中華人民共和国・河北省の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Hebei China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~
世界遺産とはユネスコ総会で採択された世界遺産条約「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて登録された遺跡、景観、自然などの人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を持ち、移動が不可能な物件を指します。世界遺産の登録の本来の目的は、自然や文化的に価値のあるものを保護・保全し、過去から未来へと伝えていくことです。
中華人民共和国・河北省(Hebei Province)は、北京市を取り囲むように位置する省であり、中国の悠久の歴史と深く結びついた地域です。北は万里の長城が走る山岳地帯、南は華北平原が広がり、東は渤海(ぼっかい)に面しています。河北省には、古代から清朝にいたるまでの中国王朝の歴史を象徴する重要な文化遺産が集中しており、現在4件の世界遺産(すべて文化遺産)が登録されています。
万里の長城の東端である山海関(さんかいかん)、清朝皇帝の夏の離宮であった承徳避暑山荘、中国南北を結ぶ大動脈であった大運河、そして明・清王朝の皇帝たちが眠る壮大な陵墓群など、いずれも中国文明の壮大さと精緻さを体感できる世界遺産ばかりです。
この記事では、河北省に所在する4件のユネスコ世界遺産について、それぞれの歴史的背景・見どころ・アクセス情報を詳しくまとめています。河北省への旅行を計画している方や、中国の世界遺産に興味のある方の参考になれば幸いです。
まず、世界遺産が登録される基準を下記に記載します。
世界遺産登録基準(10項目)の詳細は、出典のWikipedia「世界遺産」をご参照ください。
(1)~(6)を満たすものが文化遺産、(7)~(10)を満たすものが自然遺産、文化遺産と自然遺産の条件をそれぞれ1つ以上を満たすものが複合遺産としての登録基準となります。
以下で紹介する世界遺産の「登録基準」項目の記載番号は上記の世界遺産登録基準の番号に対応しています。
中華人民共和国・河北省の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Hebei China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~
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万里の長城 / Banri No Choujou[The Great Wall]
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
1987年 |
| 登録基準 Criteria |
(1)、(2)、(3)、(4)、(6) |
| 住所 Address |
山海関:Shanhaiguan, Qinhuangdao, Hebei, China |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
山海関:北京首都国際空港より自動車(約3時間30分) |
| URL URL |
万里の長城は、中国の歴史上もっとも壮大な建造物のひとつであり、北方の遊牧民族の侵入を防ぐために紀元前7世紀頃から約2,000年以上にわたって築かれた軍事防衛施設です。全長は約21,196kmにおよび、その規模は人類史上最大の建築プロジェクトのひとつとされています。
河北省には、万里の長城のなかでも特に重要な区間がいくつも存在します。なかでも山海関(さんかいかん / Shanhaiguan)は、「天下第一関(てんかだいいちかん)」と称される万里の長城の東端に位置する関所であり、長城が渤海(ぼっかい)に面する壮大な景観で知られています。山海関の南端にある老龍頭(ろうりゅうとう / Laolongtou)は、長城が海に突き出すように延びる場所で、まるで龍が海に頭を突っ込んでいるかのような独特の光景が広がります。
また、河北省と北京市の境界付近に位置する金山嶺(きんざんれい / Jinshanling)は、明代(1368年〜1644年)に建造された長城の中でも保存状態が良く、67基の望楼が連なる美しい稜線が写真愛好家やハイカーに人気のスポットです。観光客の少ない静かな環境で、万里の長城本来の雄大な姿を堪能できます。
1987年にユネスコ世界文化遺産に登録された万里の長城は、登録基準の(1)人類の創造的才能を表現する傑作、(2)人類の価値の重要な交流、(3)文化的伝統の稀な証拠、(4)歴史上重要な時代を例証する建築、(6)普遍的な意義を有する出来事と直接に関連するもの、の5項目を満たしています。
大運河 / Dai Unga[The Grand Canal]
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
2014年 |
| 登録基準 Criteria |
(1)、(3)、(4)、(6) |
| 住所 Address |
滄州:Sanchakou, Baodi, Tianjin, China |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
滄州:北京首都国際空港より自動車(約2時間40分) |
| URL URL |
大運河(京杭大運河 / けいこうだいうんが)は、中国の北京から浙江省杭州までを結ぶ全長約1,794kmの世界最長の人工運河です。紀元前5世紀頃に部分的な水路の建設が始まり、隋の煬帝(ようだい)の時代(604年〜618年)に南北を貫通する大規模な運河として整備されました。その後も唐・宋・元・明・清の各時代を通じて拡張・改修が繰り返されています。
