長野県の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Nagano ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~
世界遺産とは、1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)」に基づき、世界遺産リストに登録された遺跡・景観・自然などを指します。登録の対象となるのは、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value=OUV)」を有する不動産であり、文化遺産・自然遺産・複合遺産の3種類に分類されます。
世界遺産登録の本来の目的は、自然環境や文化的に価値のある遺産を保護・保全し、過去から現在、そして未来の世代へ確実に継承していくことにあります。同時に、世界遺産への登録は国際的な知名度の向上をもたらし、観光地としてのブランド力を高める効果も広く認められており、地域振興や文化交流の観点からも注目を集めています。
本記事では、長野県における世界遺産の登録状況と、世界遺産級の価値を持つ文化財・自然環境について紹介します。長野県は北アルプス(飛騨山脈)・中央アルプス(木曽山脈)・南アルプス(赤石山脈)に囲まれた日本有数の山岳県であり、善光寺や松本城をはじめとする歴史的遺産、上高地や志賀高原などの雄大な自然景観を有しています。
世界遺産の登録にあたっては、以下の10項目の登録基準のうち1つ以上を満たす必要があります。
- (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
- (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
- (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
- (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
- (5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
- (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
- (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
- (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
- (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
- (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。
上記の基準のうち、(1)~(6)を満たすものが文化遺産、(7)~(10)を満たすものが自然遺産、文化遺産と自然遺産の基準をそれぞれ1つ以上満たすものが複合遺産として登録されます。なお、危機遺産とは登録後に武力紛争や自然災害、開発などにより価値が脅かされている遺産を指し、「危機にさらされている世界遺産リスト」に別途記載されます。
長野県の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Nagano ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~
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長野県における世界遺産の登録状況
長野県には、現時点でユネスコ世界遺産に正式登録された物件はありません。しかしながら、長野県は日本有数の文化的・自然的遺産を擁する地域であり、国宝や重要文化財、特別名勝・特別天然記念物に指定された貴重な資産が数多く存在します。以下では、長野県が誇る世界遺産級の文化財や自然環境について詳しく紹介します。
長野県の国宝建造物
長野県には、世界遺産に匹敵する歴史的・文化的価値を持つ国宝建造物が5件あり、全国的にも有数の文化財集積地です。
- 松本城(松本市):現存する日本最古の五重六階の天守を持つ城郭で、姫路城・犬山城・彦根城・松江城と並ぶ国宝5城のひとつです。1593年~1594年頃に建てられたとされ、黒漆塗りの下見板張りが特徴的な外観から「烏城(からすじょう)」の別名でも親しまれています。北アルプスを背景にした天守の姿は、日本の城郭建築を代表する景観です。
- 善光寺本堂(長野市):約1,400年の歴史を持つ無宗派の寺院で、「一生に一度は善光寺参り」の言葉で古くから広く信仰を集めてきました。現在の本堂は1707年(宝永4年)に再建されたもので、間口約24m、奥行約54m、高さ約26mと東日本最大級の木造建築物です。撞木造(しゅもくづくり)と呼ばれるT字型の独特な屋根構造が建築学的にも高く評価されています。
- 安楽寺八角三重塔(上田市):別所温泉に位置する安楽寺の境内にあり、日本で唯一現存する八角三重塔です。鎌倉時代末期の建立と推定され、中国から伝わった禅宗様(唐様)の建築様式を色濃く残す極めて貴重な建造物として知られています。
- 大法寺三重塔(青木村):1333年(正慶2年)に建立された三重塔で、均整のとれた優美な姿から「見返りの塔」と称されています。思わず振り返って見たくなるほど美しいことがその名の由来であり、鎌倉時代の建築技術の粋を今に伝えています。
- 仁科神明宮(大町市):日本最古の神明造の建築物として知られ、本殿と中門(前殿)が国宝に指定されています。伊勢神宮と同じく20年ごとの式年遷宮の伝統を現在まで守り続けており、日本の神社建築の原型を今に伝える極めて重要な存在です。
長野県の自然遺産的価値を持つ地域
長野県は「日本の屋根」と称されるほど山岳地帯に恵まれた県であり、世界的にも貴重な自然環境や生態系を有しています。
- 上高地(松本市):北アルプス南部の梓川上流に広がる標高約1,500mの山岳景勝地で、国の特別名勝および特別天然記念物に指定されています。穂高連峰や焼岳を望む河童橋からの眺望は日本を代表する山岳風景として国内外に知られており、イギリス人宣教師ウォルター・ウェストンが日本アルプスを世界に紹介したことでも有名です。年間約150万人が訪れる日本屈指の山岳観光地です。
- 志賀高原(山ノ内町):1980年にユネスコエコパーク(生物圏保存地域)に登録された高原地帯で、標高1,300m~2,300mに広がる多様な湿原・池沼群と豊かな動植物の生態系を有しています。ユネスコエコパークは世界遺産とは異なる制度ですが、生態系の保全と持続可能な利用の模範地域として国際的に認められています。
- 日本アルプス:北アルプス(飛騨山脈)、中央アルプス(木曽山脈)、南アルプス(赤石山脈)の3つの山脈が長野県を南北に縦断しています。槍ヶ岳(3,180m)、奥穂高岳(3,190m)、北岳(3,193m)など3,000m級の山々が連なり、高山植物群落や氷河地形(カール)など地質学的にも貴重な自然環境を形成しています。
近隣県の世界遺産
長野県を訪れる際には、近隣県に所在する世界遺産をあわせて訪問するのもおすすめです。
- 富岡製糸場と絹産業遺産群(群馬県・2014年登録):長野県東部からアクセスしやすい位置にあります。養蚕・製糸業は長野県(信州)でも盛んであった産業であり、長野県と群馬県は近代日本の絹産業の発展を共に支えた歴史があります。登録基準:(2)(4)
- 白川郷・五箇山の合掌造り集落(岐阜県・富山県・1995年登録):長野県西部の松本方面から岐阜県白川村へのアクセスルートが利用できます。豪雪地帯の厳しい自然環境に適応した合掌造りの建築様式と、それを維持してきた地域の結の精神は、日本の伝統的な暮らしの知恵を象徴しています。登録基準:(4)(5)

