カンボジア王国の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Kingdom of Cambodia ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

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親記事:世界各国の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in the World ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

世界遺産とはユネスコ総会で採択された世界遺産条約「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて登録された遺跡、景観、自然などの人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を持ち、移動が不可能な物件を指します。世界遺産の登録の本来の目的は、自然や文化的に価値のあるものを保護・保全し、過去から未来へと伝えていくことです。

カンボジア王国(Kingdom of Cambodia)は、東南アジアのインドシナ半島南部に位置する立憲君主制国家です。北西にタイ、北にラオス、東にベトナムと国境を接し、南はタイ湾に面しています。首都はプノンペンで、国土面積は約18万1,035km²、人口は約1,700万人です。

カンボジアは、9世紀から15世紀にかけて東南アジア最大の勢力を誇ったクメール帝国(アンコール朝)の中心地として栄えた歴史を持ちます。クメール帝国はヒンドゥー教と仏教の影響を受けながら、壮大な寺院建築や精緻な水利システムを発展させました。その文化的遺産は現在のカンボジアの国旗にアンコール・ワットが描かれていることにも象徴されています。

カンボジアの世界遺産は全4件で、いずれも文化遺産として登録されています。6世紀の真臘(チェンラ)時代から15世紀のアンコール朝末期まで、クメール文明の各時代を代表する遺跡が含まれており、東南アジアにおけるヒンドゥー教・仏教建築の発展史を体系的に理解できる構成となっています。

まず、世界遺産が登録される基準を下記に記載します。

  • (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
  • (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
  • (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
  • (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
  • (5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
  • (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
  • (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
  • (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
  • (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
  • (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

(1)~(6)を満たすものが文化遺産、(7)~(10)を満たすものが自然遺産、文化遺産と自然遺産の条件をそれぞれ1つ以上を満たすものが複合遺産としての登録基準となります。

以下で紹介する世界遺産の「登録基準」項目の記載番号は上記の世界遺産登録基準の番号に対応しています。

カンボジア王国の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Kingdom of Cambodia ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~


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アンコール / Angkor[Angkor]

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
1992年
登録基準
Criteria
(1)、(2)、(3)、(4)
住所
Address
Siem Reap, Cambodia
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
プノンペン国際空港よりカンボジア国内線(約1時間)「シェムリアップ国際空港」到着後、シェムリアップ国際空港より自動車(約15分)
URL
URL

アンコールは、9世紀から15世紀にかけて繁栄したクメール帝国(アンコール朝)の首都遺跡群です。カンボジア北西部のシェムリアップ州に位置し、約400km²を超える広大な敷地内に1,000以上の寺院・遺構が点在しています。

最も有名なアンコール・ワット(Angkor Wat)は、12世紀前半にスーリヤヴァルマン2世(Suryavarman II)によって建設されたヒンドゥー教寺院です。幅約190mの環濠に囲まれた壮大な伽藍は、ヒンドゥー教の宇宙観を建築的に表現したもので、中央祠堂の高さは約65mに達します。壁面を飾る浮彫彫刻(レリーフ)は総延長約800mにおよび、「乳海攪拌」や「マハーバーラタ」などのヒンドゥー教神話の場面が精緻に彫り込まれています。

アンコール・トム(Angkor Thom)は、12世紀後半にジャヤーヴァルマン7世(Jayavarman VII)が築いた城砦都市です。一辺約3kmの城壁に囲まれた都城の中心にバイヨン寺院(Bayon)が建ち、四面仏の塔が49基林立する独特の景観で知られています。ジャヤーヴァルマン7世の時代にクメール帝国は仏教(大乗仏教)へと転換し、バイヨンの四面仏は観世音菩薩(あるいは王自身)を表すとされています。

このほかにも、タ・プローム(Ta Prohm)、バンテアイ・スレイ(Banteay Srei)、プレ・ループ(Pre Rup)など多数の寺院が含まれ、ヒンドゥー教から仏教への宗教的変遷、クメール建築技術の進化を一望できる点が高く評価されています。なお、アンコール遺跡群は1992年の世界遺産登録と同時に危機遺産リストにも登録されましたが、国際的な保全活動の成果により2004年に危機遺産リストから除外されました。

プレアヴィヒア寺院 / Preah Vihear Jiin[Temple of Preah Vihear]

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
2008年
登録基準
Criteria
(1)
住所
Address
62, Preah Vihear, Cambodia
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
プノンペン国際空港よりカンボジア国内線(約1時間)「シェムリアップ国際空港」到着後、シェムリアップ国際空港より自動車(約4時間)
URL
URL

プレアヴィヒア寺院は、カンボジア北部のダンレック山脈(Dangrek Mountains)の断崖上、海抜約525mの地点に建つヒンドゥー教寺院です。カンボジアとタイの国境に位置するこの寺院は、9世紀末のヤショーヴァルマン1世(Yashovarman I)の時代に創建が始まり、11世紀から12世紀にかけてスーリヤヴァルマン1世およびスーリヤヴァルマン2世の治世に現在の主要な建築が完成しました。

