[1989年開催(1988年映画作品対象)]第61回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜
アカデミー賞(Academy Awards)とは、映画芸術科学アカデミー(AMPAS: Academy of Motion Picture Arts and Sciences)が主催する、世界で最も権威ある映画賞のひとつです。アメリカ合衆国における映画産業の健全な発展と、映画芸術・科学技術の品質向上を目的として設立され、毎年キャスト・スタッフなどの映画関係者を部門別に表彰し、その優れた功績を讃えています。
受賞者には賞金の代わりに、金色に輝く「オスカー像(Oscar Statuette)」が授与されることから、「オスカー賞(The Oscars)」という通称でも世界中に広く知られています。このオスカー像は高さ約34cm、重さ約3.9kgの金メッキのブリタニウム合金製で、映画界における最高の栄誉の象徴です。
アカデミー賞の歴史は、世界三大映画祭(カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭)よりも古く、第1回の授賞式は1929年5月16日にハリウッドのルーズベルトホテルで開催されました。以来、毎年開催される授賞式は世界中のメディアに取り上げられ、映画業界のみならず一般社会においても大きな注目を集める一大イベントとなっています。
アカデミー賞へのノミネートおよび受賞は世界中で大きく報道され、対象となった映画の各国における興行収入やストリーミング視聴数に多大な影響を与えます。受賞作品は映画史に名を刻み、長年にわたって多くの人々に鑑賞され続ける名作として語り継がれています。
アカデミー賞のノミネート作品・受賞作品は、映画界で著名なプロデューサー、監督、脚本家、俳優、技術者、批評家など、各分野の専門家で構成されるアカデミー会員(約10,000名以上)の投票によって選出されます。その厳正な選考プロセスと高い評価基準から、受賞作品は世界中の映画ファンにとって必見の作品といえるでしょう。
第61回アカデミー賞(1989年)の概要
第61回アカデミー賞授賞式は、1989年3月29日にロサンゼルスのシュライン・オーディトリアムで開催されました。この年の対象作品は1988年に公開された映画です。司会者は設けられず、アラン・カー(Allan Carr)がプロデューサーを務めたオープニングショーは、ロブ・ロウとスノーホワイトによるミュージカルナンバーで幕を開け、授賞式の歴史の中でも異例の演出として大きな話題となりました。
この年のアカデミー賞は、バリー・レヴィンソン監督の『レインマン(Rain Man)』が作品賞、監督賞、主演男優賞(ダスティン・ホフマン)、脚本賞の主要4部門を制覇し、授賞式の主役となりました。自閉症のサヴァン症候群を持つ兄レイモンドと、遺産目当てで近づいた利己的な弟チャーリーとのアメリカ横断の旅路を描いたこのヒューマンドラマは、障害への理解と兄弟愛という普遍的なテーマで世界中の観客の心を掴みました。全米興行収入は約1億7,300万ドルを記録し、1988年の年間興行収入第1位に輝いています。
主演女優賞は『告発の行方(The Accused)』のジョディ・フォスターが受賞し、集団性暴力事件の被害者が法廷で正義を求めて闘う姿を体当たりで演じた彼女の演技は高く評価されました。これがジョディ・フォスターにとって初のオスカー受賞となり、その後『羊たちの沈黙(1991年)』で2度目の受賞を果たすことになります。助演男優賞は『ワンダとダイヤと優しい奴ら(A Fish Called Wanda)』のケヴィン・クラインが受賞し、コメディ映画での助演男優賞受賞は珍しい快挙でした。助演女優賞は『偶然の旅行者(The Accidental Tourist)』のジーナ・デイヴィスがそれぞれ受賞しています。
技術部門では『ロジャー・ラビット(Who Framed Roger Rabbit)』が編集賞、視覚効果賞、音響編集賞の3部門を獲得し、ロバート・ゼメキス監督による実写俳優とアニメーションキャラクターを同一画面内でシームレスに融合させた革新的な映像技術が高く評価されました。また、ピクサーの前身であるルーカスフィルムのコンピューターグラフィックス部門が制作したジョン・ラセター監督の短編アニメーション『ティン・トイ(Tin Toy)』が短編アニメ賞を受賞し、後の長編CGアニメーション映画『トイ・ストーリー(1995年)』の原点として、CGアニメーション時代の幕開けを予感させる歴史的な受賞となりました。
