中華人民共和国・広西チワン族自治区の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Guangxi China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

3月 31, 2026China,Guangxi,Travel,UNESCO World Heritage Sites,World

親記事:世界各国の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in the World ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~

世界遺産とはユネスコ総会で採択された世界遺産条約「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて登録された遺跡、景観、自然などの人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を持ち、移動が不可能な物件を指します。

つまり世界遺産の登録の本来の目的は自然や文化的に価値のあるものを保護・保全し、過去から未来へと伝えていくことです。

ただ、一方でよくテレビやインターネットで目にする世界遺産に関するニュースで聞かれるように、世界遺産に登録されることで知名度があがり、観光名所としてのブランド力を持つことも近年では期待されています。

今回はそんな保護・保全をしながらも観光資源としても注目を浴びている中華人民共和国・広西チワン族自治区の世界遺産を紹介します。

広西チワン族自治区とは

広西チワン族自治区(広西壮族自治区)は、中国南部に位置する少数民族自治区で、ベトナムとの国境に接しています。面積は約23万6,700平方キロメートルで、人口は約5,000万人を超えます。区都は南寧(なんねい / Nanning)市です。

中国最大の少数民族であるチワン族(壮族)をはじめ、ヤオ族、ミャオ族、トン族、ムーラオ族など12の少数民族が暮らす多民族地域であり、独自の文化・言語・伝統が色濃く残っています。

地理的には、石灰岩からなるカルスト地形が広大に広がり、桂林(けいりん / Guilin)や陽朔(ようさく / Yangshuo)周辺のタワーカルストは「桂林山水甲天下(桂林の山水は天下に冠たり)」と古くから称えられる中国を代表する景勝地です。漓江(りこう / Li River)沿いの幻想的な風景は水墨画のモチーフとしても世界的に知られ、中国の20元紙幣にも描かれています。

このように広西チワン族自治区は、壮大な自然景観と少数民族の豊かな文化遺産が共存する地域であり、世界遺産に登録された2つの物件はその価値を世界に示すものです。

広西チワン族自治区の世界遺産の概要

広西チワン族自治区には、自然遺産1件と文化遺産1件の計2件の世界遺産が登録されています。

  • 中国南方カルスト(自然遺産・2007年登録 / 2014年拡張) ― 数億年にわたるカルスト地形の進化を示す地質学的に重要な遺産。広西の桂林・陽朔エリアは2014年の拡張登録で追加されました。
  • 左江花山の岩絵の文化的景観(文化遺産・2016年登録) ― 紀元前5世紀から紀元後2世紀にかけてチワン族の祖先である駱越(らくえつ)人が描いた大規模な岩絵群で、中国南部の青銅器時代の文化を伝える貴重な遺産です。

まず、世界遺産が登録される基準を下記に記載します。

  • (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
  • (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
  • (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
  • (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
  • (5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
  • (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
  • (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
  • (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
  • (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
  • (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

(1)~(6)を満たすものが文化遺産、(7)~(10)を満たすものが自然遺産、文化遺産と自然遺産の条件をそれぞれ1つ以上を満たすものが複合遺産としての登録基準となります。

以下で紹介する世界遺産の「登録基準」項目の記載番号は上記の世界遺産登録基準の番号に対応しています。

中華人民共和国・広西チワン族自治区の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Guangxi China ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~


観光に便利な宿泊施設:広西壮族自治区(桂林)のホテル一覧

中国南方カルスト / Chuhgoku Nanpou Karst[South China Karst]

中国南方カルストは、中国南部に広がる世界最大級のカルスト地形群を対象とした自然遺産です。雲南省の石林、貴州省の茘波とともに2007年に初めて登録され、2014年の拡張登録で広西チワン族自治区の桂林カルスト(桂林・陽朔エリア)、重慶の武隆カルスト、貴州省の施秉カルスト、雲南省の澄江の化石産地が追加されました。

広西の桂林カルスト地域は、約3億年前の石灰岩層が長年にわたる雨水や河川の侵食を受けて形成された「タワーカルスト」と「コーンカルスト」の代表的な景観で知られています。タワーカルストとは、平坦な沖積平野から急峻にそびえ立つ塔状の石灰岩の山々のことで、漓江沿いの桂林から陽朔にかけての景観が世界的に有名です。一方のコーンカルストは、円錐状の丘が連続する地形で、桂林市北部の山岳地帯に見られます。

