アメリカ・ケンタッキー州の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Kentucky USA ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

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親記事:世界各国の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in the World ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

アメリカ合衆国の中東部に位置するケンタッキー州は、アパラチア山脈の西側に広がる緑豊かな丘陵地帯と、世界的に有名なカルスト地形を有する自然豊かな州です。「ブルーグラス・ステート(Bluegrass State)」の愛称で知られるケンタッキー州は、競馬の聖地チャーチルダウンズやバーボンウイスキーの産地として世界的に知られていますが、自然遺産の観点からも極めて重要な地域です。

ケンタッキー州には、UNESCO(国際連合教育科学文化機関)の世界遺産リストに登録された「マンモス・ケーブ国立公園(Mammoth Cave National Park)」があります。この洞窟は、地球上で最も長い洞窟系として知られ、探査済みの通路の総延長は670キロメートルを超えます。数億年にわたる地質学的プロセスが生み出したこの地下空間は、地球科学的にも生物学的にも極めて高い価値を持ち、1981年にユネスコ世界遺産(自然遺産)に登録されました。

世界遺産とは、ユネスコ総会で1972年に採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)」に基づいて登録される、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」を持つ遺跡・景観・自然のことです。登録の本来の目的は、自然や文化的に価値のあるものを保護・保全し、過去から現在、そして未来へと確実に受け継いでいくことにあります。

近年では世界遺産に登録されることで国際的な知名度が向上し、観光資源としてのブランド力を持つことも期待されています。ケンタッキー州のマンモス・ケーブ国立公園も、年間約200万人の観光客が訪れる人気の観光地となっており、保護・保全と観光の両立が図られています。

以下では、ケンタッキー州の世界遺産を詳しく紹介します。まず、世界遺産が登録される際の基準について確認しましょう。

  • (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
  • (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
  • (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
  • (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
  • (5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
  • (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
  • (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
  • (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
  • (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
  • (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

(1)~(6)を満たすものが文化遺産、(7)~(10)を満たすものが自然遺産、文化遺産と自然遺産の条件をそれぞれ1つ以上を満たすものが複合遺産としての登録基準となります。

以下で紹介する世界遺産の「登録基準」項目の記載番号は上記の世界遺産登録基準の番号に対応しています。

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マンモス・ケーブ国立公園 / Mammoth Cave Kokuritsu Kouen[Mammoth Cave National Park]

マンモス・ケーブ国立公園は、ケンタッキー州中南部のエドモンソン郡を中心に広がる、世界最長の洞窟系を擁する国立公園です。「マンモス(Mammoth)」という名称は巨大な古代生物のマンモスではなく、「巨大な」「途方もない」という意味の英語に由来しており、その名の通り、探査・測量済みの洞窟通路の総延長は670キロメートル以上に達し、現在も新たな通路が発見され続けています。これは世界第2位の洞窟系であるメキシコのシステマ・サック・アクトゥン(Sistema Sac Actun)の約380キロメートルを大きく引き離す、圧倒的な規模です。

地質学的特徴と形成過程

マンモス・ケーブは、約3億2500万年前(古生代石炭紀、ミシシッピ紀)に形成された石灰岩層の中に発達したカルスト洞窟です。グリーン川とその支流による浸食作用が何百万年にもわたって石灰岩を溶解し、世界に類を見ない複雑な地下洞窟ネットワークを形成しました。洞窟内部には、鍾乳石・石筍・石柱・フローストーン(流れ石)などの多様な鍾乳洞生成物(スペレオセム)が見られ、地球の地質学的歴史を物語る貴重な記録となっています。

洞窟は上層部から下層部まで5つの異なるレベルで構成されており、それぞれが異なる時代の水位変動を反映しています。この多層構造は、数百万年にわたるグリーン川の水位低下の歴史を示す生きた地質学的記録であり、世界遺産登録基準(8)「地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本」に該当する理由の一つです。

生物多様性と固有種

マンモス・ケーブの生態系は、地上と地下の両方において極めて高い生物多様性を有しています。洞窟内部には光の届かない完全暗黒の環境に適応した固有種が数多く生息しており、洞窟生物学(バイオスペレオロジー)の研究において世界的に重要なフィールドとなっています。

代表的な洞窟性生物として、目が退化したケンタッキー・ケーブシュリンプ(Kentucky Cave Shrimp / Palaemonias ganteri)が挙げられます。この種はマンモス・ケーブ周辺の地下水系にのみ生息する固有種で、アメリカ合衆国の絶滅危惧種に指定されています。そのほか、目のないケーブフィッシュ(洞窟魚)、ケーブクレイフィッシュ(洞窟ザリガニ)、洞窟性の甲虫やクモなど、130種以上の洞窟適応生物が確認されています。

地上部分の国立公園エリアには、東部落葉広葉樹林に覆われた丘陵地帯が広がり、シロオジカ、アメリカグマ、七面鳥、多様な鳥類や両生類が生息しています。グリーン川とノーリン川の流域には、淡水ムール貝を含む多様な水生生物が生息し、生物多様性の保全上も重要な地域です。これらの特徴が、登録基準(10)「生物多様性の本来的保全にとって重要な自然生息地」に該当します。

歴史的・文化的背景

マンモス・ケーブは、先住民族(ネイティブ・アメリカン)によって少なくとも4,000年以上前から利用されていたことが考古学的調査により判明しています。洞窟内からは、葦のたいまつの残骸、鉱物採取の痕跡、ミイラ化した遺体なども発見されており、先史時代の人々と洞窟の関わりを示す貴重な遺物です。

19世紀初頭のアメリカ独立戦争後から、マンモス・ケーブは観光地として商業的に運営されるようになりました。1812年の米英戦争時には、洞窟内の硝酸カリウム(硝石)が火薬の原料として採掘されました。その後、1941年にアメリカ合衆国の国立公園に指定され、1981年にユネスコ世界遺産に、1990年には国際生物圏保護区にも登録されました。

訪問ガイド

マンモス・ケーブ国立公園では、国立公園局(NPS)が管理する複数のガイド付き洞窟ツアーが年間を通じて提供されています。初心者向けの「セルフガイドツアー」から、狭い通路を這って進む上級者向けの「ワイルドケーブツアー」まで、さまざまな難易度のツアーが用意されています。代表的な見どころとしては、巨大な地下空間「マンモス・ドーム(Mammoth Dome)」、氷結した滝のように見える鍾乳石の壁「フローズン・ナイアガラ(Frozen Niagara)」、幅の狭い通路「ファット・マンズ・ミゼリー(Fat Man's Misery)」などがあります。

地上エリアでは、グリーン川沿いのカヌーやカヤック、80キロメートルを超えるハイキングトレイル、キャンプ、野生動物観察など、多彩なアウトドアアクティビティを楽しむことができます。国立公園内にはロッジやキャンプ場も整備されており、自然の中でゆったりと過ごすことが可能です。

登録区分
Type
自然遺産
登録年
Designated
1981
登録基準
Criteria
(7)、(8)、(10)
住所
Address
Kentucky, USA
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
シカゴ・オヘア国際空港より自動車(約6時間)
シカゴ・オヘア国際空港よりアメリカ国内線(約1時間30分)「ブルーグラス空港」到着後、ブルーグラス空港より自動車(約2時間)
URL
URL
https://www.nps.gov/maca/index.htm