栃木県の日本ジオパーク・ユネスコ世界ジオパーク 一覧・まとめ / Japanese Geoparks and UNESCO Global Geoparks in Tochigi 〜保護と教育やツーリズムへの活用で持続可能な社会や地球のあり方を考え、地域経済を活性化する大地の遺産〜
ジオパーク(Geopark)とは、地球(ジオ=Geo)と公園(パーク=Park)を組み合わせた言葉で、「大地の公園」を意味します。地質学的に貴重な自然遺産や美しい景観を有する地域を、単に保護するだけでなく、教育や観光に積極的に活用することで、持続可能な地域社会の発展に貢献することを目的としています。
ジオパークの3つの活動理念
ジオパークの活動は、以下の3つの柱によって支えられています。
- 保護(Conservation):美しい自然景観や学術的・地球科学的に貴重な地質遺産を適切に保全し、後世に引き継ぐ活動です。地層、化石、鉱物、地形などの地質学的資源を、科学的な視点から管理・保護します。
- 教育(Education):山や川、地層、火山、化石などを実際に観察することを通じて、大地の成り立ちや仕組み、生態系と人間生活の関わりを学ぶ活動です。地球科学への理解を深め、防災意識の向上にも貢献します。
- ジオツーリズム(Geotourism):地球科学的な現象に対して単なる鑑賞を超えた興味・関心を喚起し、知識と理解の獲得を目指す観光を推進する活動です。地域の自然・文化資源を活かした持続的な経済活動を通じて、地域経済の活性化にも寄与します。
日本ジオパークとユネスコ世界ジオパークの違い
ジオパークには、日本ジオパーク委員会(JGC:Japan Geopark Committee)が認定する「日本ジオパーク」と、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)が正式プログラムとして認定する「ユネスコ世界ジオパーク(UNESCO Global Geopark)」の2種類があります。
日本ジオパークの名称は、日本ジオパーク委員会による加盟審査と認定を受けた地域のみが使用でき、4年に一度の再審査によって活動の質と成果が定期的に評価されます。認定地域には常に品質の維持・向上が求められ、条件を満たさない場合は認定が取り消されることもあります。
ユネスコ世界ジオパークの認定を受けるには、まず日本ジオパーク委員会から推薦を受けた上で、UNESCOによる国際審査を通過する必要があります。世界ジオパークは、国際的な地質学的価値に加えて、充実した教育プログラムや地域コミュニティとの連携、持続可能な開発への取り組みなどにおいて、より高い水準が求められます。こちらも4年ごとの再審査が実施されます。
ジオパーク認定制度の歴史
ジオパーク制度は、2000年にヨーロッパの地質学者たちによって設立されたヨーロッパジオパークネットワーク(EGN:European Geoparks Network)に始まります。2004年にはUNESCOの支援のもとで世界ジオパークネットワーク(GGN:Global Geoparks Network)が設立され、国際的な枠組みが整備されました。
2015年のUNESCO第38回総会において、「ユネスコ世界ジオパーク」が正式な国際プログラムとして承認されました。これにより、ジオパークは世界遺産や無形文化遺産、生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)と並ぶ、UNESCOの主要な国際認定制度のひとつとなりました。
日本では、2008年に日本ジオパーク委員会が発足し、2009年に日本ジオパークネットワーク(JGN:Japanese Geopark Network)が設立されました。以来、日本各地で地域固有の地質遺産を活かしたジオパーク活動が広がっています。
このページでは、栃木県におけるジオパークの登録状況と、栃木県が有する豊かな地質学的特徴について紹介します。
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ジオパークの登録無し
栃木県の地質学的特徴と自然遺産
栃木県には現在、日本ジオパークおよびユネスコ世界ジオパークとして認定された地域はありません。しかし、栃木県は地質学的に非常に多様で豊かな自然遺産を有しています。関東平野の北部に位置し、県北部から西部にかけて山岳地帯が広がる地形は、火山活動・河川侵食・地殻変動といった多様な地球科学的プロセスによって形成されました。
那須火山帯と温泉資源
県北部に位置する那須岳(茶臼岳、標高1,915m)は、現在も噴気活動を続ける活火山であり、気象庁による常時観測対象火山に指定されています。茶臼岳の山頂付近では硫気孔からの噴気が確認でき、火山活動を間近で観察できる貴重なフィールドです。那須火山帯に属するこの地域は豊富な温泉資源にも恵まれ、那須温泉郷・塩原温泉郷・鬼怒川温泉・川治温泉・湯西川温泉など数多くの名湯が点在し、火山がもたらす大地の恩恵を体感することができます。
日光の火山地形と水系
日光国立公園を擁する県西部は、男体山(標高2,486m)をはじめとする火山群によって造られた壮大な自然景観が広がります。約2万年前の男体山の噴火によって大谷川がせき止められて誕生した中禅寺湖は、日本を代表する火山堰止湖のひとつです。その湖水が流れ落ちる華厳の滝(落差97m)は日本三名瀑のひとつに数えられ、柱状節理の岩壁と相まって地球の造形美を感じさせます。また、戦場ヶ原は標高約1,400mに広がる高層湿原で、約2万年前の湖が長い年月をかけて湿原化した地形の変遷を物語る場所です。
大谷石(おおやいし)と地下採掘場跡
宇都宮市北西部の大谷地区で産出される大谷石は、約2,000万年前(新第三紀中新世)の海底火山の噴火によって堆積した軽石凝灰岩(グリーンタフ)です。耐火性と加工のしやすさから古くより建材として重宝され、フランク・ロイド・ライト設計の旧帝国ホテルにも採用されたことで国際的にも知られています。大谷資料館に併設された地下採掘場跡は、平均地下温度が約8度に保たれた巨大な地下空間であり、地球の地質史と人間の産業活動の関わりを体感できるジオサイトとして多くの来訪者を集めています。
足尾山地と鉱山遺産
県南西部に位置する足尾山地は、古生代から中生代にかけて形成された地層が露出しており、日本列島の形成過程を読み解くうえで重要な地質学的エリアです。足尾銅山は江戸時代の慶長年間(1610年頃)に発見され、約400年にわたる採掘の歴史を持つ日本有数の銅山です。最盛期には日本の銅産出量の約40%を占め、鉱業技術の発展と近代化に大きく貢献しました。現在は産業遺産として、鉱山の歴史と自然環境の変遷を学ぶことができます。
関東平野北縁の地形と渡良瀬遊水地
県南部に広がる関東平野の北縁部では、利根川・渡良瀬川水系によって形成された河岸段丘や沖積平野が発達しています。渡良瀬遊水地は、足尾銅山の鉱毒事件を契機に造成された日本最大級の遊水地(面積約33平方キロメートル)で、洪水調節機能を持つと同時に、2012年にはラムサール条約湿地に登録されました。多様な動植物が生息する湿地環境として、生態学的にも高い価値を有しています。
このように、栃木県は活火山・火山堰止湖・温泉・凝灰岩採掘場・鉱山遺産・河川地形・湿原と、多様な地質学的要素が凝縮された地域です。ジオパークの理念である「保護・教育・ジオツーリズム」の観点からも、大きな可能性を秘めた大地の遺産が数多く存在しています。

