中華人民共和国・雲南省の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Yunnan China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

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親記事:世界各国の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in the World ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

世界遺産とはユネスコ総会で採択された世界遺産条約「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて登録された遺跡、景観、自然などの人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を持ち、移動が不可能な物件を指します。

つまり世界遺産の登録の本来の目的は自然や文化的に価値のあるものを保護・保全し、過去から未来へと伝えていくことです。

ただ、一方でよくテレビやインターネットで目にする世界遺産に関するニュースで聞かれるように、世界遺産に登録されることで知名度があがり、観光名所としてのブランド力を持つことも近年では期待されています。

中華人民共和国の南西部に位置する雲南省は、ヒマラヤ山脈の東端からインドシナ半島北部にかけて広がる多様な地形を持ち、25を超える少数民族が共生する文化的にも自然的にも極めて豊かな地域です。標高76メートルの熱帯低地から標高6,740メートルの梅里雪山まで、劇的な標高差が生む気候の多様性は、世界有数の生物多様性ホットスポットを形成しています。

雲南省には現在、ユネスコ世界遺産が5件(文化遺産2件・自然遺産3件)登録されています。ナシ族が築いた古都・麗江旧市街、金沙江・瀾滄江・怒江の三大河川が並行して流れる壮大な峡谷地帯、5億年以上前のカンブリア紀の化石群、そして1,300年の歴史を持つハニ族の棚田景観など、雲南省ならではの多彩な遺産が世界的に高い評価を受けています。

この記事では、雲南省に所在する全5件の世界遺産について、登録基準・所在地・アクセス情報とともに、それぞれの歴史的背景や見どころを詳しく紹介します。

まず、世界遺産が登録される基準を下記に記載します。

  • (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
  • (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
  • (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
  • (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
  • (5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
  • (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
  • (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
  • (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
  • (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
  • (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

(1)~(6)を満たすものが文化遺産、(7)~(10)を満たすものが自然遺産、文化遺産と自然遺産の条件をそれぞれ1つ以上を満たすものが複合遺産としての登録基準となります。

以下で紹介する世界遺産の「登録基準」項目の記載番号は上記の世界遺産登録基準の番号に対応しています。

中華人民共和国・雲南省の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Yunnan China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~


観光に便利な宿泊施設:雲南省(昆明、麗江)のホテル一覧

麗江旧市街 / Reikou Kyuh Shigai[Old Town of Lijiang]

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
1997年
登録基準
Criteria
(2)、(4)、(5)
住所
Address
Gucheng Qu, Lijiang Shi, Yunnan Sheng, China
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
昆明長水国際空港より自動車(約6時間20分)
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麗江旧市街は、中国雲南省北西部の標高約2,400メートルの高地に位置する、ナシ族によって築かれた歴史的な街並みです。宋代末期(13世紀後半)に形成が始まり、約800年の歴史を持つこの古都は、中国の歴史的な都市としては珍しく城壁を持たないことが特徴です。これはかつてこの地を治めた木氏土司(ナシ族の首長)の姓「木」を城壁「囲」で囲むと「困」の字になることを嫌ったためと伝えられています。

街の中心部には、玉龍雪山(標高5,596メートル)の雪解け水を水源とする水路網が張り巡らされ、三叉路ごとに水路が分岐する独特の水利システムが形成されています。この水路は生活用水・農業用水として現在も機能しており、水の流れに沿って発展した有機的な街路構造は、計画的に碁盤目状に造られた中国の他の都市とは一線を画しています。

ナシ族が独自に発展させたトンパ文字(東巴文字)は、現在も使用されている世界で唯一の象形文字として知られ、トンパ教の経典や暦、歴史記録に用いられてきました。また、ナシ古楽と呼ばれる伝統音楽は、唐・宋・元代の中国宮廷音楽の要素を色濃く残しており、「生きた音楽の化石」とも称されています。

1996年2月に発生したマグニチュード7.0の麗江地震では甚大な被害を受けましたが、その後の復旧過程で伝統的な建築様式が忠実に再現され、翌1997年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。

