[1990年開催(1989年映画作品対象)]第62回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜

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アカデミー賞(Academy Awards)とは、映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences、略称AMPAS)が主催する、世界で最も権威ある映画賞の一つです。アメリカ合衆国における映画の健全な発展と芸術・科学の品質向上を目的に、キャストやスタッフなどの映画関係者を毎年部門別に表彰し、その卓越した功績を讃えています。

受賞作品・受賞者には賞金は出ませんが、金色のオスカー像(Oscar statuette)が授与されるため、一般的に「オスカー賞(The Oscars)」とも呼ばれます。このオスカー像は高さ約34cm、重さ約3.9kgの24金メッキが施されたブリタニア合金製で、映画業界における最高の栄誉の象徴とされています。

アカデミー賞の歴史は世界三大映画祭(カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭)よりも古く、第1回のアカデミー賞授賞式は1929年5月16日にハリウッドのルーズベルト・ホテルで開催されました。以来、毎年開催され続け、今では世界中が注目する映画界最大のイベントとなっています。

特にアカデミー賞へのノミネート及び受賞結果は世界中のメディアで大きく報道されるため、各国における対象映画の興行成績やDVD・配信売上に対する極めて大きな影響力を持っています。受賞作品は映画史に名を残す名作として長く語り継がれ、映画ファンにとっての必見リストともなっています。

アカデミー賞ノミネート作品・受賞作品は、映画界で著名なプロデューサー、監督、脚本家、俳優、批評家などにより構成される約1万人以上のアカデミー会員による投票で選ばれます。その厳正な選考プロセスと高い評価基準から、受賞作品は世間でも大きな話題となるため、映画愛好家なら一度は鑑賞しておくべき作品ばかりです。

第62回アカデミー賞(1990年開催)の概要

第62回アカデミー賞授賞式は、1990年3月26日にアメリカ・ロサンゼルスのドロシー・チャンドラー・パビリオン(Dorothy Chandler Pavilion)で開催されました。対象となったのは1989年に公開された映画作品です。司会はコメディアンのビリー・クリスタル(Billy Crystal)が2年連続で務め、軽妙なユーモアと映画への愛に満ちた進行でテレビ中継を通じて世界中の視聴者を楽しませました。なお、ビリー・クリスタルの司会はその後も通算9回に及び、アカデミー賞授賞式の歴史において最も象徴的な司会者の一人として記憶されています。

1989年の映画界の潮流と第62回アカデミー賞の注目ポイント

1989年は映画界にとって多くの転換点が訪れた年でした。社会派ドラマからファンタジー、アニメーション、インディペンデント映画まで多彩なジャンルの傑作が揃い、映画表現の可能性が大きく広がったことが特徴です。

作品賞には、1950年代から1970年代にかけてのアメリカ南部を舞台に、人種問題と友情を温かくも力強く描いた「ドライビング Miss デイジー」が輝きました。本作はアルフレッド・ウーリーのピューリッツァー賞受賞舞台劇を原作とし、ジェシカ・タンディとモーガン・フリーマンの見事な共演が高く評価されました。監督賞ではベトナム戦争の傷跡とアメリカ社会の矛盾を実話に基づいて力強く描いた「7月4日に生まれて」のオリバー・ストーンが受賞。自身もベトナム戦争従軍経験を持つストーン監督は、「プラトーン」(1986年)に続く2度目の監督賞受賞を果たしました。

主演男優賞では、「マイ・レフトフット」のダニエル・デイ=ルイスが脳性麻痺の画家・作家クリスティ・ブラウンを圧倒的な演技力で体現し、撮影期間中も車椅子から離れなかったと伝えられるほどの徹底したメソッド演技で世界を驚嘆させました。この受賞はデイ=ルイスにとって初のオスカーであり、その後「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(2007年)、「リンカーン」(2012年)と通算3度の主演男優賞受賞を達成する伝説的キャリアの出発点となりました。

また、外国語映画賞ではイタリア映画の不朽の名作「ニュー・シネマ・パラダイス」が受賞しました。ジュゼッペ・トルナトーレ監督による本作は、シチリアの小さな町で映画に魅せられた少年トトと映写技師アルフレードの心温まる交流を描き、エンニオ・モリコーネの美しい音楽とともに世界中の映画ファンの心を捉えました。映画への愛そのものを映画にした本作は、公開から30年以上を経た現在もなお映画史上最高の名作の一つとして語り継がれています。

さらに、ディズニー・ルネサンスの幕開けを告げた「リトル・マーメイド」が作曲賞と歌曲賞をダブル受賞しました。アラン・メンケンとハワード・アッシュマンによる「Under the Sea」をはじめとする楽曲群は、ディズニー・アニメーション音楽の新たな黄金時代を切り開き、その後の「美女と野獣」「アラジン」「ライオン・キング」へと続くミュージカル・アニメーションの流れを決定づけました。

この記事では、第62回アカデミー賞(オスカー賞)の全受賞作品・ノミネート作品を部門別に網羅的にまとめています。各作品の視聴リンクも掲載していますので、映画選びの参考にぜひご活用ください。

[1990年開催(1989年映画作品対象)]第62回アカデミー賞(オスカー賞)受賞映画作品(ノミネート含む) まとめ・一覧 / List of Academy Awards(The Oscars) Nominees 〜アメリカ合衆国の優れた映画と関係者が毎年部門別に表彰されるAMPAS主催の映画賞〜

作品賞 / Sakuhin Shou[Best Picture]

アカデミー作品賞(Best Picture)は、アカデミー賞の全部門の中で最も権威ある最高賞です。その年に公開された映画作品の中から、ストーリーテリング、演技、演出、撮影、音楽、編集など映画制作のあらゆる要素を総合的に評価し、最も優れた作品に贈られます。受賞作品のプロデューサーにオスカー像が授与されます。第62回では、人種差別という重いテーマを温かな人間ドラマとして描いた「ドライビング Miss デイジー」が受賞し、社会派作品がエンターテインメントとして広く受け入れられることを証明しました。

受賞
Winner
ドライビング Miss デイジー[Driving Miss Daisy] ⇒ リチャード・D・ザナック[Richard D. Zanuck]、リリ・フィニー・ザナック[Lili Fini Zanuck]

