福岡県の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Fukuoka ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

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親記事:日本全国・都道府県の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Japan ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

福岡県には、2025年現在、2件の世界文化遺産が登録されています。1つは2015年に登録された「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」、もう1つは2017年に登録された「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」です。

福岡県の世界遺産は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて日本の近代化を支えた産業遺産と、4世紀から9世紀にかけて大陸との交流の中で育まれた古代祭祀の遺産群という、異なる時代の文化的価値を持つ点が特徴です。いずれも日本の歴史において重要な役割を果たした福岡県ならではの遺産であり、九州北部の地理的・歴史的な重要性を物語っています。

世界遺産とは、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が採択した世界遺産条約「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて登録された、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」を持つ遺跡・景観・自然を指します。世界遺産の登録は、これらの価値あるものを保護・保全し、過去から未来へと確実に伝えていくことを目的としています。

以下に、世界遺産が登録される際の評価基準を記載します。

  • (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
  • (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
  • (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
  • (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
  • (5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
  • (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
  • (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
  • (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
  • (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
  • (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

(1)~(6)を満たすものが文化遺産、(7)~(10)を満たすものが自然遺産、文化遺産と自然遺産の条件をそれぞれ1つ以上を満たすものが複合遺産としての登録基準となります。

以下で紹介する世界遺産の「登録基準」項目の記載番号は上記の世界遺産登録基準の番号に対応しています。

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明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業 / Meiji Nihon No Sangyou Kakumei Isan Seitetsu Tekkou Zousen Sekitan Sangyou[Sites of Japan's Meiji Industrial Revolution: Iron and Steel, Shipbuilding and Coal Mining]

「明治日本の産業革命遺産」は、幕末から明治時代にかけて日本が西洋の技術を取り入れながら急速な産業化を成し遂げた過程を示す遺産群です。全国8県11市に点在する23の構成資産から成り、2015年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。福岡県内には、大牟田市の三池炭鉱関連施設3件(宮原坑・専用鉄道敷跡・三池港)、北九州市の官営八幡製鐵所、中間市の遠賀川水源地ポンプ室の計5件の構成資産があります。

これらの産業施設は、石炭の採掘から輸送、製鉄に至るまでの一貫した産業システムを形成しており、日本の近代化における九州北部の中心的な役割を示しています。特に三池炭鉱は日本最大規模の炭鉱として、また八幡製鐵所は日本初の本格的な近代製鉄所として、日本の産業革命を象徴する存在です。

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
2015年
登録基準
Criteria
(2)、(4)

三池炭鉱 宮原坑 / Miike Tankou Miyanohara Kou[Miike Coal Mine Miyanohara Pit]

宮原坑は、1898年(明治31年)から1931年(昭和6年)まで稼働した三池炭鉱の主力坑の一つです。第二竪坑の鋼鉄製櫓(やぐら)とイギリス製の巻揚機が現存しており、明治期の炭鉱技術を今に伝える貴重な遺構として国の重要文化財および史跡に指定されています。竪坑櫓の高さは約22メートルで、当時の採炭技術の規模と先進性を目の当たりにすることができます。

住所
Address
福岡県大牟田市宮原町1丁目86−3
地図
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地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR大牟田駅よりバス(約10分)「早鐘眼鏡橋」下車(徒歩約10分)
URL
URL
https://www.miike-coalmines.jp/miyanohara.html

三池炭鉱 専用鉄道敷跡 / Miike Tankou Senyou Tetsudou Shiki Ato[Miike Coal Mine Miike Coal Railway]

三池炭鉱専用鉄道は、炭鉱で採掘された石炭を三池港まで効率的に輸送するために敷設された約9.3キロメートルの専用鉄道です。1878年(明治11年)に敷設が開始され、三池炭鉱の産業システムにおいて採掘から輸出までを一貫して結ぶ重要な役割を果たしました。現在は鉄道としての機能は終えていますが、敷跡の一部が遊歩道として整備されており、往時の産業インフラの規模を体感することができます。

住所
Address
福岡県大牟田市宮原町1丁目86−3
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR大牟田駅より自動車(約10分)、JR大牟田駅よりバス有明高専前行き(約10分)「末広町」下車(徒歩約10分)
URL
URL
https://www.miike-coalmines.jp/rale.html

三池港 / Miike Kou[Miike Port]

三池港は、1908年(明治41年)に完成した石炭積出用の港湾施設です。有明海は日本最大の干満差(最大約6メートル)を持つ海域であり、大型船舶の入港が困難でした。そこで閘門(こうもん)式のドック方式を採用し、水位を人工的に調整することで大型船の接岸を可能にしました。この画期的な設計は現在も機能しており、100年以上稼働し続ける「生きた産業遺産」として高い価値を持っています。