外国語映画賞では、デンマーク映画『ペレ(Pelle the Conqueror)』がビレ・アウグスト監督作品として受賞しました。19世紀のスウェーデンからデンマークへ移住した父子の過酷な労働と生活を描いた同作は、カンヌ国際映画祭パルム・ドールとの二冠を達成し、北欧映画の実力を世界に知らしめました。
このほか、『危険な関係(Dangerous Liaisons)』が脚色賞、美術賞、衣裳デザイン賞の3部門を受賞し、18世紀フランス貴族社会を舞台にした豪華絢爛な映像美が評価されました。『ミシシッピー・バーニング(Mississippi Burning)』は撮影賞を受賞し、1960年代アメリカ南部の人種差別問題を鋭く描いたアラン・パーカー監督の社会派ドラマとして注目を集めました。
以下では、この歴史的にも価値のある第61回アカデミー賞(オスカー賞)の全受賞作品・ノミネート作品を部門別に詳しく紹介します。各部門の受賞作品とノミネート作品を確認し、1988年の映画界を彩った名作の数々をお楽しみください。
[1989年開催(1988年映画作品対象)]第61回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜
作品賞 / Sakuhin Shou[Best Picture]
作品賞(Best Picture)は、その年に公開された映画作品の中で最も優れた作品に贈られるアカデミー賞の最高賞です。第61回では『レインマン』が受賞し、自閉症をテーマにした感動的なロードムービーとして社会的にも大きな反響を呼びました。ノミネート作品には人種差別問題を描いた『ミシシッピー・バーニング』や、18世紀フランス貴族社会を舞台にした『危険な関係』など、多彩なジャンルの秀作が揃いました。
| 受賞 Winner |
レインマン[Rain Man] |
| ノミネート Nominees |
偶然の旅行者[The Accidental Tourist] |
監督賞 / Kantoku Shou[Best Director]
監督賞(Best Director)は、映画全体の演出・統率において最も優れた手腕を発揮した監督に贈られます。第61回ではバリー・レヴィンソンが『レインマン』で受賞しました。ノミネートには『最後の誘惑』のマーティン・スコセッシや、『ワーキング・ガール』のマイク・ニコルズといった巨匠も名を連ねました。
| 受賞 Winner |
レインマン[Rain Man] |
| ノミネート Nominees |
ワンダとダイヤと優しい奴ら[A Fish Called Wanda] |
主演男優賞 / Shuen Danyuh Shou[Best Actor]
主演男優賞(Best Actor)は、映画で主役を演じた男性俳優の中で最も優れた演技を披露した俳優に贈られます。第61回ではダスティン・ホフマンが『レインマン』で2度目のオスカーを獲得しました。サヴァン症候群の兄レイモンドを繊細かつ圧倒的なリアリティで演じた彼の演技は、映画史に残る名演として今なお語り継がれています。
| 受賞 Winner |
レインマン[Rain Man] |
| ノミネート Nominees |
ミシシッピー・バーニング[Mississippi Burning] |
主演女優賞 / Shuen Joyuh Shou[Best Actress]
主演女優賞(Best Actress)は、映画で主役を演じた女性俳優の中で最も優れた演技を見せた俳優に贈られます。第61回ではジョディ・フォスターが『告発の行方』で初のオスカーを受賞しました。集団暴行事件の被害者が法廷で正義を求めて闘う姿を体当たりで演じ、社会問題に対する強いメッセージ性も評価されました。
| 受賞 Winner |
告発の行方[The Accused as Sarah Tobias] |
| ノミネート Nominees |
危険な関係[Dangerous Liaisons] |
助演男優賞 / Joen Danyuh Shou[Best Supporting Actor]
