山形県の経済産業省指定「伝統的工芸品」一覧・まとめ – 職人の熟練した匠の技によって生み出される珠玉の手仕事 / Traditional Crafts of Yamagata ~伝統的工芸品が購入できるショップ・取扱店一覧~
日本には古くから受け継がれてきた伝統的工芸品が数多く存在します。これらは日常生活の中で使われる実用品でありながら、職人の手仕事による美しさと機能性を兼ね備えた芸術作品でもあります。「伝統的工芸品」とは、日本において何世代にもわたり伝統的な技術・技法を用いて手工業的に製造されてきた日常生活用品を指します。
その中でも、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」に基づき、経済産業大臣が以下の5つの要件を満たすものとして指定した工芸品を「経済産業大臣指定伝統的工芸品」と呼びます。
- 主として日常生活の用に供されているもの
- 製造過程の主要部分が手工業的であるもの
- 伝統的技術または技法によって製造されるもの
- 伝統的に使用されてきた原材料を使用していること
- 一定の地域で産地形成されていること
本記事では、職人の熟練した匠の技によって生み出される珠玉の手仕事である「経済産業大臣指定伝統的工芸品」の中から、山形県で指定されている全5品目を詳しく紹介します。各工芸品の歴史的背景、製造技法の特徴、文化的価値について解説するとともに、実際に購入できるショップ情報も掲載しています。
山形県の経済産業省指定「伝統的工芸品」一覧・まとめ – 職人の熟練した匠の技によって生み出される珠玉の手仕事 / Traditional Crafts of Yamagata ~伝統的工芸品が購入できるショップ・取扱店一覧~
山形県には、経済産業大臣が指定する伝統的工芸品が5品目あります。上杉鷹山の殖産興業政策を起源とし置賜地方で受け継がれる置賜紬、約900年の歴史を持ち薄肉鋳造の技で知られる山形鋳物、七職の分業体制により精緻な仕上がりを誇る山形仏壇、日本の将棋駒生産量の約95%を占める天童将棋駒、そして縄文時代から続くとされる古代の樹皮繊維織物・羽越しな布と、山形の豊かな自然と深い歴史が育んだ多彩な工芸品が揃っています。織物・金工品・仏壇仏具・木竹工品と分野も幅広く、東北地方の工芸文化を代表する逸品ばかりです。
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置賜紬 / Oitamatsumugi[Oitamatsumugi]
置賜紬(おいたまつむぎ)は、山形県南部の置賜地方(米沢市・長井市・白鷹町)で生産される絹織物の総称です。その歴史は8世紀初頭にまで遡るとされ、上杉景勝の会津移封に伴い米沢に入った上杉氏のもとで織物産業が発展しました。特に18世紀後半、米沢藩第9代藩主・上杉鷹山(うえすぎようざん)が藩の財政再建策として織物の殖産興業を強力に推進したことが、置賜紬発展の大きな転機となりました。鷹山は越後や京都から織師を招いて技術を導入し、養蚕から製糸・染色・織りに至る一貫した生産体制を築き上げました。
置賜紬の最大の特徴は、米沢紬・長井紬・白鷹お召という三つの産地ごとに異なる個性を持つ織物が「置賜紬」として統合的に指定されている点にあります。米沢紬は紅花や藍、刈安(かりやす)などの草木染めによる自然な色彩が特徴で、素朴な風合いの中に深い味わいがあります。長井紬は緯糸(よこいと)に琉球絣(かすり)の技法を取り入れた独特の絣模様で知られ、「米琉(よねりゅう)」とも呼ばれます。白鷹お召は強撚糸(きょうねんし)を用いた「しぼ」のある上品な風合いが特徴で、板締め小絣(いたじめこがすり)の精緻な技法が今も受け継がれています。
1976年(昭和51年)に経済産業大臣指定伝統的工芸品に認定されました。いずれの紬も手織りによる温かみのある風合いと、草木染めの柔らかな色彩が魅力であり、着物愛好家から高い評価を受けています。近年は伝統的な着物地だけでなく、ストールやバッグなどの現代的な小物への展開も進んでおり、若い世代にも置賜紬の魅力を伝える取り組みが行われています。上杉鷹山の改革精神を受け継ぎながら、時代に合わせた進化を続ける東北を代表する織物産地です。
| 登録年 Designated |
1976年2月26日 |
| 種類 Type |
織物 |
| 主な産地 Main Production Area |
山形県米沢市・長井市・白鷹町 |
| 主な特徴 Key Features |
米沢紬・長井紬・白鷹お召の三産地の織物を総称。草木染めの自然な色彩と手織りの温かみある風合いが特徴。上杉鷹山の殖産興業に端を発する。 |
| 関連商品取扱店一覧 Shop |
置賜紬 取扱店一覧 |
山形鋳物 / Yamagata Imono[Yamagata Imono]