住所
Address
東京都三宅島三宅村坪田1260
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地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR大牟田駅より荒尾駅前行き(約20分)「三川町1丁目」下車(徒歩約10分)「三池港」下車(徒歩約5分)
URL
URL
https://www.miike-coalmines.jp/port.html

官営八幡製鐵所 / [The Imperial Steel Works]

官営八幡製鐵所は、1901年(明治34年)に操業を開始した日本初の本格的な銑鋼一貫製鉄所です。日清戦争後の軍備拡張と産業発展を背景に、国策事業として北九州市八幡東区に建設されました。ドイツの技術を導入して建設された旧本事務所は、1899年竣工の赤煉瓦造りの美しい建築物で、日本の近代建築史においても重要な存在です。世界遺産の構成資産として旧本事務所、修繕工場、旧鍛冶工場が含まれますが、現在も稼働中の製鉄所敷地内にあるため、一般の立ち入りは制限されています。隣接する眺望スペースから旧本事務所の外観を見学することができます。

住所
Address
福岡県北九州市八幡東区尾倉
地図
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地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JRスペースワールド駅(徒歩約10分)
URL
URL
https://heritage.sangyokanko.com/

遠賀川水源地ポンプ室 / Onga Gawa Suigenchi Pump Shitsu[Onga river Pumping Station]

遠賀川水源地ポンプ室は、1910年(明治43年)に完成した官営八幡製鐵所への工業用水供給施設です。製鉄には大量の水が必要であり、遠賀川から約11キロメートル離れた八幡製鐵所まで送水するために建設されました。赤煉瓦と石造りの外観は、明治期の産業建築の美しさを今に伝えています。建設から100年以上が経過した現在もポンプ室として稼働し続けており、日本の近代化産業遺産の中でも極めて珍しい「現役の世界遺産」です。

住所
Address
福岡県中間市土手の内1-3-1
地図
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地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR筑前垣生駅(徒歩約20分)
URL
URL
https://www.city.nakama.lg.jp/sangyo/kanko/sekaiisan_150115.html

「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群 / Kamiyadoru Shima Souzou Okino Shima To Kanren Isan Gun[Sacred Island of Okinoshima and Associated Sites in the Munakata Region]

「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」は、福岡県宗像市・福津市に所在する古代祭祀遺跡と信仰の場を構成資産とする世界文化遺産で、2017年に登録されました。この遺産群は、4世紀から9世紀にかけて、日本列島と朝鮮半島・中国大陸との間の活発な海上交流の安全を祈願して行われた古代祭祀の変遷と、それを支えた宗像氏の信仰の歴史を証明しています。

中核となる沖ノ島は「海の正倉院」とも呼ばれ、島全体が御神体として崇敬されてきました。沖ノ島から出土した約8万点の奉献品は全て国宝に指定されており、金製の指輪やペルシャ製のカットグラスなど、古代の東アジア交流を示す第一級の考古資料が含まれています。構成資産は、沖ノ島(沖津宮)、大島の中津宮と沖津宮遥拝所、本土の辺津宮、そして新原・奴山古墳群の5件です。

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
2017年
登録基準
Criteria
(2)、(3)

沖ノ島 / Okinoshima[The Island of Okinoshima]

沖ノ島は、九州本土から約60キロメートル沖合の玄界灘に浮かぶ周囲約4キロメートルの小島です。島全体が宗像大社の神領であり、宗像三女神の一柱である田心姫神(たごりひめのかみ)を祀る沖津宮が鎮座しています。4世紀後半から約500年にわたり、大陸との航海安全を祈る国家的祭祀が行われ、岩上祭祀・岩陰祭祀・半岩陰半露天祭祀・露天祭祀と祭祀形態が変遷した過程が、ほぼ手つかずの状態で残されています。古来より「不言島(おいわずしま)」と呼ばれ、島で見聞きしたことを口外してはならないとされてきました。現在も一般の上陸は原則として禁止されています。

住所
Address
福岡県宗像市沖ノ島
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アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
一般非公開(立入禁止)
URL
URL
https://www.okinoshima-heritage.jp/visit/okitsumiya

宗像大社中津宮 / Munakata Taisha Nakatsu Miya[Munakata Grand Shrine Nakatsu Miya]

中津宮は、玄界灘に浮かぶ大島に鎮座する宗像大社の三宮の一つで、宗像三女神の湍津姫神(たぎつひめのかみ)を祀っています。大島は九州本土と沖ノ島の中間に位置し、古代から大陸航路の中継地としての役割を担ってきました。境内を流れる天の川を挟んで牽牛社と織女社が祀られていることから、七夕伝説発祥の地の一つとしても知られています。神湊港からフェリーで約25分で訪れることができ、島の自然と古代信仰の雰囲気を体感できます。

