滋賀県の国宝(建造物) 一覧・まとめ / National Treasure of Japanese Buildings in Shiga ~旅行のみどころになる日本国民の宝と指定された神社、寺、城、住宅等の重要文化財~

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日本の国宝とは、文化財保護法によって国が指定した重要文化財のうち、世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものであるとして国(文部科学大臣)が指定したものを指します。法律の観点では国宝は重要文化財の一種であり、国宝の分類には建造物(神社、寺院、城郭、住宅等)、絵画、彫刻、工芸品、書跡・典籍、古文書、考古資料・歴史資料があります。

今回はそのような国宝の中から、各都道府県の旅行のみどころにもなる「建造物」に分類される国宝を紹介します。

滋賀県は、日本最大の湖・琵琶湖を中心に広がる歴史と文化の宝庫であり、国宝に指定された建造物の数は22件にのぼります。これは京都府、奈良県に次いで全国第3位の多さであり、滋賀県がいかに豊かな歴史的建造物に恵まれているかを示しています。古代から都(京都)に隣接する近江国として栄え、交通の要衝として多くの寺社・城郭が建立された歴史的背景が、この圧倒的な文化財の集積を生みました。

滋賀県の国宝建造物は、神社7件(園城寺新羅善神堂、御上神社本殿、大笹原神社本殿、都久夫須麻神社本殿、日吉大社西本宮・東本宮、苗村神社西本殿)、寺院12件(園城寺金堂、延暦寺根本中堂、金剛輪寺本堂、常楽寺本堂・三重塔、西明寺本堂・三重塔、石山寺本堂・多宝塔、善水寺本堂、長寿寺本堂、宝厳寺唐門)、城郭1件(彦根城天守)、住宅2件(勧学院客殿、光浄院客殿)と多岐にわたり、飛鳥時代から江戸時代初期まで各時代の建築様式を網羅する一大コレクションとなっています。

滋賀県の国宝(建造物) 一覧・まとめ / National Treasure of Japanese Buildings in Shiga ~旅行のみどころになる日本国民の宝と指定された神社、寺、城、住宅等の重要文化財~


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園城寺新羅善神堂 / Ojou Ji Shinra Zenshin Dou[Ojou Temple Shinra Zenshin Dou]

園城寺新羅善神堂(おんじょうじしんらぜんしんどう)は、天台寺門宗の総本山・園城寺(三井寺)の鎮守社として建立された神社建築です。園城寺の守護神である新羅明神(しんらみょうじん)を祀るための社殿であり、室町時代前期の貞和3年(1347年)に建てられました。

歴史的背景と建築の経緯

園城寺(三井寺)は、天智天皇の念持仏である弥勒菩薩像を本尊とし、天武天皇の勅願により大友氏が創建した古刹です。新羅善神堂は、園城寺の中興の祖とされる智証大師円珍が唐からの帰国途上に感得したとされる新羅明神を祀っています。円珍が新羅明神の加護により無事に帰国できたとの伝承から、園城寺の鎮守神として篤く信仰されてきました。現存する社殿は南北朝時代の建立で、当時の建築技術の粋を集めた格調高い造りとなっています。

建築様式の特徴

新羅善神堂は三間社流造(さんげんしゃながれづくり)・檜皮葺(ひわだぶき)の社殿で、正面三間・側面二間の規模を持ちます。流造は日本の神社建築で最も一般的な形式ですが、本社殿はその中でも特に均整の取れたプロポーションと、室町時代前期の優美な曲線を持つ屋根が特徴です。向拝(こうはい)の蟇股(かえるまた)や木鼻(きばな)の彫刻には当時の装飾技法が見られ、簡素ながら格式の高い造形が評価されています。園城寺境内の奥まった場所に位置し、周囲の自然と調和した静謐な空間を形成しています。

種別
Type
国宝・近世以前・神社
時代
Period
室町前期(1347年)
指定年月日
Designated
1953年03月31日
住所
Address
滋賀県大津市園城寺町
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
京阪電気鉄道別所駅(徒歩約10分)、JR大津京駅(徒歩約10分)
URL
URL
https://www.shiga-miidera.or.jp/

御上神社本殿 / Mikami Jinja Honden[Mikami Shrine Honden]

御上神社本殿(みかみじんじゃほんでん)は、近江富士とも称される秀麗な三上山(標高432m)の麓に鎮座する御上神社の本殿です。祭神は天之御影命(あめのみかげのみこと)で、鍛冶・製鉄の神として古くから信仰を集めてきました。鎌倉時代後期(1275年〜1332年)の建立と推定されています。

歴史的背景

御上神社の創建は古く、孝霊天皇の時代に天之御影命が三上山に降臨したことに始まると伝えられています。『延喜式』にも名神大社として記載される格式の高い神社で、古代から近江国の有力な神社として朝廷や武家の崇敬を受けてきました。三上山そのものを御神体とする神体山信仰の伝統を持ち、山岳信仰と神社建築が融合した貴重な文化的景観を形成しています。

建築様式の特徴

本殿は三間社流造・檜皮葺の建物で、鎌倉時代後期の神社建築の特色をよく示しています。特筆すべきは、正面の向拝が本殿と一体的に構成されている点で、流造特有の優美な屋根の曲線が際立っています。蟇股や木鼻などの細部装飾には鎌倉時代の力強い彫刻技法が見られ、当時の職人の高い技術力を伝えています。建物全体としては簡潔かつ端正なまとまりを見せ、鎌倉時代の神社建築を代表する遺構として高く評価されています。

種別
Type
国宝・近世以前・神社
時代
Period
鎌倉後期(1275年〜1332年)
指定年月日
Designated
1952年11月22日
住所
Address
滋賀県野洲市三上838
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR野洲駅より自動車(約10分)、JR野洲駅よりバス(約10分)「山出前」下車(徒歩約1分)
URL
URL
https://www.mikami-jinja.jp/

大笹原神社本殿 / Ohsasahara Jinja Honden[Ohsasahara Shrine Honden]

大笹原神社本殿(おおささはらじんじゃほんでん)は、滋賀県野洲市に鎮座する大笹原神社の本殿で、室町時代中期の応永21年(1414年)に建立されました。祭神は須佐之男命(すさのおのみこと)をはじめとする複数の神々で、地域の産土神として長く崇敬されてきた神社です。

