中華人民共和国・吉林省の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Jilin China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

3月 31, 2026China,Jilin,Travel,UNESCO World Heritage Sites,World

親記事:世界各国の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in the World ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

世界遺産とは、1972年のユネスコ総会で採択された世界遺産条約「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて、世界遺産リストに登録された遺跡、景観、自然などの物件を指します。世界遺産に登録されるためには、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」を持ち、移動が不可能な不動産であることが条件となります。

世界遺産の登録の本来の目的は、自然災害や武力紛争、都市開発、観光圧力などの脅威から文化的・自然的に価値のあるものを保護・保全し、過去から未来へと確実に伝えていくことにあります。

一方で、世界遺産に登録されることで国際的な知名度が飛躍的に高まり、観光地としてのブランド力が向上することから、地域経済の活性化や国際交流の促進にも大きく寄与しています。実際に、世界遺産登録後に訪問者数が大幅に増加した事例は世界各地で報告されています。

本記事では、中国東北部に位置する吉林省(きつりんしょう)に所在する世界遺産を詳しく紹介します。吉林省は中国東北三省のひとつであり、北は黒竜江省、南は遼寧省、東は北朝鮮と国境を接しています。省都は長春市で、かつて満洲国の首都「新京」として栄えた歴史を持ちます。吉林省は長白山(白頭山)をはじめとする雄大な自然と、高句麗王国や万里の長城に代表される古代からの文化遺産が共存する、東北アジア有数の歴史・文化・自然の宝庫です。

吉林省には現在、2件の世界文化遺産が登録されています。いずれも中国の古代史を物語る壮大なスケールの遺産であり、東アジアの歴史や文化を理解するうえで欠かせない貴重な存在です。

以下では、まず世界遺産の登録基準を説明したうえで、吉林省に所在する各世界遺産の詳細を紹介します。

世界遺産が登録される際には、以下の10項目の基準のうち1つ以上を満たす必要があります。

世界遺産登録基準(10項目)の詳細は、出典のWikipedia「世界遺産」をご参照ください。

(1)~(6)の基準を満たすものが文化遺産、(7)~(10)を満たすものが自然遺産、そして文化遺産と自然遺産の両方の基準をそれぞれ1つ以上満たすものが複合遺産として登録されます。

以下で紹介する世界遺産の「登録基準」項目の記載番号は、上記の世界遺産登録基準の番号に対応しています。

中華人民共和国・吉林省の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Jilin China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

吉林省に所在する世界遺産は、いずれも文化遺産として登録されています。万里の長城は中国全土にまたがる巨大な防御施設の一部として、また高句麗前期の都城と古墳は東北アジアの古代王国の遺構として、それぞれ異なる歴史的文脈のもとで世界遺産に認定されました。以下に各遺産の詳細を記します。


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万里の長城 / Banri No Choujou[The Great Wall]

万里の長城は、紀元前7世紀頃から明代(14~17世紀)にかけて中国歴代の王朝が北方遊牧民族の侵入を防ぐために築いた、世界最大規模の軍事防御施設です。その総延長は約21,196kmに及び、東は渤海湾沿岸の河北省山海関から西は甘粛省の嘉峪関まで、中国の広大な国土を横断しています。1987年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。

吉林省内には、主に通化市周辺に長城の遺構が残されています。ここに存在するのは、秦の始皇帝が築いた長城よりもさらに古い時代の燕国や高句麗時代の長城跡とされるもので、北方の軍事的緊張が色濃く反映された遺構です。北京近郊の八達嶺や慕田峪のような大規模な観光整備はされていないものの、その分、往時の姿に近い状態で残されており、古代の軍事建築の原型を静かに体感できる貴重な場所として、歴史愛好家の間で注目されています。

万里の長城は、登録基準(1)(2)(3)(4)(6)の5項目を満たしており、人類の創造的才能の傑作であると同時に、異なる文化圏間の交流と対立の歴史を体現する建造物として高く評価されています。

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
1987年
登録基準
Criteria
(1)、(2)、(3)、(4)、(6)
住所
Address
Tonghua, Jilin, China
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
北京首都国際空港より中国国内線(約2時間)「長春龍嘉国際空港」到着後、自動車(約4時間)
URL
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高句麗前期の都城と古墳 / Koukuri Zenki No Tojou To Kofun[Capital Cities and Tombs of the Ancient Koguryo Kingdom]

高句麗前期の都城と古墳は、紀元前37年から668年まで約700年にわたって中国東北部から朝鮮半島北部を支配した古代王国・高句麗(こうくり)の前期の遺跡群です。2004年に中国の世界遺産としてユネスコに登録されました。中国側で登録された本遺産は、吉林省集安市(しゅうあんし)とその周辺地域にある都城遺跡、王陵、貴族の墓群で構成されています。

主な構成資産には、高句麗の初期の都であった五女山城(ごじょさんじょう)(遼寧省桓仁に所在)、2番目の都城であった国内城(こくないじょう)、山城の丸都山城(がんとさんじょう)、そして約40基の王族・貴族の古墳群が含まれます。特に将軍墳(しょうぐんふん)は「東方のピラミッド」とも称される巨大な石造階段状ピラミッドであり、高句麗の高度な建築技術と王権の威容を今日に伝える代表的な遺構です。

古墳群のなかには、鮮やかな色彩で描かれた壁画を有するものも多く存在します。これらの壁画には、当時の宮廷生活、狩猟の様子、神話的モチーフ、四神(青龍・白虎・朱雀・玄武)などが描かれており、高句麗の文化・芸術・宗教観を知る貴重な資料となっています。壁画の芸術的価値は、後の日本の高松塚古墳やキトラ古墳の壁画にも影響を与えたと指摘されており、東アジア古代美術史における重要な位置を占めています。

本遺産は登録基準(1)(2)(3)(4)(5)の5項目を満たしており、消滅した高句麗文明の唯一の物的証拠であるとともに、東アジアにおける都市計画・墓制・壁画芸術の発展を示す傑出した遺産として評価されています。

集安市は鴨緑江を挟んで北朝鮮と接する国境の街であり、温暖な気候から「吉林省の小江南」とも呼ばれています。遺跡群は市内各所に点在しており、主要な遺構を巡るには丸1日の時間を確保することをおすすめします。

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
2004年
登録基準
Criteria
(1)、(2)、(3)、(4)、(5)
住所
Address
Jian Shi, Tonghua Shi, Jilin Sheng, China
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
北京首都国際空港より中国国内線(約2時間)「長春龍嘉国際空港」到着後、自動車(約6時間)
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まとめ

吉林省の世界遺産は2件とも文化遺産であり、いずれも中国の悠久の歴史を物語る壮大な遺構です。万里の長城は紀元前から続く中華文明の防御思想と建築技術の結晶であり、高句麗前期の都城と古墳は東北アジアにおける古代王国の栄華と文化的達成を今に伝えています。

吉林省は北京や上海のような主要観光地と比べると海外からの訪問者はまだ多くありませんが、それだけに観光地としての混雑が少なく、遺跡をじっくりと見学できる環境が整っています。歴史や考古学に関心のある方にとって、吉林省の世界遺産は特に訪れる価値の高い目的地といえるでしょう。