[1930年11月開催(1929年8月〜1930年7月映画作品対象)]第3回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜
アカデミー賞(Academy Awards)とは、映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences、略称AMPAS)が主催する、アメリカ合衆国で最も権威のある映画賞です。アメリカ合衆国における映画の健全な発展と芸術・科学の品質向上などを目的に設立され、毎年、映画のキャスト(俳優・女優)やスタッフ(監督・脚本家・撮影監督・美術監督・録音技師など)といった関係者を部門別に表彰し、その年の優れた業績を讃えます。
受賞作品・受賞者には賞金は出ませんが、高さ約34cm・重さ約3.85kgの金色のオスカー像(Oscar Statuette)が授与されるため、一般的に「オスカー賞(The Oscars)」とも呼ばれ、世界中の映画ファンに親しまれています。
アカデミー賞の歴史は世界三大映画祭(カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭)よりも古く、第1回のアカデミー賞授賞式は1929年5月16日にハリウッドのルーズベルト・ホテルで開催されました。以来、毎年開催され続け、今では世界中が注目する映画界最大のイベントとなっています。
特にアカデミー賞へのノミネート及び受賞結果は世界中のメディアで大きく報道されるため、各国における対象映画の興行成績やDVD・ブルーレイの売上に対して大きな影響力を持っています。ノミネートされただけでも注目度が飛躍的に高まることから、映画製作者にとって最も重要な映画賞の一つとされています。
アカデミー賞のノミネート作品および受賞作品は、AMPASの会員である映画界で著名なプロデューサー、監督、脚本家、俳優、技術者、批評家などにより構成される選考委員(投票権を持つアカデミー会員)によって選ばれます。その厳正な選考と高い評価から世間でも毎年話題の中心となるため、映画ファンなら1度は見ておくべき名作揃いと言えるでしょう。
今回は、このように映画史的にも一見の価値があるアカデミー賞(オスカー賞)の1930年11月5日に開催された第3回授賞式(対象作品:1929年8月1日〜1930年7月31日公開の映画作品)におけるノミネート映画作品・受賞映画作品の結果を部門別に紹介します。
第3回アカデミー賞の概要
第3回アカデミー賞(3rd Academy Awards)は、1930年11月5日にカリフォルニア州ロサンゼルスのアンバサダー・ホテル(Ambassador Hotel)のココナッツ・グローブ(Cocoanut Grove)にて開催されました。司会はコンラッド・ネイジル(Conrad Nagel)が務めました。
第3回は「トーキー映画(発声映画)」が本格的に普及した時代の作品が対象となった授賞式であり、サイレント映画からトーキー映画への転換期を象徴する回として映画史上重要な意味を持っています。この回では、第一次世界大戦の悲惨さを描いた反戦映画の傑作『西部戦線異状なし(All Quiet on the Western Front)』が作品賞と監督賞の2冠を獲得し、トーキー映画の表現力の高さを世界に示しました。
[1930年11月開催(1929年8月〜1930年7月映画作品対象)]第3回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜
以下に、第3回アカデミー賞の各部門における受賞作品(Winner)およびノミネート作品(Nominees)を一覧で紹介します。各作品名をクリックすると関連情報を確認できます。
作品賞 / Sakuhin Shou[Best Picture]
作品賞(Best Picture)は、その年に公開された映画の中で最も優れた作品に贈られるアカデミー賞の最高賞です。第3回では、エリッヒ・マリア・レマルクの同名小説を原作とした反戦映画『西部戦線異状なし』がユニバーサル・スタジオの作品として受賞しました。
| 受賞 Winner |
西部戦線異状なし[All Quiet on the Western Front] |
| ノミネート Nominees |
ビッグ・ハウス[The Big House] |
監督賞 / Kantoku Shou[Best Director]
監督賞(Best Director)は、その年に最も優れた演出を行った映画監督に贈られる賞です。第3回では、ルイス・マイルストンが『西部戦線異状なし』の卓越した演出により受賞しました。マイルストンは戦場のリアリズムと兵士の心理描写を見事に融合させ、反戦映画の金字塔を築きました。
| 受賞 Winner |
西部戦線異状なし[All Quiet on the Western Front] |
| ノミネート Nominees |
アンナ・クリスティ[Anna Christie] |
主演男優賞 / Shuen Danyuh Shou[Best Actor]
主演男優賞(Best Actor)は、その年に最も優れた演技を見せた主演男優に贈られる賞です。第3回では、イギリス出身の名優ジョージ・アーリスが『Disraeli』でのイギリス首相ベンジャミン・ディズレーリ役の演技により受賞しました。アーリスは舞台で長年培った重厚な演技力でトーキー時代の到来にいち早く適応し、その格調高い台詞回しが高く評価されました。
| 受賞 Winner |
Disraeli |
| ノミネート Nominees |
The Green Goddess |
主演女優賞 / Shuen Joyuh Shou[Best Actress]
