。グレタ・ガーウィグ(ストーリー・オブ・マイライフ)やスティーヴン・ザイリアン(アイリッシュマン)といった実力派もノミネートされました。

受賞
Winner
ジョジョ・ラビット[Jojo Rabbit] ⇒ タイカ・ワイティティ[Taika Waititi]

ノミネート
Nominees
アイリッシュマン[The Irishman] ⇒ スティーヴン・ザイリアン[Steven Zaillian]
ジョーカー[Joker] ⇒ トッド・フィリップス[Todd Phillips]、スコット・シルヴァー
ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語[Little Women] ⇒ グレタ・ガーウィグ[Greta Gerwig]
2人のローマ教皇[The Two Popes] ⇒ アンソニー・マクカーテン[Anthony McCarten]

国際長編映画賞 / Kokusai Chouhen Eiga Shou[Best International Feature Film]

国際長編映画賞は、英語以外の言語で制作された映画に贈られる部門です。各国から1作品が代表作として選出・出品され、アカデミー会員が審査します。第92回では名称が従来の「外国語映画賞(Best Foreign Language Film)」から「国際長編映画賞(Best International Feature Film)」に改称されました。同年の作品賞も受賞した『パラサイト 半地下の家族』が当然のように受賞し、同一作品による作品賞と国際長編映画賞のダブル受賞という前人未踏の快挙を達成しました。ポーランド(聖なる犯罪者)、フランス(レ・ミゼラブル)、スペイン(ペイン・アンド・グローリー)など質の高い欧州作品が競合しました。

受賞
Winner
パラサイト 半地下の家族[Parasite](韓国[South Korea]) – 韓国語[Korean] ⇒ ポン・ジュノ[Bong Joon-ho]

ノミネート
Nominees
聖なる犯罪者[Corpus Christi](ポーランド[Poland]) – ポーランド語[Polish] ⇒ ヤン・コマサ[Jan Komasa]
ハニーランド 永遠の谷[Honeyland](北マケドニア[North Macedonia]) – マケドニア語、ロマ語[Macedonian, Romani] ⇒ タマラ・コテフスカ[Tamara Kotevska]、リュボミル・ステファノフ[Ljubomir Stefanov]
レ・ミゼラブル[Les Misérables](フランス[France]) – フランス語[French] ⇒ ラジ・リ[Ladj Ly]
ペイン・アンド・グローリー[Pain and Glory](スペイン[Spain]) – スペイン語[Spanish] ⇒ ペドロ・アルモドバル[Pedro Almodóvar]

撮影賞 / Satsuei Shou[Best Cinematography]

撮影賞は、映画における映像の視覚的な美しさ・技術的な卓越性・芸術的なビジョンを評価する部門です。照明設計、カメラワーク、色彩表現など撮影監督(シネマトグラファー)の総合的な能力が問われます。第92回では、ロジャー・ディーキンスが『1917 命をかけた伝令』でワンカット撮影のように見える長回しを多用した革新的な映像表現で受賞しました。第一次世界大戦のリアルな戦場をまるでカメラが主人公と共に駆け抜けるかのような臨場感で描き、技術と芸術が融合した傑作撮影として高い評価を受けました。ディーキンスは2017年の『ブレードランナー2049』での受賞に続き、2度目のアカデミー賞撮影賞受賞となりました。

受賞
Winner
1917 命をかけた伝令[1917] – ロジャー・ディーキンス[Roger Deakins]

ノミネート
Nominees
ライトハウス[The Lighthouse] – ジェアリン・ブラシュケ[Jarin Blaschke]
ジョーカー[Joker] – ローレンス・シャー[Lawrence Sher]
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド[Once Upon a Time in Hollywood] – ロバート・リチャードソン[Robert Richardson]
アイリッシュマン[The Irishman] – ロドリゴ・プリエト[Rodrigo Prieto]

作曲賞 / Sakkyoku Shou[Best Original Score]