ノミネート
Nominees

7月4日に生まれて[Born on the Fourth of July] ⇒ A・キットマン・ホー[A. Kitman Ho]、オリバー・ストーン[Oliver Stone]
いまを生きる[Dead Poets Society] ⇒ スティーヴン・ハーフ[Steven Haft], ポール・ユンガー・ウィット[Paul Junger Witt], トニー・トーマス[Tony Thomas]
フィールド・オブ・ドリームス[Field of Dreams] ⇒ ローレンス・ゴードン[Lawrence Gordon]、チャールズ・ゴードン[Charles Gordon]
マイ・レフトフット[My Left Foot] ⇒ ノエル・ピアソン[Noel Pearson]

監督賞 / Kantoku Shou[Best Director]

アカデミー監督賞(Best Director)は、映画の全体的なビジョンと演出において最も卓越した業績を示した監督に贈られます。脚本の解釈、俳優の演技指導、映像的な語り口、作品全体のトーンと統一性など、監督としての総合的な手腕が評価されます。第62回では、自身もベトナム戦争従軍経験を持つオリバー・ストーン監督が「7月4日に生まれて」で受賞し、「プラトーン」(1986年)に続く2度目の監督賞獲得という偉業を達成しました。

受賞
Winner
7月4日に生まれて[Born on the Fourth of July] ⇒ オリバー・ストーン[Oliver Stone]

ノミネート
Nominees

ウディ・アレンの重罪と軽罪[Crimes and Misdemeanors] ⇒ ウディ・アレン[Woody Allen]
いまを生きる[Dead Poets Society] ⇒ ピーター・ウィアー[Peter Weir]
ヘンリー5世[Henry V] ⇒ ケネス・ブラナー[Kenneth Branagh]
マイ・レフトフット[My Left Foot] ⇒ ジム・シェリダン[Jim Sheridan]

主演男優賞 / Shuen Danyuh Shou[Best Actor]

アカデミー主演男優賞(Best Actor)は、映画作品において主演として最も優れた演技を披露した男優に贈られます。役柄への深い理解と没入、感情表現の豊かさ、観客への説得力など、俳優としての演技力が総合的に評価されます。第62回では、「マイ・レフトフット」のダニエル・デイ=ルイスが脳性麻痺の画家クリスティ・ブラウンを驚異的なメソッド演技で体現し、初のオスカーを獲得。その後、史上唯一となる主演男優賞3度受賞という伝説的キャリアの出発点となりました。

受賞
Winner
マイ・レフトフット[My Left Foot]ダニエル・デイ=ルイス[Daniel Day-Lewis]

ノミネート
Nominees

ヘンリー5世[Henry V]ケネス・ブラナー[Kenneth Branagh]
7月4日に生まれて[Born on the Fourth of July]トム・クルーズ[Tom Cruise]
ドライビング Miss デイジー[Driving Miss Daisy]モーガン・フリーマン[Morgan Freeman]
いまを生きる[Dead Poets Society]ロビン・ウィリアムズ[Robin Williams]

主演女優賞 / Shuen Danyuh Shou[Best Actress]

アカデミー主演女優賞(Best Actress)は、映画作品において主演として最も優れた演技を披露した女優に贈られます。キャラクターの内面的な深みの表現、感情の機微、作品全体への貢献度など、演技の質が総合的に評価されます。第62回では、「ドライビング Miss デイジー」のジェシカ・タンディが80歳で受賞し、アカデミー賞演技部門における当時の最年長受賞記録を樹立しました。50年以上のキャリアの集大成ともいえる圧巻の名演でした。

受賞
Winner
ドライビング Miss デイジー[Driving Miss Daisy] ⇒ ジェシカ・タンディ[Jessica Tandy]

ノミネート
Nominees

カミーユ・クローデル[Camille Claudel] ⇒ イザベル・アジャーニ[Isabelle Adjani]
旅する女/シャーリー・バレンタイン[Shirley Valentine] ⇒ ポーリーン・コリンズ[Pauline Collins]
ミュージックボックス[Music Box] ⇒ ジェシカ・タンディ[Jessica Lange]
恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ[The Fabulous Baker Boys] ⇒ ミシェル・ファイファー[Michelle Pfeiffer]

助演男優賞 / Joen Danyuh Shou[Best Supporting Actor]

アカデミー助演男優賞(Best Supporting Actor)は、脇役として映画に出演し、作品に多大な貢献をした男優に贈られます。主演を支えつつも強烈な存在感を発揮し、限られた出演時間の中で印象深い演技を見せた俳優が評価されます。第62回では、「グローリー」のデンゼル・ワシントンが南北戦争における黒人兵士トリップ役で受賞。怒りと誇りを全身で表現した鞭打ちのシーンは映画史に残る名場面であり、後に「トレーニング デイ」で主演男優賞も獲得するワシントンの出世作となりました。

受賞
Winner
グローリー[Glory] ⇒ デンゼル・ワシントン[Denzel Washington]

ノミネート
Nominees

ドゥ・ザ・ライト・シング[Do the Right Thing] ⇒ ダニー・アイエロ[Danny Aiello]
ドライビング Miss デイジー[Driving Miss Daisy] ⇒ ダン・エイクロイド[Dan Aykroyd]
白く渇いた季節[A Dry White Season as Ian Mackenzie] ⇒ マーロン・ブランド[Marlon Brando]
ウディ・アレンの重罪と軽罪[Crimes and Misdemeanors] ⇒ マーティン・ランドー[Martin Landau]

助演女優賞 / Joen Joyuh Shou[Best Supporting Actress]

アカデミー助演女優賞(Best Supporting Actress)は、脇役として映画に出演し、作品の質を高めた女優に贈られます。主演俳優との化学反応や、物語の深みを増す演技、限られた場面での存在感が評価の対象です。第62回では、「マイ・レフトフット」のブレンダ・フリッカーが障害を持つ息子を献身的に支え続ける母親役で受賞。アイルランド出身の女優として初のオスカー獲得という快挙を成し遂げ、ダニエル・デイ=ルイスとのダブル受賞は同作の演技面での卓越性を証明しました。

受賞
Winner
マイ・レフトフット[My Left Foot] ⇒ ブレンダ・フリッカー[Brenda Fricker]

