[1935年開催(1934年映画作品対象)]第7回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜
アカデミー賞(Academy Awards)とは、映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences, AMPAS)が主催する、アメリカ合衆国で最も権威ある映画賞です。アメリカ映画産業の健全な発展と、映画における芸術・科学の品質向上を目的として、監督、俳優、脚本家、撮影技師、編集者をはじめとする映画製作に関わるキャスト・スタッフを毎年部門別に表彰し、その優れた功績を讃えます。
受賞作品・受賞者には賞金は授与されませんが、公式に「Academy Award of Merit」と呼ばれる金色のオスカー像(Oscar statuette)が贈られるため、「オスカー賞(The Oscars)」の通称でも広く親しまれています。このオスカー像は高さ約34cm、重さ約3.85kgの金メッキが施されたブリタニア合金製の像で、映画人にとって最高の栄誉の象徴とされています。
アカデミー賞の歴史は、世界三大映画祭(カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭)よりも古く、第1回の授賞式は1929年5月16日にハリウッドのルーズヴェルトホテルで開催されました。以来、毎年の授賞式は全世界に生中継され、200以上の国と地域で放映される映画界最大のイベントとなっています。
アカデミー賞へのノミネートおよび受賞結果は世界中のメディアで大きく報道されるため、ノミネート作品・受賞作品の各国における興行成績やDVD・配信売上に対して非常に大きな影響力を持っています。受賞後に劇場公開が拡大されたり、再上映されるケースも少なくありません。
アカデミー賞のノミネート作品・受賞作品は、映画界で豊富な実績を持つプロデューサー、監督、脚本家、俳優、撮影監督、編集者、音響技師などで構成されるAMPAS会員(約10,000人以上)の投票によって選出されます。その厳正な選考プロセスと高い評価基準から、ノミネート・受賞作品は映画ファンにとって必見の作品として世界中で認知されています。
第7回アカデミー賞(1935年開催)の概要
第7回アカデミー賞(7th Academy Awards)の授賞式は、1935年2月27日にカリフォルニア州ロサンゼルスのビルトモアホテル(Biltmore Hotel)で開催されました。対象となったのは1934年に公開された映画作品です。司会はアーヴィン・S・コッブ(Irvin S. Cobb)が務めました。
この年の最大の話題は、フランク・キャプラ監督の或る夜の出来事(It Happened One Night)が、作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞・脚色賞の主要5部門を独占受賞したことです。これはアカデミー賞史上初めての快挙であり、以降1975年の「カッコーの巣の上で」、1991年の「羊たちの沈黙」まで達成されなかった偉業でした。この「ビッグ5」制覇は、アカデミー賞の歴史において最も記憶に残る出来事のひとつです。
コロンビア映画という当時のメジャースタジオではなかった製作会社が主要賞を独占したことも大きな驚きであり、この受賞をきっかけにコロンビア映画はハリウッドの主要スタジオとしての地位を確立しました。
以下に、第7回アカデミー賞の各部門における受賞作品とノミネート作品を一覧で紹介します。
[1935年開催(1934年映画作品対象)]第7回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜
作品賞 / Sakuhin Shou[Best Picture]
作品賞(Best Picture)は、その年に公開された映画作品の中で最も優れた作品に贈られるアカデミー賞の最高栄誉です。第7回では12作品がノミネートされ、フランク・キャプラ監督のロマンティック・コメディ「或る夜の出来事」がコロンビア映画として初の作品賞を獲得しました。
| 受賞 Winner |
或る夜の出来事[It Happened One Night] |
| ノミネート Nominees |
白い蘭[The Barretts of Wimpole Street] |
監督賞 / Kantoku Shou[Best Director]
監督賞(Best Director)は、映画作品の演出において最も優れた手腕を発揮した監督に贈られる賞です。第7回ではフランク・キャプラが「或る夜の出来事」で初の監督賞を受賞し、スクリューボール・コメディの名手としての地位を確立しました。キャプラはその後も第8回、第10回と計3度の監督賞を受賞しています。
| 受賞 Winner |
或る夜の出来事[It Happened One Night] |
| ノミネート Nominees |
恋の一夜[One Night of Love] |
主演男優賞 / Shuen Danyuh Shou[Best Actor]
