四国地方の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Shikoku ~四国八十八箇所霊場と遍路道の世界遺産登録への取り組み、4県の文化遺産ガイド~
四国地方の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Shikoku
四国地方の世界遺産の現状と登録への取り組み
四国地方は、現時点でユネスコの世界遺産が登録されていない日本で唯一の地方ブロックです。しかし、四国4県(徳島・香川・愛媛・高知)が一体となって世界遺産登録を目指す「四国八十八箇所霊場と遍路道」は、約1,200kmにおよぶ世界的にも類を見ない環状の巡礼路であり、スペインの「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」(1993年登録)と並ぶ世界二大巡礼路の一つとして国際的に高い知名度を誇っています。
四国遍路は、弘法大師空海(774年~835年)の足跡を辿る約1,200kmの巡礼で、徳島県(発心の道場・第1番~第23番)、高知県(修行の道場・第24番~第39番)、愛媛県(菩提の道場・第40番~第65番)、香川県(涅槃の道場・第66番~第88番)の4つの修行段階を経て、仏教の悟りへと至る精神的な旅路です。2015年には文化庁により日本遺産「四国遍路~回遊型巡礼路と独自の巡礼文化~」に認定され、4県が連携して世界遺産暫定一覧表への記載を目指しています。
世界遺産の登録物件こそないものの、四国は道後温泉(日本最古級の温泉)、松山城・宇和島城・高知城・丸亀城の4つの現存天守、金刀比羅宮、栗林公園、祖谷渓谷、鳴門の渦潮、室戸ユネスコ世界ジオパークなど、世界的にも価値の高い自然・文化遺産が豊富に存在しています。
四国地方の世界遺産候補
| 候補名 | 種別 | 対象地域 | 状況 |
|---|---|---|---|
| 四国八十八箇所霊場と遍路道 | 文化遺産 | 徳島・高知・愛媛・香川 | 4県連携で暫定一覧表記載を目指す |
| 鳴門の渦潮 | 自然遺産 | 徳島・兵庫 | 登録基準(7)(8)での登録を目指す |
徳島県の世界遺産 / UNESCO World Heritage Sites in Tokushima
徳島県にはユネスコの世界遺産は登録されていませんが、四国八十八箇所霊場の起点となる重要な地域です。徳島は遍路の「発心の道場」として第1番札所・霊山寺から第23番札所・薬王寺までの23か寺を有し、四国遍路の出発地として約1,200kmの巡礼の旅が始まる場所です。
四国八十八箇所霊場と遍路道(徳島県の区間)
徳島県は四国遍路の「発心の道場」(発心=仏道に入る決意)と呼ばれ、巡礼者が修行への第一歩を踏み出す地です。第1番札所の霊山寺(鳴門市)から始まり、吉野川沿いの平野部から阿波の山地を巡り、第23番札所の薬王寺(美波町)に至ります。スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路(1993年世界遺産登録)とは姉妹道として提携しており、両巡礼路のパスポートを持って巡礼する「ダブルパイロット」も増えています。
鳴門の渦潮
鳴門海峡で発生する世界最大級の渦潮は、直径最大約30mに達し、イタリアのメッシーナ海峡、カナダのシーモア・ナローズとともに世界三大潮流の一つに数えられています。瀬戸内海と紀伊水道の最大約1.5mの潮位差によって生じる時速約20kmの激流が、この壮大な自然現象を生み出しています。徳島県と兵庫県が連携して自然遺産としての登録を目指しています。
祖谷渓谷とかずら橋
日本有数の秘境として知られる祖谷渓谷には、シラクチカズラを編み込んだ「かずら橋」(重要有形民俗文化財)が架けられています。平家の落人伝説が残り、追手が迫った際に素早く切り落とせるよう蔓で造られたと伝えられています。大歩危・小歩危の渓谷美や、急斜面に建つ落合集落(重要伝統的建造物群保存地区)など、独特の山岳文化が今も息づいています。
香川県の世界遺産 / UNESCO World Heritage Sites in Kagawa
香川県にはユネスコの世界遺産は登録されていませんが、四国八十八箇所霊場の「結願の地」(涅槃の道場)として、巡礼を締めくくる重要な地域です。第66番札所・雲辺寺から第88番札所・大窪寺までの23か寺を有し、巡礼者が悟りの境地に至る最終段階の修行地とされています。
四国八十八箇所霊場と遍路道(香川県の区間)
香川県は四国遍路の「涅槃の道場」(涅槃=煩悩を滅した悟りの境地)と呼ばれ、約1,200kmの巡礼の旅が結願(完了)する地です。第88番札所・大窪寺は「結願所」として知られ、巡礼を終えた遍路が金剛杖や笠を奉納する感動的な場面が見られます。四国遍路は「回遊型」の巡礼路であるという点が、直線型のサンティアゴ巡礼路とは異なる独自の特徴です。
栗林公園
国の特別名勝に指定されている栗林公園は、約400年の歴史を持つ回遊式大名庭園です。6つの池と13の築山を紫雲山の借景とともに配し、「一歩一景」と称される変化に富んだ景観美は、ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで最高評価の三つ星を獲得しています。文化財庭園としては日本最大規模を誇ります。
金刀比羅宮