ノミネート
Nominees

敵、ある愛の物語[Enemies, A Love Story] ⇒ アンジェリカ・ヒューストン[Anjelica Huston]
敵、ある愛の物語[Enemies, A Love Story] ⇒ レナ・オリン[Lena Olin]
マグノリアの花たち[Steel Magnolias] ⇒ ジュリア・ロバーツ[Julia Roberts]
バックマン家の人々[Parenthood] ⇒ ダイアン・ウィースト[Dianne Wiest]

脚本賞 / Kyakuhon Shou[Best Screenplay Written Directly for the Screen]

アカデミー脚本賞(Best Original Screenplay)は、映画のために書き下ろされたオリジナルの脚本に贈られます。独創的なストーリー構成、魅力的なキャラクター造形、印象的な台詞、テーマの深さなど、脚本としての創造性と完成度が評価されます。第62回では、「いまを生きる」のトム・シュルマンが受賞。全寮制の名門校を舞台に型破りな教師と生徒たちの精神的覚醒を描いた本作は、「Carpe Diem(今を生きろ)」という名台詞が世代を超えて語り継がれる名脚本として高く評価されました。

受賞
Winner
いまを生きる[Dead Poets Society] ⇒ トム・シュルマン[Tom Schulman]

ノミネート
Nominees

ウディ・アレンの重罪と軽罪[Crimes and Misdemeanors] ⇒ ウディ・アレン[Woody Allen]
ドゥ・ザ・ライト・シング[Do the Right Thing] ⇒ スパイク・リー[Spike Lee]
セックスと嘘とビデオテープ[Sex, Lies, and Videotape] ⇒ スティーヴン・ソダーバーグ[Steven Soderbergh]
恋人たちの予感[When Harry Met Sally…] ⇒ ノーラ・エフロン[Nora Ephron]

脚色賞 / Kyakushoku Shou[Best Screenplay Based on Material Previously Produced or Published]

アカデミー脚色賞(Best Adapted Screenplay)は、小説、戯曲、ノンフィクションなど既存の原作を基に映画用に翻案された脚本に贈られます。原作の本質を保ちながら映画という異なるメディアへと効果的に翻案する技術と創造性が評価されます。第62回では、「ドライビング Miss デイジー」のアルフレッド・ウーリーが受賞。自身のピューリッツァー賞受賞戯曲を映画化するにあたり、舞台劇の親密さを保ちつつも映画ならではの視覚的な広がりを巧みに取り入れた脚色が高く評価されました。

受賞
Winner
ドライビング Miss デイジー[Driving Miss Daisy] ⇒ アルフレッド・ウーリー[Alfred Uhry]

ノミネート
Nominees

7月4日に生まれて[Born on the Fourth of July] ⇒ オリバー・ストーン[Oliver Stone]、ロン・コーヴィック[Ron Kovic]
敵、ある愛の物語[Enemies, A Love Story] ⇒ ロジャー・L・サイモン[Roger L. Simon]、ポール・マザースキー[Paul Mazursky]
フィールド・オブ・ドリームス[Field of Dreams] ⇒ フィル・アルデン・ロビンソン[Phil Alden Robinson]
マイ・レフトフット[My Left Foot] ⇒ ジム・シェリダン[Jim Sheridan]、シェーン・コノートン[Shane Connaughton]

外国語映画賞 / Gaikokugo Eiga Shou[Best Foreign Language Film]

アカデミー外国語映画賞(Best Foreign Language Film、現・国際長編映画賞)は、アメリカ合衆国以外の国が出品した、主に英語以外の言語で制作された長編映画に贈られます。各国が1本ずつ出品する仕組みで、世界の多様な映画文化を讃える賞として重要な位置を占めています。第62回では、イタリア映画「ニュー・シネマ・パラダイス」が受賞。ジュゼッペ・トルナトーレ監督によるこの映画への愛を描いた不朽の名作は、エンニオ・モリコーネの美しい音楽とともに世界中の映画ファンの心を捉え、今なお映画史上最高傑作の一つに数えられています。

受賞
Winner
ニュー・シネマ・パラダイス[Cinema Paradiso] (イタリア[Italy]) ⇒ ジュゼッペ・トルナトーレ[Giuseppe Tornatore]

ノミネート
Nominees

カミーユ・クローデル[Camille Claudel] (フランス[France]) ⇒ ブルーノ・ニュイッテン[Bruno Nuytten]
モントリオールのジーザス[Jesus of Montreal] (カナダ[Canada]) ⇒ ドゥニ・アルカン[Denys Arcand]
追想のワルツ[Memories of a Marriage] (デンマーク[Denmark]) ⇒ カスパル・ロストルップ[Kaspar Rostrup]
いつでも夢を[What Happened to Santiago] (プエルトリコ[Puerto Rico]) ⇒ ハコボ・モラレス[Jacobo Morales]

長編ドキュメンタリー映画賞 / Chouhen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Feature]

アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞(Best Documentary Feature)は、実在の事件、人物、社会問題をテーマにした長編ドキュメンタリー作品の中から最も優れた作品に贈られます。取材の深さ、映像表現の力、社会的意義などが評価の基準となります。第62回では、「Common Threads: Stories from the Quilt」が受賞。エイズ危機の犠牲者たちの実話をメモリアル・キルトを通じて描いた本作は、社会問題に対する深い洞察と人間への共感を示し、ドキュメンタリー映画の社会的影響力を改めて証明しました。

受賞
Winner
Common Threads: Stories from the Quilt ⇒ ロバート・エプスタイン[Robert Epstein]、ビル・コーチュリー[Bill Couturié]

ノミネート
Nominees

Adam Clayton Powell ⇒ リチャード・キルバーグ[Richard Killberg]、イヴォンヌ・スミス[Yvonne Smith]
Crack USA: County Under Siege ⇒ Vince DiPersio、ビル・グッテンタグ[Bill Guttentag]
宇宙へのフロンティア[For All Mankind] ⇒ アル・ライナート[Al Reinert]、ベッツィ・ブロイルス・フレイアー[Betsy Broyles Breier]
Super Chief: The Life and Legacy of Earl Warren ⇒ ジュディス・レオナルド[Judith Leonard]、ビル・ジャージー[Bill Jersey]

短編ドキュメンタリー映画賞 / Tanpen Documentary Eiga Shou[Best Documentary Short Subject]