主演男優賞(Best Actor)は、その年の映画作品で最も優れた演技を見せた主演男優に贈られる賞です。第7回ではクラーク・ゲーブルが「或る夜の出来事」でのピーター・ウォーン役により受賞しました。ゲーブルは劇中で下着を着けないシーンが話題となり、当時のアメリカにおけるアンダーシャツの売上に影響を与えたとされるエピソードでも知られています。
| 受賞 Winner |
或る夜の出来事[It Happened One Night] |
| ノミネート Nominees |
The Affairs of Cellini |
主演女優賞 / Shuen Joyuh Shou[Best Actress]
主演女優賞(Best Actress)は、その年の映画作品で最も優れた演技を見せた主演女優に贈られる賞です。第7回ではクローデット・コルベールが「或る夜の出来事」でエリー・アンドリュース役を演じて受賞しました。当日コルベールは受賞を予期しておらず、列車で旅立とうとしていたところを急遽授賞式会場に連れ戻されたという有名なエピソードが残っています。
| 受賞 Winner |
或る夜の出来事[It Happened One Night] |
| ノミネート Nominees |
恋の一夜[One Night of Love] |
脚色賞 / Kyakushoku Shou[Best Screenplay]
脚色賞(Best Screenplay / Best Adapted Screenplay)は、既存の原作(小説、戯曲、短編など)を基に優れた映画脚本を執筆した脚本家に贈られる賞です。第7回ではロバート・リスキンが「或る夜の出来事」でサミュエル・ホプキンス・アダムスの短編小説「Night Bus」を見事に脚色し、受賞しました。
| 受賞 Winner |
或る夜の出来事[It Happened One Night] |
| ノミネート Nominees |
影なき男[The Thin Man] |
原案賞 / Genan Shou[Best Story]
原案賞(Best Story)は、映画のために書かれた優れたオリジナルストーリーに贈られる賞です。第7回ではアーサー・シーザーが「男の世界(Manhattan Melodrama)」で受賞しました。この作品は幼なじみの2人の男が正反対の道を歩む物語で、クラーク・ゲーブル、ウィリアム・パウエル、マーナ・ロイが出演しています。
| 受賞 Winner |
男の世界[Manhattan Melodrama] |
| ノミネート Nominees |
愛の隠れ家[Hide-Out] |
短編映画賞(コメディ) / Tanpen Eiga Shou(Comedy)[Best Live Action Short Film Comedy]
短編映画賞コメディ部門(Best Live Action Short Film Comedy)は、コメディジャンルの短編実写映画の中から最も優れた作品に贈られる賞です。第7回では「クカラチャ(La Cucaracha)」が受賞しました。本作は初期の3色テクニカラーで撮影された短編映画として映画技術史上でも重要な作品と位置づけられています。
| 受賞 Winner |
クカラチャ[La Cucaracha] |
| ノミネート Nominees |
Men in Black |
短編映画賞(ノベルティ) / Tanpen Eiga Shou(Novelty)[Best Live Action Short Film Novelty]
短編映画賞ノベルティ部門(Best Live Action Short Film Novelty)は、ユニークな題材や斬新な手法を用いた短編実写映画に贈られる賞です。第7回では「City of Wax」が受賞しました。この部門は初期のアカデミー賞に特有のカテゴリーで、後に統合・廃止されています。
| 受賞 Winner |
City of Wax |
| ノミネート Nominees |
Bosom Friends |
短編アニメ賞 / Tanpen Anime Shou[Best Animated Short Film]
短編アニメ賞(Best Animated Short Film)は、最も優れた短編アニメーション映画に贈られる賞です。第7回ではウォルト・ディズニーの「The Tortoise and the Hare(うさぎとかめ)」が受賞しました。イソップ寓話を基にしたこの作品は、ディズニーのシリー・シンフォニーシリーズの一作で、ユーモラスなアニメーション表現が高く評価されました。
| 受賞 Winner |
The Tortoise and the Hare |
| ノミネート Nominees |
Holiday Land |
作曲賞 / Sakkyoku Shou[Best Original Score]
作曲賞(Best Original Score)は、映画音楽部門において最も優れた楽曲・スコアを担当した音楽部門に贈られる賞です。第7回ではコロンビア・スタジオ音楽部門が「恋の一夜(One Night of Love)」で受賞しました。当時はスタジオの音楽部門全体が受賞対象とされていた点が現在とは異なります。
| 受賞 Winner |
恋の一夜[One Night of Love] |
| ノミネート Nominees |
コンチネンタル[The Gay Divorcee] |
歌曲賞 / Kashou Shou[Best Original Song]