歴史的背景

大笹原神社の創建は平安時代に遡るとされ、近江国の地方神社として地域の人々の信仰を集めてきました。現在の本殿は室町時代中期に地元の有力者の寄進により再建されたもので、当時の地方における神社建築の水準の高さを示す貴重な遺構です。周辺の農村集落と一体となった境内の景観は、中世の村落共同体と神社の関係を今に伝えています。

建築様式の特徴 ― 精緻を極めた装飾彫刻

本殿は三間社流造・檜皮葺の建物ですが、最大の特徴は外壁面や蟇股、木鼻などに施された極めて精緻な装飾彫刻です。動植物や雲形などの多彩なモチーフが全面にわたって彫り込まれており、室町時代の装飾彫刻技術の到達点を示すものとして高く評価されています。この緻密な彫刻群は、当時の近江地方における工匠たちの卓越した技量を物語っており、地方の神社建築としては類例がないほどの豪華さを誇ります。1961年(昭和36年)に国宝に指定されました。

種別
Type
国宝・近世以前・神社
時代
Period
室町中期(1414年)
指定年月日
Designated
1961年04月27日
住所
Address
滋賀県野洲市大篠原2375
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR野洲駅より自動車(約25分)、JR野洲駅よりバス(約10分)「大篠原」下車(徒歩約10分)
URL
URL

都久夫須麻神社本殿 / Tsukubusuma Jinja Honden[Tsukubusuma Shrine Honden]

都久夫須麻神社本殿(つくぶすまじんじゃほんでん)は、琵琶湖北部に浮かぶ竹生島(ちくぶしま)に鎮座する神社の本殿です。祭神は市杵島比売命(いちきしまひめのみこと)・宇賀福神浅井比売命で、古来より琵琶湖の水の神、弁財天として信仰されてきました。桃山時代(1567年〜1602年)の建立です。

歴史的背景と竹生島信仰

竹生島は琵琶湖に浮かぶ周囲約2kmの小島で、古代から神の住む島として信仰の対象とされてきました。都久夫須麻神社は、隣接する宝厳寺とともに神仏習合の聖地を形成し、中世には「竹生島詣で」として多くの参拝者を集めました。現存する本殿は、豊臣秀吉が伏見城の建物の一部を寄進して移築・改築したものと伝えられており、桃山時代の華やかな文化を今に伝える貴重な建築遺構です。

建築様式の特徴 ― 桃山文化の粋

本殿は入母屋造・檜皮葺の建物で、桃山時代特有の豪壮華麗な装飾が随所に施されています。内部の天井や壁面には極彩色の花卉図(かきず)や金碧障壁画が描かれ、黒漆塗りの柱や金具装飾と相まって絢爛たる空間を作り出しています。伏見城からの移築と伝わる経緯は、秀吉の権力と当時の建築技術の高さを物語るものです。琵琶湖に面して建つ社殿のロケーションは唯一無二であり、水上の聖地にふさわしい神秘的な佇まいを見せています。

種別
Type
国宝・近世以前・神社
時代
Period
桃山(1567年〜1602年)
指定年月日
Designated
1953年03月31日
住所
Address
滋賀県長浜市早崎町1665
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR長浜駅(徒歩約5分)琵琶湖汽船(約30分)、彦根港より船舶(約35分)
URL
URL

日吉大社西本宮本殿及び拝殿 / Hiyoshi Taisha Nishi Honguh Honden Oyobi Haiden[Hiyoshi Taisha West Honguh Honden and Haiden]

日吉大社西本宮本殿及び拝殿(ひよしたいしゃにしほんぐうほんでんおよびはいでん)は、比叡山の麓・坂本に鎮座する日吉大社の西本宮に属する社殿群です。日吉大社は全国に約3,800社ある日吉・日枝・山王神社の総本宮であり、西本宮の祭神は大己貴神(おおなむちのかみ=大国主命)です。天正14年(1586年)の再建です。

歴史的背景

日吉大社の歴史は古く、崇神天皇の時代に遡るとされています。比叡山延暦寺の鎮守社として最澄の時代から深い関わりを持ち、天台宗の発展とともに「山王権現」として神仏習合の中心的存在となりました。元亀2年(1571年)の織田信長による比叡山焼き討ちの際、日吉大社も全焼しましたが、その後豊臣秀吉や徳川家康の援助を受けて再建されました。現在の西本宮本殿・拝殿は天正14年の再建によるものです。

建築様式の特徴 ― 日吉造(ひえづくり)

西本宮本殿は、日吉大社にのみ見られる独特の建築様式である「日吉造」(ひえづくり)で建てられています。日吉造は、平面が正面五間・側面三間の規模を持ち、背面を切り落とした独特の形状(「縋破風」すがるはふ)が特徴です。一般的な神社建築の流造や春日造とは異なり、床下に「下殿」と呼ばれる空間を設けている点も特筆されます。桃山時代の再建であるため、細部の装飾には桃山文化の華やかさが反映されつつも、古式の格式を保った堂々たる構えを見せています。

種別
Type
国宝・近世以前・神社
時代
Period
桃山(1586年)
指定年月日
Designated
1961年04月27日
住所
Address
滋賀県大津市坂本5丁目1-1
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
坂本ケーブル坂本駅(徒歩約10分)、京阪電気鉄道坂本駅(徒歩約15分)、JR比叡山坂本駅(徒歩約25分)
URL
URL
https://hiyoshitaisha.jp/

日吉大社東本宮本殿及び拝殿 / Hiyoshi Taisha Higashi Honguh Honden Oyobi Haiden[Hiyoshi Taisha East Honguh Honden and Haiden]

日吉大社東本宮本殿及び拝殿(ひよしたいしゃひがしほんぐうほんでんおよびはいでん)は、日吉大社の東本宮に属する社殿群で、祭神は大山咋神(おおやまくいのかみ)です。大山咋神は比叡山の地主神として古くから信仰され、日吉大社の中でも最も古い起源を持つとされています。文禄4年(1595年)の再建です。

歴史的背景

東本宮は日吉大社の創祀に関わる最も古い社とされ、比叡山そのものに宿る神(大山咋神)を祀る聖地でした。西本宮と同様に元亀2年(1571年)の比叡山焼き討ちで焼失し、その後の再建で現在の社殿が完成しました。東本宮は西本宮よりやや遅れて文禄4年に再建されており、両社殿を比較することで桃山時代における神社建築の変遷をたどることができます。

