中華人民共和国・マカオ特別行政区の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Macao Special Administrative Region of the People’s Republic of China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~
世界遺産とはユネスコ総会で採択された世界遺産条約「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて登録された遺跡、景観、自然などの人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を持ち、移動が不可能な物件を指します。
つまり世界遺産の登録の本来の目的は自然や文化的に価値のあるものを保護・保全し、過去から未来へと伝えていくことです。
ただ、一方でよくテレビやインターネットで目にする世界遺産に関するニュースで聞かれるように、世界遺産に登録されることで知名度があがり、観光名所としてのブランド力を持つことも近年では期待されています。
今回はそんな保護・保全をしながらも観光資源としても注目を浴びているマカオの世界遺産を紹介します。
マカオ(澳門)は中国大陸の南端、珠江デルタの西岸に位置する特別行政区です。16世紀半ばからポルトガルの居留地として発展し、1999年に中国へ返還されました。約450年にわたるポルトガル統治の歴史が、東洋と西洋の文化が見事に融合した独自の街並みを生み出しました。マカオの世界遺産は、この東西文化交流の歴史的証拠として極めて高い価値を持っています。
まず、世界遺産が登録される基準を下記に記載します。
- (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
- (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
- (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
- (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
- (5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
- (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
- (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
- (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
- (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
- (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。
(1)~(6)を満たすものが文化遺産、(7)~(10)を満たすものが自然遺産、文化遺産と自然遺産の条件をそれぞれ1つ以上を満たすものが複合遺産としての登録基準となります。
以下で紹介する世界遺産の「登録基準」項目の記載番号は上記の世界遺産登録基準の番号に対応しています。
中華人民共和国・マカオ特別行政区の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Macao Special Administrative Region of the People’s Republic of China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~
マカオ特別行政区には、2005年に登録された「マカオ歴史地区」が唯一の世界遺産として存在します。この歴史地区は、中国で最も古い西洋建築群を含み、東アジアにおけるヨーロッパ植民地都市の中でも最古の歴史を持つ貴重な文化遺産です。マカオ歴史地区は、マカオ半島の中心部に集中する20以上の歴史的建造物と8つの広場で構成されており、ポルトガルと中国の建築様式が混在する独特の都市景観を今に伝えています。
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マカオ歴史地区 / Macao Rekishi Chiku[The Historic Centre of Macao]
マカオ歴史地区(The Historic Centre of Macao)は、2005年に第29回世界遺産委員会(南アフリカ・ダーバン会議)でユネスコ世界文化遺産に登録されました。16世紀半ばにポルトガル人が居留を開始して以降、約450年にわたって形成された東西文化融合の歴史的都市景観が評価されています。
マカオ歴史地区が登録基準(2)(3)(4)(5)を満たす理由は、以下の通りです。基準(2)については、マカオが東アジアにおいて西洋文化が最も早く根付いた場所の一つであり、中国文化とポルトガル文化の建築・都市計画上の交流を示す重要な証拠であること。基準(3)については、16世紀から20世紀にかけてのポルトガルと中国の文化的伝統が共存する街並みが、他に類を見ない文明交流の稀有な証拠であること。基準(4)については、バロック様式の教会、新古典主義の劇場、中国伝統の廟宇などが混在する建築群が、東西文化の交差する歴史的時代を例証する優れた建築物群であること。基準(5)については、狭い半島の中で中国人とポルトガル人が共生する独特の集落形態が、多文化共存の伝統的集落として際立った例であること。
