沖縄県の国宝(建造物) 一覧・まとめ / National Treasure of Japanese Buildings in Okinawa ~旅行のみどころになる日本国民の宝と指定された神社、寺、城、住宅等の重要文化財~

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日本の国宝とは、1950年(昭和25年)に制定された文化財保護法に基づき、国が指定した重要文化財のうち、世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものであるとして文部科学大臣が指定した文化財を指します。国宝の制度は、日本が世界に誇る歴史的・文化的遺産を保護し、次世代へ継承するために設けられた最高位の文化財指定制度です。

法律の観点では国宝は重要文化財の一種であり、国宝の分類には建造物(神社、寺院、城郭、住宅等)、絵画、彫刻、工芸品、書跡・典籍、古文書、考古資料・歴史資料があります。このうち「建造物」に分類される国宝は全国に約230件あり、その多くは京都府・奈良県・滋賀県など近畿地方に集中しています。これらの国宝建造物は、日本の建築技術の粋を集めた歴史的建造物であり、各地域を代表する観光資源としても高い価値を持っています。

今回はそのような国宝の中から、各都道府県の旅行のみどころにもなってくる「建造物」に分類される国宝を紹介します。沖縄県は、かつて独立国家「琉球王国」として独自の文化と建築を発展させた歴史を持ち、2018年には玉陵(たまうどぅん)が沖縄県初の国宝(建造物)に指定されました。琉球王国の石造建築技術の粋を集めた文化遺産に加え、ユネスコ世界文化遺産に登録されたグスク(城)群など、沖縄県には日本本土とは異なる独自の建築文化が息づいています。

沖縄県の国宝(建造物) 一覧・まとめ / National Treasure of Japanese Buildings in Okinawa ~旅行のみどころになる日本国民の宝と指定された神社、寺、城、住宅等の重要文化財~


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玉陵(たまうどぅん)/ Tamaudun [Royal Mausoleum of the Ryukyu Kingdom]

種別
Type
国宝・近世以前・その他(墓)
時代
Period
琉球王国時代(1501年)
指定年月日
Designated
2018年
住所
Address
沖縄県那覇市首里金城町1丁目3
地図
Map
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
ゆいレール(沖縄都市モノレール)首里駅(徒歩約15分)
URL
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玉陵は、琉球王国第二尚氏王統の歴代国王が葬られた王家の陵墓であり、沖縄県で唯一の国宝(建造物)です。1501年(弘治14年)に第二尚氏第3代国王・尚真王(しょうしんおう)が、父・尚円王(しょうえんおう)の遺骨を改葬するために築造しました。

玉陵は琉球独特の石造建築技術を用いて造られており、東室・中室・西室の3つの墓室で構成されています。東室には洗骨後の国王と王妃の遺骨が、西室にはその他の王族の遺骨が納められ、中室は葬儀の際に遺体を安置して洗骨を待つための部屋として使用されました。墓室の屋根は琉球の伝統的な家屋の形を模した破風墓(はふばか)の様式で、沖縄の墓制文化を象徴する造形です。

陵墓の周囲は珊瑚石灰岩の石垣で囲まれ、正面には美しい石彫りの欄干が設けられています。敷地内には、墓室に入る資格のある王族の名前を刻んだ「玉陵碑(たまうどぅんひ)」と呼ばれる石碑も残されており、琉球王国の王位継承や王族制度を知る上で貴重な史料となっています。

1945年の沖縄戦では米軍の艦砲射撃により甚大な被害を受けましたが、戦後に修復・復元工事が行われ、2000年にはユネスコ世界文化遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の構成資産のひとつとして登録されました。さらに2018年には、琉球石灰岩を巧みに加工した石造建築技術の高さと、東アジアの墓制文化の交流を示す歴史的価値が評価され、沖縄県初の国宝(建造物)に指定されました。

沖縄県と国宝建造物の歴史的背景 ― 琉球王国から現代まで

沖縄県の建築文化は、日本本土とは大きく異なる独自の発展を遂げてきました。14世紀から19世紀にかけて、沖縄は「琉球王国」として独立した国家を形成し、中国(明・清)、日本、東南アジア諸国との交易を通じて、独自の建築文化を発展させました。グスク(城)と呼ばれる琉球独特の城郭建築や、中国の影響を受けた石造技術、そして亜熱帯気候に適応した住居建築など、琉球王国の建築は東アジア文化圏の中でも特異な位置を占めています。