建築様式の特徴

東本宮本殿も西本宮と同じく日吉造(ひえづくり)で建てられており、日吉大社特有の建築様式を伝えています。規模は西本宮と同程度ですが、東本宮の方が9年遅い再建であるため、装飾の細部に微妙な違いが見られます。拝殿は桁行五間・梁間三間の入母屋造で、本殿との配置関係が日吉大社独自の社殿構成を形成しています。西本宮・東本宮の両社殿が揃って国宝に指定されていることは、日吉造という建築様式の学術的・文化的価値の高さを示すものです。

種別
Type
国宝・近世以前・神社
時代
Period
桃山(1595年)
指定年月日
Designated
1961年04月27日
住所
Address
滋賀県大津市坂本5丁目1-24
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
坂本ケーブル坂本駅(徒歩約10分)、京阪電気鉄道坂本駅(徒歩約15分)、JR比叡山坂本駅(徒歩約25分)
URL
URL
https://hiyoshitaisha.jp/

苗村神社西本殿 / Namura Jinja Nishi Honden[Namura Shrine West Honden]

苗村神社西本殿(なむらじんじゃにしほんでん)は、滋賀県蒲生郡竜王町に鎮座する苗村神社の西本殿で、鎌倉時代後期の延慶元年(1308年)に建立されました。苗村神社は那牟羅大明神とも称され、祭神は国狭槌尊(くにさつちのみこと)で、農耕の神として地域で篤く信仰されてきた古社です。

歴史的背景

苗村神社の創建は垂仁天皇の時代に遡ると伝えられ、『延喜式』にも記載される古い由緒を持つ神社です。近江国蒲生郡一帯の産土神として、中世には在地の武士団や農民から広く信仰を集めました。西本殿と東本殿の二棟の本殿を持つ構成は、古来からの祭祀の形態を反映しており、地域の歴史を知る上でも重要な存在です。

建築様式の特徴

西本殿は三間社流造・檜皮葺の社殿で、鎌倉時代後期の神社建築として貴重な遺構です。正面三間の柱間が均等に配置された端正な構成を持ち、鎌倉時代特有の力強く簡潔な意匠が際立っています。蟇股や懸魚(げぎょ)などの装飾部材には当時の彫刻技法がよく表れており、過度な装飾を排した格調高い美しさが特徴です。東本殿(重要文化財)と合わせて参拝することで、異なる時代の建築様式を比較することができます。

種別
Type
国宝・近世以前・神社
時代
Period
鎌倉後期(1308年)
指定年月日
Designated
1955年02月02日
住所
Address
滋賀県蒲生郡竜王町綾戸468
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR近江八幡駅より自動車(約25分)、JR近江八幡駅よりバス(約15分)「綾戸北」下車(徒歩約10分)
URL
URL
https://namurajinjya.ryuoh.org/

園城寺金堂 / Onjou Ji Kondou[Onjou Temple Kondou]

園城寺金堂(おんじょうじこんどう)は、天台寺門宗の総本山・園城寺(三井寺)の本堂にあたる建物です。三井寺は近江八景「三井の晩鐘」で知られる名刹で、金堂はその伽藍の中核をなす堂宇です。慶長4年(1599年)に豊臣秀吉の正室・北政所(ねね)の寄進により再建されました。

歴史的背景

園城寺は7世紀に大友氏の氏寺として創建され、9世紀に智証大師円珍が入寺して以降、天台宗寺門派の拠点として発展しました。しかし、山門派(延暦寺)との対立や南北朝の動乱、戦国時代の兵火などにより、幾度も焼き討ちに遭っています。現在の金堂は、文禄4年(1595年)に秀吉によって三井寺が一度廃寺とされた後、慶長4年に再興が許されて北政所の寄進により再建されたものです。この波乱に満ちた歴史を経てなお現存する金堂は、三井寺の不屈の歩みを象徴する建物です。

建築様式の特徴

金堂は桁行七間・梁間七間、入母屋造・檜皮葺の大規模な仏堂で、桃山時代の寺院建築を代表する堂々たる構えを見せています。内部は内陣・外陣に分かれ、天智天皇の念持仏と伝わる弥勒菩薩像(秘仏)を本尊として安置しています。建物の構造は中世以来の伝統的な天台宗仏堂の形式を踏襲しつつ、桃山時代特有の力強い架構と重厚な外観を持ち合わせています。近江八景のひとつに数えられる「三井の晩鐘」(梵鐘は重要文化財)とともに、三井寺を訪れた際の最大の見どころです。

種別
Type
国宝・近世以前・寺院
時代
Period
桃山(1599年)
指定年月日
Designated
1953年03月31日
住所
Address
滋賀県大津市園城寺町 園城寺金堂
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
京阪電気鉄道別所駅(徒歩約10分)、京阪電気鉄道三井寺駅(徒歩約10分)
URL
URL
https://www.shiga-miidera.or.jp/

延暦寺根本中堂 / Enryaku Ji Konpon Chuh Dou[Enryaku Temple Konpon Chuh Dou]

延暦寺根本中堂(えんりゃくじこんぽんちゅうどう)は、比叡山延暦寺の総本堂であり、日本天台宗の開祖・伝教大師最澄が延暦7年(788年)に創建した一乗止観院を起源とする建物です。現在の建物は寛永17年(1640年)に徳川家光の命により再建されたもので、延暦寺の中心的存在として約1,200年にわたる「不滅の法灯」が守り続けられています。

歴史的背景 ― 日本仏教の母山

比叡山延暦寺は、最澄が桓武天皇の庇護のもと開山して以来、日本仏教の最高学府として機能してきました。法然(浄土宗)、親鸞(浄土真宗)、栄西(臨済宗)、道元(曹洞宗)、日蓮(日蓮宗)など、後に各宗派の祖となる高僧たちが比叡山で修行したことから、延暦寺は「日本仏教の母山」と称されています。元亀2年(1571年)の織田信長による比叡山焼き討ちで全山が壊滅的な被害を受けましたが、豊臣秀吉や徳川家康・家光の援助により復興が進められ、寛永17年に現在の根本中堂が完成しました。1994年にはユネスコ世界文化遺産「古都京都の文化財」の構成資産のひとつに登録されています。

