熊本県の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Kumamoto ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

Japan,Kumamoto,Travel,UNESCO World Heritage Sites

親記事:日本全国・都道府県の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Japan ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

熊本県には、日本の近代化の歩みを物語る貴重な世界遺産が所在しています。2015年にユネスコ世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産として、三池炭鉱 万田坑(荒尾市)と三角西港(宇城市)の2か所が含まれています。これらの遺産は、幕末から明治期にかけて日本が急速な産業化を遂げた過程を示す、世界的にも類を見ない産業遺産群の一部です。

世界遺産とは、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)総会で1972年に採択された世界遺産条約「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて登録された遺跡、景観、自然などを指します。登録されるためには、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」を有し、かつ移動が不可能な不動産であることが求められます。

世界遺産登録の本来の目的は、自然や文化的に価値のあるものを国際的な枠組みのもとで保護・保全し、現在から未来の世代へと確実に継承していくことにあります。同時に、世界遺産に登録されることで国際的な知名度が向上し、地域の観光振興や文化的アイデンティティの再確認にもつながっています。

熊本県の世界遺産は、いずれも日本の近代産業の発展を証明する文化遺産です。石炭産業の技術革新を伝える万田坑と、オランダ人技師の設計による明治期の港湾土木技術の粋を集めた三角西港は、それぞれ異なる角度から日本の近代化の歩みを今に伝えています。以下では、世界遺産の登録基準と熊本県に所在する各構成資産の詳細をご紹介します。

世界遺産が登録される基準は以下のとおりです。

  • (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
  • (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
  • (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
  • (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
  • (5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
  • (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
  • (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
  • (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
  • (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
  • (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

(1)~(6)を満たすものが文化遺産、(7)~(10)を満たすものが自然遺産、文化遺産と自然遺産の条件をそれぞれ1つ以上を満たすものが複合遺産としての登録基準となります。

以下で紹介する世界遺産の「登録基準」項目の記載番号は上記の世界遺産登録基準の番号に対応しています。

熊本県の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Kumamoto ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~


観光に便利な宿泊施設:熊本県のホテル一覧

明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業 / Meiji Nihon No Sangyou Kakumei Isan Seitetsu Tekkou Zousen Sekitan Sangyou[Sites of Japan’s Meiji Industrial Revolution: Iron and Steel, Shipbuilding and Coal Mining]

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
2015年
登録基準
Criteria
(2)、(4)

三池炭鉱 万田坑 / Miike Tankou Manda Kou[Miike Coal Mine Manda Pit]

三池炭鉱 万田坑は、日本最大規模の炭鉱であった三池炭鉱の主力坑の一つです。1902年(明治35年)に第一竪坑が完成し、1908年(明治41年)には第二竪坑が開坑しました。地下264メートルに達する竪坑から石炭を採掘し、最盛期には年間数十万トンもの石炭を産出して、日本の近代産業を支えるエネルギー供給の要として機能しました。

万田坑の特筆すべき点は、明治期の炭鉱施設がほぼ完全な形で現存していることです。イギリス製の巻揚機が設置された第二竪坑櫓(やぐら)は高さ約22メートルの鋼鉄製で、当時の最先端技術を導入した証として国の重要文化財にも指定されています。また、レンガ造りの事務所やポンプ室、汽罐場(ボイラー室)跡など、炭鉱の操業を支えたさまざまな施設群を間近に見学することができます。

1951年(昭和26年)に採炭が終了し、その後は排水専用坑として1997年(平成9年)まで使用されました。現在は荒尾市によって整備・公開されており、ガイド付きの見学ツアーも実施されています。日本の石炭産業の歴史と技術革新を肌で感じることができる、学びの多い産業遺産です。

住所
Address
熊本県荒尾市原万田200−2
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR荒尾駅より産交バス万田中・倉掛方面行き(約10)「万田坑前」下車(徒歩約5分)、JR大牟田駅より西鉄バス笹林・一部橋経由倉掛行き(約15分)「神田」「倉掛」「万田坑」下車(徒歩約5分)
URL
URL
https://www.city.arao.lg.jp/q/list/385.html

三角西港 / Misumi Nishi Kou[Misumi West Port]

三角西港は、1887年(明治20年)に開港した明治期の港湾施設で、明治三大築港の一つに数えられています。オランダ人水理工師ローウェンホルスト・ムルドルの設計に基づき、当時の内務省の直轄事業として約3年の歳月をかけて築造されました。天草諸島への玄関口として、また三池炭鉱から産出された石炭の積出港として、日本の近代貿易と産業発展に大きく貢献しました。

三角西港の最大の特徴は、明治期に築造された石積みの埠頭や水路、建造物群が、築港当時の姿をほぼ完全にとどめている点です。全長756メートルにわたる石積みの埠頭は、精緻な切石工法によって築かれており、130年以上経った現在も堅固な姿を保っています。港の背後には、旧三角海運倉庫(現・浦島屋)、旧高田回漕店、旧宇土郡役所など、明治期の洋風建築が並び、当時の港町の風情を色濃く残しています。

小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が1893年に三角西港を訪れた際の紀行文「夏の日の夢」にもこの港の情景が描かれており、文学的にも価値のある場所です。現在は国の重要文化財に指定された建造物群とともに、散策や歴史散歩を楽しむことができる観光スポットとして親しまれています。天草五橋を望む海辺の景観も美しく、歴史と自然が調和した魅力的なエリアです。

住所
Address
熊本県宇城市三角町三角浦
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
JR三角駅より自動車(約10分)、JR三角駅(徒歩約5分)東港バス停より宇土駅前行き(約10分)「三角西港前」下車(徒歩約1分)、JR三角駅(徒歩約10分)五橋入口バス停よりバス熊本交通センター行き(約5分)「三角西港前」下車(徒歩約1分)
URL
URL
https://www.city.uki.kumamoto.jp/q/list/389.html

熊本県の世界遺産を訪れる際のポイント

熊本県に所在する2つの世界遺産構成資産は、いずれも「明治日本の産業革命遺産」として一括登録されたものであり、日本が西洋以外の地域で初めて、かつ約50年という極めて短期間で産業化を成し遂げた歴史的過程を証明する遺産です。万田坑では石炭採掘の技術と労働の歴史を、三角西港では港湾土木技術と国際貿易の発展を、それぞれ体感することができます。

熊本県内の2つの構成資産は車で約1時間半の距離にあり、1日で両方を巡ることも可能です。また、同じ「明治日本の産業革命遺産」の構成資産である福岡県の三池炭鉱関連施設や、長崎県の端島(軍艦島)・グラバー園なども比較的近い九州圏内に点在しているため、複数の構成資産を組み合わせた周遊プランもおすすめです。日本の近代化という壮大な物語を、熊本を起点に九州各地で体験してみてはいかがでしょうか。