石川県の国宝(建造物) 一覧・まとめ / National Treasure of Japanese Buildings in Ishikawa ~旅行のみどころになる日本国民の宝と指定された神社、寺、城、住宅等の重要文化財~

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日本の国宝とは、1950年(昭和25年)に制定された文化財保護法に基づき、国が指定した重要文化財のうち、世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものであるとして文部科学大臣が指定した文化財を指します。国宝の制度は、日本が世界に誇る歴史的・文化的遺産を保護し、次世代へ継承するために設けられた最高位の文化財指定制度です。

法律の観点では国宝は重要文化財の一種であり、国宝の分類には建造物(神社、寺院、城郭、住宅等)、絵画、彫刻、工芸品、書跡・典籍、古文書、考古資料・歴史資料があります。このうち「建造物」に分類される国宝は全国に約230件あり、その多くは京都府・奈良県・滋賀県など近畿地方に集中しています。これらの国宝建造物は、日本の建築技術の粋を集めた歴史的建造物であり、各地域を代表する観光資源としても高い価値を持っています。

今回はそのような国宝の中から、各都道府県の旅行のみどころにもなってくる「建造物」に分類される国宝を紹介します。石川県は加賀百万石の歴史と文化が息づく地であり、国宝建造物の登録こそないものの、国宝に指定された工芸品や多数の重要文化財建造物を有しており、建築・文化愛好家にとって見応えのある地域です。

石川県の国宝(建造物) 一覧・まとめ / National Treasure of Japanese Buildings in Ishikawa ~旅行のみどころになる日本国民の宝と指定された神社、寺、城、住宅等の重要文化財~


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国宝(建造物)の登録無し

石川県には、文化財保護法に基づく国宝(建造物)に指定された建物は現在のところ存在しません。これは石川県に限った話ではなく、全国47都道府県のうち複数の県が同様に国宝建造物の登録がない状況にあります。しかしながら、石川県は加賀藩前田家の庇護のもとで花開いた豊かな文化を背景に、国宝に指定された工芸品や、国が指定する重要文化財(建造物)を数多く有しており、歴史的建造物を巡る旅行先として非常に魅力的な地域です。

石川県に国宝建造物が存在しない歴史的背景

石川県に国宝建造物が存在しないことは、この地の文化的価値の低さを意味するものではありません。むしろ、石川県は江戸時代に加賀百万石と称された前田家の治める加賀藩の中心地であり、外様大名としては日本最大の石高を誇る裕福な藩でした。前田家は学問・芸術・工芸を手厚く奨励し、金沢は「天下の書府」と呼ばれるほどの文化都市として栄えました。

しかし、石川県を代表する金沢城は、その歴史の中で度重なる大火に見舞われています。1602年(慶長7年)の落雷による火災、1631年(寛永8年)の大火、1759年(宝暦9年)の宝暦の大火、そして1881年(明治14年)の火災と、主要な建造物が繰り返し焼失・再建されてきました。特に1759年の宝暦の大火では城のほぼ全域が焼失し、現存する石川門や三十間長屋はその後に再建されたものです。

加えて、明治維新後の廃藩置県や近代化の過程で多くの歴史的建造物が取り壊されました。現存する建造物は江戸後期から明治期にかけての再建・新築であり、国宝指定の基準となる「建築史上の意義が特に深いもの」や「類例の少ないもの」という条件において、京都・奈良など中世の建造物が多数残る地域との差が生じています。隣県の富山県では瑞龍寺(高岡市)が禅宗伽藍の完全な配置を残す稀有な例として国宝に指定されており、こうした「類例の少なさ」が指定の分かれ目となっています。

石川県の国宝(建造物以外)― 工芸品の国宝

石川県には建造物の国宝はないものの、工芸品の分野では国宝を有しています。加賀藩前田家の文化奨励政策のもと、金沢では九谷焼・加賀友禅・金沢箔・輪島塗など多彩な工芸文化が発展し、その伝統は現在も受け継がれています。

色絵雉香炉(いろえきじこうろ)は、江戸時代前期の京焼の名匠・野々村仁清(ののむらにんせい)が制作した陶芸作品で、国宝(工芸品)に指定されています。雄の雉をかたどった香炉であり、鮮やかな色絵(上絵付け)による羽根の表現は日本陶芸史上の最高傑作のひとつとされています。現在は石川県立美術館(金沢市)に所蔵されており、石川県を訪れた際にはぜひ鑑賞したい名品です。

このように、石川県の国宝は建造物ではなく工芸品の分野に存在しており、前田家が育んだ工芸文化の高さを物語っています。

石川県の重要文化財(建造物)― 国宝に準ずる貴重な歴史的建造物

国宝建造物の登録はないものの、石川県には国が「重要文化財」に指定した建造物が数多く存在します。これらは加賀百万石の城下町文化を今に伝える貴重な歴史的建造物であり、旅行のみどころとしても高い価値を持っています。以下に代表的な重要文化財(建造物)を紹介します。

金沢城 石川門(かなざわじょう いしかわもん)

1788年(天明8年)に再建された金沢城の搦手門(裏門)で、国の重要文化財に指定されています。白い鉛瓦と海鼠壁(なまこかべ)の美しい外観が特徴的で、石川櫓と二の門からなる枡形門の構造を持ちます。鉛瓦は雪国ならではの工夫であり、有事には鉛を弾丸に転用できるという実用性も備えていたとされます。兼六園に隣接しており、金沢観光の代表的なシンボルのひとつです。所在地は石川県金沢市丸の内1-1、JR金沢駅からバスで約15分です。

金沢城 三十間長屋(かなざわじょう さんじっけんながや)

