岩手県の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Iwate ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

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親記事:日本全国・都道府県の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Japan ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

岩手県には、2件のユネスコ世界文化遺産が登録されています。一つは、12世紀に奥州藤原氏が築いた浄土思想の理想郷「平泉」、もう一つは、幕末から明治にかけて日本の近代化を支えた「橋野鉄鉱山」です。いずれも日本の歴史・文化・産業の発展を物語る貴重な遺産であり、国内外から多くの訪問者が訪れています。

世界遺産とは、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)総会で1972年に採択された世界遺産条約「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて世界遺産リストに登録された、遺跡・景観・自然など人類が共有すべき「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」を持つ不動産を指します。登録の本来の目的は、自然や文化的に価値のあるものを保護・保全し、過去から未来へと確実に継承していくことにあります。

一方で、世界遺産に登録されることで国際的な知名度が向上し、観光資源としてのブランド力を持つことも大きな効果として期待されています。岩手県の世界遺産も、その歴史的・文化的価値とともに、東北地方を代表する観光スポットとして国内外から注目されています。

本記事では、岩手県に所在する2件の世界遺産について、登録基準・構成資産の詳細・アクセス情報を網羅的にまとめています。

まず、世界遺産の登録にあたって適用される10項目の評価基準を以下に記載します。

  • (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
  • (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
  • (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
  • (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
  • (5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
  • (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
  • (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
  • (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
  • (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
  • (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

上記のうち(1)~(6)を満たすものが文化遺産、(7)~(10)を満たすものが自然遺産、文化遺産と自然遺産の条件をそれぞれ1つ以上満たすものが複合遺産として分類されます。

以下で紹介する世界遺産の「登録基準」項目の記載番号は、上記の世界遺産登録基準の番号に対応しています。

岩手県の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Iwate ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

岩手県には、以下の2件の世界文化遺産が登録されています。平泉の浄土思想に基づく寺院・庭園群と、近代製鉄の発祥を伝える橋野鉄鉱山です。それぞれの構成資産について、歴史的背景・見どころ・アクセス情報を詳しく紹介します。


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平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群― / Hiraizumi – Bukkokudo(Joudo) wo Arawasu Kenchiku Teien Oyobi Koukogakuteki Isekigun[Hiraizumi – Temples, Gardens and Archaeological Sites Representing the Buddhist Pure Land]

平泉は、11世紀末から12世紀にかけて奥州藤原氏が約100年にわたり築き上げた政治・文化の拠点です。藤原清衡・基衡・秀衡・泰衡の四代が、仏教の浄土思想に基づき、現世に仏国土(浄土)を実現しようとした壮大な都市計画の遺産群であり、2011年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。

平泉の特徴は、寺院・庭園・遺跡が一体となって浄土思想の空間的表現を形成している点にあります。京都の宇治平等院を模した寺院建築や、自然地形を巧みに取り入れた浄土庭園は、日本の仏教建築・造園史において独自の発展を遂げたものです。登録基準(2)「人類の価値の重要な交流」および(6)「顕著で普遍的な意義を有する思想・信仰との関連」を満たしています。

構成資産は、中尊寺・毛越寺・観自在王院跡・無量光院跡・金鶏山の5件です。

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
2011年
登録基準
Criteria
(2)、(6)

中尊寺 / Chuhson Ji[Chûson-ji]

中尊寺は、850年(嘉祥3年)に慈覚大師円仁によって開山されたと伝えられる天台宗の寺院です。12世紀初頭、奥州藤原氏の初代・藤原清衡が前九年の役・後三年の役で亡くなった人々の霊を敵味方なく慰めるため、大規模な堂塔の造営を行いました。最も有名な金色堂は、堂内外を金箔で覆い、螺鈿細工や蒔絵などの漆工芸を駆使した平安時代後期の装飾建築の傑作であり、国宝に指定されています。金色堂の内部には藤原清衡・基衡・秀衡の遺体と泰衡の首級が安置されており、平泉文化の象徴的存在です。

住所
Address
岩手県西磐井郡平泉町平泉衣関202
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR平泉駅(徒歩約30分)、JR平泉駅より自動車(約10分)
URL
URL
https://www.chusonji.or.jp/

毛越寺 / Moutsuh Ji[Môtsû-ji]

毛越寺は、850年(嘉祥3年)に慈覚大師円仁が開山し、その後、奥州藤原氏の二代・藤原基衡と三代・秀衡によって壮大な伽藍が整備された天台宗の寺院です。往時には堂塔40余棟、僧坊500余宇を数え、その規模は中尊寺を凌ぐとも言われました。現在、建物の多くは失われていますが、浄土庭園の遺構が極めて良好な状態で残されています。大泉が池を中心とした庭園は、平安時代の造園技法書『作庭記』の思想を現在に伝える日本最古級の浄土庭園として、特別名勝に指定されています。毎年6月に行われる「曲水の宴」は、平安時代の雅な文化を再現する行事として知られています。