建築様式の特徴

根本中堂は桁行十一間・梁間六間、入母屋造・銅板葺の大規模な仏堂で、延暦寺の堂宇の中で最大の建物です。建物の大きな特徴は、参拝者が立つ外陣(中陣)の床面と、本尊を安置する内陣の床面に約3メートルの高低差があることです。参拝者は本尊の薬師如来を目の高さで拝む形となり、仏の世界と人の世界が同じ高さで結ばれるという天台宗の教えを建築空間で体現しています。内陣には最澄が灯して以来約1,200年間消えることなく燃え続けている「不滅の法灯」が安置されており、日本仏教の歴史の重みを感じさせる神聖な空間です。

種別
Type
国宝・近世以前・寺院
時代
Period
江戸前期(1640年)
指定年月日
Designated
1953年03月31日
住所
Address
滋賀県大津市坂本本町4220
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
比叡山鉄道ケーブル延暦寺駅(徒歩約15分)
URL
URL
https://www.hieizan.or.jp/

金剛輪寺本堂 / Kongourin Ji Hondou[Kongourin Temple Hondou]

金剛輪寺本堂(こんごうりんじほんどう)は、湖東三山(ことうさんざん)のひとつに数えられる天台宗の古刹・金剛輪寺の本堂(大悲閣)です。聖武天皇の勅願により行基が開山したと伝えられ、本尊は聖観世音菩薩です。本堂は室町時代前期(1333年〜1392年)の建立と推定されています。

歴史的背景と湖東三山

金剛輪寺は、西明寺・百済寺とともに「湖東三山」と総称される滋賀県東部の名刹群のひとつです。鎌倉時代から室町時代にかけて寺勢が最も盛んとなり、多くの堂塔が建立されました。元亀・天正年間の戦乱期には織田信長の兵火から辛くも逃れたとされ(寺伝では住職の機転により本堂への延焼を免れたと伝わる)、中世の建築をそのまま今日に伝える貴重な寺院です。「血染めの紅葉」の別名を持つ秋の紅葉の名所としても名高く、毎年多くの参拝者・観光客が訪れます。

建築様式の特徴

本堂は桁行七間・梁間七間、入母屋造・檜皮葺の大規模な仏堂で、天台宗本堂建築の典型的な形式を示しています。外陣と内陣に分かれた平面構成を持ち、内部には密教法要のための須弥壇が設けられています。鎌倉時代末期から室町時代初期にかけての建築的特徴として、和様を基調としつつも大仏様や禅宗様の技法を取り入れた折衷様の要素が見られます。特に虹梁(こうりょう)や木鼻の意匠には、当時の建築技術の高度な発展を窺うことができます。

種別
Type
国宝・近世以前・寺院
時代
Period
室町前期(1333年〜1392年)
指定年月日
Designated
1952年11月22日
住所
Address
滋賀県愛知郡愛荘町松尾寺873
地図
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地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR稲枝駅より自動車(約25分)
URL
URL
https://kongourinji.jp/

常楽寺三重塔 / Jouraku Ji Sanjuh No Tou[Jouraku Temple Three Storied Pagoda]

常楽寺三重塔(じょうらくじさんじゅうのとう)は、湖南三山(こなんさんざん)のひとつである常楽寺(西寺)の境内に立つ三重塔で、応永7年(1400年)の建立です。本堂とともに国宝に指定されており、常楽寺の伽藍の中で最も目を引く建造物です。

歴史的背景と湖南三山

常楽寺は和銅年間(708年〜715年)に良弁(ろうべん)が開山したと伝えられる天台宗の古刹で、善水寺・長寿寺とともに「湖南三山」と総称されています。かつては「西寺」とも呼ばれ、隣接する長寿寺(東寺)と対をなす存在として栄えました。中世には多くの堂塔伽藍を有していましたが、兵火により多くが失われ、現在は本堂と三重塔が往時の壮麗さを偲ばせています。

建築様式の特徴

三重塔は三間三重塔婆・檜皮葺の建物で、室町時代中期の典型的な塔建築の様式を示しています。各層の逓減率(上層に向かって幅が小さくなる割合)が穏やかで、安定感のある端正なシルエットが特徴です。初層の内部には壁画が残されており、建築と絵画が一体となった中世の仏教芸術を伝えています。境内の高台に位置する三重塔は、本堂とともに中世の天台宗寺院の伽藍配置を今に伝える貴重な遺構です。

種別
Type
国宝・近世以前・寺院
時代
Period
室町中期(1400年)
指定年月日
Designated
1953年03月31日
住所
Address
滋賀県湖南市西寺6丁目5
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地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR石部駅より自動車(約15分)
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常楽寺本堂/ Jouraku Ji Hondou[Jouraku Temple Hondou]

常楽寺本堂(じょうらくじほんどう)は、湖南三山のひとつ・常楽寺の本堂で、延文5年(1360年)の建立です。本尊は千手観世音菩薩で、三重塔とともに国宝に指定されている同寺の中心的建物です。

歴史的背景

常楽寺は奈良時代に良弁により開山された後、平安時代に天台宗に転じ、中世を通じて近江国南部における有力寺院として栄えました。現在の本堂は南北朝時代の建立で、それ以前の堂宇が兵火で失われた後に再建されたものです。中世の動乱期にあっても地域の信仰に支えられて法灯を守り続け、現在も湖南三山巡りの重要な拠点となっています。

建築様式の特徴

本堂は桁行七間・梁間六間、入母屋造・檜皮葺の仏堂で、和様を基調とした室町時代前期の建築です。正面に向拝(こうはい)を設け、内部は内陣・外陣に区分された天台宗本堂の典型的な平面構成を持っています。柱や梁の部材は太く力強い造りで、中世仏堂建築の重厚さを感じさせます。本堂の前に広がる庭園とその奥に立つ三重塔が一体となった景観は、中世天台宗寺院の伽藍の美しさを今に伝えるものです。

種別
Type
国宝・近世以前・寺院
時代
Period
室町前期(1360年)
指定年月日
Designated
1953年03月31日
住所
Address
滋賀県湖南市西寺6丁目5
地図
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地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR石部駅より自動車(約15分)
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西明寺三重塔 / Saimyou Ji Sanjuh No Tou[Saimyou Temple Three Storied Pagoda]

西明寺三重塔(さいみょうじさんじゅうのとう)は、湖東三山の筆頭に数えられる天台宗の名刹・西明寺の境内に立つ三重塔です。鎌倉時代後期(1275年〜1332年)の建立と推定され、本堂とともに国宝に指定されています。