マカオ歴史地区の構成資産
マカオ歴史地区は、マカオ半島の中心部に点在する以下の歴史的建造物と広場で構成されています。これらは大きく分けて、媽閣廟からセナド広場に至る南側ルートと、セナド広場から聖ポール天主堂跡・ギア要塞へ至る北側ルートの2つのエリアに分かれています。
主要な構成資産(歴史的建造物)
- 媽閣廟(マーコミュウ / A-Ma Temple) – マカオ最古の中国寺院の一つで、1488年頃の創建とされています。海の女神・媽祖(まそ)を祀り、「マカオ」という地名の由来にもなった重要な寺院です。境内には本殿、弘仁殿、観音閣などがあり、中国伝統の寺院建築の特徴を色濃く残しています。
- 港務局大樓(こうむきょくたいろう / Moorish Barracks) – 1874年に建設されたイスラム様式を取り入れた新古典主義の建物です。当初はインドのゴアから派遣されたムーア人兵士の宿舎として使用され、後に港務局の庁舎となりました。ベランダのアーチや装飾がムーア建築の影響を示しています。
- 鄭家屋敷(ていかやしき / Mandarin’s House) – 中国近代の著名な思想家・鄭觀應(ていかんおう)の邸宅で、1869年頃に建設されました。中国嶺南地方の伝統的な住居建築に西洋のデザイン要素を融合させた大規模な邸宅建築で、東西折衷の住宅様式の貴重な例です。
- 聖ローレンス教会(St. Lawrence’s Church) – マカオで最も古いカトリック教会の一つで、16世紀半ばに創建されました。現在の建物は1846年に再建されたもので、新古典主義様式の美しい外観と、内部のステンドグラスや祭壇装飾が特徴です。
- 聖ヨセフ修道院及び聖堂(St. Joseph’s Seminary and Church) – 1728年にイエズス会によって設立された修道院と1758年に完成した聖堂です。聖堂はバロック様式の傑作とされ、ドーム型の天井はマカオの教会建築の中でも独自の存在です。日本やアジア各地へのカトリック布教の拠点としての歴史的役割も重要です。
- ドン・ペドロ5世劇場(Dom Pedro V Theatre) – 1860年に建設された中国初の西洋式劇場です。新古典主義様式の優雅なファサードを持ち、約300席を有するこの劇場は、マカオのポルトガル人コミュニティの文化生活の中心地でした。
- ロバート・ホー・トン図書館(Sir Robert Ho Tung Library) – 元は1894年以前に建てられたポルトガル人の邸宅で、1918年に香港の実業家ロバート・ホー・トンが購入し別荘として使用しました。1958年にマカオ政府に寄贈され、公共図書館として生まれ変わりました。
- 聖オーガスティン教会(St. Augustine’s Church) – 1591年にスペインのアウグスティノ修道会によって創建されました。現在の建物は1874年に再建されたもので、バロック様式の壮麗な外観が特徴です。
- 民政総署大樓(みんせいそうしょたいろう / Leal Senado Building) – セナド広場に面する新古典主義の建物で、1784年に建設されました。「忠実なる」という称号をポルトガル国王から授けられたマカオ市議会の議場として使用されており、マカオの自治の歴史を象徴する建造物です。内部にはポルトガルのタイル装飾「アズレージョ」が施された美しい図書館があります。
- 三街会館(関帝廟)(Sam Kai Vui Kun / Kuan Tai Temple) – セナド広場近くに位置する中国寺院で、三国志の英雄・関羽を祀っています。かつては中国人商人の同業者組合の集会所としても機能し、マカオにおける中国人コミュニティの社会的・経済的中心地でした。
- 仁慈堂大樓(じんじどうたいろう / Holy House of Mercy) – 1569年にマカオ初代司教によって設立された慈善団体の本部です。セナド広場に面する白亜の建物は、アジアにおける最も古い慈善施設の一つであり、マカオの社会福祉の歴史を伝えています。
- 大堂(カテドラル / Cathedral) – マカオ教区の司教座聖堂で、1622年頃に創建されました。現在の建物は1937年にコンクリートで再建されたもので、外壁はシンプルながらも内部にはステンドグラスと祭壇が美しく配されています。
- 盧家屋敷(ろかやしき / Lou Kau Mansion) – 1889年に著名な中国人商人・盧華紹(ろかしょう)によって建てられた邸宅です。中国嶺南地方の伝統的建築に西洋のデザインを取り入れた折衷様式が特徴で、精緻な灰塑(石灰彫刻)や繊細な木彫り装飾が見どころです。
- 聖ドミニコ教会(St. Dominic’s Church) – 1587年にメキシコから来たドミニコ会修道士によって創建されました。クリーム色と白の鮮やかなバロック様式のファサードはマカオで最も美しい教会正面の一つとされ、内部には約300点の宗教美術品を展示する宗教美術博物館が併設されています。
- 聖ポール天主堂跡(Ruins of St. Paul’s) – マカオを象徴する最も有名な史跡です。1602年から1640年にかけてイエズス会によって建設された聖母教会で、1835年の火災で焼失し、石造りのファサード(正面壁)と前面の階段のみが残りました。ファサードにはキリスト教の聖像、中国の牡丹や菊、日本の菊の紋章など、東西の宗教的・文化的シンボルが精密に彫刻されており、東西文化融合の象徴として世界的に知られています。