この地域のカルスト地形は、熱帯から亜熱帯の湿潤な気候条件のもとで形成されたものであり、地球の地質学的歴史の中でカルスト地形がどのように進化してきたかを示す、科学的に極めて重要な証拠です。登録基準(7)の「ひときわすぐれた自然美」と(8)の「地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本」の両方を満たしています。

観光面では、漓江下りの遊覧船から眺めるタワーカルストの景観が最大の見どころです。朝もやの中に浮かぶ石灰岩の山々は、まさに中国の伝統的な水墨画の世界そのものです。また、陽朔周辺では自転車やいかだでのんびりとカルスト地形を巡ることもでき、自然と触れ合いながら世界遺産を体験できます。

登録区分
Type
自然遺産
登録年
Designated
2007年(拡張年:2014年)
登録基準
Criteria
(7)、(8)
住所
Address
Yangshuo,Guilin, Guangxi, China
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
広州白雲国際空港より自動車(約5時間)
URL
URL

左江花山の岩絵の文化的景観 / Sakoukazan No Iwae No Bunkateki Keikan[Zuojiang Huashan Rock Art Cultural Landscape]

左江花山の岩絵の文化的景観は、2016年に中国初の岩絵に関する世界文化遺産として登録されました。広西チワン族自治区南部の崇左(すうさ / Chongzuo)市を中心に、左江とその支流である明江沿いの急峻な崖面に描かれた38か所・109群の岩絵で構成されています。

これらの岩絵は、紀元前5世紀から紀元後2世紀にかけて、チワン族(壮族)の祖先とされる駱越(らくえつ)人によって制作されました。最大の岩絵群である花山(ファシャン / Huashan)の崖面は、高さ約270メートル、幅約170メートルにわたり、1,900点以上の図像が赤褐色の顔料(赤鉄鉱を主成分とする塗料)で描かれています。

図像の多くは、両手を上げ両脚を開いた特徴的な人物像(「蛙人」とも呼ばれる)で、銅鼓(どうこ / 青銅製の太鼓)、刀剣、犬などの動物とともに描かれています。これらは駱越人の祭祀・儀礼の場面を表していると考えられており、古代中国南部における青銅器時代の信仰・社会構造・文化を理解するうえで極めて重要な資料です。

登録基準(3)の「現存するまたは消滅した文化的伝統の稀な証拠」と(6)の「顕著で普遍的な意義を有する出来事や伝統と直接に関連するもの」を満たしています。特に、岩絵の規模の大きさと密集度、そして約2,000年にわたって制作が続けられた継続性は、世界的にも類例が少なく、東アジアの岩絵文化を代表する存在です。

岩絵は切り立った崖の高い位置に描かれており、駱越人がどのようにしてこれほどの高所に絵を描いたのかは、足場を組んだ説、ロープで吊り下がった説、水位が高い時期に舟から描いた説など諸説あり、現在も研究が続けられています。この謎もまた、花山岩絵の魅力のひとつです。

観光では、明江沿いを船で移動しながら崖面に描かれた岩絵群を間近に眺める遊覧コースが一般的です。川面から見上げる壮大な岩絵は、約2,000年前の人々の営みを直に感じられる貴重な体験となります。

登録区分
Type
文化遺産
登録年
Designated
2016年
登録基準
Criteria
(3)、(6)
住所
Address
Ningming, Chongzuo, Guangxi, China
地図
Map
地図(Map)
アクセス・最寄り駅
Access, Nearest station
上海浦東国際空港より中国国内線(約3時間)「桂林両江国際空港」到着後、自動車(約8時間)
URL
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まとめ

広西チワン族自治区の2つの世界遺産は、数億年の地質学的歴史が生み出したカルスト地形の自然美と、約2,000年前の少数民族の祖先が残した文化的遺産という、まったく異なる性格を持ちながら、いずれも人類にとって普遍的な価値を有しています。

中国南方カルストの桂林エリアは比較的アクセスが良く、中国国内外から多くの観光客が訪れる人気の景勝地です。一方、左江花山の岩絵は辺境に位置するため観光客はまだ多くありませんが、その分、手つかずの自然と歴史的遺産を静かに堪能できる穴場の世界遺産といえます。

広西チワン族自治区を訪れる際には、自然遺産と文化遺産の両方をあわせて巡ることで、この地域の多層的な魅力をより深く理解することができるでしょう。