中華人民共和国・陝西省の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Shaanxi China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

3月 31, 2026China,Shaanxi,Travel,UNESCO World Heritage Sites,World

親記事:世界各国の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in the World ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

世界遺産とはユネスコ(UNESCO:国際連合教育科学文化機関)総会で1972年に採択された世界遺産条約「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて登録された遺跡、景観、自然などの人類が共有すべき「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value, OUV)」を持ち、移動が不可能な不動産を指します。世界遺産は文化遺産・自然遺産・複合遺産の3種類に分類され、2024年時点で世界168か国に1,199件が登録されています。

世界遺産の登録の本来の目的は、自然や文化的に価値のあるものを保護・保全し、過去から現在、そして未来の世代へと伝えていくことにあります。世界遺産条約は、文化遺産と自然遺産を一つの条約のもとで保護する国際的な枠組みとして画期的なものであり、各締約国には登録遺産の保全義務が課されています。

一方で、世界遺産に登録されることで国際的な知名度が飛躍的に向上し、観光地としてのブランド力を持つことも近年では期待されています。実際に、世界遺産登録後に観光客数が大幅に増加した事例は世界各地で報告されており、地域経済の活性化にも大きく寄与しています。

陝西省(Shaanxi)は、中華人民共和国の内陸部に位置し、省都・西安(旧称:長安)を中心に中国文明発祥の地の一つとして知られています。周・秦・漢・隋・唐など13の王朝がこの地に都を置き、約1,100年にわたり中国の政治・経済・文化の中心として繁栄しました。シルクロードの東の起点としても名高く、東西文明の交流拠点として人類史上極めて重要な役割を果たしています。陝西省には現在3件の世界遺産(すべて文化遺産)が登録されており、本記事ではこれらすべての陝西省の世界遺産を一覧形式で詳しく紹介します。

まず、世界遺産が登録される基準(世界遺産登録基準 / Selection Criteria)を下記に記載します。

  • (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
  • (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
  • (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
  • (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
  • (5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
  • (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
  • (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
  • (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
  • (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
  • (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

(1)~(6)を満たすものが文化遺産、(7)~(10)を満たすものが自然遺産、文化遺産と自然遺産の条件をそれぞれ1つ以上を満たすものが複合遺産としての登録基準となります。

以下で紹介する世界遺産の「登録基準」項目の記載番号は上記の世界遺産登録基準の番号に対応しています。

中華人民共和国・陝西省の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Shaanxi China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

陝西省の世界遺産は、すべて文化遺産として登録された3件(万里の長城、秦始皇帝陵及び兵馬俑坑、シルクロード:長安-天山回廊の交易路網)で構成されています。紀元前3世紀の秦の始皇帝が築いた壮大な陵墓と兵馬俑、北方遊牧民族の侵入を防ぐために歴代王朝が築き続けた万里の長城、そして東西文明を結んだシルクロードの起点・長安の遺跡群まで、陝西省の世界遺産は中国古代文明の栄華と人類の交流の歴史を雄弁に物語っています。


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万里の長城 / Banri No Choujou[The Great Wall]

万里の長城(The Great Wall)は、中国北部を東西に横断する世界最大の軍事防御施設であり、人類史上最も壮大な建造物の一つです。その総延長は約21,196km(2012年の中国国家文物局の調査結果)に及び、東は河北省の山海関から西は甘粛省の嘉峪関まで、中国の北辺を貫いています。

長城の建設は紀元前7世紀の春秋戦国時代にまで遡り、紀元前221年に中国を統一した秦の始皇帝が北方の匈奴(きょうど)の侵入を防ぐため、各国が築いていた城壁を連結・拡張したことで大規模な長城が誕生しました。その後、漢・北魏・北斉・隋・明など歴代王朝が修築・延伸を重ね、現在最もよく保存されている部分の多くは明代(1368年〜1644年)に築かれたものです。

陝西省における長城は、省北部の楡林(Yulin)市一帯に分布しています。楡林は「万里の長城の故郷」とも称され、秦・漢・隋・明の各時代に築かれた長城の遺構が残る地域です。特に明代の長城は楡林市の北辺に沿って東西約1,600kmにわたって延び、烽火台(のろし台)や敵台、関城などの軍事施設が随所に見られます。楡林の長城は、オルドス砂漠(毛烏素沙地)と黄土高原の境界に位置し、遊牧民族と農耕民族の文化的境界線としての歴史的意義も有しています。

1987年にユネスコ世界文化遺産に登録され、登録基準(1)の人類の創造的傑作、(2)の文化交流の証、(3)の文明の稀な証拠、(4)の歴史上重要な建築様式、(6)の普遍的意義を有する出来事との関連が認められています。万里の長城は中国の象徴であると同時に、人類の不屈の意志と卓越した土木技術を示す記念碑的遺産です。