作曲賞は、映画のために書き下ろされたオリジナルの音楽スコアに贈られます。映像と一体となって物語を感情的に支える音楽の完成度が評価されます。第92回では、アイスランド出身の作曲家ヒルドゥル・グーナドッティルが『ジョーカー』での前衛的かつ不安感を煽る独創的なスコアで受賞しました。チェロの弦楽を主軸に据えた独自の音楽世界はホアキン・フェニックスの演技と見事に融合し、映画の世界観を際立たせました。グーナドッティルはドラマ『チェルノブイリ』の音楽でエミー賞も受賞しており、映像音楽界の新星として世界に知られる存在となりました。ジョン・ウィリアムズ(スター・ウォーズ)やランディ・ニューマン(マリッジ・ストーリー)といったレジェンドもノミネートされました。

受賞
Winner
ジョーカー[Joker] ⇒ ヒルドゥル・グーナドッティル[Hildur Guðnadóttir]

ノミネート
Nominees
ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語[Little Women] ⇒ アレクサンドル・デスプラ
マリッジ・ストーリー[Marriage Story] ⇒ ランディ・ニューマン[Randy Newman]
1917 命をかけた伝令[1917] ⇒ トーマス・ニューマン
スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け[Star Wars: The Rise of Skywalker] ⇒ ジョン・ウィリアムズ

歌曲賞 / Kashou Shou[Best Original Song]

歌曲賞は、映画のために書き下ろされたオリジナル楽曲に贈られます。歌詞・メロディ・映画との統合性などが総合的に評価されます。第92回では、エルトン・ジョンの伝記映画『ロケットマン』のために書き下ろされた「(I'm Gonna) Love Me Again」が受賞しました。エルトン・ジョン自身が長年のパートナーであるバーニー・トーピンと共作した楽曲で、映画のエンディングシーンを感動的に締めくくる名曲として高く評価されました。エルトン・ジョンにとって1994年の『ライオン・キング』主題歌「Can You Feel the Love Tonight」以来となる歌曲賞受賞でした。アナと雪の女王2の「Into the Unknown」やハリエットの「Stand Up」など人気作品の楽曲もノミネートされました。

受賞
Winner
「(I'm Gonna) Love Me Again」 – ロケットマン[Rocketman] ⇒ 作詞・作曲: エルトン・ジョン[Elton John]、バーニー・トーピン[Bernie Taupin]

ノミネート
Nominees
「I Can't Let You Throw Yourself Away」 – トイ・ストーリー4[Toy Story 4] ⇒ 作詞・作曲: ランディ・ニューマン[Randy Newman]
「I'm Standing With You」 – BREAKTHROUGH[Breakthrough] ⇒ 作詞・作曲: ダイアン・ウォーレン[Diane Warren]
「Into the Unknown」 – アナと雪の女王2[Frozen 2] ⇒ 作詞・作曲: クリステン・アンダーソン=ロペス[Kristen Anderson-Lopez]、ロバート・ロペス[Robert Lopez]
「Stand Up」 – ハリエット[Harriet] ⇒ 作詞・作曲: シンシア・エリヴォ[Cynthia Erivo]、ジョシュア・キャンベル[Joshuah Campbell]

美術賞 / Bijutsu Shou[Best Production Design]

美術賞(プロダクションデザイン賞)は、映画における舞台装置・セットデザイン・美術全般の芸術的な卓越性を評価する部門です。プロダクションデザイナーとセットデコレーターが共同で受賞対象となります。第92回では、1969年のハリウッドを精緻に再現した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のバーバラ・リングが受賞しました。クエンティン・タランティーノ監督の要求する細部へのこだわりに応え、映画の舞台となったサンセット・ストリップ周辺の街並みや劇中のテレビセット、主人公の自宅などを細部まで完璧に作り込んだ美術は観客を1969年のハリウッドに完全に引き込みました。

受賞
Winner
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド[Once Upon a Time in Hollywood] – バーバラ・リング[Barbara Ling]

