タイ王国の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Kingdom of Thailand ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~
世界遺産とは、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)総会で1972年に採択された世界遺産条約「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて登録された遺跡、景観、自然などの、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」を持つ不動産を指します。世界遺産の登録は、自然や文化的に価値のあるものを保護・保全し、過去から現在、そして未来へと確実に伝えていくことを本来の目的としています。
タイ王国(Kingdom of Thailand)は、東南アジアのインドシナ半島中央部に位置し、古くからインド文明や中国文明の影響を受けながらも独自の文化を発展させてきた歴史ある国です。13世紀のスコータイ王朝に始まり、アユタヤ王朝、トンブリー王朝、そして現在のラタナコーシン王朝(チャクリー王朝)に至るまで、東南アジアで唯一植民地化されなかった国として知られています。
タイは2023年時点で合計7件のユネスコ世界遺産を有しています。内訳は文化遺産4件(スコータイの歴史上の町と関連の歴史上の町、古都アユタヤ、バーンチエン遺跡、シーテープの古代都市と関連するドヴァーラヴァティー遺跡群)と自然遺産3件(トゥンヤイ-フワイ・カーケン野生生物保護区、ドンパヤーイェン-カオヤイ森林地帯、ケーンクラチャン森林保護区群)です。スコータイ王朝やアユタヤ王朝の栄華を伝える文化遺産から、熱帯モンスーン気候がもたらす豊かな生態系を誇る自然遺産まで、タイの世界遺産は同国の歴史的・自然的な魅力を幅広く体現しています。
本記事では、タイ王国が誇る全7件の世界遺産について、登録基準や所在地などの基本情報に加え、それぞれの歴史的背景や見どころを詳しく紹介します。
まず、世界遺産が登録される基準を下記に記載します。
- (1) 人類の創造的才能を表現する傑作。
- (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
- (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
- (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
- (5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
- (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
- (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
- (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
- (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
- (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。
(1)~(6)を満たすものが文化遺産、(7)~(10)を満たすものが自然遺産、文化遺産と自然遺産の条件をそれぞれ1つ以上を満たすものが複合遺産としての登録基準となります。
以下で紹介する世界遺産の「登録基準」項目の記載番号は上記の世界遺産登録基準の番号に対応しています。
タイ王国の世界遺産 一覧・まとめ / UNESCO World Heritage Sites in Kingdom of Thailand ~文化遺産(負の世界遺産、文化的景観、産業遺産、近代化遺産、稼働遺産)、自然遺産、複合遺産、危機遺産~
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スコータイの歴史上の町と関連の歴史上の町 / Sukhothai No Rekishi Jou No Machi To Kanren No Rekishi Jou No Machi[Historic Town of Sukhothai and Associated Historic Towns]
スコータイはタイ最初の統一王朝であるスコータイ王朝(1238年〜1438年)の首都として栄えた古都です。13世紀にクメール帝国の支配から独立して建国され、第3代ラームカムヘーン大王の治世(1279年〜1298年頃)に最盛期を迎えました。ラームカムヘーン大王はタイ文字の考案者としても知られ、スコータイはタイの文化・芸術・宗教の揺籃の地とされています。