象頭山に鎮座する金刀比羅宮(こんぴらさん)は、海上交通の守護神として古くから信仰を集め、本宮まで785段、奥社まで1,368段の石段で知られています。江戸時代には「一生に一度はこんぴら参り」と言われるほど庶民に愛された聖地で、表書院には円山応挙や伊藤若冲の障壁画(重要文化財)が所蔵されています。
瀬戸内海の島々と現代アート
直島・豊島・小豆島をはじめとする瀬戸内海の島々は、ベネッセアートサイト直島、地中美術館、瀬戸内国際芸術祭の開催地として国際的な現代アートの聖地となっています。瀬戸内海は日本初の国立公園指定地域であり、穏やかな多島美と現代アートが融合した独自の文化的景観を形成しています。
愛媛県の世界遺産 / UNESCO World Heritage Sites in Ehime
愛媛県にはユネスコの世界遺産は登録されていませんが、四国八十八箇所霊場の「菩提の道場」として第40番札所・観自在寺から第65番札所・三角寺までの26か寺を有しています。道後温泉(日本最古級の温泉)、松山城・宇和島城(現存12天守のうち2城)、大山祇神社(全国の甲冑の約8割を所蔵)など、歴史的・文化的に極めて価値の高い遺産が豊富です。
四国八十八箇所霊場と遍路道(愛媛県の区間)
愛媛県は四国遍路の「菩提の道場」(菩提=悟りを深める段階)と呼ばれ、巡礼者が修行を経て悟りの境地へと近づく過程を象徴する区間です。瀬戸内海沿いから宇和海沿い、さらに四国山地の山岳部へと変化に富んだ地形を巡る道のりは、四国遍路の中でも特に多彩な風景が楽しめます。2015年には文化庁により「四国遍路~回遊型巡礼路と独自の巡礼文化~」として日本遺産に認定されました。
道後温泉
道後温泉は日本最古の温泉の一つとして約3,000年の歴史を持つと伝えられ、「日本書紀」にも記述が見られます。道後温泉本館は1894年(明治27年)に建設された三層楼の近代和風建築で、1994年に公衆浴場として初めて国の重要文化財に指定されました。夏目漱石の小説「坊っちゃん」にも登場する名湯です。
松山城・宇和島城
松山城は標高132mの勝山山頂に聳える現存12天守の一つで、21棟の建造物が国の重要文化財に指定されています。宇和島城は築城の名手・藤堂高虎が1601年に築いた城で、天守は重要文化財に指定されています。独特の不等辺五角形の縄張りが特徴です。
別子銅山跡
住友家が1691年から1973年まで約283年間にわたって操業した別子銅山は、日本の産業史上きわめて重要な近代化産業遺産です。山中の東平(とうなる)地区には、貯鉱庫跡や索道基地跡などの遺構が残り、「東洋のマチュピチュ」と称される壮大な産業遺産の景観を見ることができます。
高知県の世界遺産 / UNESCO World Heritage Sites in Kochi
高知県にはユネスコの世界遺産は登録されていませんが、四国八十八箇所霊場の「修行の道場」として第24番札所・最御崎寺(室戸市)から第39番札所・延光寺(宿毛市)までの16か寺を有しています。太平洋に面した約700kmの海岸線と県土の約84%を占める森林を有する高知県は、四国遍路の中でも最も過酷で壮大な区間として知られています。
四国八十八箇所霊場と遍路道(高知県の区間)
高知県は四国遍路の「修行の道場」(修行=厳しい修行を通じて精神を鍛える段階)と呼ばれ、室戸岬から足摺岬に至る太平洋沿いの長大な道のりは、四国遍路全行程の中で最も距離が長く、最も厳しい区間とされています。荒々しい太平洋の波と断崖絶壁の海岸線を歩く修行の道は、巡礼者の精神を深く鍛えると言われています。
室戸ユネスコ世界ジオパーク
2011年にユネスコ世界ジオパークに認定された室戸は、プレート沈み込み帯に位置し、海成段丘やタービダイト(乱泥流堆積物)が地表で直接観察できる世界的にも稀有な地質学的遺産です。室戸岬の隆起海成段丘は、地球のダイナミックな活動を目の当たりにできる貴重な場所であり、弘法大師空海が悟りを開いたと伝えられる御厨人窟(みくろど)もこの地にあります。
四万十川と自然環境
「日本最後の清流」と称される四万十川は、全長196kmの大河でありながらダムが建設されていない珍しい川として知られています。沈下橋(増水時に水面下に沈む欄干のない橋)が数多く残り、日本の原風景を今に伝えています。足摺岬は四国最南端の岬で、亜熱帯植物が自生する温暖な気候と壮大な太平洋の景観が広がっています。
四国地方の世界遺産候補めぐりプランニングガイド
四国遍路の全行程を歩く「通し打ち」には30日~60日程度が必要ですが、各県の主要札所や文化遺産をハイライトとして巡る旅も魅力的です。徳島では第1番札所・霊山寺と鳴門の渦潮、祖谷のかずら橋を組み合わせた1~2日のコースがおすすめです。高知では室戸ユネスコ世界ジオパークと四万十川を巡る2~3日の行程が充実しています。愛媛では道後温泉と松山城を拠点に、しまなみ海道を経由して大山祇神社や別子銅山跡を訪問できます。香川では金刀比羅宮と栗林公園を巡り、直島・豊島の現代アートを楽しむ2~3日のコースが人気です。
四国へのアクセスは、瀬戸大橋(岡山方面)、しまなみ海道(広島方面)、明石海峡大橋・大鳴門橋(関西方面)の本四連絡橋のほか、各県の空港からも可能です。鉄道ではJR予讃線・土讃線・徳島線が主要都市を結んでいます。レンタカーでの周遊が最も効率的ですが、路線バスや遍路道を歩いて巡る伝統的なスタイルも、四国ならではの深い体験を提供してくれます。四国遍路の「お接待」(地元の人々が巡礼者に無償で食事や宿を提供する文化)は、現在も各地で受け継がれています。