ノミネート
Nominees
アイリッシュマン[The Irishman] – ボブ・ショウ[Bob Shaw]
ジョジョ・ラビット[Jojo Rabbit] – ラ・ヴィンセント[Ra Vincent]
1917 命をかけた伝令[1917] – デニス・ガスナー[Dennis Gassner]
パラサイト 半地下の家族[Parasite] – イ・ハジュン[Lee Ha-jun]

衣装デザイン賞 / Ishou Design Shou[Best Costume Design]

衣装デザイン賞は、映画における衣裳の創造性・歴史的再現性・芸術的な完成度を評価する部門です。時代考証に基づく衣裳の再現から、オリジナルのデザインによる個性的なスタイルの創出まで、衣装デザイナーの幅広い能力が評価されます。第92回では、19世紀のニューイングランドを舞台にした『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のジャクリーン・デュランが受賞しました。ルイーザ・メイ・オルコットの小説を原作とした本作で、南北戦争時代の衣裳を現代的な感覚も取り入れながら生き生きと再現したデザインが評価されました。デュランはグレタ・ガーウィグ監督の演出意図に呼応し、各キャラクターの個性を衣裳で雄弁に表現しています。

受賞
Winner
ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語[Little Women] ⇒ ジャクリーン・デュラン[Jacqueline Durran]

ノミネート
Nominees
アイリッシュマン[The Irishman] ⇒ サンディ・パウエル[Sandy Powell]、クリストファー・ピーターソン[Christopher Peterson]
ジョジョ・ラビット[Jojo Rabbit] ⇒ マイェス・C・ルベオ[Mayes C. Rubeo]
ジョーカー[Joker] ⇒ マーク・ブリッジス[Mark Bridges]
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド[Once Upon a Time in Hollywood] ⇒ アリアンヌ・フィリップス[Arianne Phillips]

メイクアップ&ヘアスタイリング賞 / Makeup and Hairstyling Shou[Best Makeup and Hairstyling]

メイクアップ&ヘアスタイリング賞は、映画における特殊メイク・キャラクターメイク・ヘアスタイルの技術的・芸術的な卓越性を評価する部門です。俳優を別人に変えるトランスフォーメーションメイク、老化メイク、特殊効果メイクなど多岐にわたる技術が対象となります。第92回では、実在するFOXニュースの人物たちに俳優を似せた精緻な変身メイクが施された『スキャンダル(Bombshell)』が受賞しました。シャーリーズ・セロンをメーガン・ケリーに、ジョン・リスゴーをロジャー・エイルズに変えたリアルな特殊メイクは「見分けがつかない」と絶賛されました。ジョーカーの派手なフェイスペイントや『ジュディ 虹の彼方に』の時代再現メイクも高い評価を受けノミネートされています。

受賞
Winner
スキャンダル[Bombshell]

ノミネート
Nominees
ジョーカー[Joker]
ジュディ 虹の彼方に[Judy]
マレフィセント2[Maleficent: Mistress of Evil]
1917 命をかけた伝令[1917]

視覚効果賞 / Shikaku Kouka Shou[Best Visual Effects]

視覚効果賞は、映画におけるCGI(コンピュータグラフィックス)・デジタル合成・ミニチュア・光学処理などの視覚効果技術の卓越性を評価する部門です。リアリティと芸術性の両立、技術革新への貢献が評価のポイントとなります。第92回では、全編ワンショット撮影を実現した『1917 命をかけた伝令』が受賞しました。実写の戦場撮影にデジタル合成を組み合わせ、カット割りを感じさせないシームレスな映像体験を生み出した技術は高く評価されました。ノミネートには、億単位のCGキャラクターが登場した『アベンジャーズ/エンドゲーム』、全編フォトリアルなCGで制作された実写版『ライオン・キング』なども名を連ね、VFX技術の最前線が競いました。

受賞
Winner
1917 命をかけた伝令[1917]