助演男優賞(Best Supporting Actor)は、脇役として映画に出演した男性俳優の中で最も印象的な演技をした俳優に贈られます。第61回ではケヴィン・クラインが『ワンダとダイヤと優しい奴ら』で受賞しました。コメディ映画での助演男優賞受賞は珍しく、彼の型破りなコメディ演技が審査員の心を掴みました。
| 受賞 Winner |
ケヴィン・クライン[Kevin Kline] |
| ノミネート Nominees |
アレック・ギネス[Alec Guinness] |
助演女優賞 / Joen Joyuh Shou[Best Supporting Actress]
助演女優賞(Best Supporting Actress)は、脇役として出演した女性俳優の中で最も優れた演技をした俳優に贈られます。第61回ではジーナ・デイヴィスが『偶然の旅行者』で受賞し、風変わりで魅力的な犬のトレーナー役を好演しました。ノミネートにはフランシス・マクドーマンドやミシェル・ファイファーなど、後に大スターとなる女優たちが名を連ねました。
| 受賞 Winner |
偶然の旅行者[The Accidental Tourist] |
| ノミネート Nominees |
ワーキング・ガール[Working Girl] |
脚本賞 / Kyakuhon Shou[Best Screenplay Written Directly for the Screen]
脚本賞(Best Original Screenplay)は、映画のために書き下ろされたオリジナル脚本の中で最も優れた作品に贈られます。第61回ではロナルド・バスとバリー・モローが『レインマン』で受賞しました。兄弟の再会と旅を通じた心の変化を描いた脚本は、緻密なキャラクター描写と感動的な展開が高く評価されました。
| 受賞 Winner |
レインマン[Rain Man] |
| ノミネート Nominees |
ビッグ[Big] |
脚色賞 / Kyakushoku Shou[Best Screenplay Based on Material Previously Produced or Published]
脚色賞(Best Adapted Screenplay)は、小説・戯曲・実話など既存の素材を基にした脚本の中で最も優れた作品に贈られます。第61回ではクリストファー・ハンプトンが『危険な関係』で受賞しました。18世紀フランスの書簡体小説を原作とし、貴族たちの策略と情愛を巧みに映画化した脚本が評価されました。
| 受賞 Winner |
危険な関係[Dangerous Liaisons] |
| ノミネート Nominees |
偶然の旅行者[The Accidental Tourist] |
外国語映画賞 / Gaikokugo Eiga Shou[Best Foreign Language Film]
外国語映画賞(Best Foreign Language Film)は、英語以外の言語で制作された映画の中で最も優れた作品に贈られます。第61回ではデンマーク映画『ペレ』がビレ・アウグスト監督作品として受賞しました。19世紀のスウェーデンからデンマークへ移住した父子の過酷な生活を描いた同作は、同年のカンヌ国際映画祭パルム・ドールも受賞し、世界的に高い評価を得ました。
| 受賞 Winner |
ペレ[Pelle the Conqueror] |
| ノミネート Nominees |
ハヌッセン[Hanussen] |
長編ドキュメンタリー映画賞 / Chouhen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Feature]
長編ドキュメンタリー映画賞(Best Documentary Feature)は、実在の人物や出来事を題材とした長編ドキュメンタリー作品の中で最も優れた作品に贈られます。第61回ではマルセル・オフュルスの『ホテル・テルミニュス 戦犯クラウス・バルビーの生涯』が受賞しました。第二次世界大戦中にフランス・リヨンでゲシュタポの指揮官として「リヨンの屠殺人」の異名を持ったクラウス・バルビーの戦後の逃亡と裁判を追った4時間を超える大作で、戦争犯罪と正義の問題を深く掘り下げた意欲的なドキュメンタリーです。
| 受賞 Winner |