山形鋳物(やまがたいもの)は、山形県山形市を中心に生産される鋳造金属製品です。その歴史は平安時代後期の11世紀に遡り、前九年の役(1051〜1062年)の際に源頼義の軍に従った鋳物師が、山形の地で良質な砂と土を発見し、この地に留まって鋳物製造を始めたことが起源とされています。以来約960年にわたり、山形市銅町(どうまち)を中心に鋳物産業が発展し、江戸時代には山形藩の庇護のもと、茶の湯釜や鉄瓶、梵鐘などの製造で広く知られるようになりました。
山形鋳物の最大の特徴は、「薄肉鋳造(うすにくちゅうぞう)」と呼ばれる高度な鋳造技術にあります。溶かした金属を鋳型に流し込む際、極めて薄い肉厚で均一に仕上げる技術は全国的にも稀であり、繊細で軽やかな造形を可能にしています。特に茶の湯釜においては、その薄さと均一性が湯の沸き加減を左右するため、職人の熟練した技術が不可欠です。素材は主に鉄と銅合金が用いられ、鉄瓶・茶釜・風鈴・花器・置物など多岐にわたる製品が生み出されています。鋳肌の美しさを活かしたシンプルながら気品ある意匠も山形鋳物の魅力です。
1975年(昭和50年)に経済産業大臣指定伝統的工芸品の第一次指定を受けました。近年は伝統的な茶道具や仏具に加え、現代のライフスタイルに合わせたモダンなデザインの製品開発が活発に行われています。国内外の著名なプロダクトデザイナーとの協業によるティーポットや鍋、インテリア小物などが高い評価を獲得しており、グッドデザイン賞をはじめとする数々のデザイン賞を受賞しています。伝統の薄肉鋳造技術と現代デザインの融合により、日本の鋳物文化を世界に発信する産地として注目を集めています。
| 登録年 Designated |
1975年2月17日 |
| 種類 Type |
金工品 |
| 主な産地 Main Production Area |
山形県山形市 |
| 主な特徴 Key Features |
薄肉鋳造の高度な技術による繊細で軽やかな造形。鉄瓶・茶釜・風鈴など多彩な製品を生産。現代デザインとの融合でも高い評価を獲得。 |
| 関連商品取扱店一覧 Shop |
山形鋳物 取扱店一覧 |
山形仏壇 / Yamagata Butsudan[Yamagata Butsudan]
山形仏壇(やまがたぶつだん)は、山形県山形市・天童市・酒田市を中心に生産される仏壇・仏具です。その歴史は江戸時代中期の18世紀に遡ります。山形は最上川の舟運により紅花交易で大いに栄え、京都や大阪との文化・経済交流が活発に行われていました。この交流を通じて京都の仏壇製造技術が山形にもたらされ、さらに山形が古くから寺院の多い信仰の篤い土地柄であったことも相まって、仏壇製造が盛んに行われるようになりました。江戸時代後期には山形藩の保護のもと産業として確立し、東北地方有数の仏壇産地へと発展しました。
山形仏壇の最大の特徴は、「七職(しちしょく)」と呼ばれる高度な分業体制にあります。木地師(きじし)・宮殿師(くうでんし)・彫刻師(ちょうこくし)・金具師(かなぐし)・蒔絵師(まきえし)・塗師(ぬし)・箔押師(はくおしし)の七つの専門職人がそれぞれの持ち場で卓越した技を発揮し、一つの仏壇を完成させます。特に宮殿(くうでん)と呼ばれる仏壇内部の建築的構造物は、実際の寺院建築を精密に縮小再現したもので、木組みの技術は建築の匠に匹敵する精巧さを誇ります。漆塗りと金箔押しによる荘厳な仕上がりは、山形の職人たちの総合的な技術力の結晶です。
1980年(昭和55年)に経済産業大臣指定伝統的工芸品に認定されました。山形仏壇は京仏壇の流れを汲みながらも、東北の風土に根ざした質実剛健な作りが特徴であり、豪雪地帯の厳しい気候に耐えうる堅牢さを備えています。近年は生活様式の変化に対応した小型仏壇やモダンデザインの仏壇も製作されており、伝統の七職の技を守りながら現代のニーズに応える製品開発が続けられています。七つの専門技術が一つに結集する総合工芸としての価値は、日本の仏壇産地の中でも高く評価されています。
| 登録年 Designated |
1980年3月3日 |
| 種類 Type |
仏壇・仏具 |
| 主な産地 Main Production Area |
山形県山形市・天童市・酒田市 |
| 主な特徴 Key Features |
七職(木地・宮殿・彫刻・金具・蒔絵・塗・箔押)の分業体制による精緻な仕上がり。京仏壇の流れを汲みつつ東北の風土に根ざした堅牢な作りが特徴。 |
| 関連商品取扱店一覧 Shop |
山形仏壇 取扱店一覧 |
天童将棋駒 / Tendou Shougikoma[Tendou Shougikoma]