雲南の三江併流保護区 / Unnan No Sankouheiryuh Hogo Ku[Three Parallel Rivers of Yunnan Protected Areas]

登録区分
Type
自然遺産
登録年
Designated
2003年
登録基準
Criteria
(7)、(8)、(9)、(10)
住所
Address
Gongshan, Nujiang, Yunnan China
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
昆明長水国際空港より自動車(約14時間30分)
URL
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雲南の三江併流保護区は、ユーラシア大陸の三大河川である金沙江(長江上流部)、瀾滄江(メコン川上流部)、怒江(サルウィン川上流部)が、雲南省北西部の狭い地域でわずか数十キロメートルの間隔で170キロメートル以上にわたり並行して南流する、地球上でも極めて稀有な地形を有する自然保護区です。

総面積約170万ヘクタールに及ぶこの保護区は、ヒマラヤ山脈の東端に位置し、標高760メートルの河谷から標高6,740メートルの梅里雪山(カワカルポ)主峰まで、約6,000メートルもの標高差を擁しています。この劇的な垂直分布が、熱帯から氷河地帯まで多様な気候帯を一つの地域内に生み出し、世界でも最も生物多様性に富む温帯地域の一つとなっています。

保護区内には6,000種以上の植物が確認されており、これは中国全土の植物種の約20%に相当します。動物相も極めて豊かで、ユンナンシシバナザル(滇金絲猴)やレッサーパンダ、ユキヒョウなど、多くの絶滅危惧種が生息しています。また、この地域はヒマラヤ山脈とインドシナ半島をつなぐ生物回廊としても重要な役割を果たしており、氷河期に南下した北方系の生物と熱帯由来の南方系の生物が混在する、学術的にも貴重な地域です。

地質学的には、インド亜大陸とユーラシア大陸の衝突によるプレートテクトニクスの証拠が豊富に残されており、地球の造山運動の歴史を読み解く上でも重要な場所とされています。2003年にユネスコ世界自然遺産に登録されました。

中国南方カルスト / Chuhgoku Nanpou Karst[South China Karst]

登録区分
Type
自然遺産
登録年
Designated
2007年(拡張年:2014年)
登録基準
Criteria
(7)、(8)
住所
Address
石林:Shilin, Kunming, Yunnan, China
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
石林:昆明長水国際空港より自動車(約1時間30分)
URL
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中国南方カルストは、中国南部に広がる世界最大級のカルスト地形群の一部として、2007年にユネスコ世界自然遺産に登録され、2014年に登録範囲が拡張されました。雲南省の構成資産である石林(シーリン)は、昆明市から南東約85キロメートルに位置し、その名の通り「石の森」と呼ばれる壮大な石灰岩の林立景観で知られています。

石林の石灰岩柱は約2億7,000万年前のペルム紀に堆積した石灰岩が、長い年月にわたる浸食・溶食作用によって形成されたもので、高さ数メートルから40メートルを超える尖塔状の岩柱が密集しています。大石林・小石林・乃古石林・芝雲洞など複数のエリアに分かれており、それぞれ異なる形態のカルスト地形を観察できます。

石林は地質学的には剣状カルスト(ピナクルカルスト)に分類され、熱帯・亜熱帯の湿潤な気候条件のもとで形成された典型的な事例として、カルスト地形の発達過程を理解する上で世界的に重要な学術的価値を持ちます。また、この地域はサニ族(彝族の支族)の居住地でもあり、毎年旧暦6月24日に行われる「火把節」(松明祭り)などの民族文化が石林の自然景観と一体となった独特の文化的景観を形成しています。

澄江の化石産地 / Choukou No Kaseki Sanchi[Chengjiang Fossil Site]