ホテル・テルミニュス 戦犯クラウス・バルビーの生涯[Hôtel Terminus: The Life and Times of Klaus Barbie] |
| ノミネート Nominees |
The Cry of Reason: Beyers Naude – An Afrikaner Speaks Out |
短編ドキュメンタリー映画賞 / Tanpen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Short Subject]
短編ドキュメンタリー映画賞(Best Documentary Short Subject)は、短編のドキュメンタリー作品の中で最も優れた作品に贈られます。第61回では『You Don't Have to Die』が受賞しました。小児がんと闘う少年ジェイソン・ガエスの実話を基にした作品で、幼い少年の視点から病気との闘いと家族の絆を描き、観る者に深い感動と希望を与えました。
| 受賞 Winner |
You Don’t Have to Die |
| ノミネート Nominees |
The Children’s Storefront |
短編映画賞 / Tanpen Eiga Shou[Best Live Action Short Film]
短編映画賞(Best Live Action Short Film)は、実写による短編映画の中で最も優れた作品に贈られます。第61回では『The Appointments of Dennis Jennings』が受賞しました。コメディアンのスティーヴン・ライトが主演し、精神科医との不条理なカウンセリングを描いたブラックコメディで、独特のユーモアと風刺が評価されました。
| 受賞 Winner |
The Appointments of Dennis Jennings |
| ノミネート Nominees |
Cadillac Dreams |
短編アニメ賞 / Tanpen Anime Shou[Best Animated Short Film]
短編アニメ賞(Best Animated Short Film)は、優れた短編アニメーション作品に贈られます。第61回ではジョン・ラセターの『ティン・トイ』が受賞しました。ピクサー(当時はルーカスフィルムのコンピューターグラフィックス部門)が制作したこの作品は、後の大ヒット映画『トイ・ストーリー』の原点となり、CGアニメーション史において極めて重要な位置を占めています。
| 受賞 Winner |
ティン・トイ[Tin Toy] |
| ノミネート Nominees |
The Cat Came Back |
作曲賞 / Sakkyoku Shou[Best Original Score]
作曲賞(Best Original Score)は、映画のために書き下ろされたオリジナル音楽の中で最も優れた作品に贈られます。第61回ではデイヴ・グルーシンが『ミラグロ/奇跡の地』で受賞しました。ニューメキシコの小さな町を舞台にしたロバート・レッドフォード監督作品に、ラテン音楽の要素を取り入れた温かみのある音楽を提供し、作品の世界観を豊かに彩りました。ノミネートにはハンス・ジマー(『レインマン』)やジョン・ウィリアムズ(『偶然の旅行者』)といった映画音楽の巨匠も名を連ねました。
| 受賞 Winner |
ミラグロ/奇跡の地[The Milagro Beanfield War] |
| ノミネート Nominees |
偶然の旅行者[The Accidental Tourist] |
歌曲賞 / Kashou Shou[Best Original Song]
歌曲賞(Best Original Song)は、映画のために書き下ろされたオリジナル楽曲の中で最も優れた作品に贈られます。第61回ではカーリー・サイモンが作詞・作曲した「Let the River Run」が『ワーキング・ガール』の主題歌として受賞しました。ニューヨークで夢を追うワーキングウーマンの姿を力強く歌い上げたこの楽曲は、映画のテーマと見事に調和し、グラミー賞やゴールデングローブ賞の歌曲賞も同時に受賞する三冠を達成しました。
| 受賞 Winner |
“Let the River Run" – ワーキング・ガール[Working Girl] |
| ノミネート Nominees |
“Calling You" – バグダッド・カフェ[Bagdad Cafe] |
