佐賀県の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Saga ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

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世界遺産(World Heritage Site)とは、1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づき、人類全体にとって「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」を持つと認められた遺跡・景観・自然環境などの不動産を指します。世界遺産条約の締約国は195か国にのぼり、世界遺産リストには1,000件を超える物件が登録されています。

世界遺産登録の本来の目的は、自然災害や都市開発、武力紛争などの脅威から貴重な文化的・自然的遺産を保護・保全し、過去から未来の世代へと確実に継承していくことにあります。各締約国は登録された遺産の保全状況を定期的にユネスコ世界遺産委員会へ報告する義務を負い、保全が不十分と判断された場合には「危機にさらされている世界遺産リスト(危機遺産リスト)」への記載や、登録抹消の措置が取られることもあります。

一方で、世界遺産への登録は国際的な知名度の向上をもたらし、登録地域への観光客の増加や地域経済の活性化にも大きく貢献しています。日本国内でも、世界遺産登録をきっかけに訪問者数が飛躍的に増加した地域が多く、文化財の保護と観光振興を両立させる取り組みが各地で進められています。

本記事では、九州北西部に位置する佐賀県に所在する世界遺産の構成資産について、その歴史的背景や見どころ、アクセス情報を詳しく紹介します。佐賀県は幕末から明治にかけて日本の近代化に先駆的な役割を果たした地域であり、その歴史的遺産が世界遺産として高く評価されています。

世界遺産の登録にあたっては、以下の10項目の登録基準のうち1つ以上を満たす必要があります。

  • (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
  • (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
  • (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
  • (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
  • (5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
  • (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
  • (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
  • (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
  • (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
  • (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

(1)~(6)を満たすものが文化遺産、(7)~(10)を満たすものが自然遺産、文化遺産と自然遺産の条件をそれぞれ1つ以上を満たすものが複合遺産としての登録基準となります。

以下で紹介する世界遺産の「登録基準」項目の記載番号は上記の世界遺産登録基準の番号に対応しています。

佐賀県の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Saga ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

佐賀県には、世界遺産の構成資産が1件登録されています。それが「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産の一つである三重津海軍所跡です。佐賀藩(鍋島藩)は、幕末期において日本で最も先進的な西洋技術の導入に取り組んだ藩の一つであり、特に軍事技術と造船技術においては他藩に先駆けた成果を上げました。佐賀藩第10代藩主・鍋島直正(閑叟)の強力なリーダーシップのもと、日本初の実用蒸気船の建造や反射炉の築造など、日本の近代化の先駆けとなる数々の偉業が成し遂げられた歴史を持つ地域です。


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明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業 / Meiji Nihon No Sangyou Kakumei Isan Seitetsu Tekkou Zousen Sekitan Sangyou[Sites of Japan's Meiji Industrial Revolution: Iron and Steel, Shipbuilding and Coal Mining]

「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」は、2015年に世界文化遺産に登録された、日本の近代化の過程を物語る産業遺産群です。九州・山口を中心に8県11市にまたがる23の構成資産で構成され、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、日本が西洋の科学技術を導入し独自の産業化を達成した過程を証明しています。この遺産群は、非西洋諸国で初めて成功した急速な産業化の事例として、世界史的にも極めて重要な意義を持っています。

登録基準(2)は「建築、技術の発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの」、登録基準(4)は「人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、技術の集積の優れた例」にそれぞれ該当し、日本がわずか半世紀ほどの短期間で封建社会から近代工業国家へと変貌を遂げた歴史的過程が高く評価されました。

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
2015年
登録基準
Criteria
(2)、(4)

三重津海軍所跡 / Mietsu Kaigun Sho Ato[Mietsu Naval Dock]

三重津海軍所跡は、佐賀藩が1858年(安政5年)に設置した日本最古の実用的な洋式海軍施設の遺跡です。佐賀市川副町の早津江川沿いに位置するこの施設は、佐賀藩の海軍教育・訓練の拠点として機能するとともに、洋式船の修理・建造を行うドライドック(乾船渠)が設けられていました。

特筆すべきは、このドライドックが日本に現存する最古の乾船渠遺構であることです。木材と土を用いた和洋折衷の工法で築造されたドックは、西洋の造船技術を日本の伝統的な土木技術と融合させた独創的な構造物であり、日本の近代造船技術の黎明期を示す貴重な遺産です。1865年(慶応元年)には、この三重津海軍所で日本初の実用蒸気船「凌風丸」が建造されたと伝えられています。

三重津海軍所跡は地下に遺構が保存されているため、地上から直接遺跡の姿を見ることはできません。しかし、隣接する「佐野常民と三重津海軍所跡の歴史館」では、VR(バーチャルリアリティ)技術を活用した体験展示が用意されており、当時の海軍所の様子を臨場感あふれる映像で体感することができます。発掘調査で出土した遺物の展示や、佐賀藩の近代化の歴史を学べるパネル展示も充実しており、幕末の日本が西洋列強に対抗するためにいかに技術革新に取り組んだかを深く理解できる施設です。

住所
Address
佐賀県佐賀市川副町大字早津江字元海軍所31番他
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
西鉄電車柳川駅より西鉄バス沖新線(約30分)「早津江」下車(徒歩約5分)
URL
URL
https://mietsu-sekaiisan.jp/