歴史的背景

西明寺は承和元年(834年)に仁明天皇の勅願により三修上人が開山したと伝えられる寺院です。湖東三山の中で最も山深い場所に位置し、元亀・天正年間の織田信長の兵火にも幸運にも免れ、鎌倉時代以来の建築群が残されました。三重塔は中世の湖東地方における仏教文化の繁栄を象徴する建造物です。

建築様式の特徴

三重塔は三間三重塔婆・檜皮葺で、鎌倉時代後期の塔建築の優品として知られています。初層の内部には極彩色の壁画が描かれており、法華経の説話や仏菩薩像などが色鮮やかに表現されています。この壁画は鎌倉時代の仏教絵画としても非常に貴重なもので、塔建築と一体となった総合芸術としての価値が認められています。外観は各層の屋根の反りが美しく、鈴鹿山系を背景にした山中の寺院にふさわしい端正な姿を見せています。

種別
Type
国宝・近世以前・寺院
時代
Period
鎌倉後期(1275年〜1332年)
指定年月日
Designated
1952年11月22日
住所
Address
滋賀県犬上郡甲良町池寺
地図
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地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
近江鉄道尼子駅より自動車(約10分)
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https://www.saimyouji.com/

西明寺本堂 / Saimyou Ji Hondou[Saimyou Temple Hondou]

西明寺本堂(さいみょうじほんどう)は、湖東三山・西明寺の中心堂宇であり、鎌倉時代前期(1185年〜1274年)の建立と推定されています。本尊は薬師如来で、湖東三山の中で最も古い建造物として知られ、鎌倉時代の天台宗仏堂建築を代表する遺構です。

歴史的背景

西明寺の本堂は、創建以来幾度かの修理を経ながらも、鎌倉時代前期の建立当初の姿をよく保っています。特に注目されるのは、元亀・天正年間の織田信長の近江侵攻の際、寺伝では住職たちが山門近くの草むらに火を放って全山焼失を装い、信長の軍勢の本堂への進入を防いだとされていることです。この機転により、本堂・三重塔をはじめとする鎌倉時代からの建築群が奇跡的に残されました。

建築様式の特徴

本堂は桁行七間・梁間七間、入母屋造・檜皮葺の仏堂で、純和様を基調とした鎌倉時代前期の建築様式を示しています。外観は素朴で力強く、鎌倉時代特有の質実剛健な造りが際立っています。内部の須弥壇には二天門(重要文化財)から続く厳かな空間が広がり、天台宗の密教法要に適した堂内構成となっています。屋根の軒先の反りや組物の細部には、和様建築の完成された美が表現されています。

種別
Type
国宝・近世以前・寺院
時代
Period
鎌倉前期(1185年〜1274年)
指定年月日
Designated
1952年11月22日
住所
Address
滋賀県犬上郡甲良町池寺26
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
近江鉄道尼子駅より自動車(約10分)
URL
URL
https://www.saimyouji.com/

石山寺多宝塔 / Ishiyama Dera Tahoutou[Ishiyama Temple Tahoutou]

石山寺多宝塔(いしやまでらたほうとう)は、大津市の名刹・石山寺の境内に立つ多宝塔で、建久5年(1194年)に源頼朝の寄進により建立されたと伝わります。日本最古の多宝塔として極めて高い建築史的価値を持ち、1951年(昭和26年)に国宝に指定されました。

歴史的背景

石山寺は奈良時代の天平19年(747年)に良弁が聖武天皇の勅願により開山した真言宗の寺院です。平安時代には貴族の石山詣でが盛んとなり、紫式部がこの寺に参籠して『源氏物語』の着想を得たという伝承でも知られています。多宝塔は鎌倉時代初期、源頼朝の篤い信仰により寄進されたもので、当時の武家政権と寺院の密接な関係を示す歴史的建造物です。

建築様式の特徴 ― 日本最古の多宝塔

多宝塔は三間多宝塔・檜皮葺の建物で、下層が方形、上層が円形(亀腹)という多宝塔特有の構造を持っています。日本に現存する多宝塔の中で最も古い遺構であり、後世に建てられた多くの多宝塔の原型となった建物です。下層の均整の取れた柱配置、上層の優美な曲線を描く亀腹、そして全体を覆う檜皮葺の屋根が一体となって、安定感のある美しいシルエットを形成しています。内部には快慶作と伝わる大日如来坐像(重要文化財)が安置されています。

種別
Type
国宝・近世以前・寺院
時代
Period
鎌倉前期(1194年)
指定年月日
Designated
1951年06月09日
住所
Address
滋賀県大津市石山寺1丁目1-1
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
京阪電気鉄道石山寺駅(徒歩約25分)、京阪電気鉄道石山寺駅より自動車(約5分)
URL
URL
https://www.ishiyamadera.or.jp/

石山寺本堂 / Ishiyama Dera Hondou[Ishiyama Temple Hondou]

石山寺本堂(いしやまでらほんどう)は、石山寺の中心堂宇であり、本尊・如意輪観世音菩薩(秘仏)を安置する建物です。現存する本堂は、正堂(しょうどう)が平安時代後期の永長元年(1096年)に再建され、礼堂(らいどう)が桃山時代の慶長7年(1602年)に淀殿(淀君)の寄進により増築されたもので、異なる時代の建築が一体となった珍しい構成を持っています。

歴史的背景 ― 紫式部と源氏物語

石山寺の本堂は、紫式部が寛弘元年(1004年)に参籠し、十五夜の月が琵琶湖に映る美しさに感動して『源氏物語』の構想を練り始めたと伝えられる場所として広く知られています。本堂内の「源氏の間」は、紫式部が執筆したとされる部屋を再現したもので、日本文学史における聖地としての価値も持っています。平安時代から貴族の「石山詣で」が盛んに行われ、『枕草子』『更級日記』『蜻蛉日記』などの文学作品にもその名が登場します。

建築様式の特徴

本堂は懸造(かけづくり)と呼ばれる、傾斜地に柱を立てて建物を支える工法で建てられており、京都の清水寺本堂と同様の壮大な構造を持っています。正堂部分は桁行七間・梁間四間、寄棟造の平安時代の建築で、本尊を安置する荘厳な内陣空間を形成しています。礼堂部分は桃山時代の増築で入母屋造となっており、正堂と礼堂が接続された複合的な平面構成は、時代を越えた建築の重層性を体感できる貴重な遺構です。天然の珪灰石(国の天然記念物)の岩盤の上に建つ本堂の姿は、石山寺の名の由来ともなっています。