主演女優賞(Best Actress)は、その年に最も優れた演技を見せた主演女優に贈られる賞です。第3回では、ノーマ・シアラーが『結婚双紙(The Divorcee)』で受賞しました。シアラーは離婚という当時タブー視されていたテーマを大胆かつ繊細に演じ、女性の自立と自由を体現する新しいヒロイン像を確立しました。なお、同じくノミネートされたグレタ・ガルボも2作品でノミネートされるなど、女優陣の演技が際立つ年でもありました。
| 受賞 Winner |
結婚双紙[The Divorcee] |
| ノミネート Nominees |
悪魔の日曜日[The Devil’s Holiday] |
脚色賞 / Kyakushoku Shou[Best Screenplay]
脚色賞(Best Writing)は、その年に最も優れた脚本を執筆した脚本家に贈られる賞です。第3回では、フランシス・マリオン(Frances Marion)が『ビッグ・ハウス(The Big House)』の脚本により受賞しました。マリオンは刑務所内の人間ドラマをリアルかつ緊迫感あふれる構成で描き、トーキー映画ならではの台詞の力を存分に活かした脚本が高く評価されました。マリオンはハリウッド黄金期を代表する女性脚本家の一人であり、本受賞はその功績を象徴するものです。
| 受賞 Winner |
ビッグ・ハウス[The Big House] |
| ノミネート Nominees |
西部戦線異状なし[All Quiet on the Western Front] |
録音賞 / Rokuon Shou[Best Sound Recording]
録音賞(Best Sound Recording)は、その年に最も優れた録音技術を実現した技術者に贈られる賞です。サイレント映画からトーキー映画への移行期にあたる1930年前後は、映画における音声録音技術が急速に発展した時代であり、この賞は当時の映画産業において極めて重要な意味を持っていました。第3回では、ダグラス・シアラー(Douglas Shearer)が『ビッグ・ハウス(The Big House)』の録音技術により受賞しました。シアラーはMGMの録音部門を率い、後に12回のアカデミー賞を受賞する伝説的な録音技師です。
| 受賞 Winner |
ビッグ・ハウス[The Big House] |
| ノミネート Nominees |
The Case of Sergeant Grischa |
美術賞 / Bijutsu Shou[Best Art Direction]
美術賞(Best Art Direction)は、その年に最も優れた美術・セットデザインを実現した美術監督に贈られる賞です。第3回では、ハーマン・ロス(Herman Rosse)が『キング・オブ・ジャズ(King of Jazz)』の美術デザインにより受賞しました。『キング・オブ・ジャズ』はポール・ホワイトマン楽団を中心としたミュージカル・レビュー映画であり、ロスはジャズの躍動感とアール・デコ調の華やかさを融合した革新的なステージデザインで、初期トーキー映画における視覚表現の可能性を大きく広げました。
| 受賞 Winner |
キング・オブ・ジャズ[King of Jazz] |
| ノミネート Nominees |
ブルドッグ・ドラモンド[Bulldog Drummond] |
撮影賞 / Satsuei Shou[Best Cinematography]
撮影賞(Best Cinematography)は、その年に最も優れた撮影技術を披露した撮影監督に贈られる賞です。第3回では、ジョセフ・T・ラッカー(Joseph T. Rucker)とウィラード・ヴァンダーヴィーア(Willard Van der Veer)が、ドキュメンタリー映画『バード少将南極探険(With Byrd at the South Pole)』の撮影により受賞しました。この作品はリチャード・バード少将率いる南極探検隊に同行して撮影されたドキュメンタリーであり、極寒の南極大陸という過酷な環境下での撮影は当時としては画期的な偉業でした。劇映画ではなくドキュメンタリー作品が撮影賞を受賞したことは、映像記録としての映画の価値を示す象徴的な出来事です。
| 受賞 Winner |
バード少将南極探険[With Byrd at the South Pole] |
| ノミネート Nominees |
西部戦線異状なし[All Quiet on the Western Front] |
第3回アカデミー賞(1930年11月開催)のまとめ
第3回アカデミー賞は、サイレント映画からトーキー映画(発声映画)への完全な移行期に開催された歴史的に重要な授賞式でした。作品賞と監督賞の2冠に輝いた『西部戦線異状なし(All Quiet on the Western Front)』は、音声の導入によって戦場の恐怖と兵士の苦悩をよりリアルに表現することに成功し、トーキー映画が単なる技術的な進歩にとどまらず、映画芸術そのものを新たな次元へと押し上げる可能性を証明しました。
また、『ビッグ・ハウス(The Big House)』が脚色賞と録音賞の2部門で受賞したことは、脚本における台詞の重要性と録音技術の進歩がトーキー時代の映画制作において不可欠な要素であったことを示しています。主演男優賞のジョージ・アーリスや主演女優賞のノーマ・シアラーの受賞は、舞台経験に裏打ちされた発声演技の巧みさがトーキー時代に高く評価されたことを物語っています。
第3回アカデミー賞の受賞作品・ノミネート作品は、映画史における転換期を象徴する名作揃いです。1930年代のハリウッド黄金期の幕開けを飾るこれらの作品を通じて、映画芸術がいかに進化してきたかを体感できるでしょう。