アカデミー短編ドキュメンタリー映画賞(Best Documentary Short Subject)は、上映時間が短い(通常40分以下の)ドキュメンタリー作品を対象としています。限られた時間の中で現実の物語を効果的に伝える構成力と映像表現が評価されます。第62回では、1889年に発生したアメリカ史上最悪の洪水災害の一つであるジョンズタウン洪水を題材にした「The Johnstown Flood」がチャールズ・グッケンハイムの制作で受賞しました。

受賞
Winner
The Johnstown Flood ⇒ チャールズ・グッケンハイム[Charles Guggenheim]

ノミネート
Nominees

Fine Food, Fine Pastries, Open 6 to 9 ⇒ デヴィッド・ピーターソン[David Petersen]
Yad Vashem: Preserving the Past to Ensure the Future ⇒ レイ・エロール・フォックス[Ray Errol Fox]

短編映画賞 / Tanpen Eiga Shou[Best Live Action Short Film]

アカデミー短編映画賞(Best Live Action Short Film)は、上映時間が40分以下の実写短編映画に贈られます。限られた時間の中で完結したストーリーテリングを実現する演出の技量と、映像的な創意工夫が評価されます。第62回では、イギリスの就労体験をテーマにした「Work Experience」がジェームズ・ヘンドリーの制作で受賞しました。

受賞
Winner
Work Experience ⇒ ジェームズ・ヘンドリー[James Hendrie]

ノミネート
Nominees

Amazon Diary ⇒ ロバート・ニクソン[Robert Nixon]
The Childeater ⇒ Jonathan Tammuz

短編アニメ賞 / Tanpen Anime Shou[Best Animated Short Film]

アカデミー短編アニメ賞(Best Animated Short Film)は、上映時間が40分以下のアニメーション短編作品に贈られます。アニメーション技術の革新性、芸術的表現力、ストーリーテリングの巧みさが評価の対象です。第62回では、ドイツのラウエンシュタイン兄弟による「Balance」が受賞。5人の人物がプラットフォーム上でバランスを保ちながら一つの箱を奪い合うという寓意的な作品で、人間の欲望と協調のジレンマを独創的なアニメーション表現で描き出しました。

受賞
Winner
Balance ⇒ クリストフ・ラウエンシュタイン[Christoph Lauenstein]、ウォルフガング・ラウエンシュタイン[Wolfgang Lauenstein]

ノミネート
Nominees

The Cow ⇒ アレクサンドル・ペトロフ[Aleksandr Petrov]
The Hill Farm ⇒ マーク・ベイカー[Mark Baker]

作曲賞 / Sakkyoku Shou[Best Original Score]

アカデミー作曲賞(Best Original Score)は、映画のために作曲されたオリジナルの音楽(スコア)に贈られます。映画の感情的な深みを増し、物語の展開を効果的に支える楽曲の質と、映像との一体感が評価されます。第62回では、ディズニー・アニメーション「リトル・マーメイド」のアラン・メンケンが受賞。カリブ海をイメージしたカリプソやレゲエの要素を取り入れた色彩豊かなスコアは、ディズニー・ルネサンスと呼ばれるアニメーション黄金時代の音楽的基盤を築きました。

受賞
Winner
リトル・マーメイド[The Little Mermaid] ⇒ アラン・メンケン[Alan Menken]

ノミネート
Nominees

7月4日に生まれて[Born on the Fourth of July] ⇒ ジョン・ウィリアムズ[John Williams]
恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ[The Fabulous Baker Boys] ⇒ デイヴ・グルーシン[Dave Grusin]
フィールド・オブ・ドリームス[Field of Dreams] ⇒ ジェームズ・ホーナー[James Horner]
インディ・ジョーンズ/最後の聖戦[Indiana Jones and the Last Crusade] ⇒ ジョン・ウィリアムズ[John Williams]

歌曲賞 / Kashou Shou[Best Original Song]

アカデミー歌曲賞(Best Original Song)は、映画のために書き下ろされたオリジナルの楽曲(歌)に贈られます。映画のテーマとの関連性、楽曲としての完成度、観客の心に残る印象深さなどが評価の対象です。第62回では、「リトル・マーメイド」から「Under the Sea」が受賞。アラン・メンケン作曲、ハワード・アッシュマン作詞によるこのカリプソ調のナンバーは、海の底の世界の楽しさを生き生きと表現し、ディズニーを代表する名曲として世界中で今なお愛され続けています。

受賞
Winner
“Under the Sea" – リトル・マーメイド[The Little Mermaid] ⇒ 作曲:アラン・メンケン[Alan Menken]、作詞:ハワード・アッシュマン[Howard Ashman]

ノミネート
Nominees

“After All" – ワン・モア・タイム[Chances Are] ⇒ 作曲:トム・スノウ[Tom Snow]、作詞:ディーン・ピッチフォード[Dean Pitchford]
“The Girl Who Used to Be Me" – 旅する女/シャーリー・バレンタイン[Shirley Valentine] ⇒ 作曲:マーヴィン・ハムリッシュ[Marvin Hamlisch]、作詞:アラン・バーグマン[Alan Bergman]、マリリン・バーグマン[Marilyn Bergman]
“I Love To See You Smile" – バックマン家の人々[Parenthood] ⇒ 作詞・作曲:ランディ・ニューマン[Randy Newman]
“Kiss the Girl" – リトル・マーメイド[The Little Mermaid] ⇒ 作曲:アラン・メンケン[Alan Menken]、作詞:ハワード・アッシュマン[Howard Ashman]

音響編集賞 / Onkyou Henshuh Shou[Best Sound Effects Editing]

アカデミー音響編集賞(Best Sound Effects Editing)は、映画における効果音の創造と編集に対して贈られます。銃声、爆発音、自然環境音など、映画のリアリティと臨場感を高める音響効果の質と創造性が評価されます。第62回では、「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」のリチャード・ヒンスとベン・バートが受賞。冒険アクション映画にふさわしいダイナミックな効果音は、シリーズを通じて映画音響のベンチマークとなっています。

受賞
Winner
インディ・ジョーンズ/最後の聖戦[Indiana Jones and the Last Crusade] ⇒ リチャード・ヒンス[Richard Hymns]、ベン・バート[Ben Burtt]

