[1930年4月開催(1928年8月〜1929年7月映画作品対象)]第2回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜
アカデミー賞(Academy Awards)とは、映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences、略称:AMPAS)が主催する、世界で最も権威ある映画賞の一つです。アメリカ合衆国における映画の健全な発展と芸術・科学の品質向上などを目的に、キャストやスタッフなどの映画関係者を毎年部門別に表彰し、その功績と成果を讃えています。
受賞作品・受賞者には賞金は授与されませんが、金色のオスカー像(正式名称:Academy Award of Merit)が贈られるため、一般的に「オスカー賞(The Oscars)」とも呼ばれます。このオスカー像は映画人にとって最高の栄誉の象徴であり、受賞者のキャリアに計り知れない影響を与えます。
アカデミー賞の歴史は非常に古く、世界三大映画祭(カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭)よりも長い伝統を持っています。第1回のアカデミー賞授賞式は1929年5月16日にハリウッドのルーズベルトホテルで開催され、以来約1世紀にわたり世界中の映画ファンが注目する映画界最大のイベントとなっています。
アカデミー賞へのノミネートおよび受賞結果は全世界で大きく報道されるため、各国における対象映画の興行成績や知名度に対して極めて大きな影響力を持っています。ノミネートだけでも映画の興行収入が大幅に増加することが知られており、受賞ともなれば歴史に残る名作として語り継がれます。
アカデミー賞のノミネート作品および受賞作品は、映画界で著名なプロデューサー、監督、脚本家、俳優、批評家などにより構成されるAMPAS会員(投票権を持つ映画芸術科学アカデミー会員)の投票によって選ばれます。その高い評価基準から世間でも常に話題の中心となるため、映画ファンならずとも一度は鑑賞しておくべき作品群と言えるでしょう。
第2回アカデミー賞の概要と歴史的背景
第2回アカデミー賞授賞式は、1930年4月3日にカリフォルニア州ロサンゼルスのアンバサダーホテルのココナッツ・グローブで開催されました。対象作品は1928年8月1日から1929年7月31日までに公開された映画作品です。
この時期のハリウッドは、サイレント映画からトーキー(発声映画)への歴史的な転換期にあたり、第2回アカデミー賞は初めてトーキー映画が主要部門を席巻した授賞式として映画史に刻まれています。1927年公開の『ジャズ・シンガー』が音声付き映画の時代を切り開いた後、各スタジオが競ってトーキー作品を製作し、映画産業は急速に変貌を遂げていました。
第2回では、サイレント時代には存在しなかった音楽や歌唱を取り入れたミュージカル映画が台頭し、作品賞にはMGM製作の『ブロードウェイ・メロディー』が輝きました。これは初のオールトーキーによるミュージカル映画であり、音声技術の進歩が映画表現をいかに広げたかを象徴する受賞でした。
また、第2回アカデミー賞では第1回に設けられていた「芸術作品賞(Unique and Artistic Picture)」が廃止され、作品賞(Outstanding Picture)に一本化されました。このことは、アカデミー賞の選考基準が初期の試行錯誤を経て、より明確な形式へと整備されていく過程を示しています。
今回はこのように映画史における重要な転換点となった第2回アカデミー賞(オスカー賞)のノミネート映画作品・受賞映画作品の全部門の結果を、各部門の解説とともに紹介します。
[1930年4月開催(1928年8月〜1929年7月映画作品対象)]第2回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜
作品賞 / Best Picture(Outstanding Picture)
作品賞(Outstanding Picture)は、その年に公開された映画作品の中で最も優れた作品に贈られるアカデミー賞の最高賞です。第2回では、サイレント映画からトーキーへの過渡期を反映し、音声付き映画が初めて作品賞を受賞しました。受賞作『ブロードウェイ・メロディー』は、MGMが製作した初のオールトーキー・ミュージカル映画であり、ブロードウェイの舞台裏を描いた華やかな歌と踊りの物語です。この受賞は映画における音声と音楽の新時代の幕開けを象徴するものでした。
| 受賞 Winner |
ブロードウェイ・メロディー[The Broadway Melody] |
| ノミネート Nominees |
アリバイ[Alibi] |
監督賞 / Best Director
監督賞(Best Director)は、最も優れた演出を行った映画監督に贈られる部門です。第2回ではフランク・ロイドが『情炎の美姫』で受賞しました。フランク・ロイドは同回で3作品(『情炎の美姫』『愛の曳網』『ウィアリー・リヴァー』)がノミネートされるという快挙を成し遂げており、当時のハリウッドにおける彼の多作かつ高い演出力が際立っていたことを示しています。