世界遺産に登録されたスコータイ歴史公園には、スコータイ旧市街を中心に、シーサッチャナーライ歴史公園やカムペーンペット歴史公園といった関連遺跡群が含まれます。城壁に囲まれた旧市街には、壮大な仏教寺院ワット・マハータートをはじめ、ワット・シーチュム(巨大な座仏像で有名)、ワット・サーシーなど、スコータイ様式と呼ばれる優美な仏像や蓮の蕾を模した仏塔(チェーディー)が数多く残されています。スコータイ芸術の特徴である「歩く仏陀像(遊行仏)」は、タイ仏教美術の最高傑作と評されています。
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
1991年 |
| 登録基準 Criteria |
(1)(3) |
| 住所 Address |
[Sukhothai Historical Park]:Mueang Kao, Muang Sukhothai, Sukhothai 64210 Thailand |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
[Sukhothai Historical Park]:スワンナプーム国際空港より自動車(約6時間)、ドンムアン空港より自動車(約5時間30分) |
| URL URL |
https://www.thailandtravel.or.jp/areainfo/sukhothai/ |
古都アユタヤ / Koto Ayutthaya[Historic City of Ayutthaya]
アユタヤは1351年にウートン王(ラーマーティボーディー1世)によって建都され、1767年にビルマ(現ミャンマー)のコンバウン朝軍によって陥落するまでの約417年間、35代の王が治めたアユタヤ王朝の都です。チャオプラヤー川、パーサック川、ロップリー川の3つの河川が合流する中州に築かれたこの都市は、水運を活かした国際貿易都市として繁栄し、最盛期の17世紀には人口100万人を超え、当時のロンドンやパリを凌ぐ世界有数の大都市でした。
日本人傭兵隊長の山田長政が活躍した日本人町もアユタヤに存在し、オランダ、ポルトガル、フランス、中国など各国の商館が置かれた国際色豊かな都市でした。1767年のビルマ軍による破壊を受けたものの、ワット・プラシーサンペット(3基の仏塔が並ぶ王宮寺院)、ワット・マハータート(菩提樹の根に仏頭が取り込まれた象徴的な遺跡)、ワット・ラーチャブラナなど、往時の栄華を物語る壮大な寺院遺跡群が残されています。バンコクから北へ約80kmと近く、日帰りでも訪問可能なアクセスの良さも魅力です。
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
1991年 |
| 登録基準 Criteria |
(3) |
| 住所 Address |
[Ayutthaya Historical Park]:Ayutthaya, Phra Nakhon Si Ayutthaya, Thailand |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
[Ayutthaya Historical Park]:スワンナプーム国際空港より自動車(約1時間30分)、ドンムアン空港より自動車(約1時間) |
| URL URL |
https://www.thailandtravel.or.jp/areainfo/ayutthaya/ |
トゥンヤイ-フワイ・カーケン野生生物保護区 / Thungyai – Huai Kha Khaeng Yasei Seibutsu Hogo Ku[Thungyai – Huai Kha Khaeng Wildlife Sanctuaries]
トゥンヤイ-フワイ・カーケン野生生物保護区は、タイ西部のカンチャナブリー県とウタイターニー県にまたがる、東南アジア最大級の野生動物保護区です。トゥンヤイ・ナレースワン野生生物保護区とフワイ・カーケン野生生物保護区の2つで構成され、総面積は約6,222平方キロメートルに及びます。タイとミャンマーの国境に位置するテナセリム山脈の一部を含み、標高250mから1,811mまでの多様な地形を有しています。
この保護区は、大陸部東南アジアにおいて熱帯林の生態系がほぼ手つかずの状態で残されている貴重な地域です。常緑樹林、落葉樹林、竹林、草原など多様な植生が見られ、野生のトラ(インドシナトラ)、アジアゾウ、ガウル(インドヤギュウ)、バンテン(ジャワヤギュウ)、マレーバク、ウンピョウなどの大型哺乳類をはじめ、120種以上の哺乳類、400種以上の鳥類が生息しています。特にこの地域は、世界の熱帯林の中でも大型草食動物の多様性が際立って高い点が評価され、自然遺産として登録されました。
| 登録区分 Type |
自然遺産 |
| 登録年 Designated |
1991年 |
| 登録基準 Criteria |
(7)、(9)、(10) |