ノミネート
Nominees
アベンジャーズ/エンドゲーム[Avengers: Endgame] ⇒ ダン・デレウー[Dan DeLeeuw]
アイリッシュマン[The Irishman]
ライオン・キング[The Lion King] ⇒ ロバート・レガト[Rob Legato]、アダム・バルデス
スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け[Star Wars: The Rise of Skywalker] ⇒ ロジャー・ガイエット[Roger Guyett]

音響賞(編集) / Onkyou Henshuh Shou[Best Sound Editing]

音響賞(編集)は、映画における効果音・環境音・音響エフェクトの収録・編集技術の卓越性を評価する部門です。観客を映画の世界に引き込む臨場感ある音響デザインが評価されます。なお、第94回(2022年)からはこの部門と音響賞(調整)の2部門が統合され、「音響賞(Best Sound)」の1部門となっています。第92回では、本物のレースカーの轟音や機械音を精緻に収録・編集した『フォードvsフェラーリ』が受賞しました。ル・マン24時間耐久レースの緊張感と興奮を音で完璧に再現した音響編集が高く評価されました。

受賞
Winner
フォードvsフェラーリ[Ford v Ferrari]

ノミネート
Nominees
ジョーカー[Joker]
1917 命をかけた伝令[1917]
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド[Once Upon a Time in Hollywood]
スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け[Star Wars: The Rise of Skywalker] – マシュー・ウッド[Matthew Wood]

音響賞(調整) / Rokuon Shou[Best Sound Mixing]

音響賞(調整)は、映画における台詞・音楽・効果音のバランス調整(ミキシング)技術の卓越性を評価する部門です。完成した音素材を最終的にブレンドしてバランスの整った音響に仕上げる工程が評価されます。第94回(2022年)からは音響賞(編集)と統合されています。第92回では『1917 命をかけた伝令』が受賞し、視覚効果賞・撮影賞との3冠を達成しました。砲弾の炸裂音、塹壕を走る足音、遠くから聞こえる戦場の喧騒まで、全方位の音響体験として戦場のリアリティを完璧に再現したミキシングが評価されました。

受賞
Winner
1917 命をかけた伝令[1917]

ノミネート
Nominees
アド・アストラ[Ad Astra]
フォードvsフェラーリ[Ford v Ferrari]
ジョーカー[Joker]
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド[Once Upon a Time in Hollywood]

編集賞 / Henshuh Shou[Best Film Editing]

編集賞は、映画編集(フィルム・エディティング)の技術的・芸術的な卓越性を評価する部門です。映画のテンポ・リズム・緊張感・感情の流れを左右する編集は「映画の第三の脚本」とも呼ばれ、優れた編集者は観客が編集の存在に気づかないほど自然なストーリーテリングを実現します。第92回では、マット・デイモンとクリスチャン・ベールが演じたレースチームの熱闘を描く『フォードvsフェラーリ』のマイケル・マカスカーとアンドリュー・バックランドが受賞しました。152分という長尺ながら一切の冗長さを感じさせず、レースシーンの疾走感と人間ドラマの深みを巧みに組み合わせた編集が高く評価されました。

受賞
Winner
フォードvsフェラーリ[Ford v Ferrari] ⇒ マイケル・マカスカー[Michael McCusker]、アンドリュー・バックランド[Andrew Buckland]

ノミネート
Nominees
アイリッシュマン[The Irishman] ⇒ セルマ・スクーンメイカー[Thelma Schoonmaker]
ジョジョ・ラビット[Jojo Rabbit] ⇒ トム・イーグルズ[Tom Eagles]
ジョーカー[Joker] ⇒ ジェフ・グロス[Jeff Groth]
パラサイト 半地下の家族[Parasite] ⇒ ヤン・チンモ[Yang Jinmo]

ドキュメンタリー長編賞 / Chouhen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Feature Film]

