中華人民共和国・遼寧省の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Liaoning China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~
世界遺産とはユネスコ総会で採択された世界遺産条約「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて登録された遺跡、景観、自然などの人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を持ち、移動が不可能な物件を指します。
つまり世界遺産の登録の本来の目的は自然や文化的に価値のあるものを保護・保全し、過去から未来へと伝えていくことです。
ただ、一方でよくテレビやインターネットで目にする世界遺産に関するニュースで聞かれるように、世界遺産に登録されることで知名度があがり、観光名所としてのブランド力を持つことも近年では期待されています。
中華人民共和国・遼寧省は中国東北部に位置し、渤海と黄海に面する歴史的に重要な地域です。満州族の故郷であり清王朝発祥の地として知られる遼寧省には、中国の壮大な歴史を物語る4つの世界遺産(すべて文化遺産)が所在しています。万里の長城の東端から清朝の皇帝が築いた壮麗な宮殿や陵墓、そして古代高句麗王国の遺跡まで、遼寧省の世界遺産は中国の多層的な歴史と文化の深さを伝えています。
遼寧省の省都・瀋陽はかつて清王朝初期の首都であり、「盛京」と呼ばれた時代の建造物が今もなお残されています。また、遼寧省は朝鮮半島との国境に近く、高句麗文明の重要な拠点でもありました。これらの多様な歴史的背景が、この地域に複数の世界遺産をもたらしています。
今回はそんな保護・保全をしながらも観光資源としても注目を浴びている中華人民共和国・遼寧省の世界遺産を紹介します。
まず、世界遺産が登録される基準を下記に記載します。
世界遺産登録基準(10項目)の詳細は、出典のWikipedia「世界遺産」をご参照ください。
(1)~(6)を満たすものが文化遺産、(7)~(10)を満たすものが自然遺産、文化遺産と自然遺産の条件をそれぞれ1つ以上を満たすものが複合遺産としての登録基準となります。
以下で紹介する世界遺産の「登録基準」項目の記載番号は上記の世界遺産登録基準の番号に対応しています。
中華人民共和国・遼寧省の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Liaoning China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~
以下では遼寧省に所在する4件の世界遺産を個別に紹介します。いずれも中国の長い歴史の中で重要な役割を果たした建造物や遺跡であり、紀元前からの古代文明、中世の防衛施設、そして近世の王朝文化までを包含する多様な歴史的価値を持っています。
観光に便利な宿泊施設:遼寧省(瀋陽、丹東)のホテル一覧
万里の長城 / Banri No Choujou[The Great Wall]
万里の長城は、紀元前7世紀頃から約2000年にわたって構築された人類史上最大規模の建造物です。総延長は約21,196kmに及び、中国北方の遊牧民族の侵入を防ぐ目的で、秦の始皇帝による統一をはじめ漢・明など歴代の王朝によって増築・修復が繰り返されました。
遼寧省には万里の長城の東端にあたる重要な区間が位置しています。葫蘆島市綏中県にある九門口長城(きゅうもんこうちょうじょう)は「水上長城」とも呼ばれ、九江河の上を横断する独特の構造を持つことで知られています。この区間は明代(1381年)に大将軍・徐達の命により建設されたもので、長城が河川を渡る珍しい光景は訪問者に強い印象を与えます。城壁の上部には見張り台や烽火台が設けられており、当時の軍事防衛の仕組みを今に伝えています。
1987年に世界遺産に登録された万里の長城は、人類の建築技術と組織力の到達点を示す記念碑的遺産として、世界中から訪問者を集めています。
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
1987年 |
| 登録基準 Criteria |
(1)、(2)、(3)、(4)、(6) |
| 住所 Address |
Suizhong, Huludao, Liaoning, China |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
北京首都国際空港より自動車(約4時間) |
| URL URL |
https://www.jmksscc.com/ |
北京と瀋陽の明・清王朝皇宮 / Beijing To Shenyang No Ming Qing Ohchou Koukyuh[Imperial Palaces of the Ming and Qing Dynasties in Beijing and Shenyang]
「北京と瀋陽の明・清王朝皇宮」は、北京の紫禁城(故宮)と瀋陽の瀋陽故宮の2つの宮殿群で構成される世界遺産です。北京の紫禁城は1987年に最初に登録され、2004年に瀋陽故宮が拡張登録されました。
遼寧省に位置する瀋陽故宮は、清朝(後金)の初代皇帝ヌルハチ(太祖)と第2代皇帝ホンタイジ(太宗)によって1625年から1636年にかけて建設された宮殿です。清朝が北京に遷都する以前の都「盛京」に置かれた皇帝の居城であり、満州族の建築様式に漢族・モンゴル族の要素が融合した独自の建築美が特徴です。