しかしながら、沖縄県に長年にわたり国宝建造物が存在しなかった背景には、悲劇的な歴史があります。1945年(昭和20年)の沖縄戦は、「鉄の暴風(Iron Typhoon)」と呼ばれるほどの激烈な地上戦であり、沖縄本島の歴史的建造物の大部分が壊滅的な被害を受けました。琉球王国の象徴であった首里城をはじめ、寺院、御嶽(うたき)、伝統的な民家など、数百年の歴史を持つ建造物が失われたのです。

首里城は琉球王国の政治・文化の中心であり、本来であれば国宝に指定されうる壮大な木造建築でしたが、沖縄戦により完全に焼失しました。1992年に正殿などの主要建造物が復元されましたが、復元建造物は文化財保護法上の「国宝」指定の対象とはなりません。さらに2019年10月には火災により正殿を含む主要な建物が再び焼失し、現在は復元工事が進められています。

こうした歴史的経緯の中で、戦火を耐え抜いた石造建築である玉陵が、沖縄県の建築遺産を代表する存在として国宝に指定されたことは、沖縄の文化遺産の保護・継承において大きな意義を持っています。

沖縄県の重要文化財(建造物)― 琉球の歴史を伝える貴重な建造物

国宝に指定された玉陵のほかにも、沖縄県には国が「重要文化財」に指定した建造物が複数存在します。これらは琉球王国時代から近代にかけての沖縄の建築文化を今に伝える貴重な遺産です。

園比屋武御嶽石門(そのひゃんうたきいしもん)

1519年に尚真王の時代に創建された石造りの門で、国の重要文化財に指定されているとともに、ユネスコ世界文化遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の構成資産のひとつです。首里城の守礼門と歓会門の間に位置し、琉球国王が城外へ出かける際に道中の安全を祈願した拝所(うがんじゅ)です。琉球石灰岩を精巧に加工した石門は、日本本土には見られない琉球独自の宗教建築であり、琉球王国の信仰文化を象徴する建造物として高く評価されています。那覇市首里に所在し、首里城公園の見学と合わせて訪れることができます。

中村家住宅(なかむらけじゅうたく)

北中城村(きたなかぐすくそん)に所在する18世紀頃に建てられた伝統的な沖縄の農家住宅で、国の重要文化財に指定されています。沖縄戦の戦禍を奇跡的に免れた貴重な民家であり、琉球王国時代の上層農家の暮らしぶりを今に伝える建造物です。赤瓦屋根、石垣に囲まれた屋敷構え、ヒンプン(目隠し壁)、フール(豚小屋兼トイレ)など、沖縄の伝統的な住居建築の特徴を完全な形で残しています。亜熱帯気候に適応した風通しの良い間取りや、台風に備えた低い軒高と頑丈な石垣は、沖縄の先人たちの建築の知恵を物語っています。

旧崇元寺第一門及び石牆(きゅうそうげんじだいいちもんおよびせきしょう)

那覇市泊に所在する琉球王国時代の寺院跡で、残存する第一門(総門)と石牆(石垣)が国の重要文化財に指定されています。崇元寺は1527年に創建された琉球王国の国廟であり、歴代国王の神位(位牌)を祀った最も格式の高い寺院でした。本堂は沖縄戦で破壊されましたが、石造りの第一門と石牆は戦火を耐え抜き、現在もその堂々たる姿を残しています。三連アーチ形式の石門は、中国の建築様式の影響を受けた琉球独自の寺院建築を今に伝えるものです。

琉球王国のグスク及び関連遺産群 ― ユネスコ世界文化遺産

沖縄県には国宝建造物だけでなく、2000年(平成12年)にユネスコ世界文化遺産に登録された「琉球王国のグスク及び関連遺産群(Gusuku Sites and Related Properties of the Kingdom of Ryukyu)」があります。これは琉球王国の歴史と文化を代表する9つの資産で構成されており、琉球独自の城郭(グスク)建築と王国の文化的伝統が高く評価されたものです。