ドキュメンタリー長編賞は、実在の出来事や人物を題材とした40分以上のドキュメンタリー映画に贈られます。社会問題・政治・歴史・自然・人物など多様なテーマを扱った作品が対象で、現実世界への洞察力と映画としての完成度が評価されます。第92回では、バラク・オバマ元大統領夫妻の制作会社「Higher Ground」が共同製作に参加した『アメリカン・ファクトリー』が受賞しました。オハイオ州デイトンで中国企業が廃工場を再稼働させる過程で生じる文化的摩擦・労働環境・グローバリゼーションの矛盾を赤裸々に描いたドキュメンタリーで、現代の雇用問題を鋭く掘り下げた作品です。

受賞
Winner
アメリカン・ファクトリー[American Factory] ⇒ スティーヴン・ボグナー[Steven Bognar]、ジュリア・ライカート[Julia Reichert]、ジェフ・ライカート[Jeff Reichert]

ノミネート
Nominees
ザ・ケーブ[The Cave] ⇒ フェラス・ファヤード[Feras Fayyad]
ブラジル -消えゆく民主主義-[The Edge of Democracy] ⇒ ペトラ・コスタ[Petra Costa]、ジョアンナ・ナタセガラ[Joanna Natasegara]、シェーン・ボリス[Shane Boris]、チアゴ・パヴァン[Thiago Pavan]
娘は戦場で生まれた[For Sama] ⇒ ワアド・アル=カデブ[Waad al-Kateab]、エドワード・ワッツ[Edward Watts]
ハニーランド 永遠の谷[Honeyland] ⇒ リュボミル・ステファノフ[Ljubomir Stefanov]、タマラ・コテフスカ[Tamara Kotevska]、アタナス・ゲオルギエフ[Atanas Georgiev]

ドキュメンタリー短編賞 / Tanpen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Short Subject]

ドキュメンタリー短編賞は、40分以下のドキュメンタリー短編映画に贈られます。長編ドキュメンタリーでは描きにくいテーマを凝縮した形で伝える作品が評価されます。第92回では、戦火のアフガニスタンで女の子たちにスケートボードを教える活動を描いた『スケボーが私を変える アフガニスタン 少女たちの挑戦(Learning to Skateboard in a Warzone (If You're a Girl))』が受賞しました。紛争地域の子どもたちに自由と自己表現をもたらす活動を通じて、希望と人間の強さを描いた感動的な作品です。

受賞
Winner
スケボーが私を変える アフガニスタン 少女たちの挑戦[Learning to Skateboard in a Warzone (If You're a Girl)] ⇒ キャロル・ダイシンガー[Carol Dysinger]、エレナ・アンドレイチェーヴァ[Elena Andreicheva]

ノミネート
Nominees
IN THE ABSENCE[In the Absence] ⇒ イ・スンジュン[Lee Seung-jun]
眠りに生きる子供たち[Life Overtakes Me] ⇒ ジョン・ハプタス[Jon Shenk]、クリスティン・サミュエルソン[Kristine Samuelson]
ST. LOUIS SUPERMAN[St. Louis Superman]
WALK RUN CHA-CHA[Walk Run Cha-Cha] ⇒ ローラ・ニックス[Laura Nix]

短編実写賞 / Tanpen Eiga Shou[Best Live Action Short Film]

短編実写賞は、40分以下の実写短編映画に贈られます。新進の映画制作者が国際的な評価を得るための重要な登竜門であり、限られた尺の中でいかに深いテーマを表現するかが問われます。第92回では、アパートの窓から向かいの家族を覗き見することで生き甲斐を見出す老夫婦を描いた米国作品『THE NEIGHBORS' WINDOW(The Neighbor's Window)』が受賞しました。2019年に公開された本作は、喪失と生の意味を繊細なタッチで描き、短い尺ながら深い余韻を残す作品として高く評価されました。

受賞
Winner
THE NEIGHBORS' WINDOW[The Neighbor's Window]

ノミネート
Nominees
BROTHERHOOD[Brotherhood]
NEFTA FOOTBALL CLUB[Nefta Football Club]
SARIA[Saria] ⇒ ブライアン・バックリー[Bryan Buckley]
A SISTER[A Sister]

短編アニメ賞 / Tanpen Anime Shou[Best Animated Short Film]