ノミネート
Nominees

ブラック・レイン[Black Rain] ⇒ ミルトン・C・ブロウ[Milton Burrow]、ウィリアム・L・マンガー[William Manger]
リーサル・ウェポン2/炎の約束[Lethal Weapon 2] ⇒ ロバート・ヘンダーソン[Robert G. Henderson]、アラン・ロバート・マーレイ[Alan Robert Murray]

録音賞 / Rokuon Shou[Best Sound]

アカデミー録音賞(Best Sound Mixing)は、映画における全体的な音響デザインとミキシングに贈られます。台詞、音楽、効果音のバランス、音響空間の構築、劇場での再生品質など、音響技術の総合的な卓越性が評価されます。第62回では、「グローリー」が受賞。南北戦争の戦場の臨場感あふれる音響設計と、兵士たちの台詞や感情を際立たせる繊細なミキシングが高く評価されました。

受賞
Winner
グローリー[Glory] ⇒ ドナルド・O・ミッチェル[Donald O. Mitchell]、グレッグ・ルドロフ[Gregg Rudloff]、エリオット・タイスン[Elliot Tyson]、ラッセル・ウィリアムズ[Russell Williams II]

ノミネート
Nominees

アビス[The Abyss] ⇒ ドン・バスマン[Don J. Bassman]、ケヴィン・F・クレアリー[Kevin F. Cleary]、リチャード・オーヴァートーン[Richard Overton]、リー・オルロフ[Lee Orloff]
ブラック・レイン[Black Rain] ⇒ ドナルド・O・ミッチェル[Donald O. Mitchell]、ケヴィン・オコネル[Kevin O’Connell]、グレッグ・P・ラッセル[Greg P. Russell]、キース・A・ウェスター[Keith A. Wester]
7月4日に生まれて[Born on the Fourth of July] ⇒ マイケル・ミンクラー[Michael Minkler]、グレゴリー・H・ウィトキンス[Gregory H. Watkins]、ワイリー・ステートマン[Wylie Stateman]、トッド・A・メートランド[Tod A. Maitland]
インディ・ジョーンズ/最後の聖戦[Indiana Jones and the Last Crusade] ⇒ ベン・バート[Ben Burtt]、ゲイリー・サマーズ[Gary Summers]、ショーン・マーフィー[Shawn Murphy]、トニー・ドー[Tony Dawe]

美術賞 / Bijutsu Shou[Best Art Direction]

アカデミー美術賞(Best Art Direction / Production Design)は、映画のプロダクションデザインとセットデコレーションに贈られます。物語の世界観を視覚的に構築するセットデザイン、装飾の細部へのこだわり、映像全体の美的統一性が評価の基準です。第62回では、ティム・バートン監督の「バットマン」が受賞。アントン・ファーストが手がけたゴッサム・シティのダークで退廃的なビジュアルデザインは、その後のスーパーヒーロー映画の美術に多大な影響を与え、映画史に残るプロダクションデザインとなりました。

受賞
Winner
バットマン[Batman] ⇒ アントン・ファースト[Anton Furst]、ピーター・ヤング[Peter Young]

ノミネート
Nominees

アビス[The Abyss] ⇒ レスリー・ディリー[Leslie Dilley]、アン・カルジャン[Anne Kuljian]
バロン[The Adventures of Baron Munchausen] ⇒ ダンテ・フェレッティ[Dante Ferretti]、フランチェスカ・ロー・シャイボ[Francesca Lo Schiavo]
ドライビング Miss デイジー[Driving Miss Daisy] ⇒ ブルーノ・ルベオ[Bruno Rubeo]、クリスピアン・サリス[Crispian Sallis]
グローリー[Glory] ⇒ ノーマン・ガーウッド[Norman Garwood]、Garrett Lewis

撮影賞 / Satsuei Shou[Best Cinematography]

アカデミー撮影賞(Best Cinematography)は、映画の映像美と撮影技術に対して贈られます。光と影の使い方、カメラワーク、構図、色彩設計など、映画の視覚的な語りを形作る撮影監督(シネマトグラファー)の技術と芸術性が評価されます。第62回では、「グローリー」のフレディ・フランシスが受賞。南北戦争の壮大な戦場シーンと兵士たちの表情を、力強くも詩的な映像で捉えた撮影が称賛されました。フランシスはホラー映画の監督としても知られ、撮影監督としては2度目のオスカー受賞となりました。

受賞
Winner
グローリー[Glory] ⇒ フレディ・フランシス[Freddie Francis]

ノミネート
Nominees

アビス[The Abyss] ⇒ ミカエル・サロモン[Mikael Salomon]
ブレイズ[Blaze] ⇒ ハスケル・ウェクスラー[Haskell Wexler]
7月4日に生まれて[Born on the Fourth of July] ⇒ ロバート・リチャードソン[Robert Richardson]
恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ[The Fabulous Baker Boys] ⇒ ミヒャエル・バルハウス[Michael Ballhaus]

メイクアップ賞 / Makeup Shou[Best Makeup]

アカデミーメイクアップ賞(Best Makeup)は、映画におけるメイクアップ(特殊化粧)とヘアスタイリングの技術に贈られます。キャラクターの外見的な変身、特殊メイクによるリアリティの追求、時代考証に基づいた再現性などが評価されます。第62回では、「ドライビング Miss デイジー」が受賞。主演のジェシカ・タンディとモーガン・フリーマンが演じるキャラクターは25年以上の歳月を経る設定であり、その自然な老けメイクの技術は観客に時間の経過を違和感なく感じさせる卓越した仕事として評価されました。

受賞
Winner
ドライビング Miss デイジー[Driving Miss Daisy] ⇒ Manlio Rocchetti, リン・バーバー[Lynn Barber]、ケヴィン・ヘイニー[Kevin Haney]

ノミネート
Nominees

バロン[The Adventures of Baron Munchausen] ⇒ マギー・ウェストン[Maggie Weston]、ァブリツィオ・スフォルッア[Fabrizio Sforza]
晩秋[Dad] ⇒ ディック・スミス[Dick Smith]、ケン・ディアス[Ken Diaz]、グレッグ・ネイソン[Greg Nelson]

衣裳デザイン賞 / Ishou Design Shou[Best Costume Design]