| 住所 Address |
[Huai Kha Khaeng Wildlife Sanctuary]:Rabam, Lan Sak District, Uthai Thani 61160 Thailand |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
[Huai Kha Khaeng Wildlife Sanctuary]:スワンナプーム国際空港より自動車(約5時間)、ドンムアン空港より自動車(約4時間40分) |
| URL URL |
https://www.thailandtravel.or.jp/thungyai-huai-kha-khaeng-wildlife-sanctuaries/ |
バーンチエン遺跡 / Ban Chiang Iseki[Ban Chiang Archaeological Site]
バーンチエン遺跡は、タイ東北部(イサーン地方)のウドンターニー県に位置する先史時代の集落遺跡で、東南アジアにおける先史文化の研究において最も重要な遺跡の一つとされています。1966年にアメリカ人学生スティーブン・ヤングによって偶然発見され、その後のペンシルバニア大学とタイ芸術局の共同発掘調査により、紀元前3600年頃から紀元後200年頃までの約3,800年間にわたる継続的な人類の居住が確認されました。
バーンチエンが世界的に注目される理由は、東南アジアにおける青銅器文明の存在を明らかにした点にあります。この遺跡から出土した青銅器は、東南アジアの冶金技術がメソポタミアや中国とは独立して発展した可能性を示唆しており、世界の文明史に新たな視点をもたらしました。また、赤い渦巻き模様が特徴的なバーンチエン式彩文土器は、タイを代表する考古学的遺物として知られています。遺跡内には発掘現場をそのまま保存・展示した博物館があり、出土品や当時の埋葬の様子を間近に見学できます。
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
1992年 |
| 登録基準 Criteria |
(3) |
| 住所 Address |
Nong Han, Udon Thani 41320 |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
スワンナプーム国際空港より自動車(約9時間)、ドンムアン空港より自動車(約9時間) |
| URL URL |
https://www.thailandtravel.or.jp/ban-chiang/ |
ドンパヤーイェン-カオヤイ森林地帯 / Dong Phayayen – Khao Yai 森林地帯[Dong Phayayen – Khao Yai Forest Complex]
ドンパヤーイェン-カオヤイ森林地帯は、タイ中部のサラブリー県からカンボジア国境のブリーラム県に至る、ドンパヤーイェン山脈に沿って東西約230kmにわたって広がる広大な森林保護区群です。カオヤイ国立公園、タップラーン国立公園、パーンシーダー国立公園、タープラヤー国立公園、ドンヤイ野生生物保護区の5つの保護区で構成され、総面積は約6,155平方キロメートルに達します。
この地域は、800種以上の動物相を擁する生物多様性のホットスポットです。哺乳類112種(アジアゾウ、トラ、テナガザル、サンバーなど)、鳥類392種(オオサイチョウ、ヤイロチョウ類など)、爬虫類・両生類200種以上が確認されており、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに記載された絶滅危惧種も多数生息しています。中核となるカオヤイ国立公園は1962年に設立されたタイ初の国立公園であり、バンコクから約180kmとアクセスが良く、トレッキングやバードウォッチングの名所として国内外の旅行者に親しまれています。
| 登録区分 Type |
自然遺産 |
| 登録年 Designated |
2005年 |
| 登録基準 Criteria |
(10) |
| 住所 Address |
[Khao Yai National Park]:Hin Tung, Mueang Nakhon Nayok, Nakhon Nayok 26000 Thailand |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
[Khao Yai National Park]:スワンナプーム国際空港より自動車(約3時間)、ドンムアン空港より自動車(約3時間) |
| URL URL |
https://www.thailandtravel.or.jp/khao-yai-national-park/ |
ケーンクラチャン森林保護区群 / Kaeng Krachan Shinrin Hogo Ku Gun[Kaeng Krachan Forest Complex]