天童将棋駒(てんどうしょうぎこま)は、山形県天童市を中心に生産される将棋の駒です。その歴史は江戸時代後期の文政年間(1818〜1831年)に遡ります。天童織田藩(天童藩)の藩士たちが、厳しい財政状況の中で内職として将棋駒の製造を始めたことが起源とされています。藩は下級武士の困窮を救うため将棋駒づくりを奨励し、「将棋は戦の手並也(てなみなり)、日頃是を翫(もてあそ)ぶはまさに武芸の上達に通じる」と武士の副業としての正当性を説きました。以来約200年にわたり、天童市は日本随一の将棋駒産地として発展を続けてきました。
天童将棋駒の製造技法は、大きく「書き駒」「彫り駒」「彫り埋め駒」「盛り上げ駒」の四種類に分類されます。「書き駒」は駒木地に直接漆で文字を書く技法で、最も一般的な普及品です。「彫り駒」は木地に文字を彫刻する技法で、使い込んでも文字が消えない耐久性があります。「彫り埋め駒」は彫った溝に漆を埋め込んで平滑に仕上げる高度な技法です。最高級品である「盛り上げ駒」は、彫り埋めの上からさらに漆を盛り上げて文字を立体的に浮かび上がらせる技法で、名人戦をはじめとするプロ棋戦の公式対局駒にも使用されています。素材には主に御蔵島産の黄楊(つげ)が最高級とされ、その緻密な木目と経年による飴色の変化が珍重されています。
1996年(平成8年)に経済産業大臣指定伝統的工芸品に認定されました。天童市は日本の将棋駒生産量の約95%を占める圧倒的な産地であり、「将棋駒のまち」として広く知られています。毎年春に開催される「人間将棋」は、甲冑を身にまとった人間が巨大な将棋盤上で駒となって動く天童市の代表的な祭りで、全国から多くの観光客が訪れます。近年は藤井聡太棋士の活躍による将棋ブームを背景に、伝統的な対局駒だけでなく、飾り駒・根付・ストラップなどの将棋駒を活かした工芸品やお土産品の需要も高まっており、天童将棋駒の文化的価値がさらに広く認知されるようになっています。
| 登録年 Designated |
1996年4月8日 |
| 種類 Type |
その他工芸品 |
| 主な産地 Main Production Area |
山形県天童市 |
| 主な特徴 Key Features |
日本の将棋駒生産量の約95%を占める一大産地。書き駒・彫り駒・彫り埋め駒・盛り上げ駒の四技法があり、最高級の盛り上げ駒はプロ棋戦でも使用される。 |
| 関連商品取扱店一覧 Shop |
天童将棋駒 取扱店一覧 |
羽越しな布 / Uetsu Shinafu[Uetsu Shinafu]
羽越しな布(うえつしなふ)は、山形県鶴岡市の関川地区と新潟県村上市の山北地区にまたがる地域で生産される、シナノキ(科の木)の樹皮繊維を用いた古代織物です。その歴史は極めて古く、縄文時代にまで遡るとされており、綿花や絹が普及する以前から日本列島の山間地域で衣料・袋物・縄などの生活必需品として用いられてきました。「しな」とはシナノキの古名であり、かつては東北地方の山村において日常的に織られていた布ですが、近代以降の綿製品の普及に伴い急速に衰退し、現在では羽越地域のみにその技術が伝承されている極めて希少な織物です。
羽越しな布の製造工程は、すべてが手作業による気の遠くなるような工程の積み重ねです。毎年6月から7月にかけてシナノキの若木を伐採し、樹皮を剥いで内皮を取り出します。この内皮を灰汁(あく)で煮て柔らかくした後、清流で丹念に水洗いして不純物を除去します。乾燥させた繊維を細く裂き、一本ずつ手で撚り合わせて糸を作る「績み(うみ)」の作業は、冬の農閑期に囲炉裏端で行われる伝統的な作業です。こうして作られたしな糸を地機(じばた)と呼ばれる伝統的な腰機で手織りして布に仕上げます。原木の伐採から完成まで約1年を要する、自然の恵みと人の手仕事が一体となった織物です。
2005年(平成17年)に経済産業大臣指定伝統的工芸品に認定されました。しな布は素朴で温かみのある風合いと、使い込むほどに柔らかく肌に馴染む独特の質感が魅力です。天然繊維ならではの吸湿性・通気性に優れ、帯地・バッグ・帽子・テーブルセンターなどの製品が作られています。生産量は極めて限られており、一反の帯地を織り上げるにも膨大な手間と時間を要するため、希少価値の高い織物として着物愛好家やコレクターから高い評価を受けています。自然素材を活かした持続可能なものづくりの原点ともいえる羽越しな布は、日本の古代織物文化を今に伝える貴重な無形の文化遺産です。
| 登録年 Designated |
2005年9月22日 |
| 種類 Type |
染色 |
| 主な産地 Main Production Area |
山形県鶴岡市(関川地区)・新潟県村上市(山北地区) |
| 主な特徴 Key Features |
シナノキの樹皮繊維を用いた日本最古級の古代織物。原木伐採から完成まで約1年を要する全工程手作業の希少な織物で、素朴な風合いと天然繊維ならではの質感が特徴。 |
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