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
1987年
登録基準
Criteria
(1)、(2)、(3)、(4)、(6)
住所
Address
Yulin, Shaanxi, China
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
西安咸陽国際空港より自動車(約6時間40分)
URL
URL

秦始皇帝陵及び兵馬俑坑 / Shin Shikoutei Eyou Oyobi Heibayoukou[Mausoleum of the First Qin Emperor]

秦始皇帝陵及び兵馬俑坑(Mausoleum of the First Qin Emperor)は、中国陝西省西安市臨潼区に位置する、中国初の統一王朝・秦を建てた始皇帝(嬴政、紀元前259年〜紀元前210年)の陵墓と、その副葬坑群からなる巨大な考古学遺跡です。始皇帝陵の建設は、嬴政が秦王に即位した紀元前246年に開始され、約70万人の労働者を動員して約38年の歳月をかけて造営されたと、司馬遷の『史記』に記録されています。

1974年、地元農民が井戸を掘削中に偶然発見した兵馬俑坑は、20世紀における世界最大の考古学的発見の一つとされています。現在までに3つの俑坑が発掘されており、等身大の陶製兵士俑約8,000体、戦車約130台、軍馬約670体が出土しています。注目すべきは、各兵士俑の顔貌・表情・髪型・服装がすべて異なり、一体一体が個別に制作された写実的な肖像であることです。兵馬俑は当初、鮮やかな彩色が施されていたことが判明しており、秦代の軍事組織・武器体系・製造技術を知る上で極めて貴重な資料となっています。

始皇帝陵の主墳丘は高さ約51m(築造当時は約115mと推定)の四角錐状の封土で覆われており、その地下宮殿は未だ発掘されていません。『史記』によれば、地下宮殿には水銀で百川・江河・大海が再現され、天井には天文図が描かれているとされ、実際に封土周辺の土壌調査で高濃度の水銀が検出されています。1987年にユネスコ世界文化遺産に登録され、登録基準(1)の人類の創造的傑作、(3)の消滅した文明の稀な証拠、(4)の歴史上重要な時代を例証する建築群、(6)の普遍的意義を有する出来事との関連が認められました。秦始皇帝陵は、古代中国の国家統一と皇帝権力の絶大さを今に伝える、人類共通の文化遺産です。

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
1987年
登録基準
Criteria
(1)、(3)、(4)、(6)
住所
Address
Lintong, Xi’an, Shaanxi, China
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
西安咸陽国際空港より自動車(約40分)
URL
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シルクロード:長安-天山回廊の交易路網 / Silk Road: Chang’an-Tenzan Kairou No Kouekiro Mou[Silk Roads: the Routes Network of Chang’an-Tianshan Corridor]

シルクロード:長安-天山回廊の交易路網(Silk Roads: the Routes Network of Chang'an-Tianshan Corridor)は、2014年に中国・カザフスタン・キルギスの3か国による共同推薦で登録された、国境を越えるシリアル・ノミネーション(連続性のある遺産)です。中国の古都・長安(現在の西安)から中央アジアの天山山脈を経てゼトゥス渓谷に至る、全長約5,000kmの交易路網に沿った33の構成資産(中国22件、カザフスタン8件、キルギス3件)で構成されています。

陝西省には、この世界遺産の東の起点として極めて重要な構成資産が集中しています。前漢(紀元前206年〜紀元後8年)の都・長安城の中枢であった未央宮遺跡(Weiyang Palace)は、漢の武帝が張騫(ちょうけん)を西域に派遣しシルクロードを開拓した歴史的舞台です。また、唐代(618年〜907年)の長安城の政治中心であった大明宮遺跡(Daming Palace)、玄奘三蔵(三蔵法師)の遺骨を祀る興教寺(Xingjiao Temple)、仏教経典の翻訳拠点であった大雁塔(Giant Wild Goose Pagoda)と小雁塔(Small Wild Goose Pagoda)なども陝西省の構成資産に含まれており、長安がシルクロードの東の起点として果たした文明交流の中心的役割を物語っています。

シルクロードは紀元前2世紀から16世紀にかけて、東西の文明を結ぶ最も重要な交易路として機能しました。絹・陶磁器・茶・香辛料・宝石などの物資だけでなく、仏教・イスラム教・キリスト教(景教)などの宗教、製紙・火薬・印刷術などの技術、音楽・美術・建築様式などの文化が、この道を通じて双方向に伝播しました。2014年の世界遺産登録では、登録基準(2)の人類の価値の重要な交流、(3)の文化的伝統の証拠、(5)の文化を代表する際立った例、(6)の普遍的意義を有する出来事との関連が認められています。このシルクロード遺産は、人類の歴史における東西文明の対話と融合を物理的に証明する、かけがえのない文化遺産です。

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
2014年
登録基準
Criteria
(2)、(3)、(5)、(6)
住所
Address
前漢長安城未央宮遺跡: Weiyang, Xian, Shaanxi, China
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
西安咸陽国際空港より自動車(約30分)
URL
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