音響編集賞 / Onkyou Henshuh Shou[Best Sound Effects Editing]
音響編集賞(Best Sound Effects Editing)は、映画における効果音の制作・編集において最も優れた技術を発揮した作品に贈られます。第61回では『ロジャー・ラビット』が受賞しました。実写とアニメーションが共存する世界において、カートゥーン的な効果音とリアルな環境音を巧みに融合させた音響デザインが高く評価されました。
| 受賞 Winner |
ロジャー・ラビット[Who Framed Roger Rabbit] |
| ノミネート Nominees |
ダイ・ハード[Die Hard] |
録音賞 / Rokuon Shou[Best Sound]
録音賞(Best Sound)は、映画のサウンドミキシングにおいて最も優れた技術を発揮した作品に贈られます。第61回ではクリント・イーストウッド監督の『バード』が受賞しました。伝説のジャズ・サクソフォニスト、チャーリー・パーカーの生涯を描いた本作では、1940〜50年代のジャズの生演奏を忠実に再現するサウンドミキシングが求められ、パーカーの実際の録音素材を最新技術でリマスターして映画に組み込むという画期的な手法が評価されました。
| 受賞 Winner |
バード[Bird] |
| ノミネート Nominees |
ダイ・ハード[Die Hard] |
美術賞 / Bijutsu Shou[Best Art Direction]
美術賞(Best Art Direction)は、映画のセットデザインおよび装飾において最も優れた芸術的成果を上げた作品に贈られます。第61回では『危険な関係』が受賞しました。18世紀フランスの貴族社会を舞台とした本作では、豪華な宮殿や邸宅の内装、調度品に至るまで時代考証に基づいた精緻な美術セットが構築され、退廃的でありながら優美な貴族文化の世界観が見事に再現されました。
| 受賞 Winner |
危険な関係[Dangerous Liaisons] |
| ノミネート Nominees |
フォエバー・フレンズ[Beaches] |
撮影賞 / Satsuei Shou[Best Cinematography]
撮影賞(Best Cinematography)は、映画の撮影技術において最も優れた映像表現を実現した撮影監督に贈られます。第61回ではピーター・ビジウが『ミシシッピー・バーニング』で受賞しました。1960年代アメリカ南部の緊張感あふれる人種差別の現実を、ドキュメンタリー的な手法を交えた臨場感のある映像で捉え、観客を物語の中に引き込む圧倒的な映像力が評価されました。
| 受賞 Winner |
ミシシッピー・バーニング[Mississippi Burning] |
| ノミネート Nominees |
レインマン[Rain Man] |
メイクアップ賞 / Makeup Shou[Best Makeup]
メイクアップ賞(Best Makeup)は、映画における特殊メイクアップの技術と創造性を評価する部門です。第61回ではティム・バートン監督の『ビートルジュース』が受賞しました。あの世とこの世を行き来するファンタジーコメディにおいて、マイケル・キートン演じるビートルジュースをはじめとする奇怪なキャラクターたちの独創的な特殊メイクが、作品のダークでユーモラスな世界観の構築に大きく貢献しました。
| 受賞 Winner |
ビートルジュース[Beetlejuice] |
| ノミネート Nominees |
星の王子 ニューヨークへ行く[Coming to America] |
衣裳デザイン賞 / Ishou Design Shou[Best Costume Design]
衣裳デザイン賞(Best Costume Design)は、映画の衣裳デザインにおいて最も優れた創造性と技術を発揮した作品に贈られます。第61回ではジェームズ・アシュソンが『危険な関係』で受賞しました。18世紀フランス貴族の華麗なドレス、コルセット、かつらなどを時代考証に基づいて忠実に再現しながらも、登場人物の性格や権力関係を衣裳で巧みに表現した点が高く評価されました。アシュソンは前年の『ラストエンペラー』に続く2年連続受賞となりました。
| 受賞 Winner |
