中華人民共和国・新疆ウイグル自治区の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Xinjiang China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

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親記事:世界各国の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in the World ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

世界遺産とはユネスコ総会で採択された世界遺産条約「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて登録された遺跡、景観、自然などの人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を持ち、移動が不可能な物件を指します。つまり世界遺産の登録の本来の目的は自然や文化的に価値のあるものを保護・保全し、過去から未来へと伝えていくことです。

新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uygur Autonomous Region)は、中華人民共和国の北西部に位置する同国最大の行政区画です。面積は約166万平方キロメートルと日本の国土の約4.4倍に及び、北はモンゴル・ロシア、西はカザフスタン・キルギス・タジキスタン、南西はアフガニスタン・パキスタン・インドと国境を接する、ユーラシア大陸の中心に位置する地域です。天山山脈が東西に走り、その北にはジュンガル盆地、南にはタリム盆地とタクラマカン砂漠が広がるなど、壮大なスケールの自然景観が特徴です。

新疆は古来よりシルクロードの要衝として東西文明の交差点の役割を果たしてきました。漢代(紀元前2世紀頃)には張騫の西域遠征を契機にシルクロード交易が本格化し、唐代には安西都護府が設置されて中国王朝の西域支配の拠点となりました。この地を通じて仏教・イスラム教・マニ教・景教(ネストリウス派キリスト教)など多様な宗教が伝播し、ウイグル族・カザフ族・漢族・モンゴル族など多くの民族が共存する、きわめて多文化的な地域が形成されました。

こうした歴史的・地理的背景から、新疆ウイグル自治区には自然遺産と文化遺産の両方が存在します。現在、新疆ウイグル自治区に関連する世界遺産は3件が登録されており、その内訳は自然遺産1件(新疆天山)、文化遺産2件(シルクロード:長安-天山回廊の交易路網〈トランスナショナル・サイト〉、万里の長城〈中国全土にまたがる登録〉)となっています。天山山脈の雄大な自然景観からシルクロードの歴史的遺構まで、新疆ならではの多彩な世界遺産を本記事では詳しく紹介します。

まず、世界遺産が登録される基準を下記に記載します。

  • (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
  • (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
  • (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
  • (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
  • (5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
  • (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
  • (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
  • (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
  • (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
  • (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

(1)~(6)を満たすものが文化遺産、(7)~(10)を満たすものが自然遺産、文化遺産と自然遺産の条件をそれぞれ1つ以上を満たすものが複合遺産としての登録基準となります。

以下で紹介する世界遺産の「登録基準」項目の記載番号は上記の世界遺産登録基準の番号に対応しています。

中華人民共和国・新疆ウイグル自治区の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Xinjiang China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~


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新疆天山 / Shinkyou Tenzan[Xinjiang Tianshan]

新疆天山は、中央アジアを東西に約2,500キロメートルにわたって連なる天山山脈のうち、中国・新疆ウイグル自治区内に位置する4つの構成資産からなる自然遺産です。2013年に世界遺産に登録されました。構成資産は、トムール峰(托木尔峰、標高7,443m)周辺の氷河地帯、カラジュン=クエルデニン(喀拉峻-库尔德宁)の亜高山帯草原、バインブルク(巴音布鲁克)の湿地草原、ボゴダ峰(博格达峰、標高5,445m)周辺の山岳地帯の4つです。

これらの地域は、温帯砂漠から亜高山帯の草原、針葉樹林、高山氷河まで、標高差に応じた多様な生態系の垂直分布を示しています。特にバインブルクの湿地帯は、ハクチョウの重要な繁殖地として知られ、カラジュン草原は「世界で最も美しい草原」とも称される壮大な景観が広がります。また、ユキヒョウ、マルコポーロシープ(アルガリ)、テングリネズミなど希少な野生動物の生息地でもあります。

登録基準(7)「ひときわすぐれた自然美」および(9)「重要な生態学的プロセスを示す顕著な見本」を満たしており、ユーラシア大陸内陸部の温帯乾燥地域における山岳生態系の進化と多様性を地球規模で証明する貴重な遺産です。

