[1948年開催(1947年映画作品対象)]第20回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜
アカデミー賞(オスカー賞)とは
アカデミー賞(Academy Awards)とは、映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences、略称: AMPAS)が主催する、アメリカ合衆国を代表する映画賞です。アメリカにおける映画の健全な発展と、映画に関わる芸術・科学の品質向上を目的として、俳優・監督・脚本家・技術スタッフなどの映画関係者を毎年部門別に表彰し、その功績を讃えています。
受賞者には賞金は授与されませんが、金色のオスカー像(Oscar statuette)が贈られることから「オスカー賞(The Oscars)」の愛称でも広く知られています。オスカー像は高さ約34cm、重さ約3.9kgの24金メッキのブリタニア合金製で、映画界における最高の栄誉のシンボルとされています。
アカデミー賞の歴史は非常に長く、第1回の授賞式は1929年5月16日にハリウッドのルーズヴェルト・ホテルで開催されました。これは世界三大映画祭として知られるカンヌ国際映画祭(1946年創設)、ベルリン国際映画祭(1951年創設)、ヴェネツィア国際映画祭(1932年創設)のいずれよりも古い歴史を持ちます。現在では世界中が注目する映画界最大の祭典となっています。
アカデミー賞へのノミネートおよび受賞の結果は世界各国で大きく報道されるため、対象映画の興行成績に極めて大きな影響力を持っています。ノミネート・受賞作品は、映画界で著名なプロデューサー、監督、脚本家、俳優、批評家など約10,000人以上の会員で構成されるアカデミー会員の投票によって選出されます。
第20回アカデミー賞(1948年)の概要と開催背景
第20回アカデミー賞授賞式は、1948年3月20日にカリフォルニア州ロサンゼルスのシュライン・オーディトリアム(Shrine Auditorium)で開催されました。対象となったのは1947年に公開された映画作品です。
1947年のアメリカ映画界は、第二次世界大戦後の社会問題を鋭く描いた作品が多数制作された時期でした。この年の授賞式では、反ユダヤ主義の問題を正面から取り上げた『紳士協定(Gentleman's Agreement)』が作品賞・監督賞・助演女優賞の3部門を制し、社会派映画が高く評価されました。監督のエリア・カザン(Elia Kazan)は本作で初の監督賞を受賞しています。
同じく社会的テーマを扱った『十字砲火(Crossfire)』も5部門にノミネートされ、社会問題に対する映画界の意識の高まりを反映した授賞式となりました。また、イタリアのネオレアリズモ映画『靴みがき(Shoe-Shine)』がヴィットリオ・デ・シーカ監督作品として外国語映画賞の名誉賞を受賞し、戦後ヨーロッパ映画の芸術的水準の高さを世界に示しました。
技術面では、イギリス映画『黒水仙(Black Narcissus)』がジャック・カーディフの革新的な撮影技術により撮影賞(カラー)と美術賞(カラー)の2部門を受賞。また、クリスマス映画の名作として現在も愛される『三十四丁目の奇蹟(Miracle on 34th Street)』が助演男優賞・脚色賞・原案賞の3部門を受賞し、大きな話題となりました。歌曲賞では、ディズニー映画『南部の唄(Song of the South)』から生まれた「Zip-a-Dee-Doo-Dah」が受賞しており、今日でも広く親しまれている楽曲です。
以下では、第20回アカデミー賞(1948年開催、1947年映画作品対象)の全部門における受賞作品およびノミネート作品を一覧でご紹介します。
[1948年開催(1947年映画作品対象)]第20回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees
作品賞 / Sakuhin Shou[Best Picture]
第20回アカデミー賞の作品賞には5作品がノミネートされました。反ユダヤ主義を題材にした社会派ドラマ『紳士協定』が受賞し、戦後アメリカ社会の差別問題に映画が正面から向き合った記念碑的作品として評価されました。
| 受賞 Winner |
紳士協定[Gentleman’s Agreement] |
| ノミネート Nominees |
気まぐれ天使[The Bishop’s Wife] |
監督賞 / Kantoku Shou[Best Director]
監督賞は『紳士協定』のエリア・カザンが受賞しました。トルコ系移民としてアメリカに渡ったカザンは、社会的不公正への鋭い眼差しを持ち、本作でその才能を遺憾なく発揮しました。
| 受賞 Winner |
紳士協定[Gentleman’s Agreement] |
| ノミネート Nominees |
気まぐれ天使[The Bishop’s Wife] |
主演男優賞 / Shuen Danyuh Shou[Best Actor]
主演男優賞はロナルド・コールマンが『二重生活』での演技により受賞しました。シェイクスピア俳優が舞台の役柄と現実の区別がつかなくなっていく難役を見事に演じ、長年のキャリアに花を添えました。
| 受賞 Winner |
二重生活[A Double Life] |
| ノミネート Nominees |
ボディ・アンド・ソウル[Body and Soul] |
主演女優賞 / Shuen Joyuh Shou[Best Actress]
主演女優賞はロレッタ・ヤングが『ミネソタの娘』で受賞しました。スウェーデン系移民の娘が政界に進出していく姿をユーモアと気品をもって演じ、コメディからシリアスまでこなす演技力が評価されました。