登録区分
Type
自然遺産
登録年
Designated
2012年
登録基準
Criteria
(8)
住所
Address
Chengjiang, Yuxi, Yunnan, China
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
昆明長水国際空港より自動車(約1時間20分)
URL
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澄江の化石産地(澄江化石地)は、雲南省玉渓市澄江県の帽天山に位置する、約5億1,800万年前のカンブリア紀前期の化石群が産出する世界的に極めて重要な古生物学的遺産です。1984年に中国の古生物学者・侯先光によって発見されたこの化石群は、「カンブリア爆発」と呼ばれる生命進化史上最大の多様化現象を記録した、世界で最も完全な初期多細胞生物の化石記録の一つです。

澄江化石群からは、これまでに16門・約200種以上の生物化石が確認されています。その中には、脊索動物の祖先と考えられるハイコウイクチス(海口魚)やミロクンミンギア(昆明魚)、節足動物のフーシェンフイア(撫仙湖虫)、そしてカンブリア紀の代表的な捕食者であるアノマロカリスの完全な化石標本などが含まれています。これらの化石の多くは軟体部(筋肉、消化器官、神経系など)まで保存されている点で例外的に貴重であり、カナダのバージェス頁岩と並ぶ世界二大カンブリア紀化石産地として評価されています。

この化石産地は、現在の地球上に存在するほぼ全ての動物門の起源を理解する上で不可欠な証拠を提供しており、初期の海洋生態系の構造や食物連鎖の復元にも大きく貢献しています。2012年にユネスコ世界自然遺産に登録されました。

紅河哈尼棚田群の文化的景観 / Kouga Hani Tanada Gun No Bunka Teki Keikan[Cultural Landscape of Honghe Hani Rice Terraces]

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
2013年
登録基準
Criteria
(3)、(5)
住所
Address
Yuanyang, Honghe, Yunnan, China
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
昆明長水国際空港より自動車(約6時間)
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紅河哈尼棚田群の文化的景観は、雲南省南部の紅河州元陽県を中心に、哀牢山脈の南斜面に広がる壮大な棚田群です。ハニ族(哈尼族)が約1,300年にわたって山の斜面を開墾し、標高約600メートルから1,800メートルの範囲に階段状の水田を築き上げてきました。その総面積は約16,603ヘクタールに及び、最大で3,000段を超える棚田が連なる景観は圧巻です。

この棚田は単なる農業施設ではなく、「森林―村落―棚田―水系」という四層構造からなる精緻な生態系として機能しています。山頂部の森林が水源涵養林として雨水を蓄え、その水が村落を経由して棚田へと流れ、最終的に河川へと戻るという循環型の水利システムが構築されています。この持続可能な土地利用の仕組みは、自然環境と人間の営みが高度に調和した文化的景観の優れた事例として高く評価されています。

ハニ族は独自の暦法に基づいて農事を営み、棚田の水管理には「木刻分水」と呼ばれる伝統的な水量配分の仕組みが用いられています。木の板に刻み目を入れて各家庭への水量を公平に配分するこの方法は、コミュニティの協力と信頼に基づく自治の象徴でもあります。

特に11月から翌年3月にかけての冬季は、棚田に水が張られて田植え前の状態となり、朝日や夕日に照らされた水面が鏡のように空を映し出す幻想的な景観が見られます。2013年にユネスコ世界文化遺産(文化的景観)に登録されました。

まとめ

雲南省の5件の世界遺産は、ナシ族の古都からハニ族の棚田、カンブリア紀の化石群から三大河川の峡谷地帯まで、自然と文化の両面において驚くべき多様性を示しています。中国全土で50件以上を数える世界遺産の中でも、雲南省はその地理的・民族的な独自性により、他の地域では見られない固有の価値を持つ遺産が集中しています。

これらの世界遺産を訪れる際の拠点となるのは省都・昆明です。昆明長水国際空港は日本からの直行便も運航されており、昆明を起点として各遺産へのアクセスが可能です。特に麗江へは昆明から国内線で約1時間、石林へは高速道路で約1時間30分と比較的アクセスが良好です。一方、三江併流保護区や紅河哈尼棚田群は山岳地帯に位置するため、十分な移動時間と体力を見込んだ旅程の計画をおすすめします。