種別
Type
国宝・近世以前・寺院
時代
Period
平安後期(1096年)、桃山(1602年)
指定年月日
Designated
1952年11月22日
住所
Address
滋賀県大津市石山寺1丁目1-1
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
京阪電気鉄道石山寺駅(徒歩約25分)、京阪電気鉄道石山寺駅より自動車(約5分)
URL
URL
https://www.ishiyamadera.or.jp/

善水寺本堂 / Zensui Ji Hondou[Zensui Temple Hondou]

善水寺本堂(ぜんすいじほんどう)は、湖南三山のひとつに数えられる天台宗の寺院・善水寺の本堂です。本尊は薬師如来で、室町時代前期(1333年〜1392年)の建立と推定されています。寺名の「善水」は、伝教大師最澄が桓武天皇の病気平癒を祈願して霊水を献上したことに由来します。

歴史的背景

善水寺の創建は奈良時代に遡り、もとは和銅寺と称していました。平安時代に最澄が入山した際、境内の霊泉の水を桓武天皇に献上したところ病が癒えたという伝承から、天皇より「善水寺」の寺号を賜ったとされています。常楽寺・長寿寺とともに湖南三山のひとつとして、近江国南部の仏教文化の中心的存在でした。戦国時代の兵火を受けながらも本堂は焼失を免れ、中世の建築を今日に伝えています。

建築様式の特徴

本堂は桁行七間・梁間五間、入母屋造・檜皮葺の仏堂で、和様を基調とした室町時代前期の建築です。堂内は外陣・内陣・後陣に区分され、天台宗の密教法要に適した空間構成を持っています。屋根の優美な曲線と重厚な軸部構造が調和した外観は、中世天台宗仏堂の典型として高く評価されています。境内には寺名の由来となった霊泉が今も湧き出ており、豊かな自然に囲まれた静寂の中に本堂が佇む景観は、湖南三山巡りの中でも格別の趣を感じさせます。

種別
Type
国宝・近世以前・寺院
時代
Period
室町前期(1333年〜1392年)
指定年月日
Designated
1954年03月20日
住所
Address
滋賀県湖南市岩根3518
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR三雲駅より自動車(約15分)
URL
URL
https://www.zensuiji.jp/

長寿寺本堂 / Chouju Ji Hondou[Chouju Temple Hondou]

長寿寺本堂(ちょうじゅじほんどう)は、湖南三山のひとつ・長寿寺(東寺)の本堂で、鎌倉時代前期(1185年〜1274年)の建立と推定されています。本尊は子安地蔵菩薩で、安産・子育ての信仰を集めてきた寺院です。常楽寺(西寺)と対をなすことから「東寺」とも呼ばれています。

歴史的背景

長寿寺は奈良時代に聖武天皇の勅願により良弁が開山したと伝えられ、平安時代に天台宗に転じました。かつては「東寺」と称され、隣接する常楽寺(西寺)とともに近江国南部における天台宗の拠点として栄えました。中世には48もの塔頭を有する大寺院であったとされますが、戦国時代の兵火により多くが失われ、現在は本堂を中心とした境内に往時の面影を残しています。

建築様式の特徴

本堂は桁行七間・梁間五間、入母屋造・檜皮葺の仏堂で、鎌倉時代前期の純和様建築として高い評価を受けています。西明寺本堂と並んで滋賀県内で最も古い部類に属する仏堂建築であり、簡潔で力強い柱や梁の構成に鎌倉時代初期の建築の特色がよく表れています。正面に向拝を設けた端正な外観と、内陣・外陣に区分された堂内構成は、天台宗本堂の基本形式を忠実に示しています。秋の紅葉が本堂を彩る景観は湖南三山の中でも見事で、参拝と紅葉鑑賞を兼ねた訪問が人気です。

種別
Type
国宝・近世以前・寺院
時代
Period
鎌倉前期(1185年〜1274年)
指定年月日
Designated
1953年03月31日
住所
Address
滋賀県湖南市東寺5丁目1
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR石部駅より自動車(約10分)
URL
URL
https://chojyuji.jp/

宝厳寺 / Hougon Ji[Hougon Temple]

宝厳寺(ほうごんじ)は、琵琶湖北部の竹生島に位置する真言宗豊山派の寺院で、国宝に指定されているのは唐門(からもん)です。宝厳寺は日本三弁財天のひとつとして広く信仰を集め、都久夫須麻神社とともに竹生島の聖地を形成しています。唐門は慶長8年(1603年)頃の建立で、桃山時代の華麗な建築の粋を今に伝えています。

歴史的背景

宝厳寺は神亀元年(724年)に聖武天皇の勅願により行基が開山したと伝えられています。中世を通じて「竹生島弁財天」として貴族や武将の篤い信仰を受け、西国三十三所観音霊場の第三十番札所としても多くの巡礼者が訪れました。国宝の唐門は、もともと豊国廟(豊臣秀吉の霊廟)の極楽門を移築したものと伝えられており、桃山文化の絢爛さを今に伝える希少な遺構です。

建築様式の特徴 ― 桃山時代の唐門

唐門は一間一戸・向唐破風造(むかいからはふづくり)・檜皮葺の門で、桃山時代を代表する豪華絢爛な装飾建築です。屋根の唐破風(からはふ)の優美な曲線、柱や梁に施された極彩色の彫刻装飾、金具類の精巧な細工など、桃山時代の建築技術と美意識の最高水準を示しています。豊国廟からの移築という伝承が事実であれば、秀吉の栄華を直接的に伝える建造物として歴史的価値も極めて高いものです。琵琶湖の船旅でしか訪れることのできない竹生島の佇まいは、宝厳寺の唐門をより一層神秘的なものとしています。

種別
Type
国宝・近世以前・寺院
時代
Period
桃山(1603年)
指定年月日
Designated
1953年03月31日
住所
Address
滋賀県長浜市早崎町竹生島1664番地
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR長浜駅(徒歩約5分)琵琶湖汽船(約30分)、彦根港より船舶(約35分)
URL
URL
https://www.chikubushima.jp/

