栃木県の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Tochigi ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~
栃木県は関東地方の北部に位置し、日光連山や那須高原など豊かな自然に恵まれた県です。その栃木県には、日本を代表する世界遺産「日光の社寺」が所在しています。徳川家康を祀る日光東照宮をはじめとする荘厳な社寺群は、江戸時代の建築技術と芸術性の粋を集めた文化遺産として、1999年にユネスコ世界遺産に登録されました。
世界遺産とは、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)総会で1972年に採択された世界遺産条約「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて、世界遺産リストに登録された遺跡・景観・自然などを指します。登録対象となるのは、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」を持ち、移動が不可能な不動産です。世界遺産の登録制度の本来の目的は、自然や文化的に価値のあるものを国際的な協力のもとに保護・保全し、過去から現在、そして未来の世代へと確実に伝えていくことにあります。
同時に、世界遺産に登録されることで国際的な知名度が向上し、観光地としてのブランド力が高まる側面もあります。栃木県の日光もまた、世界遺産登録を契機に国内外から多くの観光客が訪れるようになり、地域経済の活性化にも大きく貢献しています。
このページでは、栃木県に所在する世界遺産「日光の社寺」の構成資産である日光東照宮・日光二荒山神社・日光山輪王寺の3つの社寺について、登録基準や所在地、アクセス方法などの基本情報とともに、それぞれの歴史的背景や見どころを詳しく紹介します。
世界遺産の登録基準
世界遺産リストへの登録には、以下の10項目の登録基準のうち1つ以上を満たす必要があります。(1)~(6)は文化遺産、(7)~(10)は自然遺産の基準であり、両方の基準をそれぞれ1つ以上満たすものは複合遺産として登録されます。
- (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
- (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
- (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
- (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
- (5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
- (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
- (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
- (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
- (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
- (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。
以下で紹介する栃木県の世界遺産「日光の社寺」は、登録基準(1)・(4)・(6)の3つを満たす文化遺産です。これらの番号は上記の世界遺産登録基準に対応しています。
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日光の社寺 / Nikko No Shaji[Shrines and Temples of Nikko]
「日光の社寺」は、栃木県日光市の日光山内に所在する日光東照宮・日光二荒山神社・日光山輪王寺の二社一寺と、これらに属する合計103棟の建造物群および周辺の文化的景観から構成される世界遺産です。1999年(平成11年)12月、第23回世界遺産委員会(モロッコ・マラケシュ)において世界文化遺産に登録されました。
登録基準は(1)「人類の創造的才能を表現する傑作」、(4)「人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式の優れた例」、(6)「顕著で普遍的な意義を有する出来事や信仰に直接関連するもの」の3つです。日光の社寺群は、日本の宗教建築の中でも際立った芸術的完成度を誇り、江戸時代の権力と信仰が融合した建築文化の最高峰として国際的に評価されています。
日光山は奈良時代の766年に勝道上人によって開山され、以来1200年以上にわたって山岳信仰の聖地として崇められてきました。特に1617年に徳川家康の霊廟として東照宮が創建されて以降、幕府の威信をかけた大規模な造営が行われ、当時の日本の最高水準の建築技術と装飾芸術が結集されました。
登録資産の面積は約50.8ヘクタール、緩衝地帯(バッファーゾーン)は約373.2ヘクタールに及びます。杉並木に囲まれた参道を進むと広がる荘厳な社寺群と、日光連山を背景とした自然環境が一体となった文化的景観は、四季折々に異なる表情を見せ、春の新緑、秋の紅葉の時期には格別の美しさとなります。