1858年(安政5年)に再建された金沢城内の二階建ての土蔵で、国の重要文化財に指定されています。もともとは武器や什器を収納する倉庫として使用されていました。鉛瓦葺きの屋根と海鼠壁を持つ長大な建物であり、加賀藩の建築技術の高さを示しています。金沢城公園内で石川門とともに見学できる、江戸時代の遺構として貴重な建造物です。

尾山神社 神門(おやまじんじゃ しんもん)

1875年(明治8年)に建てられた尾山神社の正門で、国の重要文化財に指定されています。加賀藩祖・前田利家を祀る尾山神社の象徴であり、和漢洋折衷の三層構造という極めて独特な建築様式を持つ門です。最上層にはギヤマン(色ガラス)がはめ込まれたステンドグラスの窓があり、かつては日本海を航行する船の灯台としても機能していました。和・漢・洋の三様式が見事に融合した門は全国的にも極めて珍しく、金沢の近代建築を代表する名建築です。所在地は石川県金沢市尾山町11-1です。

妙成寺(みょうじょうじ)

石川県羽咋市に位置する日蓮宗の寺院で、重要文化財に指定された建造物が10棟にのぼる、石川県随一の文化財の宝庫です。五重塔・本堂・祖師堂・経堂・書院・庫裡・鐘楼・二王門・丈六堂・三光堂が重要文化財に指定されています。なかでも五重塔北陸地方唯一の五重塔として知られ、1618年(元和4年)に建立された高さ約34メートルの壮麗な塔です。加賀藩前田家の手厚い庇護を受けて建立された伽藍群は、江戸時代初期の寺院建築の粋を集めた見事なものであり、石川県を訪れる際にはぜひ足を運びたい名刹です。所在地は石川県羽咋市滝谷町ヨ1です。

那谷寺(なたでら)

石川県小松市に位置する高野山真言宗の寺院で、717年(養老元年)に泰澄大師によって開創されたと伝わる古刹です。本堂(大悲閣)・三重塔・護摩堂・鐘楼・書院・庫裡などが国の重要文化財に指定されています。現在の堂宇の多くは1642年(寛永19年)に加賀藩三代藩主・前田利常によって再建されたものです。境内には奇岩遊仙境と呼ばれる岩山と洞窟の奇勝があり、自然と建築が一体となった独特の景観を楽しむことができます。紅葉の名所としても知られ、秋には多くの観光客が訪れます。所在地は石川県小松市那谷町ユ122です。

大乗寺(だいじょうじ)

石川県金沢市に位置する曹洞宗の寺院で、1263年(弘長3年)に開山された歴史ある禅寺です。仏殿が国の重要文化財に指定されており、典型的な禅宗様(唐様)建築の特徴を持つ建物として建築史上重要な存在です。「東香山」の山号を持ち、道元禅師の教えを受け継ぐ修行道場として現在も厳格な禅の修行が行われています。所在地は石川県金沢市長坂町ル10です。

金沢城と兼六園 ― 加賀百万石の文化遺産

石川県の文化遺産を語る上で欠かせないのが、金沢城兼六園です。金沢城は1583年(天正11年)に前田利家が入城して以来、加賀藩の政治・文化の中心として約280年にわたり栄えました。度重なる火災により多くの建造物が失われましたが、2001年以降の復元整備事業により菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓が復元され、さらに鼠多門・鼠多門橋が2020年に復元されるなど、往時の姿を取り戻しつつあります。

兼六園は水戸の偕楽園、岡山の後楽園と並ぶ日本三名園のひとつであり、国の特別名勝に指定されています。加賀藩五代藩主・前田綱紀が1676年に作庭を始めて以来、歴代藩主によって整備が重ねられた約11.4ヘクタールの回遊式庭園です。宏大・幽邃・人力・蒼古・水泉・眺望の六つの景観を兼ね備えることから「兼六園」と名付けられました。四季折々の美しい景色が楽しめ、冬の雪吊りは金沢を代表する風物詩として広く知られています。

石川県の歴史的建造物と観光のみどころ

石川県には国宝建造物や重要文化財だけでなく、歴史的な町並みが数多く保存されており、加賀百万石の城下町文化を今に伝えています。

金沢エリア:金沢市内にはひがし茶屋街にし茶屋街主計町茶屋街の三つの茶屋街が残されており、ひがし茶屋街は国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。紅殻格子(べんがらごうし)の美しい茶屋建築が軒を連ねる町並みは、江戸時代の花街の風情を色濃く残しています。また、長町武家屋敷跡では、土塀と石畳が続く武家屋敷通りを散策でき、加賀藩の武士の暮らしを偲ぶことができます。

能登エリア:能登半島には輪島の朝市通りや漆器の町並み、珠洲の塩田村、七尾の一本杉通りなど、伝統的な生活文化を伝える歴史的な集落や建造物が点在しています。能登の里山里海は世界農業遺産にも認定されており、自然と人々の営みが織りなす独自の文化的景観を体験できます。

加賀エリア:加賀温泉郷の山中温泉山代温泉片山津温泉には、歴史ある温泉旅館の建築や共同浴場(総湯)が残されています。特に山代温泉の古総湯は明治時代の総湯を忠実に復元した建物で、当時の入浴文化を体験できる貴重な施設です。

まとめ

石川県は国宝(建造物)の登録がない都道府県のひとつですが、それは石川県の文化的価値が低いということではありません。加賀百万石の前田家が育んだ豊かな文化は、野々村仁清の色絵雉香炉(国宝・工芸品)、妙成寺の10棟の重要文化財をはじめとする数多くの重要文化財建造物、兼六園(特別名勝)、そしてひがし茶屋街や長町武家屋敷跡などの歴史的町並みとして今なお受け継がれています。国宝建造物という枠にとどまらない、加賀百万石の歴史と文化に触れる旅をぜひお楽しみください。