寺院はシヴァ神に奉献されており、山の稜線に沿って南北約800mにわたり5つの塔門(ゴープラ)が段階的に配置されています。自然の地形を巧みに活用した設計は、クメール寺院建築の中でも類を見ない独創性を持ち、登録基準(1)「人類の創造的才能を表現する傑作」として評価されています。断崖からはカンボジアの平原を一望でき、壮大なパノラマが広がります。

プレアヴィヒア寺院は、1962年の国際司法裁判所(ICJ)判決でカンボジア領と認定されましたが、周辺地域の帰属をめぐるタイとの領土紛争が長年続きました。2008年の世界遺産登録後に両国間の軍事的緊張が高まりましたが、2013年のICJ判決により寺院周辺地域のカンボジア主権が再確認されています。

サンボー・プレイ・クックの寺院地区、古代イシャナプラの考古遺跡 / Sambor Prei Kuk No Jiin Chiku, Kodai Ishanapura No Kouko Iseki[Temple Zone of Sambor Prei Kuk, Archaeological Site of Ancient Ishanapura]

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
2017年
登録基準
Criteria
2)、(3)、(6)
住所
Address
219, カンボジア
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
プノンペン国際空港より自動車(約3時間30分)
URL
URL

サンボー・プレイ・クック(Sambor Prei Kuk)は、カンボジア中部コンポントム州に位置する6世紀から7世紀の遺跡群で、真臘(チェンラ、Chenla)王国の首都イシャナプラ(Ishanapura)の跡地です。イシャナヴァルマン1世(Isanavarman I、在位616年頃-637年頃)がこの地を首都と定め、クメール建築の原型となる寺院群を築きました。

「森の寺院」とも呼ばれるこの遺跡は、熱帯林の中に約150基以上の寺院が点在しており、プレイ・クメン(Prasat Yeai Poeun)、プラサート・サンボー(Prasat Sambor)、プラサート・タオ(Prasat Tao)の3つの主要グループに分かれています。サンボー・プレイ・クックの建築で最も注目すべき特徴は、クメール建築としては珍しい八角形の塔です。この八角形塔はインドの建築様式からの独自の発展形であり、後のアンコール期の建築には見られない固有の形式として評価されています。

壁面には「飛天(アプサラ)」の彫刻やメダリオン装飾が施されており、アンコール・ワット以前のクメール美術の起源を知る上で重要な資料となっています。サンボー・プレイ・クックは、東南アジアにおける都市計画と寺院建築の発展において、インド亜大陸の影響を受けつつも独自の様式を確立した先駆的な遺跡として、登録基準(2)、(3)、(6)で評価されています。

コー・ケー:古代リンガプラの考古遺跡 / Koh Ker: Kodai Ringapura No Kouko Iseki[Koh Ker: Archaeological Site of Ancient Lingapura]

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
2023年
登録基準
Criteria
(2)、(4)
住所
Address
Preah Vihear Province, Cambodia
地図
Map
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
シェムリアップ市内より自動車(約2時間30分)
URL
URL

コー・ケー(Koh Ker)は、カンボジア北部プレアヴィヒア州に位置する10世紀の考古遺跡群で、クメール帝国の王ジャヤーヴァルマン4世(Jayavarman IV、在位928年-941年)が一時的にアンコールから遷都した際の首都リンガプラ(Lingapura)の跡地です。2023年に世界遺産に登録され、カンボジアで4番目の世界遺産となりました。

遺跡の象徴であるプラサート・トム(Prasat Thom)は、7段のピラミッド型寺院で高さ約36mに達し、クメール建築史上最大級のピラミッド型構造物として知られています。頂上にはかつて巨大なリンガ(シヴァ神の象徴)が安置されていたとされ、遺跡名「リンガプラ」(リンガの都)の由来となっています。

約81km²の敷地内には、プラサート・トムを含む約100基以上の遺構が残されています。寺院群にはヒンドゥー教の神話を題材にした巨大な砂岩彫刻が多数含まれ、特にガルーダ像やナンディン像などの彫像は、クメール彫刻の傑作として国際的に高く評価されています。コー・ケーの建築は、アンコール期の中でも独自のスケールと大胆な造形で特徴づけられ、登録基準(2)と(4)の両方を満たす遺跡として世界遺産に登録されました。

カンボジア世界遺産のまとめ

カンボジアの4つの世界遺産は、いずれも文化遺産であり、6世紀の真臘時代(サンボー・プレイ・クック)から、10世紀の過渡期(コー・ケー)、そして9世紀~15世紀のアンコール朝の絶頂期(アンコール、プレアヴィヒア寺院)まで、クメール文明の発展史を時系列で辿ることができます。インドから伝来したヒンドゥー教・仏教の思想が、カンボジアの風土の中で独自の建築様式・彫刻芸術へと昇華されていった過程を、これらの遺跡群は今日に伝えています。

カンボジアの世界遺産を訪れるベストシーズンは、乾季にあたる11月から3月頃です。特にアンコール遺跡群は、早朝の日の出の時間帯にアンコール・ワットの尖塔の背後から朝日が昇る光景が有名で、世界中から多くの旅行者が訪れます。シェムリアップを拠点にすれば、アンコール遺跡群に加え、コー・ケーやプレアヴィヒア寺院への日帰り・1泊旅行も計画可能です。