彦根城天守、附櫓及び多聞櫓 / Hikone Jou Tenshu, Tsukeyagura Oyobi Tamonyagura[Hikone Castle Tenshu, Tsukeyagura and Tamonyagura]

彦根城天守、附櫓及び多聞櫓(ひこねじょうてんしゅ、つけやぐらおよびたもんやぐら)は、井伊家の居城として築かれた彦根城の中核をなす建造物群です。慶長11年(1606年)頃に完成した天守は、日本に現存する12の天守のひとつであり、さらにその中でも国宝に指定された5天守(姫路城・松本城・犬山城・松江城・彦根城)のひとつという、極めて貴重な城郭建築です。

歴史的背景 ― 井伊家と彦根藩

彦根城は、関ヶ原の戦いで武功をあげた井伊直政の遺志を継ぎ、その子井伊直継が慶長9年(1604年)に築城を開始しました。徳川家康の命により、近江国の要衝である琵琶湖東岸に位置する彦根に、西国の外様大名に対する備えとして築かれた城です。天守は近隣の大津城天守を移築・改修したものとも伝えられ、短期間での完成を可能にしました。以後、井伊家は幕末まで約260年間にわたって彦根藩35万石の居城として使用し、幕末には大老・井伊直弼を輩出したことでも知られています。明治維新後の廃城令においても、明治天皇の北陸巡幸の際に保存が決定され、解体を免れました。

建築様式の特徴

天守は三重三階地下一階・入母屋造・切妻破風・唐破風を組み合わせた複合的な屋根構成を持ち、小ぶりながら変化に富んだ美しい外観が特徴です。各層に設けられた花頭窓は禅宗建築からの影響を示す珍しい意匠で、城郭建築としては他に類例がありません。附櫓(つけやぐら)と多聞櫓(たもんやぐら)は天守に接続して防御機能を高める構造で、天守・附櫓・多聞櫓が一体となった複合天守群として国宝に指定されています。天守からは琵琶湖を一望でき、城下町・彦根の歴史的景観を楽しむことができます。玄宮園(名勝)や彦根城博物館など周辺施設も充実しており、滋賀県を代表する観光地として年間を通じて多くの来訪者を集めています。

種別
Type
国宝・近世以前・城郭
時代
Period
桃山(1606年)
指定年月日
Designated
1952年03月29日
住所
Address
滋賀県彦根市金亀町1
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR彦根駅(徒歩約20分)
URL
URL
https://www.hikoneshi.com/jp/castle/

勧学院客殿 / Kangakuin Kyakuden[Kangakuin Kyakuden]

勧学院客殿(かんがくいんきゃくでん)は、園城寺(三井寺)の子院(塔頭)である勧学院に属する客殿(書院)建築です。慶長5年(1600年)頃の建立と推定され、日本の書院造建築の初期の傑作として国宝に指定されています。隣接する光浄院客殿とともに、桃山時代の住宅建築を代表する貴重な遺構です。

歴史的背景

勧学院は園城寺の学問所(僧侶の教育機関)として設けられた子院で、天台宗寺門派の学問の中心的役割を果たしていました。客殿は寺院の接客・儀礼のための建物として建てられたもので、高い格式と洗練された意匠が求められました。桃山時代は書院造建築が完成へと向かう重要な時期であり、勧学院客殿はその過渡期の姿を伝える建築として学術的にも極めて重要な位置づけにあります。

建築様式の特徴 ― 書院造の精華

客殿は桁行七間・梁間六間、入母屋造・檜皮葺の建物で、書院造の典型的な構成要素を備えています。室内には床の間(とこのま)、違い棚(ちがいだな)、付書院(つけしょいん)、帳台構(ちょうだいがまえ)といった書院造の四要素が揃っており、障壁画による華やかな室内装飾が施されています。特に狩野光信(狩野永徳の子)の筆と伝わる障壁画は桃山時代の絵画の傑作として知られています。書院造建築の成立過程を理解する上で欠かすことのできない建物です。

種別
Type
国宝・近世以前・住宅
時代
Period
桃山(1600年)
指定年月日
Designated
1952年11月22日
住所
Address
滋賀県大津市園城寺町
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
京阪電気鉄道別所駅(徒歩約10分)、京阪電気鉄道三井寺駅(徒歩約10分)
URL
URL
https://www.shiga-miidera.or.jp/treasure/building/04.htm

光浄院客殿 / Koujouin Kyakuden[Koujouin Kyakuden]

光浄院客殿(こうじょういんきゃくでん)は、園城寺(三井寺)の子院・光浄院に属する客殿建築で、慶長6年(1601年)の建立です。勧学院客殿とともに桃山時代の書院造建築の双璧をなす存在として国宝に指定されており、日本住宅建築史上の最重要遺構のひとつです。

歴史的背景

光浄院は園城寺の有力な子院で、寺門派の重要な拠点のひとつでした。客殿は慶長の復興期に建立されたもので、勧学院客殿のわずか1年後に完成しています。両客殿は同時期に同じ三井寺境内に建てられたにもかかわらず、それぞれ異なる空間構成と装飾表現を持っており、桃山時代の書院造建築の多様性と成熟度を示す比較対象として、建築史研究において重要な位置を占めています。

建築様式の特徴

客殿は桁行七間・梁間七間、入母屋造・檜皮葺の建物で、勧学院客殿と同様に書院造の主要な構成要素(床の間・違い棚・付書院・帳台構)を完備しています。光浄院客殿の特徴は、内部空間の構成が勧学院客殿よりもやや自由度が高く、桃山時代の書院造がより成熟した段階に達していることを示している点です。障壁画は狩野山楽筆と伝わる作品で、勧学院客殿の狩野光信筆とは異なる画風を見せています。勧学院客殿と光浄院客殿を比較して鑑賞することで、桃山時代における書院造建築の展開と完成への道程をたどることができます。

種別
Type
国宝・近世以前・住宅
時代
Period
桃山(1601年)
指定年月日
Designated
1952年11月22日
住所
Address
滋賀県大津市園城寺町
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
京阪電気鉄道別所駅(徒歩約10分)、京阪電気鉄道三井寺駅(徒歩約10分)
URL
URL
https://www.shiga-miidera.or.jp/treasure/building/03.htm