短編アニメ賞は、アニメーション技法で制作された短編映画に贈られます。手描きアニメ・CGアニメ・ストップモーションなど多様な技法の作品が候補となり、表現の多様性と芸術性が評価されます。第92回では、黒人の父親がひとりで娘のアフロヘアをスタイリングしようと奮闘する姿を描いた『HAIR LOVE(Hair Love)』が受賞しました。黒人の父親と娘の絆と、黒人女性のナチュラルヘアに対する自己肯定感をテーマにした本作は、社会的なメッセージ性と心温まるストーリーが高く評価されました。監督のマシュー・A・チェリーは受賞スピーチで「自然なヘアスタイルを差別から守るCROWN法」への支持を訴え話題となりました。

受賞
Winner
HAIR LOVE[Hair Love]

ノミネート
Nominees
DCERA (DAUGHTER)[Dcera (Daughter)]
猫とピットブル[Kitbull] ⇒ ロザーナ・サリヴァン
MEMORABLE[Memorable] ⇒ ブリュノ・コレ[Bruno Collet]
SISTER[Sister]

長編アニメ賞 / Chouhen Anime Eiga Shou[Best Animated Feature Film]

長編アニメ映画賞は、その年に公開された最も優れた長編アニメーション映画に贈られます。この部門は2002年の第74回から設置されました。第92回では、ピクサー・アニメーション・スタジオ制作の『トイ・ストーリー4』が受賞しました。1995年にシリーズが始まって以来24年、愛されてきたキャラクターたちの物語を感動的に完結させた本作は、世界興行収入が10億ドルを超える大ヒットを記録するとともに、ピクサーの卓越したストーリーテリングと映像表現技術の高さを改めて証明しました。ノミネートには、フランスのアニメ映画『失くした体(I Lost My Body)』や北欧を舞台にした『クロース(Klaus)』など、欧州発の高品質アニメーション作品も名を連ねました。

受賞
Winner
トイ・ストーリー4[Toy Story 4]

ノミネート
Nominees
ヒックとドラゴン 聖地への冒険[How to Train Your Dragon: The Hidden World]
失くした体[I Lost My Body]
クロース[Klaus]
ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒[Missing Link]

第92回アカデミー賞(2020年)受賞結果まとめ

第92回アカデミー賞は、2020年2月9日(現地時間)の授賞式において映画史に残る数々の記録が生まれた、歴史的な回となりました。以下に主要な受賞結果と各部門のハイライトをまとめます。

パラサイト 半地下の家族の歴史的4冠達成

第92回最大のニュースは、ポン・ジュノ監督の韓国映画『パラサイト 半地下の家族(Parasite)』による前人未踏の4冠達成でした。作品賞・監督賞・脚本賞(オリジナル)・国際長編映画賞の4部門を独占したことは、アカデミー賞の91年の歴史において非英語映画として初めてのことです。特に作品賞の受賞は、ハリウッドの映画賞の中心的な存在であるアカデミー賞が、英語圏以外の映画を最高峰として認めた歴史的な瞬間として、世界の映画ファンに深い感動をもたらしました。

  • 作品賞:パラサイト 半地下の家族[Parasite] — 非英語映画として史上初の作品賞受賞
  • 監督賞:ポン・ジュノ[Bong Joon-ho](パラサイト 半地下の家族) — 韓国映画界初の監督賞受賞
  • 脚本賞(オリジナル):ポン・ジュノ、ハン・チンウォン(パラサイト 半地下の家族)
  • 国際長編映画賞:パラサイト 半地下の家族(韓国) — 同年の作品賞との史上初のダブル受賞