アカデミー衣裳デザイン賞(Best Costume Design)は、映画における衣裳デザインの卓越性に贈られます。時代背景の正確な再現、キャラクターの性格や社会的地位の視覚的表現、全体的な美的統一性が評価の基準です。第62回では、シェイクスピア劇の映画化「ヘンリー5世」のフィリス・ダルトンが受賞。中世イングランドの甲冑や宮廷衣装を歴史的考証に基づいて忠実に再現しつつ、映画としての視覚的魅力を兼ね備えた衣裳デザインが高く評価されました。

受賞
Winner
ヘンリー5世[Henry V] ⇒ フィリス・ダルトン[Phyllis Dalton]

ノミネート
Nominees

バロン[The Adventures of Baron Munchausen] ⇒ ガブリエラ・ペスクッチ[Gabriella Pescucci]
ドライビング Miss デイジー[Driving Miss Daisy] ⇒ ジョー・トンプキンス[Elizabeth McBride]
ハーレム・ナイト[Harlem Nights] ⇒ ジョー・トンプキンス[Joe Tompkins]
恋の掟[Valmont] ⇒ テオドール・ピステック[Theodor Pištěk]

編集賞 / Henshuh Shou[Best Film Editing]

アカデミー編集賞(Best Film Editing)は、映画のフィルム編集に対して贈られます。物語のテンポとリズム、シーン間のつながり、感情的な盛り上がりの構築など、映画の最終的な形を決定づける編集技術が評価されます。第62回では、「7月4日に生まれて」のデヴィッド・ブレナーとジョー・ハッシングが受賞。主人公ロン・コーヴィックの青春時代、ベトナム戦争の凄惨な戦場、帰国後の苦悩、そして反戦運動への目覚めという複雑な時間軸を、感情の流れを途切れさせることなく力強くまとめ上げた編集が称賛されました。

受賞
Winner
7月4日に生まれて[Born on the Fourth of July] ⇒ デヴィッド・ブレナー[David Brenner]、ジョー・ハッシング[Joe Hutshing]

ノミネート
Nominees

子熊物語[The Bear] ⇒ ノエル・ボワソン[Noelle Boisson]
ドライビング Miss デイジー[Driving Miss Daisy] ⇒ マーク・ワーナー[Mark Warner]
恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ[The Fabulous Baker Boys] ⇒ ウィリアム・スタインカンプ[William Steinkamp]
グローリー[Glory] ⇒ スティーヴン・ローゼンブラム[Steven Rosenblum]

視覚効果賞 / Shikaku Kouka Shou[Best Visual Effects]

アカデミー視覚効果賞(Best Visual Effects)は、映画における視覚的な特殊効果の技術と創造性に贈られます。実写では不可能な映像の実現、ミニチュア撮影、光学合成、CGI(コンピュータ生成画像)などの技術的な革新性と、映像としての説得力が評価されます。第62回では、ジェームズ・キャメロン監督の「アビス」が受賞。深海で水が生物のように動く「ウォーター・テンタクル」のCGI表現は映画史における重要な技術的マイルストーンであり、後の「ターミネーター2」や「ジュラシック・パーク」へとつながるデジタル映像革命の先駆けとなりました。

受賞
Winner
アビス[The Abyss] ⇒ デニス・ミューレン[Dennis Muren]、ホイト・イエトマン[Hoyt Yeatman]、ジョン・ブルーノ[John Bruno]、デニス・スコタック[Dennis Skotak]

ノミネート
Nominees

バロン[The Adventures of Baron Munchausen] ⇒ リチャード・コンウェイ[Richard Conway]、ケント・ヒューストン[Kent Houston]
バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2[Back to the Future Part II] ⇒ ケン・ローストン[Ken Ralston]、マイケル・ランティエリ[Michael Lantieri]、ジョン・ベル[John Bell]、スティーヴ・ゴーリー[Steve Gawley]

第62回アカデミー賞(1990年)主要受賞作品まとめ

第62回アカデミー賞では、人種差別や戦争といった社会問題に真摯に向き合った作品が数多く評価された一方で、エンターテインメント作品の技術革新も高く評価されました。以下に主要部門の受賞結果と各作品の見どころをまとめます。