| 受賞 Winner |
ミネソタの娘[The Farmer’s Daughter] |
| ノミネート Nominees |
失われた心[Possessed] |
助演男優賞 / Joen Danyuh Shou[Best Supporting Actor]
助演男優賞はエドマンド・グウェンが『三十四丁目の奇蹟』でサンタクロースを演じ受賞。温かみのある名演技は今なお語り継がれるクリスマス映画の傑作を生み出しました。
| 受賞 Winner |
三十四丁目の奇蹟[Miracle on 34th Street] |
| ノミネート Nominees |
ミネソタの娘[The Farmer’s Daughter] |
助演女優賞 / Joen Joyuh Shou[Best Supporting Actress]
助演女優賞はセレステ・ホルムが『紳士協定』で受賞。反ユダヤ主義に立ち向かう主人公を支える知的で魅力的なファッションライターを好演しました。
| 受賞 Winner |
紳士協定[Gentleman’s Agreement] |
| ノミネート Nominees |
パラダイン夫人の恋[The Paradine Case] |
脚本賞 / Kyakuhon Shou[Best Original Screenplay]
脚本賞(オリジナル脚本)はシドニィ・シェルダンが『独身者と女学生』で受賞。後にベストセラー小説家として世界的に知られるシェルダンにとって、映画界でのキャリアを築いた重要な受賞でした。
| 受賞 Winner |
独身者と女学生[The Bachelor and the Bobby-Soxer] |
| ノミネート Nominees |
ボディ・アンド・ソウル[Body and Soul] |
脚色賞 / Kyakushoku Shou[Best Screenplay]
脚色賞はジョージ・シートンが『三十四丁目の奇蹟』で受賞。原作の魅力を損なうことなく映画に翻案し、クリスマスの定番映画として長く愛される作品に仕上げました。
| 受賞 Winner |
三十四丁目の奇蹟[Miracle on 34th Street] |
| ノミネート Nominees |
影なき殺人[Boomerang!] |
原案賞 / Genan Shou[Best Story]
原案賞はヴァレンタイン・デイヴィスが『三十四丁目の奇蹟』で受賞。同作は脚色賞と合わせて脚本関連2部門を制覇する快挙を達成しました。
| 受賞 Winner |
三十四丁目の奇蹟[Miracle on 34th Street] |
| ノミネート Nominees |
春の凱歌[A Cage of Nightingales] |
外国語映画賞 / Gaikokugo Eiga Shou[Best Foreign Language Film]
外国語映画賞(名誉賞)は、イタリアのヴィットリオ・デ・シーカ監督による『靴みがき』が受賞。戦後ローマの貧困層の子供たちを描いたイタリアン・ネオレアリズモの傑作で、後の『自転車泥棒』へと続くデ・シーカの名声を確立しました。
| 受賞 Winner |
靴みがき[Shoe-Shine] |
| ノミネート Nominees |
長編ドキュメンタリー映画賞 / Chouhen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Feature]
長編ドキュメンタリー映画賞は『Design for Death』が受賞。日本の軍国主義の形成過程を分析したドキュメンタリーで、戦後の国際理解に貢献した作品として評価されました。
| 受賞 Winner |
Design for Death |
| ノミネート Nominees |
短編ドキュメンタリー映画賞 / Tanpen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Short Subject]
| 受賞 Winner |
First Steps |
| ノミネート Nominees |
短編映画賞(一巻) / Tanpen Eiga Shou(Hito Maki)[Best Live Action Short Film One-Reel]
| 受賞 Winner |
Goodbye, Miss Turlock |
| ノミネート Nominees |
Brooklyn, U.S.A. |
短編映画賞(二巻) / Tanpen Eiga Shou(Futa Maki)[Best Live Action Short Film Two-Reel]
| 受賞 Winner |
Climbing the Matterhorn |
| ノミネート Nominees |
Champagne for Two |
短編アニメ賞 / Tanpen Anime Shou[Best Animated Short Film]
短編アニメ賞は『部屋の中で大バトル(Tweetie Pie)』が受賞。トゥイーティーとシルベスターが初めてコンビを組んだ記念すべき作品で、ワーナー・ブラザースのルーニー・テューンズシリーズの人気を決定づけました。
| 受賞 Winner |
部屋の中で大バトル[Tweetie Pie] |
| ノミネート Nominees |
チップとデール[Chip an’ Dale] |
劇・喜劇映画音楽賞 / Geki Kigeki Eiga Ongaku Shou[Best Scoring of a Dramatic or Comedy Picture]