演技部門の受賞者一覧と注目ポイント

第92回の演技部門は、いずれも下馬評通りの結果となりながら、それぞれが映画史に残る名演として語り継がれる受賞となりました。

  • 主演男優賞:ホアキン・フェニックス[Joaquin Phoenix](ジョーカー) — キャリア4度目のノミネートで念願の初受賞。孤独と狂気の化身を演じた圧倒的な演技が評価された
  • 主演女優賞:レネー・ゼルウィガー[Renée Zellweger](ジュディ 虹の彼方に) — 2003年の助演女優賞受賞に続く2度目のオスカー。晩年のジュディ・ガーランドを完璧に演じた
  • 助演男優賞:ブラッド・ピット[Brad Pitt](ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド) — クエンティン・タランティーノ監督作でのスタントマン役が評価され初のオスカー受賞
  • 助演女優賞:ローラ・ダーン[Laura Dern](マリッジ・ストーリー) — 離婚弁護士ノラ役でカリスマ的な存在感を放ち、初のアカデミー賞受賞を果たした

技術部門で3冠の『1917 命をかけた伝令』

サム・メンデス監督が第一次世界大戦を題材に全編ワンカット撮影を試みた戦争映画『1917 命をかけた伝令』は、技術部門で3冠を獲得しました。

  • 撮影賞:ロジャー・ディーキンス(1917) — シームレスな長回し撮影で映画史に残る映像体験を実現
  • 視覚効果賞:1917 命をかけた伝令 — 実写とデジタル合成を組み合わせた圧倒的なリアリティ
  • 音響賞(調整):1917 命をかけた伝令 — 戦場の全方位音響体験として評価

その他の主要受賞作品

  • 脚色賞:タイカ・ワイティティ(ジョジョ・ラビット) — ナチス時代を子供の視点で描いた反戦コメディの見事な脚色
  • 作曲賞:ヒルドゥル・グーナドッティル(ジョーカー) — チェロを主軸にした前衛的スコアで映画を芸術的高みへ
  • 歌曲賞:「(I'm Gonna) Love Me Again」(ロケットマン) — エルトン・ジョン自身が作詞・作曲した感動的な楽曲
  • 長編アニメ賞:トイ・ストーリー4 — ピクサーの傑作シリーズを感動的に締めくくった4作目
  • 美術賞:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド — 1969年ハリウッドの完璧な再現
  • 衣装デザイン賞:ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 — 19世紀の衣裳を現代的感覚で再現
  • メイクアップ&ヘアスタイリング賞:スキャンダル — 俳優を実在人物に変えた精緻なトランスフォームメイク
  • 編集賞:フォードvsフェラーリ — レースの疾走感と人間ドラマを巧みに融合した編集
  • 音響賞(編集):フォードvsフェラーリ — 本物のレースカーの音響を精緻に収録・編集
  • ドキュメンタリー長編賞:アメリカン・ファクトリー — グローバリゼーションの現実を描いた社会派ドキュメンタリー
  • ドキュメンタリー短編賞:スケボーが私を変える アフガニスタン 少女たちの挑戦 — 紛争地域での希望と自由を描く
  • 短編実写賞:THE NEIGHBORS' WINDOW — 喪失と生の意味を繊細に描いた感動作
  • 短編アニメ賞:HAIR LOVE — 黒人の父と娘の絆と自己肯定感を描いた心温まる作品

第92回アカデミー賞が映画史に残した意義

第92回アカデミー賞は、「多様性」と「国際化」という観点から映画史上最も重要な授賞式のひとつとして記憶されています。非英語映画の作品賞受賞という歴史的快挙は、英語圏中心だった映画賞の価値観を根本から変え、世界中の優れた映画が等しく評価される新時代の幕開けを告げました。

また、ポン・ジュノ監督が授賞式で引用した「最も個人的な映画こそ最もクリエイティブな映画だ」という言葉(マーティン・スコセッシ監督の言葉)は、映画制作の本質を突いた言葉として世界の映画ファンに深い共感を呼びました。2019年の映画は、社会問題・格差・戦争・アイデンティティなど重要なテーマを扱った作品が数多く生まれ、エンターテインメントと芸術の両立という映画の理想形を示した年でもありました。第92回アカデミー賞の受賞作・ノミネート作品は、いずれも時代を超えて語り継がれる映画の遺産として、映画ファン必見の作品ばかりです。