危険な関係[Dangerous Liaisons] |
| ノミネート Nominees |
星の王子 ニューヨークへ行く[Coming to America] |
編集賞 / Henshuh Shou[Best Film Editing]
編集賞(Best Film Editing)は、映画の編集技術において最も優れた成果を上げた作品に贈られます。第61回では『ロジャー・ラビット』のアーサー・シュミットが受賞しました。実写パートとアニメーションパートを違和感なくつなぎ合わせるという前例のない編集作業が求められた本作において、テンポの良いアクションシーンとコメディシーンの切り替えを見事に実現し、観客を映画の世界に没入させる編集技術が高く評価されました。
| 受賞 Winner |
ロジャー・ラビット[Who Framed Roger Rabbit] |
| ノミネート Nominees |
ダイ・ハード[Die Hard] |
視覚効果賞 / Shikaku Kouka Shou[Best Visual Effects]
視覚効果賞(Best Visual Effects)は、映画における視覚的な特殊効果の技術と芸術性を評価する部門です。第61回では『ロジャー・ラビット』が受賞し、実写映像とアニメーションキャラクターを同一画面内でシームレスに融合させた革新的な技術が高く評価されました。この技術は当時としては画期的なものであり、映画の視覚効果技術の発展に大きく貢献しました。
| 受賞 Winner |
ロジャー・ラビット[Who Framed Roger Rabbit] |
| ノミネート Nominees |
ダイ・ハード[Die Hard] |
第61回アカデミー賞(1989年) まとめ
第61回アカデミー賞(1989年3月29日開催/1988年映画作品対象)は、バリー・レヴィンソン監督の『レインマン』が作品賞・監督賞・主演男優賞・脚本賞の主要4部門を制覇したことを中心に、多彩で充実した受賞結果となりました。ダスティン・ホフマンの自閉症サヴァン症候群の兄を演じた圧倒的な演技力、ジョディ・フォスターの社会派作品『告発の行方』での体当たりの熱演、そして『ロジャー・ラビット』による実写とアニメーションを融合させた革新的な視覚効果技術など、映画芸術のさまざまな側面が評価された年でした。
特筆すべきは、この年のノミネート・受賞作品が社会問題に真正面から向き合った作品を多く含んでいた点です。自閉症と家族の絆を描いた『レインマン』、1964年のアメリカ南部ミシシッピ州における公民権運動家殺害事件を基にした『ミシシッピー・バーニング』、性暴力被害者の法廷での闘いを描いた『告発の行方』、そして19世紀の移民の過酷な生活を描いたデンマーク映画『ペレ』など、エンターテインメントとしての質の高さと社会的メッセージ性を兼ね備えた作品群が揃いました。
技術・芸術面では、複数の作品が際立った功績を残しました。『危険な関係』は脚色賞・美術賞・衣裳デザイン賞の3部門を受賞し、18世紀フランス貴族社会の絢爛豪華な世界観を映像化した芸術性が高く評価されました。『ロジャー・ラビット』は編集賞・視覚効果賞・音響編集賞の3部門を獲得し、実写俳優とアニメーションキャラクターが同一画面で共演するという画期的な技術を確立しました。クリント・イーストウッド監督の『バード』は、チャーリー・パーカーの実際の録音をリマスターして映画に組み込むという革新的な手法で録音賞を受賞しています。
また、ジョン・ラセター監督の短編CGアニメーション『ティン・トイ』の短編アニメ賞受賞は、後のピクサー・アニメーション・スタジオによる長編CGアニメーション映画『トイ・ストーリー(1995年)』の誕生につながる歴史的な出来事でした。この受賞は、手描きアニメーションからコンピューターアニメーションへの転換期を象徴するものとして、映画史において極めて重要な意味を持っています。
第61回アカデミー賞のノミネート・受賞作品は、社会派ドラマ、ヒューマンドラマ、コメディ、ドキュメンタリー、アニメーションと多彩なジャンルにわたり、1988年の映画界がいかに豊かな創造性に満ちていたかを物語っています。これらの名作は、いずれも映画史に残る傑作として今なお世界中の映画ファンに愛され続けています。ぜひこれらの作品を鑑賞し、1988年の映画芸術の最高峰をお楽しみください。