ケーンクラチャン森林保護区群は、タイ西部のペッチャブリー県とプラチュワップキーリーカン県にまたがる、タイ最大の自然保護区群です。ケーンクラチャン国立公園、チャラーム・プラキアット・タイ・プラチャン国立公園(旧称:クイブリー国立公園)、およびメーナム・ペッチャブリー野生生物保護区の3つの保護区で構成され、総面積は約4,089平方キロメートルに及びます。ミャンマーとの国境に位置するテナセリム山脈(タナオスィー山脈)の東側斜面に沿って広がっています。
2021年の第44回世界遺産委員会(中国・福州で開催)において自然遺産として登録されました。この森林保護区群は、インドシナ半島とスンダランド(マレー半島・スマトラ島・ボルネオ島などを含む生物地理区)の移行帯に位置するため、両地域の生物相が交差する生物多様性の重要な拠点となっています。絶滅危惧種のシャムワニ、マレーバク、インドシナトラ、シロテテナガザル、オオサイチョウなど、IUCNレッドリストに掲載された希少種が多数生息しています。また、ケーンクラチャン国立公園は、タイ国内でも有数のバードウォッチングスポットとして知られ、500種以上の野鳥が確認されています。
| 登録区分 Type |
自然遺産 |
| 登録年 Designated |
2021年 |
| 登録基準 Criteria |
(10) |
| 住所 Address |
[Kaeng Krachan National Park]:Kaeng Krachan, Kaeng Krachan District, Phetchaburi 76170 Thailand |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
[Kaeng Krachan National Park]:スワンナプーム国際空港より自動車(約3時間30分)、ドンムアン空港より自動車(約3時間30分) |
| URL URL |
https://www.thailandtravel.or.jp/kaeng-krachan-national-park/ |
シーテープの古代都市と関連するドヴァーラヴァティー遺跡群 / Si Thep No Kodai Toshi To Kanren Suru Dvaravati Iseki Gun[The Ancient Town of Si Thep and its Associated Dvaravati Monuments]
シーテープの古代都市は、タイ中北部のペッチャブーン県シーテープ郡に位置する、ドヴァーラヴァティー王国時代(7世紀〜11世紀)に栄えた古代都市遺跡です。2023年の第45回世界遺産委員会(サウジアラビア・リヤドで開催)において、タイで7番目の世界遺産として文化遺産に登録されました。
シーテープの古代都市は、内城と外城の二重の堀で囲まれた広大な都市遺跡で、総面積は約4.7平方キロメートルに及びます。インド亜大陸から東南アジアへの仏教およびヒンドゥー教の文化伝播を示す重要な考古学的証拠を有しており、特にカオクランナイ(Khao Klang Nai)と呼ばれるヒンドゥー教寺院遺跡やカオクランノーク(Khao Klang Nok)の仏教遺跡が注目されています。これらの建造物は、インド建築様式と東南アジア独自の建築技法が融合した独特の様式を示しており、ドヴァーラヴァティー文化がインドシナ半島中央部の平原地帯で独自に発展した過程を物語っています。関連遺跡として、近隣のタモーラートの仏塔群も含まれています。
| 登録区分 Type |
文化遺産 |
| 登録年 Designated |
2023年 |
| 登録基準 Criteria |
(2)、(3) |
| 住所 Address |
[Si Thep Historical Park]:Si Thep, Si Thep District, Phetchabun 67170 Thailand |
| 地図 Map |
地図(Map) |
| アクセス・最寄り駅 Access, Nearest station |
[Si Thep Historical Park]:スワンナプーム国際空港より自動車(約4時間30分)、ドンムアン空港より自動車(約4時間) |
| URL URL |
https://www.thailandtravel.or.jp/si-thep-historical-park/ |
まとめ
タイ王国は、スコータイ王朝やアユタヤ王朝の華やかな歴史を今に伝える文化遺産から、東南アジア有数の生物多様性を誇る森林・野生生物保護区などの自然遺産まで、合計7件の多彩なユネスコ世界遺産を有しています。2023年にシーテープの古代都市が新たに登録されたことで、タイの歴史的・文化的深みがさらに広く認知されることとなりました。
バンコクからの日帰りが可能なアユタヤやカオヤイ国立公園をはじめ、それぞれの世界遺産はタイの歴史・文化・自然の多様な魅力を体感できる貴重な場所です。タイ旅行の際は、これらの世界遺産をぜひ訪問先に加えてみてください。