| 受賞 Winner |
情炎の美姫[The Divine Lady] |
| ノミネート Nominees |
ブロードウェイ・メロディー[The Broadway Melody] |
主演男優賞 / Best Actor
主演男優賞(Best Actor)は、最も優れた演技を披露した主演男優に贈られる部門です。第2回ではワーナー・バクスターが西部劇トーキー『懐しのアリゾナ』でのシスコ・キッド役の演技で受賞しました。『懐しのアリゾナ』はハリウッド初の屋外ロケーションで撮影されたトーキー映画としても知られ、バクスターの声と演技力がトーキー時代の俳優に求められる新たな基準を示しました。
| 受賞 Winner |
懐しのアリゾナ[In Old Arizona] |
| ノミネート Nominees |
サンダーボルト[Thunderbolt] |
主演女優賞 / Best Actress
主演女優賞(Best Actress)は、最も優れた演技を披露した主演女優に贈られる部門です。第2回ではメアリー・ピックフォードが『コケット』で受賞しました。ピックフォードは「アメリカの恋人(America's Sweetheart)」の愛称で親しまれたサイレント映画時代の大スターであり、ユナイテッド・アーティスツの共同設立者としても知られています。『コケット』は彼女の初のトーキー出演作品であり、サイレント時代のイメージを一新する南部の若い女性役を見事に演じました。
| 受賞 Winner |
コケット[Coquette] |
| ノミネート Nominees |
マダムX[Madame X] |
脚色賞 / Best Writing
脚色賞(Best Writing)は、最も優れた脚本を書いた脚本家に贈られる部門です。第2回ではハンス・クレイリーが『The Patriot』で受賞しました。『The Patriot』はロシア皇帝パーヴェル1世の暗殺を題材にした歴史ドラマで、エルンスト・ルビッチ監督との名コンビで知られるクレイリーの巧みな脚色が高く評価されました。なお、この作品はアカデミー賞の歴史において唯一、作品の完全なプリントが現存しない「失われた映画」としても知られています。
| 受賞 Winner |
The Patriot |
| ノミネート Nominees |
The Cop |
美術賞 / Best Art Direction
美術賞(Best Art Direction)は、映画の視覚的世界観を構築する美術監督の優れた仕事に贈られる部門です。第2回ではセドリック・ギボンズが『The Bridge of San Luis Rey(サン・ルイス・レイの橋)』で受賞しました。ギボンズはMGMの美術部門責任者として長年にわたりハリウッドの映画美術を牽引した人物であり、実はアカデミー賞のオスカー像のデザイナーとしても知られています。彼はキャリアを通じてアカデミー賞に39回ノミネートされ、11回受賞するという驚異的な記録を残しました。
| 受賞 Winner |
The Bridge of San Luis Rey |
| ノミネート Nominees |
アリバイ[Alibi] |
撮影賞 / Best Cinematography
撮影賞(Best Cinematography)は、最も優れた撮影技術を発揮した撮影監督に贈られる部門です。第2回ではクライド・デ・ヴィンナが『White Shadows in the South Seas(南海の白影)』で受賞しました。この作品は南太平洋の島々で大規模なロケーション撮影が行われた冒険ドラマであり、当時としては極めて困難だった自然光を活かした美しい映像表現が高く評価されました。
| 受賞 Winner |
White Shadows in the South Seas |
| ノミネート Nominees |
情炎の美姫[The Divine Lady] |
第2回アカデミー賞の歴史的意義まとめ
第2回アカデミー賞(1930年4月開催)は、映画産業がサイレントからトーキーへと大きく変革する時代を映し出した授賞式でした。初のオールトーキー・ミュージカル映画『ブロードウェイ・メロディー』が作品賞に輝き、初の屋外ロケ撮影トーキー『懐しのアリゾナ』からは主演男優賞が生まれ、サイレント時代の大スターであるメアリー・ピックフォードがトーキーへの転身に成功して主演女優賞を獲得するなど、まさに映画の新時代を予感させる受賞結果となりました。
この時期にノミネート・受賞した映画作品や映画人たちは、その後の映画史における技術革新と芸術表現の発展に大きな足跡を残しています。サイレントからトーキーへの転換という映画史上最大級の技術革命を乗り越え、新たな表現の可能性を切り開いた彼らの功績は、約1世紀を経た現在でも映画芸術の礎として高く評価されています。