住所
Address
福岡県宗像市大島1811
地図
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地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR東郷駅より自動車(約1時間)下車後、神湊波止場より市営渡船「しおかぜ」(約15分)・フェリー「おおしま」(約25分)「大島港」下船
URL
URL
https://www.okinoshima-heritage.jp/visit/nakatsumiya

沖津宮遥拝所 / Okitsumiya Yohaisho[Okitsumiya Yohaisho]

沖津宮遥拝所は、大島の北端に位置し、一般の上陸が禁じられている沖ノ島(沖津宮)を遥か彼方から拝むための施設です。晴天時には約49キロメートル先の沖ノ島の島影を望むことができ、古代から受け継がれてきた沖ノ島への信仰の形を現代に伝えています。この遥拝所の存在は、沖ノ島に直接渡ることができない人々が、離れた場所から神聖な島を拝む「遥拝」という日本の伝統的な信仰形態を示す重要な構成資産です。

住所
Address
福岡県宗像市大島
地図
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地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR東郷駅より自動車(約1時間)下車後、神湊波止場より市営渡船「しおかぜ」(約15分)・フェリー「おおしま」(約25分)「大島港」下船
URL
URL
https://www.okinoshima-heritage.jp/visit/yohaisho

宗像大社辺津宮 / Munakata Taisha Hetsu Miya[Munakata Grand Shrine Hetsu Miya]

辺津宮は宗像大社の総社にあたり、宗像三女神の市杵島姫神(いちきしまひめのかみ)を祀る宗像信仰の中心地です。九州本土の宗像市田島に鎮座し、宗像大社三宮の中で最もアクセスしやすい場所にあります。境内奥に位置する高宮祭場は、社殿を持たない露天の祭祀場であり、古代の自然崇拝の形態をそのまま今に伝える全国的にも極めて貴重な場所です。また、神宝館には沖ノ島出土の国宝約8万点の一部が展示されており、古代東アジア交流の歴史を間近で学ぶことができます。

住所
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福岡県宗像市田島2331
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地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR東郷駅よりバス宗像大社経由・神湊波止場行き(約15分)「宗像大社前」下車(徒歩約5分)
URL
URL
https://www.okinoshima-heritage.jp/visit/hetsumiya

新原・奴山古墳群 / Shinbaru Nuyama Kofun Gun[Shinbaru Nuyama tumulus complex]

新原・奴山古墳群は、福津市の台地上に広がる5世紀から6世紀に築造された古墳群で、前方後円墳5基、円墳35基、方墳1基の計41基が確認されています。これらは海上交易を通じて力を蓄えた宗像氏の族長たちの墓域と考えられており、古墳の規模や副葬品から、大和政権と朝鮮半島をつなぐ海上交通の要衝を支配した宗像氏の権力と繁栄を読み取ることができます。台地からは玄界灘を一望でき、海と密接に結びついた宗像氏の歴史を実感できる景観が残されています。

住所
Address
福岡県福津市奴山・勝浦
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アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR福間駅より自動車(約20分)
URL
URL
https://www.okinoshima-heritage.jp/visit/shimbaru

福岡県の世界遺産を巡るために

福岡県の世界遺産は、大きく分けて県南部の大牟田市周辺(三池炭鉱関連)、県北部の北九州市・中間市(八幡製鐵所・遠賀川水源地ポンプ室)、そして宗像市・福津市(宗像・沖ノ島関連)の3つのエリアに点在しています。

三池炭鉱の構成資産は大牟田市内に集中しているため、JR大牟田駅を拠点に周遊が可能です。宮原坑と専用鉄道敷跡は隣接しており、三池港もバスでアクセスできます。一方、北九州エリアの八幡製鐵所と中間市の遠賀川水源地ポンプ室はJR鹿児島本線沿いにあり、電車とバスを組み合わせて訪問できます。

宗像・沖ノ島関連の遺産群を巡る際は、JR東郷駅を拠点とするのが便利です。辺津宮はバスで約15分、大島の中津宮と沖津宮遥拝所へはさらに神湊港からフェリーを利用します。新原・奴山古墳群はJR福間駅から車で約20分の場所にあります。なお、沖ノ島は一般の上陸が禁止されているため、大島の沖津宮遥拝所から拝む形となります。

福岡県の世界遺産は、日本の近代産業化の歴史と、古代から連綿と続く海洋信仰の歴史という、異なる2つの側面から日本文化の奥深さを体験できる貴重な観光資源です。歴史や文化に関心のある方はもちろん、福岡観光の際にはぜひ足を運んでみてください。