宮殿は東路・中路・西路の3つの区域に分かれており、東路にはヌルハチが建設した大政殿と十王亭が配置されています。大政殿は八角形の特徴的な形状を持ち、満州族の伝統的な建築様式を色濃く反映しています。中路にはホンタイジが建設した崇政殿や鳳凰楼などがあり、政務と居住の空間として機能していました。現在は瀋陽故宮博物院として一般公開されており、清朝初期の宮廷文化や満州族の歴史を伝える貴重な文化財を所蔵しています。
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
1987年(拡張年:2004年) |
| 登録基準 Criteria |
(1)、(2)、(3)、(4) |
| 住所 Address |
瀋陽故宮:171 Shenyang Rd, ZhongJie ShangQuan, Shenhe Qu, Shenyang Shi, Liaoning Sheng, China, 110011 |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
瀋陽故宮:大連周水子国際空港より自動車(約4時間20分) |
| URL URL |
https://www.dpm.org.cn/Home.html |
明・清王朝の皇帝墓群 / Ming Qing Ohchou No Kouteibo Gun[Imperial Tombs of the Ming and Qing Dynasties]
「明・清王朝の皇帝墓群」は、中国の明王朝と清王朝の歴代皇帝の陵墓を包含する世界遺産です。2000年に最初の登録がなされ、2003年と2004年に遼寧省の陵墓を含む拡張登録が行われました。
遼寧省瀋陽市に所在する清朝の陵墓として、昭陵(しょうりょう・北陵)と福陵(ふくりょう・東陵)の2つが世界遺産の構成資産に含まれています。昭陵は清朝第2代皇帝ホンタイジ(太宗)とその皇后の陵墓で、瀋陽市皇姑区に位置しています。敷地面積は約450万平方メートルに及び、清朝の皇帝陵の中でも最大規模を誇ります。陵園内には正紅門、碑亭、隆恩殿、宝頂などが南北の中軸線上に配置され、中国伝統の風水思想に基づいた壮大な空間設計が見られます。
福陵は清朝の創始者ヌルハチ(太祖)とその皇后の陵墓で、瀋陽市渾南区の天柱山に築かれています。山の地形を巧みに活かした設計が特徴で、108段の石段を登ると本殿に至る構成は自然と建築の見事な調和を示しています。昭陵・福陵ともに、満州族と漢族の建築様式が融合した独特の陵墓建築として高い評価を受けており、清朝初期の葬送文化と皇帝権力の象徴を今に伝えています。
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
2000年(拡張年:2003年、2004年) |
| 登録基準 Criteria |
(1)、(2)、(3)、(4)、(6) |
| 住所 Address |
昭陵:Huanggu, Shenyang, China, 110033 |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
昭陵:大連周水子国際空港より自動車(約4時間20分) |
| URL URL |
高句麗前期の都城と古墳 / Koukuri Zenki No Tojou To Kofun[Capital Cities and Tombs of the Ancient Koguryo Kingdom]
「高句麗前期の都城と古墳」は、紀元前37年から668年まで存在した古代高句麗王国の遺跡群を対象とした世界遺産です。2004年に中国で登録されたこの遺産は、東アジアの古代史において重要な文明の記録を保存しています。
遼寧省本渓市桓仁満族自治県に位置する五女山城(ごじょさんじょう)は、この世界遺産の重要な構成資産の一つです。五女山城は高句麗王国の最初の王都・卒本城(そつほんじょう)の所在地と考えられており、高句麗の建国者である朱蒙(しゅもう・東明聖王)がこの地に都を定めたとされています。
五女山の山頂(標高約820m)に築かれたこの山城は、天然の断崖を防御壁として利用し人工の城壁と組み合わせた高度な築城技術を示しています。山城の内部には宮殿跡、兵営跡、貯水施設、瞭望台などの遺構が確認されており、古代高句麗の軍事・政治・生活の様相を知る上で貴重な考古学的資料となっています。周囲の山岳地帯と渾江の渓谷が織りなす雄大な自然景観も相まって、歴史的・景観的な価値が高く評価されています。
高句麗文明は中国東北部から朝鮮半島北部にかけて栄えた王国であり、その文化的影響は東アジア全域に及びました。五女山城の遺構は、この偉大な文明の発祥期における都市設計と防衛思想を今に伝える貴重な証拠です。
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
2004年 |
| 登録基準 Criteria |
(1)、(2)、(3)、(4)、(5) |
| 住所 Address |
五女山城:Huanren, Benxi, Liaoning, China |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
五女山城:大連周水子国際空港より自動車(約6時間) |
| URL URL |
まとめ:遼寧省の世界遺産の魅力
遼寧省の4つの世界遺産は、いずれも中国の悠久の歴史と文化の多様性を象徴する存在です。万里の長城は古代から中世にかけての国防と国家統一の歴史を、瀋陽故宮と皇帝墓群は満州族による清朝建国の壮大な歴史を、そして五女山城は東アジアの古代文明である高句麗の起源を物語っています。
瀋陽を拠点にすれば瀋陽故宮と昭陵・福陵を効率的に巡ることができ、足を延ばせば本渓の五女山城や葫蘆島の九門口長城へもアクセスが可能です。中国東北部の豊かな歴史的層を体感できる遼寧省の世界遺産巡りは、歴史愛好家にとって充実した旅となるでしょう。