  • 作品賞:ドライビング Miss デイジー[Driving Miss Daisy] - 1950年代から1970年代のアメリカ南部ジョージア州アトランタを舞台に、ユダヤ系アメリカ人の老婦人デイジー・ワーサン(ジェシカ・タンディ)と黒人運転手ホーク・コルバーン(モーガン・フリーマン)の25年にわたる友情を描いた感動作です。公民権運動の時代背景の中で、人種や宗教の壁を超えて築かれる人間同士の絆を丁寧かつ温かく描写し、作品賞を含む4部門を受賞しました。アルフレッド・ウーリーのピューリッツァー賞受賞戯曲を原作とし、舞台版から引き続き出演したジェシカ・タンディの名演が光ります。
  • 監督賞:オリバー・ストーン[Oliver Stone](7月4日に生まれて[Born on the Fourth of July]) - ベトナム戦争で負傷し下半身不随となった実在の帰還兵ロン・コーヴィックの自伝的小説を映画化。愛国的な青年が戦場の現実に直面し、帰国後の社会からの疎外を経て反戦活動家へと変貌する姿を力強く描きました。ストーン監督自身もベトナム戦争に従軍した経験を持ち、「プラトーン」に続く2度目の監督賞受賞で反戦映画の巨匠としての地位を確立しました。
  • 主演男優賞:ダニエル・デイ=ルイス[Daniel Day-Lewis](マイ・レフトフット[My Left Foot]) - 脳性麻痺により左足しか自由に動かせないアイルランドの画家・作家クリスティ・ブラウンの実話を、驚異的な役作りで体現しました。撮影中は常に車椅子に座り続け、スタッフに食事を食べさせてもらうほどの徹底したメソッド演技は映画史に残る伝説となっています。この初のオスカー受賞を皮切りに、史上唯一となる主演男優賞3度受賞という偉業を後に達成しています。
  • 主演女優賞:ジェシカ・タンディ[Jessica Tandy](ドライビング Miss デイジー[Driving Miss Daisy]) - 80歳での受賞はアカデミー賞演技部門における当時の最年長受賞記録となりました。イギリス出身でブロードウェイを中心に長年活躍してきたタンディは、気品と頑固さ、そして内に秘めた寂しさを併せ持つ老婦人デイジーを自然体で演じ、50年以上のキャリアの集大成として世界中の観客の心を掴みました。
  • 助演男優賞:デンゼル・ワシントン[Denzel Washington](グローリー[Glory]) - 南北戦争において北軍初の黒人連隊として編成された第54マサチューセッツ歩兵連隊の実話を基にした本作で、逃亡奴隷出身の兵士トリップ役を熱演。怒りと誇りを全身で表現した鞭打ちのシーンは映画史に残る名場面として知られています。この助演男優賞受賞は、後の「トレーニング デイ」(2001年)での主演男優賞受賞へとつながる出世作となり、ハリウッドを代表する俳優としての地位を確立するきっかけとなりました。
  • 助演女優賞:ブレンダ・フリッカー[Brenda Fricker](マイ・レフトフット[My Left Foot]) - 重度の障害を持つ息子クリスティを献身的に支え続ける母親ブリジット・ブラウン役を、深い母性愛と静かな強さをもって演じました。アイルランド出身の女優として初のオスカー受賞という快挙を成し遂げ、ダニエル・デイ=ルイスとのダブル受賞は本作の演技面での卓越性を証明しました。
  • 外国語映画賞:ニュー・シネマ・パラダイス[Cinema Paradiso](イタリア) - ジュゼッペ・トルナトーレ監督が、シチリアの小さな町ジャンカルドを舞台に、映画に魅せられた少年トトと映写技師アルフレードの心温まる交流を描いた傑作です。エンニオ・モリコーネによる郷愁あふれる美しい音楽とともに、映画という芸術への普遍的な愛と、過ぎ去った時代への切ないノスタルジアを世界中に伝えました。ラストシーンのフィルムのモンタージュは、映画史上最も感動的な結末の一つとして今も語り継がれています。
  • 脚本賞:トム・シュルマン[Tom Schulman](いまを生きる[Dead Poets Society]) - 1959年のアメリカ・バーモント州にある名門全寮制寄宿学校ウェルトン・アカデミーを舞台に、型破りな英語教師ジョン・キーティング(ロビン・ウィリアムズ)と生徒たちの精神的覚醒を描いた青春ドラマです。「Carpe Diem(今を生きろ)」という名台詞は世代を超えて語り継がれ、教育と自由、個性の尊重というテーマは時代を超えた普遍性を持っています。
  • 作曲賞・歌曲賞:リトル・マーメイド[The Little Mermaid] - アラン・メンケンとハワード・アッシュマンのコンビによる楽曲が2部門を制覇しました。歌曲賞を受賞した「Under the Sea」はカリプソのリズムに乗せた陽気なナンバーで、ディズニーを代表する名曲として今なお世界中で愛されています。本作の成功は「ディズニー・ルネサンス」と呼ばれるアニメーション黄金時代の幕開けとなり、「美女と野獣」「アラジン」「ライオン・キング」といった名作が続々と誕生する道筋を作りました。

1989年の映画界を振り返って ― エンターテインメントの革新と社会派作品の共存

1989年は映画界にとって転換期ともいえる重要な年でした。ティム・バートン監督の「バットマン」がアメリカ国内興行収入2億5100万ドルを超える大ヒットを記録し、コミック原作映画がメインストリームのエンターテインメントとして認められる先駆けとなりました。本作は美術賞を受賞し、ゴッサム・シティの独創的なビジュアルデザインはその後のスーパーヒーロー映画に多大な影響を与えています。

インディペンデント映画の世界でも画期的な年でした。スティーヴン・ソダーバーグの長編デビュー作「セックスと嘘とビデオテープ」はカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞し、低予算映画でも世界的な評価を得られることを証明しました。本作は1990年代のアメリカ・インディペンデント映画ブームの起爆剤となり、脚本賞にもノミネートされています。また、スパイク・リー監督の「ドゥ・ザ・ライト・シング」はブルックリンの人種間の緊張と衝突を鮮烈に描き出し、社会派エンターテインメントの新たな可能性を示しました。

技術面では、ジェームズ・キャメロン監督の「アビス」が視覚効果賞を受賞し、映画史における重要なマイルストーンを刻みました。特に水で形成されたエイリアンの触手を表現したCGI(コンピュータ生成画像)技術は革新的であり、後の「ターミネーター2」における液体金属のT-1000や、「ジュラシック・パーク」のリアルな恐竜表現、さらには「タイタニック」「アバター」へとつながるデジタル映像革命の先駆けとなりました。「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」も視覚効果賞にノミネートされ、SFエンターテインメントの技術的進化を示しています。

このように第62回アカデミー賞は、社会的メッセージを込めた重厚な作品群と、エンターテインメントの技術革新が見事に共存した年として、映画史において特別な位置を占めています。人種問題を温かな視点で描いた「ドライビング Miss デイジー」、反戦の声を上げた「7月4日に生まれて」、メソッド演技の極致を見せた「マイ・レフトフット」、映画への愛を詩的に綴った「ニュー・シネマ・パラダイス」、そしてアニメーション映画の新時代を開いた「リトル・マーメイド」。いずれの作品も公開から30年以上を経た現在もなお色褪せることなく、映画ファン必見の名作として語り継がれています。ぜひこの機会に、1989年の名作映画の数々をご鑑賞ください。

第62回アカデミー賞の受賞数ランキング

第62回アカデミー賞では、複数の部門で受賞を果たした作品が際立ちました。以下は主要作品の受賞数をまとめたランキングです。

順位 作品名 受賞数 ノミネート数 主な受賞部門
1位 ドライビング Miss デイジー 4部門 9部門 作品賞、主演女優賞、脚色賞、メイクアップ賞
2位 グローリー 3部門 5部門 助演男優賞、撮影賞、録音賞
3位 7月4日に生まれて 2部門 8部門 監督賞、編集賞
3位 マイ・レフトフット 2部門 5部門 主演男優賞、助演女優賞
3位 リトル・マーメイド 2部門 3部門 作曲賞、歌曲賞

第62回アカデミー賞に関するよくある質問(FAQ)

Q. 第62回アカデミー賞はいつ、どこで開催されましたか?

A. 第62回アカデミー賞授賞式は1990年3月26日(月曜日)に、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスのドロシー・チャンドラー・パビリオン(Dorothy Chandler Pavilion)で開催されました。対象となったのは1989年に公開された映画作品です。

