アメリカ・イリノイ州の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Illinois USA ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~
世界遺産とは、1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)」に基づいて、世界遺産リストに登録された遺跡・景観・自然などの不動産を指します。これらは人類が共有すべき「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」を持つと認められたものであり、国境を越えて次世代へ継承すべき人類共通の宝です。
世界遺産登録の本来の目的は、自然災害や開発、紛争などの脅威から文化的・自然的に価値のある遺産を保護・保全し、過去から未来へと確実に伝えていくことにあります。世界遺産条約は2024年時点で195か国が締約しており、世界で最も広く批准されている国際条約のひとつです。
一方で、世界遺産に登録されることにより国際的な知名度が飛躍的に向上し、観光地としてのブランド力が強化されるという側面もあります。実際に登録後に観光客数が大幅に増加した事例は世界各地で報告されており、地域経済への波及効果も注目されています。
本記事では、そうした保護・保全と観光資源としての両面から注目を集めるアメリカ合衆国イリノイ州(Illinois)の世界遺産を詳しく紹介します。イリノイ州はアメリカ中西部に位置し、州都スプリングフィールドやシカゴといった主要都市を擁する州です。先コロンブス期の北米先住民文明の重要な遺跡が残るこの地域には、ユネスコ世界遺産に登録された貴重な文化遺産があります。
世界遺産の登録基準について
世界遺産リストへの登録にあたっては、以下の10項目の登録基準(クライテリア)のうち、1つ以上を満たす必要があります。
- (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
- (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
- (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
- (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
- (5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
- (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
- (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
- (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
- (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
- (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。
上記のうち、(1)~(6)の基準を満たすものが「文化遺産」、(7)~(10)を満たすものが「自然遺産」、そして文化遺産と自然遺産の両方の基準をそれぞれ1つ以上満たすものが「複合遺産」として分類されます。以下で紹介する世界遺産の「登録基準」の番号は、上記の基準番号に対応しています。
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カホキア墳丘群州立史跡 / Cahokia Mounds State Historic Site
カホキア墳丘群州立史跡(Cahokia Mounds State Historic Site)は、イリノイ州コリンズビル(Collinsville)に位置する北米最大級の先コロンブス期の遺跡です。ミシシッピ川流域に栄えたミシシッピ文化(Mississippian culture)の中心都市であり、西暦600年頃から1400年頃にかけて繁栄しました。最盛期の西暦1050年から1200年頃には推定1万人から2万人もの人々が暮らしていたとされ、当時のロンドンの人口を上回る北米最大の都市でした。
遺跡の総面積は約890ヘクタール(約2,200エーカー)に及び、かつては120基以上のマウンド(人工の土塁)が築かれていました。現在でも約80基が保存されています。最大のモンクス・マウンド(Monks Mound)は底辺が約291m×236m、高さ約30mに達し、基底面積ではエジプトのギザの大ピラミッドを凌ぐ、南北アメリカ大陸最大の土構造物です。その頂上には大規模な建造物が存在していたと考えられており、政治・宗教的な中心地としての役割を果たしていました。
カホキアの人々は高度な都市計画能力を持ち、広場・住居地区・儀礼用施設などを計画的に配置していました。また、「ウッドヘンジ(Woodhenge)」と呼ばれる木柱を円形に配置した天体観測施設も発見されており、太陽の動きを基にした暦を用いて農業の時期や儀式の日取りを定めていたことが明らかになっています。
1982年にユネスコ世界文化遺産に登録され、登録基準(3)「現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の唯一のまたは少なくとも稀な証拠」および(4)「人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例」を満たしています。現在は州立史跡として保護・管理されており、敷地内には発掘調査の成果を展示するインタープリティブ・センター(博物館)が設置されています。
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
1982年 |
| 登録基準 Criteria |
(3)、(4) |
| 住所 Address |
Collinsville, Illinois, USA |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
シカゴ・オヘア国際空港よりアメリカ国内線(約1時間30分)で「セントルイス・ランバート国際空港」に到着後、空港から自動車で約30分。セントルイスのダウンタウンからは車で東へ約20分の距離に位置しています。 |
| URL URL |
https://cahokiamounds.org/ |
カホキア墳丘群の見どころ
カホキア墳丘群を訪れる際の主な見どころを以下にまとめます。
- モンクス・マウンド(Monks Mound):南北アメリカ大陸最大の先史時代の土構造物。階段が整備されており、頂上まで登ることができます。頂上からはセントルイスのゲートウェイ・アーチやイリノイ州の平原を一望できます。
- インタープリティブ・センター:遺跡から出土した土器・石器・貝殻製装飾品などの遺物を展示する博物館。カホキアの人々の生活様式や都市構造を再現したジオラマや映像資料も充実しています。
- ウッドヘンジ(Woodhenge):復元された木柱の円形配置。春分・秋分・夏至・冬至の日の出方向と木柱が一致するように設計されており、古代の天文学的知識を体感できます。
- グランド・プラザ(Grand Plaza):遺跡の中央に広がる約19ヘクタールの広場。儀式や市場、スポーツ競技(チャンキーと呼ばれる石を使った競技など)が行われていたと考えられています。
- ウォーキングトレイル:遺跡全体を巡る複数の散策コースが整備されており、マウンド群や復元された住居跡を歩いて見学できます。
訪問情報
カホキア墳丘群州立史跡は入場無料で、年間を通じて一般公開されています。インタープリティブ・センターでは寄付が推奨されています。春から秋にかけてはガイドツアーや特別イベントが開催されることもあるため、訪問前に公式サイトで最新情報を確認することをおすすめします。最寄りの主要都市であるセントルイスからのアクセスが良好なため、セントルイス観光と合わせて訪問するのが便利です。

