ミャンマー連邦共和国の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Republic of the Union of Myanmar ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~
世界遺産とは、ユネスコ(UNESCO / 国際連合教育科学文化機関)総会にて1972年に採択された世界遺産条約「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づき、世界遺産リストに登録された遺跡、景観、自然などの物件を指します。これらは人類が共有すべき「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value / OUV)」を持ち、移動が不可能な不動産が対象となります。
世界遺産登録の本来の目的は、自然災害や都市開発、武力紛争などの脅威から、文化的・自然的に価値のある遺産を国際的な協力のもとで保護・保全し、過去から現在、そして未来の世代へと確実に継承していくことにあります。
一方で、世界遺産に登録されることで国際的な知名度が大きく向上し、観光地としてのブランド力が高まることも広く認知されています。世界遺産登録を契機として多くの観光客が世界中から訪れるようになり、地域経済の活性化や文化交流の促進にも大きく寄与しています。
今回は、東南アジアのインドシナ半島西部に位置し、数千年にわたる豊かな仏教文化と歴史を誇るミャンマー連邦共和国(Republic of the Union of Myanmar)の世界遺産を紹介します。ミャンマーはインド、バングラデシュ、中国、ラオス、タイの5カ国と国境を接し、古くからインド文明と中国文明という二大文化圏の影響を受けながら、上座部仏教を中心とした独自の文化を育んできた国です。国土にはイラワジ川(エーヤワディー川)をはじめとする大河が流れ、その流域には古代から多くの王朝が栄えました。現在、ミャンマーにはユネスコ世界遺産に登録された2件の文化遺産(ピュー古代都市群とバガン)があり、いずれも仏教文化の発展と東南アジアの歴史を語る上で欠かせない貴重な遺産です。
まず、世界遺産が登録される基準を下記に記載します。
- (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
- (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
- (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
- (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
- (5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
- (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
- (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
- (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
- (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
- (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。
(1)~(6)を満たすものが文化遺産、(7)~(10)を満たすものが自然遺産、文化遺産と自然遺産の条件をそれぞれ1つ以上を満たすものが複合遺産としての登録基準となります。
以下で紹介する世界遺産の「登録基準」項目の記載番号は上記の世界遺産登録基準の番号に対応しています。
ミャンマー連邦共和国の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Republic of the Union of Myanmar ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~
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ピュー古代都市群 / Pyu Kodai Toshi Gun[Pyu Ancient Cities]
ピュー古代都市群は、ミャンマー中央部を流れるイラワジ川(エーヤワディー川)流域に位置する3つの古代都市遺跡 ―― ハリン(Halin)、ベイタノー(Beikthano)、シュリー・クシェートラ(Sri Ksetra) ―― で構成されています。これらの都市は紀元前200年頃から紀元後900年頃にかけて繁栄したピュー王国の政治的・文化的中心地であり、東南アジア最古級の都市文明のひとつとして国際的に高く評価されています。
各遺跡には、煉瓦造りの大規模な城壁、宮殿跡、仏教寺院、仏塔(パゴダ)、精緻な灌漑・水利管理システム、さらには独特の埋葬形態が見られる墓地などが含まれており、ピュー族が高度な都市計画と水資源管理の技術を有し、深い仏教信仰に根差した社会を築いていたことを如実に物語っています。
特に、ピュー族が実践した仏教がミャンマー全土における上座部仏教の伝播と定着に決定的な役割を果たした点、そしてインド亜大陸から東南アジアへの文化伝播の重要な中継地であった点が高く評価され、2014年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。登録基準は(2)建築・都市計画における人類の価値の交流、(3)文化的伝統の稀有な証拠、(4)歴史上重要な時代を例証する建築物群です。
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
2014年 |
| 登録基準 Criteria |
(2)、(3)、(4) |
| 住所 Address |
Pyu, Myanmar |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
ヤンゴン国際空港より自動車(約6時間) |
| URL URL |
バガン / Bagan
バガンは、ミャンマー中部マンダレー地方域のイラワジ川中流域に広がる、東南アジアを代表する壮大な仏教遺跡群です。カンボジアのアンコール・ワット、インドネシアのボロブドゥールと並び「世界三大仏教遺跡」のひとつに数えられ、世界中の旅行者や歴史愛好家を魅了し続けています。
バガンは11世紀から13世紀にかけてパガン王朝(バガン王朝)の王都として栄えました。初代アノーヤター王(Anawrahta、在位1044年〜1077年)が上座部仏教を国教として採用して以来、歴代の王や貴族、市民が競うように仏塔や寺院を建立し、最盛期には1万基を超える仏教建造物が平原一帯に林立していたと伝えられています。現在でも約3,600基以上の仏塔(パゴダ)、寺院、僧院が残されており、約40平方キロメートルの平原に広がるその圧倒的な景観は、訪れる人々に深い感銘を与えます。
代表的な建造物としては、4体の立仏像を安置した十字形プランが美しいアーナンダ寺院(Ananda Temple)、バガン最大の建築物であるダマヤンジー寺院(Dhammayangyi Temple)、アノーヤター王が建立した黄金の仏塔シュエジーゴン・パゴダ(Shwezigon Pagoda)などがあり、それぞれに上座部仏教の芸術と建築技術の粋が凝縮されています。壁面に残るフレスコ画や浮き彫りの彫刻は、当時の宗教観や社会生活を今に伝える貴重な資料でもあります。
バガンが特筆すべきは、単なる考古遺跡ではなく、上座部仏教の信仰と修行が今日まで途絶えることなく継続している「生きた文化的景観」である点です。地元の人々は今も遺跡群の中で日常的に祈りを捧げ、伝統的な仏教行事を営んでいます。この信仰の連続性と、ミャンマーにおける上座部仏教の発展への多大な貢献が国際的に高く評価され、2019年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。登録基準は(3)文化的伝統の稀有な証拠、(4)歴史上重要な時代を例証する建築物群、(6)普遍的な意義を有する信仰・伝統との関連です。
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
2019年 |
| 登録基準 Criteria |
(3)、(4)、(6) |
| 住所 Address |
Bagan, Nyaung-U District, Mandalay Region, Myanmar |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
ヤンゴン国際空港よりニャウンウー空港まで国内線(約1時間20分)、ニャウンウー空港より自動車(約15分)。マンダレーからは陸路で自動車(約4時間)またはイラワジ川のリバークルーズ(約10時間)でもアクセス可能。 |
| URL URL |