歌曲賞(Best Original Song)は、映画のために書き下ろされた最も優れたオリジナル楽曲に贈られる賞です。第7回では「コンチネンタル(The Gay Divorcee)」の挿入歌「The Continental」が受賞しました。これはアカデミー賞史上初めての歌曲賞受賞曲であり、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースが華麗に踊る名シーンとともに映画音楽史に残る楽曲となっています。
| 受賞 Winner |
“The Continental" – コンチネンタル[The Gay Divorcee] |
| ノミネート Nominees |
“Carioca" – 空中レヴュー時代[Flying Down to Rio] |
録音賞 / Rokuon Shou[Best Sound Recording]
録音賞(Best Sound Recording)は、映画における音響・録音技術が最も優れた作品の録音技師に贈られる賞です。第7回ではJohn P. Livadaryが「恋の一夜(One Night of Love)」で受賞しました。オペラ歌手グレース・ムーア主演の本作は音楽映画であるため、その録音品質が特に重視されました。
| 受賞 Winner |
恋の一夜[One Night of Love] |
| ノミネート Nominees |
The Affairs of Cellini |
美術賞 / Bijutsu Shou[Best Art Direction]
美術賞(Best Art Direction)は、映画のセットデザインや美術装飾において最も優れた仕事をした美術監督に贈られる賞です。第7回ではセドリック・ギボンズとフレデリック・ホープが「メリィ・ウィドウ(The Merry Widow)」で受賞しました。エルンスト・ルビッチ監督によるこのオペレッタ映画は、豪華絢爛なセットデザインが高く評価されました。
| 受賞 Winner |
メリィ・ウィドウ[The Merry Widow] |
| ノミネート Nominees |
The Affairs of Cellini |
撮影賞 / Satsuei Shou[Best Cinematography]
撮影賞(Best Cinematography)は、映画の映像表現・撮影技術において最も優れた撮影監督に贈られる賞です。第7回ではヴィクター・ミルナーが「クレオパトラ(Cleopatra)」で受賞しました。セシル・B・デミル監督による壮大な歴史スペクタクル映画の映像美が評価されたものです。
| 受賞 Winner |
クレオパトラ[Cleopatra] |
| ノミネート Nominees |
The Affairs of Cellini |
編集賞 / Henshuh Shou[Best Film Editing]
編集賞(Best Film Editing)は、映画の編集において最も優れた技術を発揮した編集者に贈られる賞です。第7回ではコンラッド・A・ネルヴィッヒが「エスキモー(Eskimo)」で受賞しました。本作はアラスカのイヌイットの生活を描いたドキュメンタリー色の強い作品で、膨大な撮影素材を巧みに編集した手腕が評価されました。
| 受賞 Winner |
エスキモー[Eskimo] |
| ノミネート Nominees |
クレオパトラ[Cleopatra] |
助監督賞 / Jo Kantoku Shou[Best Assistant Director]
助監督賞(Best Assistant Director)は、映画製作において監督を補佐し、現場の進行管理やエキストラの演出など重要な役割を果たした助監督に贈られた賞です。この部門は第6回(1934年)から第10回(1938年)までの限られた期間にのみ設けられた特別な賞でした。第7回ではジョン・S・ウォーターズが「奇傑パンチョ(Viva Villa!)」で受賞しました。
| 受賞 Winner |
奇傑パンチョ[Viva Villa!] |
| ノミネート Nominees |
クレオパトラ[Cleopatra] |
第7回アカデミー賞のまとめ
第7回アカデミー賞(1935年開催)は、「或る夜の出来事(It Happened One Night)」が作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞・脚色賞の主要5部門を独占するという前代未聞の快挙で映画史に刻まれた年でした。この「ビッグ5」制覇は、その後約40年間達成されることのなかった偉業です。
フランク・キャプラ監督が確立したスクリューボール・コメディの手法は、後の映画監督たちに多大な影響を与え、ロマンティック・コメディというジャンルの発展に大きく貢献しました。また、クラーク・ゲーブルとクローデット・コルベールの共演は映画史に残る名コンビとして今なお語り継がれています。
技術面では、初期テクニカラーによる「クカラチャ」の短編映画賞受賞や、アカデミー賞史上初の歌曲賞の設立など、映画芸術の新たな領域が開拓された年でもありました。1934年の映画作品群は、ハリウッド黄金時代の幕開けを象徴するラインナップとして、映画ファンにとって必見の作品揃いです。

