中華人民共和国・天津市の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Tianjin China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~
中華人民共和国・天津市の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Tianjin China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~
天津市(てんしんし)は中華人民共和国の直轄市の一つであり、華北地方に位置する中国北部最大の港湾都市です。北京市の南東約120kmに位置し、人口は約1,300万人を超える大都市として、古くから政治・経済・文化の要衝として栄えてきました。
天津市には、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の世界遺産として登録された2つの文化遺産があります。いずれも中国の悠久の歴史と卓越した建築技術を象徴する遺産であり、「万里の長城」と「大運河」という、中国を代表する壮大なスケールの構造物です。
世界遺産とは
世界遺産とは、1972年にユネスコ総会で採択された世界遺産条約(正式名称:「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」)に基づいて、世界遺産リストに登録された遺跡、景観、自然などの不動産を指します。人類が共有すべき「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value, OUV)」を持つと認められたものだけが登録され、その保護・保全を通じて過去から未来へと価値を継承していくことが本来の目的です。
一方で、世界遺産への登録は国際的な知名度の向上や観光地としてのブランド力強化にもつながるため、文化的価値の保全と観光振興の両立が世界的な課題となっています。天津市の世界遺産もまた、保護・保全の対象であると同時に、中国国内外から多くの観光客が訪れる名所として注目されています。
世界遺産の登録基準(全10項目)
世界遺産の登録にあたっては、以下の10項目の登録基準のうち1つ以上を満たす必要があります。基準(1)~(6)を満たすものは「文化遺産」、基準(7)~(10)を満たすものは「自然遺産」、両方の基準をそれぞれ1つ以上満たすものは「複合遺産」として分類されます。
世界遺産登録基準(10項目)の詳細は、出典のWikipedia「世界遺産」をご参照ください。
以下で紹介する天津市の世界遺産の「登録基準」項目に記載されている番号は、上記の世界遺産登録基準の番号に対応しています。
天津市の世界遺産一覧 / List of UNESCO World Heritage Sites in Tianjin
天津市には2件の世界遺産(いずれも文化遺産)が登録されています。以下にそれぞれの詳細情報を紹介します。
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万里の長城 / The Great Wall
万里の長城は、中国北部に東西約2万kmにわたって築かれた世界最大級の建造物です。その歴史は紀元前7世紀の春秋戦国時代にまで遡り、北方の遊牧民族の侵入を防ぐ軍事防衛施設として各国が城壁を建設したことに始まります。紀元前221年に中国を統一した秦の始皇帝がこれらの城壁を連結・拡張し、その後も漢・明などの歴代王朝によって増改築が繰り返されました。
天津市内にある「黄崖関長城(こうがいかんちょうじょう)」は、天津市薊州区(旧・薊県)の北部山岳地帯に位置する万里の長城の一部です。北斉時代(550年~577年)に初めて築かれ、明代の1567年~1568年に著名な将軍・戚継光(せきけいこう)によって大規模に改修されました。黄崖関長城は険しい山岳地形を巧みに利用した防衛設計が特徴で、関所(黄崖関)・烽火台(のろしだい)・敵楼(てきろう)・城壁などが一体となった防御体系を形成しています。全長約42kmにわたる城壁と20以上の烽火台が残存し、万里の長城の中でも特に保存状態が良好な区間として知られています。
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
1987年 |
| 登録基準 Criteria |
(1)、(2)、(3)、(4)、(6) |
| 住所 Address |
黄崖関長城:Huangyaguan Rd, Jixian, Tianjin Shi, China |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
黄崖関長城:北京首都国際空港より自動車(約1時間40分) |
| URL URL |
万里の長城の登録基準について
万里の長城は、5つの登録基準を満たしています。人類の創造的才能を表現する傑作(基準1)であり、約2,000年にわたる建築技術と軍事戦略の発展を示す文化交流の証(基準2)です。また、中国古代文明の防衛思想と領域意識を伝える稀有な証拠(基準3)であり、各時代の築城技術を例証する優れた建築遺産(基準4)です。さらに、中国の歴史・文学・芸術に深く根差した象徴的存在(基準6)として、世界的に認知されています。
大運河 / The Grand Canal
大運河(だいうんが)は、中国の北京市から浙江省杭州市までを結ぶ全長約1,794kmにおよぶ世界最長の人工運河です。紀元前5世紀に部分的な運河の建設が始まり、隋の煬帝(ようだい)の時代(7世紀初頭)に南北を貫通する大規模な運河として完成しました。以降、唐・宋・元・明・清の各王朝を通じて、中国の南北間における穀物輸送・物資流通・文化交流の大動脈として機能し、中国経済の発展に計り知れない貢献を果たしました。
天津市は大運河における重要な結節点(ハブ)の一つです。天津市内を流れる大運河の区間は、海河(かいが)水系と交わる「三岔口(さんさこう)」を中心に展開しています。三岔口は南運河・北運河・海河の三つの水路が合流する地点であり、古来より天津の発展の原点とされてきました。天津の「天津」という地名自体が「天子が渡る港」を意味し、大運河による水運交通がこの都市の形成と繁栄に不可欠な役割を果たしたことを物語っています。2014年に大運河が世界遺産に登録された際、天津市内の運河区間とその関連遺構も構成資産として含まれました。
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
2014年 |
| 登録基準 Criteria |
(1)、(3)、(4)、(6) |
| 住所 Address |
三岔口:Sanchakou, Baodi, Tianjin, China |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
三岔口:北京首都国際空港より自動車(約1時間30分) |
| URL URL |
大運河の登録基準について
大運河は、4つの登録基準を満たしています。世界最長の人工運河として人類の創造的才能と土木工学の傑作(基準1)であり、中国古代の水利技術と運河建設の伝統を伝える稀有な証拠(基準3)です。また、2,500年以上の歴史を持つ水利インフラとして各時代の技術の集積を示す優れた例(基準4)であり、中国の政治・経済・文化に決定的な影響を与えた出来事と直接関連する遺産(基準6)として評価されています。
天津市の世界遺産を訪れる際のポイント
天津市の世界遺産を観光する際は、北京からのアクセスが便利です。北京・天津間は高速鉄道(京津城際鉄路)で約30分と近く、日帰り観光も可能です。黄崖関長城は天津市中心部からさらに北へ約110kmの山岳地帯にあるため、現地での車両手配が必要です。一方、大運河の三岔口周辺は天津市街地に近く、古文化街や天津之眼(観覧車)などの観光スポットと合わせて散策を楽しむことができます。
天津市は世界遺産だけでなく、租界時代の西洋建築群、天津古文化街、五大道歴史地区など見どころが豊富な都市です。世界遺産の訪問と合わせて、天津の多彩な歴史文化を体験してみてはいかがでしょうか。