河北省を流れる大運河の区間は、主に滄州(そうしゅう / Cangzhou)を中心とした区間です。滄州は大運河沿いに発展した歴史的な商業都市であり、運河を通じて南方の物資や文化が流入し、独自の文化圏を形成しました。大運河は穀物や塩などの物資輸送だけでなく、南北の文化交流の大動脈としても機能し、沿岸の都市の発展に大きく貢献しました。
2014年にユネスコ世界文化遺産に登録された大運河は、中国の8つの省・直轄市にまたがる広大な遺産であり、河北省の区間もその重要な構成要素のひとつです。登録基準は(1)人類の創造的才能を表現する傑作、(3)文化的伝統の稀な証拠、(4)歴史上重要な時代を例証する建築・技術、(6)普遍的な意義を有する出来事と直接に関連するもの、の4項目を満たしています。現在も一部の区間は水運や灌漑に利用されており、「生きた遺産」としての側面も持っています。
承徳避暑山荘と外八廟 / Shoutoku Hisho Sansou To Gaihachi Byou[Mountain Resort and its Outlying Temples, Chengde]
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
1994年 |
| 登録基準 Criteria |
(2)、(4) |
| 住所 Address |
避暑山荘:Lizhengmen St, Shuangqiao Qu, Chengde Shi, Hebei Sheng, China, 067000 |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
避暑山荘:北京首都国際空港より自動車(約2時間50分) |
| URL URL |
承徳避暑山荘(しょうとくひしょさんそう / Chengde Mountain Resort)は、清朝の康熙帝(こうきてい)が1703年に造営を開始し、乾隆帝(けんりゅうてい)の時代の1792年に完成した中国最大の皇帝庭園です。敷地面積は約5.6km²(紫禁城の約8倍)におよび、北京の酷暑を避けるための夏の離宮として、清朝の政治・外交の舞台としても重要な役割を果たしました。
避暑山荘の庭園は、中国各地の名勝を模した景観で構成されており、湖沼区・平原区・山岳区の3つのエリアに分かれています。江南の水郷風景を再現した湖沼区、モンゴルの草原を模した平原区、険しい山々を配した山岳区が一体となり、中国の多様な自然景観を凝縮した空間となっています。
外八廟(がいはちびょう / Outer Eight Temples)は、避暑山荘の周囲に建てられた12の寺院群の総称です(実際には12寺ですが、清朝の管轄下にあった8つの寺院にちなんで「外八廟」と呼ばれています)。チベット仏教やモンゴルの建築様式を取り入れた壮大な寺院群であり、特に普陀宗乗之廟(ふだそうじょうしびょう)はラサのポタラ宮を模して建てられた荘厳な建造物です。外八廟は、清朝がチベット・モンゴルなどの少数民族との融和政策を示す象徴としての意味を持っていました。
1994年にユネスコ世界文化遺産に登録され、登録基準は(2)建築・技術の発展に関する人類の価値の重要な交流、(4)歴史上重要な時代を例証する建築様式の優れた例、の2項目を満たしています。漢族・チベット族・モンゴル族の建築様式が融合した独特の文化的景観は、世界的にも類を見ないものです。
明・清王朝の皇帝墓群 / Ming Qing Ohchou No Kouteibo Gun[Imperial Tombs of the Ming and Qing Dynasties]
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
2000年(拡張年:2003年、2004年) |
| 登録基準 Criteria |
(1)、(2)、(3)、(4)、(6) |
| 住所 Address |
清東陵:Zunhua, Tangshan, China |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
清東陵:北京首都国際空港より自動車(約2時間10分) |
| URL URL |
明・清王朝の皇帝墓群は、中国の明朝(1368年〜1644年)と清朝(1644年〜1912年)の歴代皇帝が埋葬された陵墓群の総称です。河北省には清朝の陵墓群が2か所あり、いずれも中国伝統の風水思想に基づいた壮大な設計で知られています。
清東陵(しんとうりょう / Eastern Qing Tombs)は、河北省遵化市(じゅんかし / Zunhua)に位置し、約80km²の広大な敷地に15の陵墓が点在しています。清朝の順治帝・康熙帝・乾隆帝・咸豊帝・同治帝の5人の皇帝をはじめ、西太后(せいたいごう / 慈禧太后)など15人の皇后、136人の妃嬪、3人の皇子、2人の公主が埋葬されています。特に乾隆帝の裕陵(ゆうりょう)の地下宮殿は、精緻な仏教彫刻で覆われた豪華絢爛な空間として有名です。
清西陵(しんせいりょう / Western Qing Tombs)は、河北省易県(いけん / Yixian)に位置し、雍正帝・嘉慶帝・道光帝・光緒帝の4人の皇帝を含む合計14の陵墓からなります。清東陵に比べると知名度はやや低いものの、松や柏の古木に囲まれた静謐な環境の中に佇む陵墓群は、清朝陵墓建築の洗練された美を伝えています。
これらの陵墓群は、中国伝統の風水の原則に従い、山を背に水に面する理想的な地形に配置されています。神道(しんどう)と呼ばれる参道には石像が並び、陵墓に至るまでの空間全体が荘厳な祭祀の場として設計されています。2000年にユネスコ世界文化遺産に登録され(2003年・2004年に拡張登録)、登録基準は(1)人類の創造的才能を表現する傑作、(2)人類の価値の重要な交流、(3)文化的伝統の稀な証拠、(4)歴史上重要な時代を例証する建築、(6)普遍的な意義を有する出来事と直接に関連するもの、の5項目を満たしています。