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
1999年 |
| 登録基準 Criteria |
(1)、(4)、(6) |
日光東照宮 / Nikko Tosho Gu[Nikko Tosho Gu]
日光東照宮は、江戸幕府の初代将軍・徳川家康を「東照大権現」として祀る神社です。元和3年(1617年)に創建され、その後、三代将軍・徳川家光による「寛永の大造替」(1636年)で現在の絢爛豪華な社殿群が完成しました。境内には国宝8棟・重要文化財34棟を含む55棟の建造物が立ち並び、日本の近世建築を代表する文化財の宝庫となっています。
特に有名なのが、国宝「陽明門」です。500以上の彫刻で装飾された門は、その精巧さと華麗さから「日暮の門」とも呼ばれ、一日中見ていても飽きないと称されています。また、左甚五郎の作と伝わる「眠り猫」や、「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿の彫刻など、東照宮の建築装飾は日本文化の象徴としても広く知られています。本殿・石の間・拝殿が一体となった「権現造」の建築様式は、東照宮で完成されたとされ、後の日本建築に大きな影響を与えました。
| 住所 Address |
栃木県日光市山内2301 |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
JR日光駅・東武日光駅より東武バス中禅寺温泉・湯元温泉行き(約10分)「神橋」下車(徒歩約10分) |
| URL URL |
https://www.toshogu.jp/ |
日光二荒山神社 / Nikko Futarasan Jinja[Nikko Futarasan Shrine]
日光二荒山神社は、日光山信仰の始まりとなった神社であり、日光三山(男体山・女峰山・太郎山)を御神体として祀っています。奈良時代の767年、勝道上人が男体山の山頂を極めた際に創建したと伝えられ、日光の社寺の中で最も古い歴史を持ちます。古くは「下野国一宮」として関東地方の信仰の中心地でもありました。
境内は日光山内の広大な敷地を占め、その神域は男体山山頂の奥宮、中禅寺湖畔の中宮祠、そして山内の本社の3か所から構成されています。神域の総面積は約3,400ヘクタールにも及び、日光の社寺の登録資産の中でも最大の敷地を有しています。本殿は1619年(元和5年)に建造されたもので、日光山内で最も古い建造物として重要文化財に指定されています。境内には霊泉「二荒霊泉」があり、知恵の水・酒の水・若返りの水の3種の湧水が参拝者に親しまれています。
| 住所 Address |
栃木県日光市山内2307 |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
JR日光駅・東武日光駅より東武バス中禅寺温泉・湯元温泉行き(約10分)「西参道」下車(徒歩約10分) |
| URL URL |
https://www.futarasan.jp/ |
日光山輪王寺 / Nikko Rinnou Ji[Nikko Rinnou Temple]
日光山輪王寺は、天台宗の門跡寺院であり、日光山の中心的な仏教寺院として1250年以上の歴史を持ちます。奈良時代の766年に勝道上人が日光山を開山した際に創建された「四本龍寺」を起源とし、その後、平安時代に空海や円仁といった高僧が訪れたことで山岳修行の霊場として発展しました。「輪王寺」の寺号は、後水尾天皇の第三皇子・守澄法親王が入寺した際に天皇から賜ったものです。
最大の見どころは、日光山内で最大の木造建造物である「三仏堂(大本堂)」です。堂内には高さ約7.5メートルの金色に輝く三体の仏像(千手観音・阿弥陀如来・馬頭観音)が安置されており、それぞれ日光三山の本地仏(男体山・女峰山・太郎山の神仏習合における仏の姿)として信仰されています。また、徳川三代将軍・家光の霊廟である「大猷院」も輪王寺に属しており、東照宮に匹敵する壮麗な建築群を有しています。大猷院は家光の遺言「死後も東照大権現にお仕えする」に基づき、東照宮よりも控えめながらも格調高い造りが特徴です。
| 住所 Address |
栃木県日光市山内2300 |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
JR日光駅・東武日光駅より東武バス中禅寺温泉・湯元温泉行き(約10分)「神橋」下車(徒歩約5分) |
| URL URL |
https://rinnoji.or.jp/ |
栃木県の世界遺産を訪れる際のポイント
日光の社寺を効率よく巡るには、JR日光駅または東武日光駅を起点にするのが便利です。駅から世界遺産エリアの入口となる神橋まではバスで約10分、徒歩でも約30分の距離にあります。二社一寺の全てを巡る場合は、共通拝観券の利用がお得です。
日光は標高約600メートルに位置するため、平地よりも気温が低く、特に冬季は防寒対策が必要です。観光のベストシーズンは、新緑の美しい5月頃と紅葉が見頃を迎える10月下旬~11月上旬です。また、毎年5月と10月に行われる「日光東照宮春季例大祭・秋季大祭」では、武者行列や流鏑馬などの伝統行事を見ることができます。