  • 首里城跡(しゅりじょうあと)― 那覇市に所在。琉球王国の王城であり、政治・外交・文化の中心地でした。中国と日本の建築様式を融合させた独特の城郭建築が特徴です。
  • 今帰仁城跡(なきじんじょうあと)― 今帰仁村に所在。13世紀頃に築かれた北山王の居城で、約1.5キロメートルに及ぶ美しい曲線の城壁が特徴です。桜の名所としても知られ、毎年1月下旬から2月にかけて日本一早い桜まつりが開催されます。
  • 座喜味城跡(ざきみじょうあと)― 読谷村に所在。15世紀初頭に築城の名手・護佐丸(ごさまる)によって築かれた城で、精巧な曲線を描く石垣と美しいアーチ門が特徴です。城壁の上からは東シナ海を一望できます。
  • 勝連城跡(かつれんじょうあと)― うるま市に所在。琉球王国統一以前に阿麻和利(あまわり)が居城とした城で、海抜約100メートルの丘陵上に築かれた勇壮な城です。頂上部からは中城湾と太平洋を望む絶景が広がります。
  • 中城城跡(なかぐすくじょうあと)― 中城村・北中城村に所在。護佐丸が築いた城で、城壁の石積み技術の高さは琉球随一と評されています。1853年にペリー提督の探検隊が訪れ、その建築技術を称賛したことでも知られています。
  • 園比屋武御嶽石門(そのひゃんうたきいしもん)― 那覇市に所在。前述の国の重要文化財であり、琉球国王の拝所としての歴史的価値が高く評価されています。
  • 玉陵(たまうどぅん)― 那覇市に所在。前述の国宝であり、琉球王国の王家の陵墓としての歴史的・建築的価値が評価されています。
  • 識名園(しきなえん)― 那覇市に所在。琉球王家の別邸として18世紀末に造営された庭園で、中国の冊封使(さっぽうし)をもてなす迎賓施設としても使用されました。「回遊式庭園」の形式を取りながら、琉球石灰岩を活かした独自の造園技法が特徴です。
  • 斎場御嶽(せーふぁうたき)― 南城市に所在。琉球王国最高の聖地であり、国家的な祭祀が行われた場所です。琉球の創世神話に登場する聖地であり、大庫理(うふぐーい)、寄満(ゆいんち)、三庫理(さんぐーい)と呼ばれる拝所が残されています。

これらの世界文化遺産は、琉球王国が約450年にわたって育んだ独自の文化・建築・信仰の体系を物語るものであり、沖縄観光の最大の見どころのひとつです。

沖縄県の歴史的建造物と観光のみどころ

沖縄県の歴史的建造物は、那覇市を中心とした沖縄本島南部・中部に多く集中しています。琉球王国の都であった首里とその周辺には、王国の栄華を偲ばせる建造物群が残されています。

首里エリア:琉球王国の王都であった首里には、国宝・世界遺産の玉陵、世界遺産の首里城跡、園比屋武御嶽石門のほか、首里金城町の石畳道、龍潭池(りゅうたんいけ)、弁財天堂(べんざいてんどう)・円鑑池(えんかんち)など、琉球王国時代の面影を色濃く残す史跡が点在しています。首里金城町の石畳道は、16世紀に琉球石灰岩で舗装された約300メートルの古道であり、沖縄戦の戦禍を免れた貴重な歴史的景観です。

中部エリア:読谷村の座喜味城跡、うるま市の勝連城跡、北中城村の中城城跡と中村家住宅など、世界遺産のグスク群と伝統的建造物が点在しています。特に中村家住宅は、琉球の伝統的な住居建築を間近に見学できる貴重な施設であり、グスク巡りと合わせて訪れたいスポットです。

北部エリア:今帰仁村の今帰仁城跡は、沖縄本島北部を代表する世界遺産であり、万里の長城を彷彿とさせる壮大な城壁と、城跡から見渡す東シナ海の絶景が魅力です。毎年1月下旬から2月にかけて開催される「今帰仁グスク桜まつり」では、城壁に沿って咲く寒緋桜(カンヒザクラ)が美しくライトアップされます。

南部エリア:南城市には琉球王国最高の聖地・斎場御嶽があり、琉球の創世神話と信仰文化を体感できます。巨大な琉球石灰岩が作り出す神秘的な空間は、パワースポットとしても人気を集めています。また南部一帯には沖縄戦の戦跡も多く、平和祈念公園やひめゆりの塔など、平和の尊さを伝える施設も沖縄観光の重要な要素です。

まとめ

沖縄県は、琉球王国という独立国家の歴史を背景に、日本本土とは異なる独自の建築文化を発展させてきた地域です。2018年に玉陵が沖縄県初の国宝(建造物)に指定されたことは、沖縄の石造建築技術と琉球王国の文化的価値が国家的に認められた意義深い出来事でした。沖縄戦によって多くの歴史的建造物が失われた中、戦火を耐え抜いた玉陵、園比屋武御嶽石門、中村家住宅などの文化遺産は、琉球の歴史を今に伝えるかけがえのない存在です。9つの構成資産からなるユネスコ世界文化遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」と合わせて、沖縄の歴史と文化に触れる旅をぜひお楽しみください。