Q. 第62回アカデミー賞の司会は誰が務めましたか?

A. コメディアン・俳優のビリー・クリスタル(Billy Crystal)が2年連続で司会を務めました。クリスタルはその後も通算9回アカデミー賞の司会を務め、ボブ・ホープに次ぐ歴代2位の回数を記録しています。軽妙なユーモアと映画への深い愛情に満ちた司会スタイルで知られ、アカデミー賞授賞式の名物ホストとして記憶されています。

Q. 第62回アカデミー賞で最多受賞した作品は何ですか?

A. 「ドライビング Miss デイジー」が作品賞、主演女優賞、脚色賞、メイクアップ賞の4部門で最多受賞を果たしました。9部門にノミネートされたものの、監督賞にはノミネートされなかった点が特筆されます。作品賞を受賞しながら監督賞にノミネートすらされなかったケースは、アカデミー賞の歴史においても稀な出来事でした。

Q. 「ドライビング Miss デイジー」はなぜ監督賞にノミネートされなかったのですか?

A. ブルース・ベレスフォード監督が監督賞にノミネートされなかった理由は、同年の監督賞候補が極めてハイレベルだったことが挙げられます。オリバー・ストーン(7月4日に生まれて)、ピーター・ウィアー(いまを生きる)、ウディ・アレン(重罪と軽罪)、ケネス・ブラナー(ヘンリー5世)、ジム・シェリダン(マイ・レフトフット)といった巨匠・新鋭がひしめく激戦となりました。作品賞と監督賞の受賞作品が異なるケースは珍しく、この年は「7月4日に生まれて」のオリバー・ストーンが監督賞を受賞しています。

Q. ダニエル・デイ=ルイスの「マイ・レフトフット」での演技はなぜ伝説的と言われるのですか?

A. ダニエル・デイ=ルイスは脳性麻痺の画家クリスティ・ブラウンを演じるにあたり、撮影期間中は常に車椅子に座り続け、スタッフに食事を口元まで運んでもらうという徹底したメソッド演技を貫きました。左足だけで絵を描き文字を書くシーンも吹き替えなしで自ら行い、身体的制約の中でも感情を豊かに表現する圧巻の演技は、メソッド演技の極致として映画史に刻まれています。この初のオスカー受賞を皮切りに、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(2007年)、「リンカーン」(2012年)と通算3度の主演男優賞受賞を達成し、史上唯一の3冠俳優となりました。

Q. 「ニュー・シネマ・パラダイス」はなぜ映画史上の傑作とされているのですか?

A. ジュゼッペ・トルナトーレ監督の「ニュー・シネマ・パラダイス」は、シチリアの小さな町で映画に魅せられた少年トトと映写技師アルフレードの心温まる交流を通じて、映画という芸術への普遍的な愛と、過ぎ去った時代への切ないノスタルジアを描いた作品です。エンニオ・モリコーネによる郷愁あふれる美しい音楽は映画音楽の最高傑作の一つに数えられ、特にラストシーンのフィルムのモンタージュは映画史上最も感動的な結末として世界中のファンに愛されています。映画への愛そのものを映画にした本作は、公開から30年以上を経た現在もなお色褪せない普遍的な魅力を持っています。

Q. 「リトル・マーメイド」の受賞はディズニー映画にどのような影響を与えましたか?

A. 「リトル・マーメイド」の作曲賞・歌曲賞ダブル受賞は、「ディズニー・ルネサンス」と呼ばれるディズニー・アニメーション黄金時代の幕開けを象徴する出来事でした。アラン・メンケンとハワード・アッシュマンのコンビが確立したブロードウェイ・ミュージカル的な楽曲スタイルは、その後の「美女と野獣」(1991年)、「アラジン」(1992年)、「ライオン・キング」(1994年)へと受け継がれ、ディズニー・アニメーションの復興を牽引しました。アニメーション映画が音楽賞部門で高く評価されたこの受賞は、アニメーション作品の芸術的価値を改めて世界に示す契機となりました。

Q. 第62回アカデミー賞のノミネート作品で、その後のキャリアに大きな影響を与えた作品や人物は?

A. 第62回アカデミー賞は、後に映画界を代表する存在となる多くの才能を世に送り出しました。主演男優賞にノミネートされたトム・クルーズ(7月4日に生まれて)はこの作品でアクションスター以上の演技派としての評価を確立し、助演女優賞にノミネートされたジュリア・ロバーツ(マグノリアの花たち)は翌年「プリティ・ウーマン」で世界的スターとなりました。脚本賞にノミネートされたスティーヴン・ソダーバーグ(セックスと嘘とビデオテープ)は1990年代のインディペンデント映画ブームの中心的存在となり、後に「トラフィック」で監督賞を受賞しています。また、ケネス・ブラナー(ヘンリー5世)は29歳で監督賞と主演男優賞にダブルノミネートされるという快挙を達成し、シェイクスピア映画の第一人者としての地位を築きました。

まとめ ― 第62回アカデミー賞(1990年)が映画史に残した遺産

第62回アカデミー賞(1990年開催、1989年公開作品対象)は、映画史において多くの重要な遺産を残した授賞式として記憶されています。「ドライビング Miss デイジー」の作品賞受賞は、人種問題を温かな人間ドラマとして描くことで社会的メッセージをエンターテインメントに昇華できることを証明しました。ダニエル・デイ=ルイスの初受賞はメソッド演技の新たな基準を打ち立て、デンゼル・ワシントンとジュリア・ロバーツのノミネートは1990年代以降のハリウッドを牽引するスターの誕生を告げるものでした。

技術面では、「アビス」の視覚効果賞受賞がCGI技術の映画への本格導入の先駆けとなり、「バットマン」の美術賞受賞はコミック原作映画の芸術的価値を示しました。そして「リトル・マーメイド」の音楽賞ダブル受賞はディズニー・ルネサンスの幕開けとなり、アニメーション映画の新たな黄金時代を切り開きました。

また、「ニュー・シネマ・パラダイス」の外国語映画賞受賞と「セックスと嘘とビデオテープ」の脚本賞ノミネートは、ハリウッド大作以外の映画 ― ヨーロッパ映画やインディペンデント映画 ― が世界的に注目を集める時代の到来を予感させるものでした。このように第62回アカデミー賞は、映画の多様性と芸術的可能性を広げた歴史的な回として、後世に語り継がれるべき授賞式です。