- ナーチャ廟(Na Tcha Temple) – 聖ポール天主堂跡のすぐ隣に建つ小さな中国寺院で、1888年に疫病退散を祈願して建設されました。道教の少年神・哪吒(ナーチャ)を祀り、壮大なキリスト教会の遺跡と中国の小廟が隣り合って建つ風景は、マカオの多文化共存を象徴する光景です。
- 旧城壁(Section of the Old City Walls) – ナーチャ廟の隣に残るポルトガル時代の城壁の一部です。1569年頃に建設されたもので、シュナンボ土(砂・土・牡蠣の殻・ワラを混ぜた建材)で造られており、マカオにおけるポルトガル人居留地の防衛の歴史を物語っています。
- モンテの砦(Mount Fortress / Fortaleza do Monte) – 1617年から1626年にかけてイエズス会によって建設された要塞です。マカオ半島の中心的な丘の上に位置し、1622年のオランダ軍の侵攻を撃退した歴史を持ちます。砦の敷地内にはマカオ博物館が設置されており、マカオの歴史と文化を総合的に学ぶことができます。
- ギア要塞(ギアの灯台・ギア教会を含む)(Guia Fortress, including Guia Lighthouse and Chapel of Our Lady of Guia) – マカオ半島の最高地点に位置する17世紀の要塞で、1622年から1638年にかけて建設されました。ギアの灯台は1865年に建設された中国沿岸で最初の近代的灯台であり、併設のギア教会内部には東西折衷のフレスコ画が残されています。
- カーサ庭園(Casa Garden) – 1770年頃に建てられた新古典主義の邸宅と庭園で、かつてはイギリス東インド会社のマカオ本部として使用されていました。現在は東方基金会(Orient Foundation)の本部として使用されています。
- プロテスタント墓地(Protestant Cemetery) – 1821年にイギリス東インド会社によって設立された墓地で、カーサ庭園に隣接しています。カトリック以外のキリスト教徒や外国人の埋葬地として使用され、イギリスの画家ジョージ・チネリーやアメリカの初代駐清領事など、マカオの国際的な歴史に関わった人物が眠っています。
主要な構成資産(広場)
- リラウ広場(Lilau Square) – マカオで最も古い居住地区の一つにある広場で、かつてポルトガル人居留者の生活用水を供給する天然の湧き水がありました。「リラウの水を飲んだ者はマカオを忘れない」という言い伝えが残る、マカオ最初期の入植地の面影を残す場所です。
- バラ広場(Barra Square) – 媽閣廟の前に位置する広場で、ポルトガル式の波模様の石畳(カルサーダス)が敷かれています。
- 聖オーガスティン広場(St. Augustine’s Square) – 聖オーガスティン教会、ドン・ペドロ5世劇場、ロバート・ホー・トン図書館、聖ヨセフ修道院に囲まれた広場です。ポルトガル式の石畳が施され、マカオの文化的中心地の一つです。
- セナド広場(Senado Square) – マカオ歴史地区の中心に位置する最も有名な広場です。波模様のポルトガル式カルサーダス(石畳)が敷き詰められ、周囲をパステルカラーの新古典主義の建物が取り囲んでいます。マカオの公式行事やイベントの会場としても使用される、街の象徴的な場所です。
- 大堂広場(Cathedral Square) – 大堂(カテドラル)に面する広場で、石造りの十字架と噴水があります。
- 聖ドミニコ広場(St. Dominic’s Square) – 聖ドミニコ教会の正面に広がる広場で、セナド広場と聖ポール天主堂跡を結ぶ通路上に位置しています。
- カモンエス広場(Camoes Square) – ポルトガルの国民的詩人ルイス・デ・カモンエスにちなんで名付けられた広場で、カーサ庭園に隣接しています。
- イエズス会紀念広場(Company of Jesus Square) – 聖ポール天主堂跡の正面に位置する広場で、大階段へと続く象徴的な空間です。
マカオ歴史地区の観光情報
マカオ歴史地区の構成資産は、マカオ半島の中心部にコンパクトにまとまっており、徒歩で巡ることができます。媽閣廟を出発点とし、リラウ広場、聖ローレンス教会、聖オーガスティン広場周辺を経由して、セナド広場へ至り、さらに聖ドミニコ教会、聖ポール天主堂跡、モンテの砦へと北上するルートが一般的です。全行程を徒歩で巡る場合、主要スポットだけでも半日から1日程度の時間を見込むとよいでしょう。
ギア要塞はマカオ半島の東側の丘の上に位置しているため、他の構成資産とは少し離れています。ギアの丘へはロープウェイ(松山纜車)でアクセスすることもできます。
マカオは亜熱帯気候に属し、夏季(6月〜9月)は高温多湿で台風の影響を受けることがあります。観光には比較的涼しく乾燥した秋季(10月〜12月)や春季(3月〜5月)が適しています。
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
2005年 |
| 登録基準 Criteria |
(2)、(3)、(4)、(5) |
| 住所 Address |
Macao |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
マカオ国際空港より自動車(約30分) |
| URL URL |