登録区分
Type
自然遺産
登録年
Designated
2013年
登録基準
Criteria
(7)、(9)
住所
Address
Wensu, Aksu, Xinjiang, China
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
ウルムチ地窩堡国際空港より自動車(約13時間)
URL
URL

シルクロード:長安-天山回廊の交易路網 / Silk Road: Chang’an-Tenzan Kairou No Kouekiro Mou[Silk Roads: the Routes Network of Chang’an-Tianshan Corridor]

シルクロード:長安-天山回廊の交易路網は、中国・カザフスタン・キルギスの3か国にまたがるトランスナショナル・サイト(国境を越える世界遺産)として2014年に登録された文化遺産です。全体で33の構成資産を含み、そのうち中国国内に22か所(新疆ウイグル自治区内には高昌故城、交河故城、北庭故城遺跡、キジル石窟、スバシ故城などの重要な遺跡が含まれる)が所在しています。

この遺産は、紀元前2世紀から紀元16世紀にかけて東西文明を結んだシルクロードのうち、中国の古都・長安(現在の西安)から天山山脈の回廊を経て中央アジアへと至る約8,700キロメートルの交易路網を対象としています。この交易路を通じて、絹・陶磁器・香辛料・金属器などの物資だけでなく、仏教・イスラム教・マニ教などの宗教、天文学・医学・音楽などの学問・芸術が伝播し、人類史上最も広範な文化交流が行われました。

新疆ウイグル自治区内の構成資産のうち、高昌故城はかつてのシルクロードのオアシス都市・高昌国(5~7世紀)の遺跡であり、玄奘三蔵がインドへの旅の途中に立ち寄ったことでも知られています。交河故城はトルファン盆地の断崖上に築かれた都市遺跡で、その独特の地形を活かした都市計画は世界的にも稀有なものです。登録基準(2)(3)(5)(6)を満たし、東西文化交流の壮大な歴史を物語る遺産群です。

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
2014年
登録基準
Criteria
(2)、(3)、(5)、(6)
住所
Address
高昌故城:Gaochang, Turpan, Xinjiang, China
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
高昌故城:ウルムチ地窩堡国際空港より自動車(約4時間40分)
URL
URL

万里の長城 / Banri No Choujou[The Great Wall]

万里の長城は、中国北部に東西約2万キロメートル以上にわたって連なる世界最大規模の軍事防御施設であり、1987年に世界遺産に登録されました。紀元前7世紀頃の春秋戦国時代に各国が北方遊牧民族の侵入を防ぐために築いた城壁が起源とされ、紀元前221年に秦の始皇帝がこれらを連結・拡張したことで「万里の長城」の原型が形成されました。その後、漢・北魏・隋・明など歴代王朝によって修築・延伸が繰り返され、現在残る長城の大部分は明代(14~17世紀)に築かれたものです。

新疆ウイグル自治区においても、漢代に築かれた長城の遺構が確認されています。漢の武帝(在位:紀元前141年~紀元前87年)は西域経営の一環として、河西回廊からさらに西へ長城を延伸し、玉門関・陽関などの関所を設置しました。新疆東部のロプノール(羅布泊)周辺では、漢代の烽火台(のろし台)や塞垣(防壁)の遺跡が発見されており、シルクロード交易路の防衛と管理に重要な役割を果たしていたことがわかっています。

万里の長城は登録基準(1)(2)(3)(4)(6)の5つを満たす数少ない世界遺産の一つであり、「人類の創造的才能を表現する傑作」として、約2,000年以上にわたる中国の歴史・軍事・建築技術の変遷を今に伝えています。新疆の長城遺構は、中国の中央政権が西域に及ぼした影響力とシルクロード防衛の歴史を物語る貴重な遺産です。

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
1987年
登録基準
Criteria
(1)、(2)、(3)、(4)、(6)
住所
Address
Beijing , Tianjin , Hebei , Shanxi , Inner Mongolia , Liaoning , Jilin, Shandong, Henan , Hubei , Hunan, Sichuan, Shaanxi, Gansu, Qinghai, Ningxia, Xinjiang
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
八達嶺長城:北京首都国際空港より自動車(約1時間20分)
URL
URL