滋賀県の国宝建造物を巡る旅のポイント

滋賀県の22件の国宝建造物は県内各地に分布しており、エリアごとに巡ることで効率よく訪問することができます。以下に、主要なエリア別の見どころと訪問のコツをまとめます。

大津エリア(国宝10件) ― 滋賀県最大の国宝集積地

大津市には園城寺(三井寺)関連の5件(新羅善神堂・金堂・勧学院客殿・光浄院客殿)、日吉大社の2件(西本宮・東本宮)、延暦寺根本中堂、石山寺の2件(本堂・多宝塔)と、県内の国宝建造物の約半数が集中しています。JR大津京駅・京阪三井寺駅を起点に三井寺と日吉大社を巡り、別日に石山寺と比叡山延暦寺を訪れるのが効率的です。比叡山へは坂本ケーブルまたはドライブウェイでのアクセスとなります。

湖南エリア(国宝5件) ― 湖南三山を巡る

湖南市には湖南三山(常楽寺・長寿寺・善水寺)の国宝5件(常楽寺本堂・三重塔、長寿寺本堂、善水寺本堂)が集まっています。常楽寺と長寿寺は隣接しており徒歩で移動可能ですが、善水寺はやや離れているため自動車での移動が便利です。JR石部駅・JR三雲駅が最寄りですが、公共交通の便は限られているためレンタカーの利用をおすすめします。秋の紅葉シーズンには「湖南三山紅葉めぐり」として特別公開が行われることがあります。

湖東エリア(国宝4件) ― 湖東三山と苗村神社

犬上郡・愛知郡には湖東三山のうち西明寺(本堂・三重塔)と金剛輪寺(本堂)の国宝3件があり、蒲生郡竜王町には苗村神社(西本殿)があります。西明寺と金剛輪寺は車で移動可能な距離にあり、百済寺(重要文化財)と合わせて湖東三山を一日で巡ることができます。秋の紅葉シーズンが最も人気で、特に西明寺と金剛輪寺の紅葉は「滋賀の紅葉名所」として広く知られています。

竹生島エリア(国宝2件) ― 琵琶湖に浮かぶ聖地

琵琶湖北部の竹生島には、宝厳寺(唐門)と都久夫須麻神社(本殿)の国宝2件があります。竹生島へは長浜港(JR長浜駅から徒歩約10分)または彦根港から観光船で渡ります。島での滞在時間は通常60〜90分程度で、宝厳寺と都久夫須麻神社の両方を参拝できます。船の運航は季節により異なるため、事前に時刻表を確認してください。

彦根エリア(国宝1件) ― 国宝天守と城下町

彦根市には国宝・彦根城天守があります。JR彦根駅から徒歩約15分で、城内の見学には1〜2時間を見込むとよいでしょう。名勝・玄宮園からの天守の眺望は特に美しく、春の桜や秋の紅葉の時期がおすすめです。彦根城博物館では井伊家伝来の美術品や武具を鑑賞できます。竹生島への観光船が彦根港から出ているため、彦根城と竹生島を同日に訪れることも可能です。

野洲エリア(国宝2件) ― 御上神社と大笹原神社

野洲市には御上神社と大笹原神社の2件の国宝があります。御上神社はJR野洲駅からバスまたは車で訪問でき、近江富士(三上山)の麓という美しいロケーションです。大笹原神社はやや交通の便が限られるため、自動車での訪問が便利です。

おすすめの訪問時期

  • 春(3月下旬〜4月中旬):彦根城・石山寺の桜が見頃を迎え、国宝建造物と桜の競演を楽しめます
  • 初夏(5月〜6月):新緑の季節は比叡山延暦寺や湖東三山の山寺巡りに最適です
  • 秋(11月上旬〜12月上旬):湖東三山・湖南三山の紅葉シーズンは最も人気が高く、多くの参拝者で賑わいます
  • 冬(12月〜2月):雪化粧の彦根城は格別の美しさで、静かな冬の寺社巡りも趣があります

よくある質問(FAQ) ― 滋賀県の国宝建造物について

Q. 滋賀県には国宝建造物がいくつありますか?
A. 滋賀県には22件の国宝建造物があります。内訳は神社7件、寺院12件、城郭1件、住宅2件で、これは京都府・奈良県に次いで全国第3位の多さです。琵琶湖を中心に発展した近江国の長い歴史を反映して、飛鳥時代から江戸時代初期まで各時代の建築様式を網羅する多様な国宝建造物が残されています。

Q. 湖南三山とは何ですか?
A. 湖南三山(こなんさんざん)とは、滋賀県湖南市にある天台宗の三つの古刹、常楽寺(西寺)・長寿寺(東寺)・善水寺の総称です。いずれも奈良時代に創建された歴史ある寺院で、常楽寺には本堂と三重塔の2件、長寿寺と善水寺にはそれぞれ本堂の計4件の国宝建造物があります(合計5件)。秋の紅葉シーズンには特別公開が行われ、三山を巡る紅葉めぐりが人気です。

Q. 湖東三山とは何ですか?
A. 湖東三山(ことうさんざん)とは、滋賀県東部(琵琶湖の東、鈴鹿山系の西麓)に位置する天台宗の三つの名刹、西明寺金剛輪寺百済寺の総称です。西明寺には本堂と三重塔の2件、金剛輪寺には本堂1件の国宝建造物があります(百済寺の本堂は重要文化財)。いずれも紅葉の名所として知られ、秋には多くの観光客が訪れます。

Q. 彦根城は世界遺産ですか?
A. 彦根城は現時点では世界遺産に登録されていませんが、世界遺産暫定リストに「彦根城」として記載されており、登録を目指した取り組みが進められています。国宝5天守のひとつとして極めて高い歴史的・建築的価値を持ち、城郭全体が国の特別史跡に指定されています。なお、比叡山延暦寺はユネスコ世界文化遺産「古都京都の文化財」の構成資産のひとつとして1994年に登録されています。

Q. 国宝と重要文化財はどう違いますか?
A. 重要文化財は、文化財保護法に基づき文部科学大臣が指定する有形文化財で、日本の歴史・文化にとって重要なものです。国宝は、その重要文化財の中からさらに「世界文化の見地から価値の高いもの、たぐいない国民の宝たるもの」として特に厳選されたものを指します。つまり、国宝は重要文化財の最上位に位置づけられる文化財であり、日本の文化遺産の中でも最も価値の高いものとして国が認定した存在です。