住所
Address
岩手県西磐井郡平泉町平泉大沢58
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR平泉駅(徒歩約15分)
URL
URL
https://www.motsuji.or.jp/

観自在王院跡 / Kanjizai Ohin Ato[Kanjizaiô-in Ato]

観自在王院跡は、奥州藤原氏の二代・藤原基衡の妻が建立したと伝えられる寺院の遺跡です。毛越寺に隣接する場所に位置し、大小2つの阿弥陀堂と浄土庭園で構成されていました。現在は建物の基壇や礎石、庭園の池跡が残されており、発掘調査に基づいて庭園の復元整備が行われています。舞鶴が池を中心とした庭園遺構は、毛越寺の浄土庭園とともに平安時代の庭園文化を今に伝える貴重な史跡であり、国の特別史跡に指定されています。

住所
Address
岩手県西磐井郡平泉町平泉志羅山志羅山
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR平泉駅(徒歩約10分)
URL
URL
https://www.town.hiraizumi.iwate.jp/heritage/asset/kanji.html

無量光院跡 / Muryoukouin Ato[Muryôkô-in Ato]

無量光院跡は、奥州藤原氏の三代・藤原秀衡が京都の平等院鳳凰堂を模して建立した寺院の遺跡です。平等院を超える規模で造営されたとされ、本堂は西方に位置する金鶏山の山頂に夕日が沈む方角に正対するよう設計されていました。これは西方極楽浄土への憧憬を空間的に表現したものであり、平泉の浄土思想を最も直接的に体現した建築計画として高く評価されています。現在は池跡や中島、建物の基壇が遺構として残り、発掘調査の成果に基づいて史跡公園として整備が進められています。

住所
Address
岩手県西磐井郡平泉町平泉花立
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR平泉駅(徒歩約10分)
URL
URL
https://www.town.hiraizumi.iwate.jp/heritage/asset/muryou.html

金鶏山 / Kinkei Zan[Mt Kinkeisan]

金鶏山は、平泉の都市設計において中心的な役割を果たした標高約98メートルの円錐形の山です。奥州藤原氏は、この山を平泉の空間設計の基準点とし、中尊寺・毛越寺・無量光院などの主要な寺院群はいずれも金鶏山との位置関係を意識して配置されました。山頂には経塚が確認されており、藤原秀衡が雌雄一対の金の鶏を埋めたという伝説が山名の由来とされています。山全体が信仰の対象であり、平泉の浄土世界を構成する自然のランドマークとして世界遺産の構成資産に含まれています。

住所
Address
岩手県西磐井郡平泉町平泉花立
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR平泉駅(徒歩約25分)、JR平泉駅より自動車(約5分)
URL
URL
https://www.town.hiraizumi.iwate.jp/heritage/asset/kinkei.html

明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業 / Meiji Nihon No Sangyou Kakumei Isan Seitetsu Tekkou Zousen Sekitan Sangyou[Sites of Japan's Meiji Industrial Revolution: Iron and Steel, Shipbuilding and Coal Mining]

「明治日本の産業革命遺産」は、幕末から明治時代にかけて日本が約50年間で急速な産業化を達成した過程を証明する遺産群であり、2015年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。全国8県11市に分布する23の構成資産からなるシリアル・ノミネーション(連続性のある資産)であり、岩手県からは釜石市の橋野鉄鉱山が構成資産に含まれています。

登録基準(2)「人類の価値の重要な交流」および(4)「人類の歴史上重要な時代を例証する技術の集積」を満たし、西洋の産業技術が非西洋地域に移転・適応された過程を示す世界的にも稀有な事例として評価されています。

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
2015年
登録基準
Criteria
(2)、(4)

橋野鉄鉱山 / Hashino Tekkou Zan[Hashino Iron Mining and Smelting Site]

橋野鉄鉱山は、日本に現存する最古の洋式高炉跡として知られる製鉄遺跡です。1858年(安政5年)、南部藩の大島高任が西洋の製鉄技術を導入し、この地で日本初の洋式高炉による連続出銑に成功しました。山中には一番高炉・二番高炉・三番高炉の3基の高炉跡が残されており、高炉の石組みや水路、採掘場の遺構が良好な状態で保存されています。周囲を取り囲む豊かな森林は、製鉄に不可欠な木炭の原料供給地であり、鉄鉱石の採掘場から高炉までの一連の製鉄工程の全体像を現地で確認できる点が学術的にも大きな価値を持っています。釜石は「鉄の町」として知られ、橋野鉄鉱山は日本の近代製鉄業の原点を物語る産業遺産です。

住所
Address
岩手県釜石市橋野町第2地割6
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR釜石駅より自動車(約1時間)、JR釜石駅より現地ガイド付バスツアー(土・日・祝日のみ11:00~14:00、高校生以上:2000円、小中学生:1000円)
URL
URL
https://www.city.kamaishi.iwate.jp/tanoshimu/spot/hashino_tekkouzan/detail/1200513_3028.html