劇・喜劇映画音楽賞はロージャ・ミクローシュが『二重生活』で受賞。ハンガリー出身の作曲家ミクローシュは、映画音楽の巨匠として知られ、心理サスペンスの緊張感を見事に音楽で表現しました。
| 受賞 Winner |
二重生活[A Double Life] |
| ノミネート Nominees |
気まぐれ天使[The Bishop’s Wife] |
ミュージカル映画音楽賞 / Musical Eiga Ongaku Shou[Best Scoring of a Musical Picture]
| 受賞 Winner |
Mother Wore Tights |
| ノミネート Nominees |
闘牛の女王[Fiesta] |
歌曲賞 / Kashou Shou[Best Original Song]
歌曲賞はディズニー映画『南部の唄』から「Zip-a-Dee-Doo-Dah」が受賞。アリー・リューベル作曲、レイ・ギルバート作詞による明るく軽快なこの楽曲は、ディズニーを代表する名曲の一つとして今日まで世界中で親しまれています。
| 受賞 Winner |
“Zip-a-Dee-Doo-Dah" – 南部の唄[Song of the South] |
| ノミネート Nominees |
“A Gal in Calico" – The Time, the Place and the Girl |
録音賞 / Rokuon Shou[Best Sound Recording]
| 受賞 Winner |
気まぐれ天使[The Bishop’s Wife] |
| ノミネート Nominees |
大地は怒る[Green Dolphin Street] |
美術賞(白黒) / Bijutsu Shou(Shiro Kuro)[Best Art Direction Set Decoration Black and White]
| 受賞 Winner |
大いなる遺産[Great Expectations] |
| ノミネート Nominees |
The Foxes of Harrow |
美術賞(カラー) / Bijutsu Shou(Color)[Best Art Direction Set Decoration Color]
| 受賞 Winner |
黒水仙[Black Narcissus] |
| ノミネート Nominees |
ライフ・ウィズ・ファーザー[Life with Father] |
撮影賞(白黒) / Satsuei Shou(Shiro Kuro)[Best Cinematography Black and White]
| 受賞 Winner |
大いなる遺産[Great Expectations] |
| ノミネート Nominees |
幽霊と未亡人[The Ghost and Mrs. Muir] |
撮影賞(カラー) / Satsuei Shou(Color)[Best Cinematography Color]
撮影賞(カラー)はジャック・カーディフが『黒水仙』で受賞。テクニカラーを駆使したヒマラヤの修道院の幻想的な映像美は映画史に残る撮影技術の金字塔とされ、カーディフの名を不朽のものとしました。
| 受賞 Winner |
黒水仙[Black Narcissus] |
| ノミネート Nominees |
ライフ・ウィズ・ファーザー[Life with Father] |
編集賞 / Henshuh Shou[Best Film Editing]
| 受賞 Winner |
ボディ・アンド・ソウル[Body and Soul] |
| ノミネート Nominees |
気まぐれ天使[The Bishop’s Wife] |
視覚効果賞 / Shikaku Kouka Shou[Best Visual Effects]
視覚効果賞は『大地は怒る(Green Dolphin Street)』が受賞。特に地震と津波のシーンにおける視覚効果は当時の技術水準を大きく超えるもので、観客に圧倒的な臨場感を与えました。
| 受賞 Winner |
大地は怒る[Green Dolphin Street] |
| ノミネート Nominees |
征服されざる人々[Unconquered] |
第20回アカデミー賞(1948年)のまとめ
第20回アカデミー賞(1948年開催、1947年映画作品対象)は、戦後アメリカ社会が抱える差別や偏見といった社会問題に映画が真正面から取り組んだ年として、アカデミー賞の歴史において重要な位置を占めています。
主要部門の受賞結果をまとめると、以下の通りです。
- 最多受賞作品: 『紳士協定(Gentleman's Agreement)』 - 作品賞、監督賞、助演女優賞の3部門
- 最多受賞作品(同数): 『三十四丁目の奇蹟(Miracle on 34th Street)』 - 助演男優賞、脚色賞、原案賞の3部門
- 技術部門最多受賞: 『黒水仙(Black Narcissus)』 - 撮影賞(カラー)、美術賞(カラー)の2部門
- 注目の受賞: 『靴みがき(Shoe-Shine)』がイタリア映画として外国語映画賞の名誉賞を受賞
この年の授賞式は、エンターテインメントとしての映画の力だけでなく、社会に対するメッセージを伝える媒体としての映画の可能性を強く示した回でした。反ユダヤ主義を扱った『紳士協定』と人種差別を描いた『十字砲火』が共に作品賞にノミネートされたことは、ハリウッドが社会的責任を意識し始めた象徴的な出来事と言えます。
また、イタリアのネオレアリズモ映画やイギリス映画の技術的革新が評価されたことは、アカデミー賞が国際的な視野を広げつつあったことを示しており、後の国際映画への門戸開放の先駆けとなりました。

